テレビが普及していない時代に、人気歌手や喜劇役者の「偽物」が地方によく出没したという。美空ひばりさんの名に似せた「美空びばり」や「青空ひばり」、喜劇王の榎本健一さんの場合は、エノケンならぬ「エノケソ一座」がいたそうだ。
ひどい話だが、注意深く見れば本物と区別できる。俳優田宮二郎さんの場合は複雑だった。田宮さんが旅先で「田宮二郎一座」を発見した。田宮さんが偽物に「いいかげんにしろ」と言うと相手は戸籍謄本を出した。「田宮二郎」と記載されていた。本名だった。作家の安部譲二さんが書いている。
気分の悪いウソがある。阪急阪神ホテルズがレストランでメニュー表示と異なる食材を使用していた。九条ネギは青ネギだった。普通の人は分からない。昭和恐慌の時、カネのない会社員の間にライスのみを注文しウスターソースをかけて食べる「ソーライス」が大流行した。店の方は嫌がったが、阪急百貨店大食堂は「ライスのみ」を歓迎した。
彼らはやがて結婚して、家族を連れて来てくれる。創業者の考えだった。調理人もウソを知っていたという。家族そろってホテルで食をするささやかなぜいたく。若い二人であれば食事の後、ひょっとして、結婚の約束をするかもしれない。
そんな光景を前に、どんな顔して料理を出していたのか。「いいかげんにしろよ」である。
ひどい話だが、注意深く見れば本物と区別できる。俳優田宮二郎さんの場合は複雑だった。田宮さんが旅先で「田宮二郎一座」を発見した。田宮さんが偽物に「いいかげんにしろ」と言うと相手は戸籍謄本を出した。「田宮二郎」と記載されていた。本名だった。作家の安部譲二さんが書いている。
気分の悪いウソがある。阪急阪神ホテルズがレストランでメニュー表示と異なる食材を使用していた。九条ネギは青ネギだった。普通の人は分からない。昭和恐慌の時、カネのない会社員の間にライスのみを注文しウスターソースをかけて食べる「ソーライス」が大流行した。店の方は嫌がったが、阪急百貨店大食堂は「ライスのみ」を歓迎した。
彼らはやがて結婚して、家族を連れて来てくれる。創業者の考えだった。調理人もウソを知っていたという。家族そろってホテルで食をするささやかなぜいたく。若い二人であれば食事の後、ひょっとして、結婚の約束をするかもしれない。
そんな光景を前に、どんな顔して料理を出していたのか。「いいかげんにしろよ」である。