日産は中国で生産している部品がストップしたため、日本国内での生産ラインが停まった。九州のふたつの主力工場でラインが停まり、年間40万台の主力車種がもろに悪影響を被った。
逆にエンジンを中国のサプライチェーンに供給出来なくなったトヨタの、中国工場のいくつかも生産ラインをとめた。とくに愛知県のエンジン工場は生産調整に入り、このエンジンが輸出できないと中国での生産も不可能となる。トヨタの天津工場、吉林省、四川省、広東省などの工場も、操業不能状態に陥った。
なにしろトヨタ、日産は中国の販売台数が、日本国内より多く、日本車トータルで中国の販売は五百万台を超えている。その足下が脅かされた。
同様にブリヂストンやマツダも操業再開の目処が立たず、ドイツ車もフォルクスワーゲンは成都の完成車工場が生産ラインを止めた。GMもしかり。
自動車部品工場が集中するのは広州、天津、無錫などで、部品が足りないという悲鳴と同時に「工員が出社しない。いや出社しても仕事がない」という悲鳴である。
操業再開などと言っても、社員が出社しない。生産現場は自宅勤務というわけにはいかない。生産が中断すれば、販売に影響が出る。輸出納期には間に合わず、ときに違約金を支払う羽目になる。
自動車ばかりか、アパレルでもレナウン、ユニクロなどは中国での委託生産が多いため、物流に停滞が生じている。くわえて中国の税関では人手不足とマスクなど医薬品の輸入集中があって通関作業に大幅な遅れが出ている。これも部品供給の遅れに繋がる。泣きっ面に蜂である。
かろうじて一部工場再開をしたのは住友化学、村田製作所、日本精工、ソニーなどだが、旧正月前のフル生産に遠く及ばず、先行きは真っ暗だという。サプライチェーンの再構築の展望はなく、視界は霧に閉ざされている。
第一、死者数の少ない北京、上海でも人通りがない。地下鉄はがら空き、あの人が一杯のチャイナは何処へ行ったのか?
「中国之夢」はやはり蜃気楼だったのか。
▲コロナウィルス災禍を倒産、契約不履行の「口実」に
このコロナウィルス災禍を「口実」に支払いの遅延、不払い、倒産も表面化した。このときとばかり「不可抗力」条項を活用して、契約不履行が静かなブーム。鋼材、アパレル、建材分野がとくに目立ち、2月10日時点で、有力企業の契約不履行は97社にのぼるという(日本経済新聞、2月11日)。
またこれを撤退の口実としてワタミは中国全土の店舗を閉鎖した。スタバは全土で二千軒が閉鎖したままである。
サプライチェーンの寸断は日本ばかりか、韓国、台湾の経済をがたがた揺らし、組み立て工場が稼働するフィリピン、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシアに飛び火、ASEAN諸国全体が大がかりな被害を受けた。チャイナウィルスの経済直撃弾である。
韓国では自動車部品の輸入が間に合わなくなって現代自動車の生産ラインがストップ、なかでも大悲鳴に近いのが台湾の鴻海精密工業だろう。
ピーク時に百万人、深せんや鄭州に大工場にあるファックスコムはいまでも70万人を雇用しており、アップルのスマホ組み立てで興隆し、昨年までは昇龍の勢いにあった、この台湾企業とて米中貿易戦争あおりで景気の先行きに暗雲が立ちはだかっていたが、コロナウィルス災禍によって操業再開も衛生検査などで計画が遅れ、輸出の目玉が継続生産できない見通しとなった。このため1月30日の株式市場で同社株は9・9%のストップ安となったほど。同日の台湾株式は、なんと198社が一斉にストップ安となった。大暴落と同義である。
震源地である中国の株式市場はどかーんと急落した。10%のストップ安に至らなかったのは当局が「売るな」「悪質な空売りは犯罪として扱う」などと投資家に厳命しているためである。それでも旧正月明けの2月3日の株式は9%の下落ぶりだった。
同時に資金流出が起こった。IMFの調べでは284億ドルが中国から海外へずらかり、時価総額にして4兆ドルが株式市場から消えた。
株安は日本の株式市場を混乱に陥れ、全面安の展開。とくに中国の消費者向け化粧品を売ってきた資生堂、コーセー、ファンケル。そしてマツモトキヨシ、ビックカメラ、ヤマダ電機など投資家が震撼するほどに下落を演じた。
アジアばかりではない。欧州でも、中国からの部品供給がとまって、フィアット・クライスラーが生産を停止した。イタリア北部は工業地帯、ミラノからトリノにかけてフィアットの主力工場がある。
欧州の自動車メーカーで、部品を中国に依存している企業は四社。いずれも操業再開の展望がなく、欧州市場の自動車販売シェアが塗り変わる可能性もあるという。
▲ブラック・スワンの最悪シナリオに備えよ
「ブラック・スワン」は長らく「あり得ない鳥」と目され、「考えられない災禍」という文脈で比喩されたものだった。実態には豪州で黒い白鳥が見つかり、想定外の現実が起こりうる喩えとして、市場関係者の用語にもなっていた。筆者自身、ニュージーランドの公園で、ブラック・スワンを目撃したことがある。もちろん、写真に撮った。
デビット・ルーベンスタイン(カーライル・グループ創業者)は、「市場におけるブラックスワン」として、(1)中東などにおける軍事衝突の大規模化。つまり戦争、(2)日本とアメリカの債務の爆発、(3)世界的なペンディミック(伝染病)の大流行の三つをあげた。
しかし、筆者からいえば、これら三つのシナリオは想定内のことでしかなく、ブラック・スワンの最悪シナリオとは、第一に中国の債務不履行により世界の債券市場の壊滅的打撃、第二に中国経済の沈没による世界経済の大幅な後退、そして第三に伝染病を地域に限定させるための中国封じこめが想定されること、中国は近代化のピッチを突如中断し、世界のお荷物になることである。
インバウンドが激減し観光業界が大不況に突入したが、これは第一段階でしかなく、次の段階は中国のGDP成長率がマイナスへ転落し、中国依存のサプライチェーンに巻き込まれてきたアジア諸国の大幅な景気後退。日本もGDPマイナスに陥没するだろう。
中国から逃げ出したカネは次の投機機会を見いだせずに滞留すれば、それもまた厄介な問題を生む。この投機的で流動的な巨額が原油や穀物市場への投機は考えにくいから、あるいは米国、欧州、日本の不動産市場への投機という、やけくその投資行動がおこるかも知れない。
▲事態がここまで悪化した元凶は中国の情報隠蔽と、出鱈目な情報しか上に上げない全体主義システムの欠陥である
またWHOの事務局長が、中国の指示に従って非常事態の宣言を遅らせ、情報を開示せず、旅行中止はやり過ぎなどと中国よりの発言を続けたため、とくに日本の対応が致命的に遅れた。日本は依然として国連信仰の、プリンシパルのない追随国家という印象はぬぐえない。
現実には中国のガソリン消費が激減し、ひいては原油輸入が20%の落ち込み、したがって原油市場も20%安の市況となって産油国ばかりか、ロシアが悲鳴を挙げた。
ロシアは米国同様に中国からのフライト乗り入れを禁止しており、また海南航空、中国南海航空はロシア人スタッフ百名をいきなり解雇した。
4200キロの国境線にある九つの国門(満州里、スイフェンガ、ウスリー、黒河など)を封鎖し、出入国を厳格化した。中国からのツアーは全面的に入国禁止である。このためオーロラ観測で中国人観光客が夥しかったムルマンスクの観光ツアーは八割減。
労働就労ビザも差し止め、遠くボルガ川流域の学校まで閉鎖措置、中国との鉄道も事実上輸送を止めている。「開いているのはガスパイプラインだけ」という(「モスクワニュース」、2月9日)。
エカテリンブルグヘ赴任した中国領事は「二週間、領事館に留まれ」として、外務関係の業務もストップ、かくしてロシアも又、米国と同様に国防第一の措置を取っているのである。
東京五輪後は確実に経済鈍化と予想されてきた。ところが、五輪そのものの開催も危ぶまれる今日、最悪のシナリオは五輪中止だが、死者が千名を超えて収まりが見えない日々、五輪開催の有無も、現実の問題として、顕著な予兆となってきているではないか。
逆にエンジンを中国のサプライチェーンに供給出来なくなったトヨタの、中国工場のいくつかも生産ラインをとめた。とくに愛知県のエンジン工場は生産調整に入り、このエンジンが輸出できないと中国での生産も不可能となる。トヨタの天津工場、吉林省、四川省、広東省などの工場も、操業不能状態に陥った。
なにしろトヨタ、日産は中国の販売台数が、日本国内より多く、日本車トータルで中国の販売は五百万台を超えている。その足下が脅かされた。
同様にブリヂストンやマツダも操業再開の目処が立たず、ドイツ車もフォルクスワーゲンは成都の完成車工場が生産ラインを止めた。GMもしかり。
自動車部品工場が集中するのは広州、天津、無錫などで、部品が足りないという悲鳴と同時に「工員が出社しない。いや出社しても仕事がない」という悲鳴である。
操業再開などと言っても、社員が出社しない。生産現場は自宅勤務というわけにはいかない。生産が中断すれば、販売に影響が出る。輸出納期には間に合わず、ときに違約金を支払う羽目になる。
自動車ばかりか、アパレルでもレナウン、ユニクロなどは中国での委託生産が多いため、物流に停滞が生じている。くわえて中国の税関では人手不足とマスクなど医薬品の輸入集中があって通関作業に大幅な遅れが出ている。これも部品供給の遅れに繋がる。泣きっ面に蜂である。
かろうじて一部工場再開をしたのは住友化学、村田製作所、日本精工、ソニーなどだが、旧正月前のフル生産に遠く及ばず、先行きは真っ暗だという。サプライチェーンの再構築の展望はなく、視界は霧に閉ざされている。
第一、死者数の少ない北京、上海でも人通りがない。地下鉄はがら空き、あの人が一杯のチャイナは何処へ行ったのか?
「中国之夢」はやはり蜃気楼だったのか。
▲コロナウィルス災禍を倒産、契約不履行の「口実」に
このコロナウィルス災禍を「口実」に支払いの遅延、不払い、倒産も表面化した。このときとばかり「不可抗力」条項を活用して、契約不履行が静かなブーム。鋼材、アパレル、建材分野がとくに目立ち、2月10日時点で、有力企業の契約不履行は97社にのぼるという(日本経済新聞、2月11日)。
またこれを撤退の口実としてワタミは中国全土の店舗を閉鎖した。スタバは全土で二千軒が閉鎖したままである。
サプライチェーンの寸断は日本ばかりか、韓国、台湾の経済をがたがた揺らし、組み立て工場が稼働するフィリピン、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシアに飛び火、ASEAN諸国全体が大がかりな被害を受けた。チャイナウィルスの経済直撃弾である。
韓国では自動車部品の輸入が間に合わなくなって現代自動車の生産ラインがストップ、なかでも大悲鳴に近いのが台湾の鴻海精密工業だろう。
ピーク時に百万人、深せんや鄭州に大工場にあるファックスコムはいまでも70万人を雇用しており、アップルのスマホ組み立てで興隆し、昨年までは昇龍の勢いにあった、この台湾企業とて米中貿易戦争あおりで景気の先行きに暗雲が立ちはだかっていたが、コロナウィルス災禍によって操業再開も衛生検査などで計画が遅れ、輸出の目玉が継続生産できない見通しとなった。このため1月30日の株式市場で同社株は9・9%のストップ安となったほど。同日の台湾株式は、なんと198社が一斉にストップ安となった。大暴落と同義である。
震源地である中国の株式市場はどかーんと急落した。10%のストップ安に至らなかったのは当局が「売るな」「悪質な空売りは犯罪として扱う」などと投資家に厳命しているためである。それでも旧正月明けの2月3日の株式は9%の下落ぶりだった。
同時に資金流出が起こった。IMFの調べでは284億ドルが中国から海外へずらかり、時価総額にして4兆ドルが株式市場から消えた。
株安は日本の株式市場を混乱に陥れ、全面安の展開。とくに中国の消費者向け化粧品を売ってきた資生堂、コーセー、ファンケル。そしてマツモトキヨシ、ビックカメラ、ヤマダ電機など投資家が震撼するほどに下落を演じた。
アジアばかりではない。欧州でも、中国からの部品供給がとまって、フィアット・クライスラーが生産を停止した。イタリア北部は工業地帯、ミラノからトリノにかけてフィアットの主力工場がある。
欧州の自動車メーカーで、部品を中国に依存している企業は四社。いずれも操業再開の展望がなく、欧州市場の自動車販売シェアが塗り変わる可能性もあるという。
▲ブラック・スワンの最悪シナリオに備えよ
「ブラック・スワン」は長らく「あり得ない鳥」と目され、「考えられない災禍」という文脈で比喩されたものだった。実態には豪州で黒い白鳥が見つかり、想定外の現実が起こりうる喩えとして、市場関係者の用語にもなっていた。筆者自身、ニュージーランドの公園で、ブラック・スワンを目撃したことがある。もちろん、写真に撮った。
デビット・ルーベンスタイン(カーライル・グループ創業者)は、「市場におけるブラックスワン」として、(1)中東などにおける軍事衝突の大規模化。つまり戦争、(2)日本とアメリカの債務の爆発、(3)世界的なペンディミック(伝染病)の大流行の三つをあげた。
しかし、筆者からいえば、これら三つのシナリオは想定内のことでしかなく、ブラック・スワンの最悪シナリオとは、第一に中国の債務不履行により世界の債券市場の壊滅的打撃、第二に中国経済の沈没による世界経済の大幅な後退、そして第三に伝染病を地域に限定させるための中国封じこめが想定されること、中国は近代化のピッチを突如中断し、世界のお荷物になることである。
インバウンドが激減し観光業界が大不況に突入したが、これは第一段階でしかなく、次の段階は中国のGDP成長率がマイナスへ転落し、中国依存のサプライチェーンに巻き込まれてきたアジア諸国の大幅な景気後退。日本もGDPマイナスに陥没するだろう。
中国から逃げ出したカネは次の投機機会を見いだせずに滞留すれば、それもまた厄介な問題を生む。この投機的で流動的な巨額が原油や穀物市場への投機は考えにくいから、あるいは米国、欧州、日本の不動産市場への投機という、やけくその投資行動がおこるかも知れない。
▲事態がここまで悪化した元凶は中国の情報隠蔽と、出鱈目な情報しか上に上げない全体主義システムの欠陥である
またWHOの事務局長が、中国の指示に従って非常事態の宣言を遅らせ、情報を開示せず、旅行中止はやり過ぎなどと中国よりの発言を続けたため、とくに日本の対応が致命的に遅れた。日本は依然として国連信仰の、プリンシパルのない追随国家という印象はぬぐえない。
現実には中国のガソリン消費が激減し、ひいては原油輸入が20%の落ち込み、したがって原油市場も20%安の市況となって産油国ばかりか、ロシアが悲鳴を挙げた。
ロシアは米国同様に中国からのフライト乗り入れを禁止しており、また海南航空、中国南海航空はロシア人スタッフ百名をいきなり解雇した。
4200キロの国境線にある九つの国門(満州里、スイフェンガ、ウスリー、黒河など)を封鎖し、出入国を厳格化した。中国からのツアーは全面的に入国禁止である。このためオーロラ観測で中国人観光客が夥しかったムルマンスクの観光ツアーは八割減。
労働就労ビザも差し止め、遠くボルガ川流域の学校まで閉鎖措置、中国との鉄道も事実上輸送を止めている。「開いているのはガスパイプラインだけ」という(「モスクワニュース」、2月9日)。
エカテリンブルグヘ赴任した中国領事は「二週間、領事館に留まれ」として、外務関係の業務もストップ、かくしてロシアも又、米国と同様に国防第一の措置を取っているのである。
東京五輪後は確実に経済鈍化と予想されてきた。ところが、五輪そのものの開催も危ぶまれる今日、最悪のシナリオは五輪中止だが、死者が千名を超えて収まりが見えない日々、五輪開催の有無も、現実の問題として、顕著な予兆となってきているではないか。
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