海山の創作ノート

工房T 海山の書、印、絵、版画、工作、etc.日々の暮らしの中で出来た作品を紹介します。 さて、今日は何を作るかな。

No.820 木版モノタイプ 「無題」

2017-01-25 | 版画


No.819での約束通り、No.818の治具を使った作品です。

木版(MDF)モノタイプ。

MDFについては、前回示した通りですが、モノタイプとは?
ですね。

この技法は、あまり知られていないし、またこの技法で制作している人も限られているので、きっと、はじめてこの言葉を目にする人も多いのではないでしょうか。

モノタイプは、『版画でありながら、まぎれもない一点の絵画として、絵筆を走らせるように版木を彫り、また摺ることを繰り返す。』(版画芸術 阿部出版より)という技法です。

韓国の版画家 Lee Minさんがこの技法で制作しています。

木版多色刷りの場合、普通、版木を刻してから刷ることを、色ごとに行います。

あるいは、一版でも、場所によって色を替えれば、多色刷りができます。

いずれにしても、一度刻した版は、そのまま使われます。

だから、また改めて刷ることもできるのです。

しかし、このモノタイプでは、版木を刻して刷り、その今刷った版木をまた刻します。

刻して色を換えて刷り、刻して色を換えて刷り、を何度も繰り返して、作者の「ここぞ!」という所でやめて完成に至る、正に、一点ものの版画です。

もう二度と同じものはできないのです。再版は許されないのです。

だいたい、普通の木版、いや手摺りの版画ならば、完璧に同じということは、余程の技術がなければ難しいことです。

(その点、浮世絵の技術はとてもすごいものです。)

刷りの技術が難しいのは、今さらという感じですが、どうしても全く同じものはできません。同じ様なものはできるのです。

それが、版画だと思うし、そこに個性や暖かみが、あるいは偶然の美が生まれるのだと思っています。

このモノタイプは、はじめから、スパッと気持ちのいいくらいに同じものを求めていません。

出来上がるものは、間違いなく一点ものです。

これは、「書」とよく似ています。

だから、この技法が目に留まったし、やってみようと思ったのです。

一応、もう一枚写真を載せておきます。



色や刷りの状態で、印象が随分違うことが分かります。

(木版モノタイプ・三刷三色、和紙、10×10㎝)