ゴンさんに刺激されてでもあるが、この年始休み。
島をぶらぶら一巡している旅のさなか、機会があるたびに向かうお寺に訪れた。
誰もお年始の初詣の人はいなかった。
住まう・東京のエアースポット。
人びとの暮らしが蓄積した空気。それが層を作り、たたずまいとなった島。
その島にある「蓮池寺」。
お寺のお墓から卒塔婆がにょきにょきと空を向いている。
周囲のマンションやスカイツリーも、まるでお墓同様のモニュメントのように空に顔を向けている。
お線香のにおい漂うなか、静かに寺の境内を歩く。
正月の空気も空も澄んでいて、忙殺脳を一時離れて、ぼんやり出来た数十分だった。
お地蔵さまも冬のいでたち。
眺めていると、お参りに来られたおばあちゃんがやってきて、しばしお話しをする。
真っ赤な毛糸の手編み帽子がかわいいですねえと、お話しが始まる。
思えば、街は移ろいゆくけれども、神社仏閣だけは、ずーっとその場所に居てくれる。
■細野晴臣 「恋は桃色」1973■