こころとからだがかたちんば

YMOエイジに愛を込めて。

2014年1月24日 金曜日 音楽風景 ~I’LL BE OVER YOU~

2014-01-24 23:47:28 | 想い出かたちんば

80年代の後半、87年の分水嶺。
何も創造的なものなんか、もうここにはない、という空白感の中に、自分は漂っていた。
かたわらで、シャカシャカ「ゆーろびーと」がどうたらこうたら。。。。とFMでは、ちんけな音が鳴っていた1シーン。

音楽カテゴリーの境界線があいまいになり出した時代。
だからと言って真に新しい息吹が産まれた訳ではない。
「ワールド・ミュージック」と呼ばれたものも、名前の付けようのない・ぼんやり漂うクラケ音楽・ただのゴッタ煮を、そうやって商品流通の活性化目的で呼んでいたに過ぎない。

だからと言って、何も無かった訳でもない。
まだヨーロッパの魂は残っていたのか!と驚いた、ケルトの奇跡=エンヤとの出会い。
89年には、教授の「ビューティー」・細野さんの「オムニ・サイト・シーイング」なる素晴らしき2枚のアルバムなど。。。。
だが、そんなものはごく一部に過ぎず、それぞれが、孤。
素晴らしいミュージシャンは、それぞれが優れた作品を創るのみで、流れるシーンなど存在しない時代。

そこには、時代に杭を打ち込むような、過激で革新的なムーヴメントなどありはしなかった。

そんな中、大学時代に入った廃人は、87年から、美術研究会なるアート倶楽部に身を寄せていた。
実際は、変わり者たちのたまり場。
そこは、音楽を聴く者、いかれた安物テレビを見る者、楽器をポロンポロンと奏でる者。
画材の匂いで充満した中、絵を描き・酒やタバコを飲みながら、毎日色んな話しをして過ごした部室。
大学では一番古い公認の倶楽部で、大学から予算を与えられて運営していた。
掃除もしない曇ったガラス窓からは、赤き中央線がガタンゴトンと走って行く姿が見えた、線路脇。

面倒見の良い先輩が、よく車でドライヴに連れていってくれた。しょっちゅう、彼のどくだみ荘に泊まっては、一緒にメシを炊きながら、本や音楽や絵の話しをした。
彼は新しいアルバムが出ると、アルバイトで稼いだお金で、精力的に何枚も新譜を買っていた。
もはや音楽に未来を見い出せなくなっていた自分。

そんな状況下で知りうるリアルタイムの音楽の多くは、彼によってもたらされていた。
U2の「ヨシュア・トゥリー」、マイケル・ジャクソンの「バッド」、スザンヌ・ヴェガの「孤独」等々のアルバム。

そんな中から好きな曲を選んだセレクションテープが、ドライヴの最中ずーっと掛かっていた。
彼の横に乗って、武蔵野や山河の風景に眼をやりつつ、多くの知らない曲に出会えた。

1986年に発表された、TOTOのアルバムに入った「I’LL BE OVER YOU」は、そんななかの1曲。
大学時代に何かあるたびに聴いていた、今でも好きな1曲。

それまで、新たなる音楽の地平を目指し、新たな実験結果としての産物が産まれるときにこそ、自らの「今を生きる」魂を込めてきた1986年のエンドロールを経て。
TOTOの曲は、極めて有り体で、何一つ新しいものはない。
単純にメロディアスな曲というだけである。でも、好きなのである。
矮小化されていく音楽業界の中。まるで何も買うものの無いお店の中で逃げ切れず、「何か無いかなあ」と無理矢理何かを探しているような感じだったとしても。

80年代の終わりから90年代をむかえるにあたって、奇妙な生命体としてアメーバ―のような変態を起こすハウス→アンビエント→・・・・→エレクトロニカの発生など、ゆめゆめ思わず、昭和の終わりに向けた静けさが支配していた時代の曲。

■ TOTO 「I’LL BE OVER YOU」1986■
夢に生きる人が居る
眼を閉じた人が居る
運命が通り過ぎていくままにする人も居る

保証されうるなにがしかもなく、証明するなにがしかもない
ぼくらの愛はなるべくしてなった
それをなぜか?とは尋ねないでくれ

そこには、一定の時間が必要なんだ
いつになれば。。。は天にしか分かりえない
それでもぼくは、いつか「あなた」が居なくなった悲しみを忘れることが出来るだろう

心を傷める日々が潮を引いて、
永久に思える悲しみが通り過ぎたら、
ぼくはきっと「あなた」が居なくなった悲しみを超えていけるだろう

1980年・中学生の頃に、銀座の山野楽器で買って聴いた2,800円のLPレコードの一枚は、ボズ・スキャッグスの「ミドル・マン」。
ボズのかっこよさ。
当時、AOR=アダルト・オリエンテッド・ロックなんて呼び方をしていたが、そんなカテゴリーなんかどーでも良くて、その後、ボズの過去の作品にさかのぼって聴いていった。
同時代進行では、ボズのバックバンドだったミュージシャンが独立して創ったユニット「TOTO」も聴いていた。
毎週のトップ10でワクワクしながら聴いた「セント・ジョージ&ザ・ドラゴン」そして名曲「99」が、私にはとても新鮮だった。
クリストファー・クロスやJDサウザーの登場。
ロビー・デュプリー、ルパート・ホルムズといった新しいウエストコーストサウンドと共に。
コメント (2)
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