
デヴィッド・ボウイーの「ロジャー」に入っている「アフリカン・ナイト・フライト」をひさびさに聴いていた。
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これを初めて聴いたのは、1983年夏。
ブライアン・イーノは、自分のVIDEOのインスタレーションを、ラフォーレミュージアム赤坂で行なうため、この夏に来日した。
それを期して、FM東京の深夜、(というか、夏だから夜明けというか・・)3:45~4:00の「民族音楽をあなたに」で、1週間ブライアン・イーノの関わってきた作品を紹介した。
ペンギン・カフェ・オーケストラ、デヴィッド・トゥープ、ララージ、ハロルド・バッド、ジョン・ハッセル、そしてボウイーなどを紹介してくれた。
案内は、田中みどりさん。
そこで「アフリカン・ナイト・フライト」を聴いたのだった。
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「ロウ」「ヒーローズ」そしてこの「ロジャー」が、イーノとのベルリン三部作。
この「アフリカン・ナイト・フライト」も、背後で動くイーノの影がとても強い、めちゃめちゃカッコイイ曲。
イーノ得意のテープループが登場するが、それがプリペアド・ピアノで弾いた小節のリピート。これが良い。
プリペアド・ピアノは、元々、ジョン・ケージがやりだした手法だったかと思う。ピアノの内側のピアノ線のところに、勝手に色々なモノをはさむ。
それでピアノを弾くと、思いもしない偶発的な音が出る。
イーノは、実験的なその「偶発性にたよる」手法というのが好きだ。
<彼は、自分をミュージシャンと言われるのが嫌いで拒んでいる>
自分が、その演奏の主体者にはなりたくないのだ。
音を鳴らしながらも、それをコントロール出来る、一拍距離を置いた位置に自分を置く。
彼の作品というのは、そういうものが多い。
その手法を、ボウイーの作品でも垣間見ることが出来るのだ。
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イーノは、本来、「現代音楽」なる分野でしか用いていなかった手法を、ポップフィールドに持ち込んだ元祖であるし、そういう音楽の「師」なのだ。
しかも、それが単なる「パクリ」ではなく、1本スジの通った見えない思想的背景を持っている過激さを備えている。
それゆえ、中学・高校の自分には、とてつもない衝撃力があった。
それは「音楽の果て」へのあくなき挑戦であり、当時のイーノは確実にそこに到達していた。
類いまれなる天才なのだ。