子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

日本の予防接種の現状ついて

2009-05-28 00:30:41 | 雑記
日本は予防接種の後進国と以前にも書いたことがありますが、日本の予防接種行政は国民の健康を予防接種で守るという力より、何かあったら行政が責任をとらないようにする体制を維持する力の方が強く働いているように感じてしまいます。

予防接種法に定められ推奨されている定期予防接種は、病気を予防するための重要性が高いものと言えますが、予防接種法に定められた接種年齢や時期を守らなければ法令に定められた定期接種として接種することができません。
アメリカなどは、推奨される時期に接種が行われていない子ども達に対してある程度の接種をする機会を設けていますが、現在の日本では法令で規定された接種時期を逃した場合には定期接種として接種する機会は設けられていません。

だからといって、任意で定期接種の対象となっている予防接種を接種しようとすると、医学的な必要性や安全性とは関係なく、その予防接種の添付文書の接種時期は、予防接種法に定められた時期に接種することとなっており、万が一副反応が発生した場合に「医薬品副作用被害救済」などの保障が受けられない可能性があり、接種する医師の責任と保護者の同意のもとでしか接種ができない状況です。

このように、定期接種の対象となっている予防接種は、安易に任意接種として接種出来ないというおかしな状況になってしまっています。

定期接種の時期を逃してしまった子どもに対して、多くの小児科医は、病気を予防するという観点から、自らリスクを背負って定期接種対象ワクチンの任意接種を行っているのが現状だと思います。

ただ、今後色々なことを考えると、なかなかそれも出来なくなってくるように思います。

多くの子ども達が、安心して多くのワクチンを接種できるような方向に体制が変わっていって欲しいと願っています。