デジカメぶらりぶらり

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偽物

2013-11-03 06:55:05 | Weblog
テレビが普及していない時代に、人気歌手や喜劇役者の「偽物」が地方によく出没したという。美空ひばりさんの名に似せた「美空びばり」や「青空ひばり」、喜劇王の榎本健一さんの場合は、エノケンならぬ「エノケソ一座」がいたそうだ。

ひどい話だが、注意深く見れば本物と区別できる。俳優田宮二郎さんの場合は複雑だった。田宮さんが旅先で「田宮二郎一座」を発見した。田宮さんが偽物に「いいかげんにしろ」と言うと相手は戸籍謄本を出した。「田宮二郎」と記載されていた。本名だった。作家の安部譲二さんが書いている。

気分の悪いウソがある。阪急阪神ホテルズがレストランでメニュー表示と異なる食材を使用していた。九条ネギは青ネギだった。普通の人は分からない。昭和恐慌の時、カネのない会社員の間にライスのみを注文しウスターソースをかけて食べる「ソーライス」が大流行した。店の方は嫌がったが、阪急百貨店大食堂は「ライスのみ」を歓迎した。

彼らはやがて結婚して、家族を連れて来てくれる。創業者の考えだった。調理人もウソを知っていたという。家族そろってホテルで食をするささやかなぜいたく。若い二人であれば食事の後、ひょっとして、結婚の約束をするかもしれない。

そんな光景を前に、どんな顔して料理を出していたのか。「いいかげんにしろよ」である。

奇抜

2013-11-01 08:29:27 | Weblog
しゃくりは何かの役に立っているのか?魚もおならをするのか?英科学誌ニュー・サンエンティストの名前は、読物からの素朴で時に奇抜な質問に答えるQ&Aコーナだ。

そのやりとりをまとめた『つかぬことをうかがいますが・・・』(早川書房)から一つ紹介すると・・・「息を吸いこんだり、ひと口水を飲んだりするたびに、レオナルド・ダビンチが吸ったリ飲んだりした原子がいくらか体内に入るというのは本当でしょうか?」

回答は・・・地球の大気にある分子の数とダビンチが生涯に排出した分子の数を推計していくと、私たちは呼吸するたびに、彼が吐いた分子を大量に吸っていて、彼の末期の息の分子すらおよそ五個は吸っているはずだという。

にわかには信じがたいが、世紀の大天才の体を通った分子が今もこの身にも入ってきていると考えれば、愉快だ。が、ということは、ヒトラーが吐いた分子も彼に抹殺された何百万ものユダヤ人たちのそれも、私たちは吸ったり飲んだりしていることになる。

突拍子もない想像に思えるが、地球のめぐりとは、そういうものなのだろう。内戦で昨日までの隣人と殺し合う人々も、隣人に差別もあらわな言葉を吐く人たちも、結局は憎む相手と空気や水は共有しなくてはならない。

憎悪の応酬やまぬ世を解きほぐす力は、ちょっとした想像の中に潜んでいるかもしれない。