中国の王毅外相が欧州五ヶ国を緊急に訪問したのは八月下旬。これをEU諸国の外交筋は、「ダメージ・コントロールの旅」と評した。香港安全法、人権問題で中欧関係が急冷したからである。
王毅はオランドを皮切りに、イタリア、スペイン、ノルウェイ、そしてドイツの五ヶ国を駆け足で廻った。直後に国務委員で前外相の楊潔チも巡回した。
とくにドイツだった。これまで良好な関係を堅持して、ドイツは人権問題を脇に置き、フォルクスワーゲン、ベンツ、医薬品、工作機械などを大量に中国に輸出し、一方、5Gでは英米仏とは距離を置いて中国のファーウェイと使うと表明してきた。
ドイツと同じ路線を表明していたのが、イタリア、スペインだった。 中独外相会談ではドイツは香港問題で人権弾圧への懸念を表明し、またイランの核などでも議論は噛み合わなかった。
駐独中国大使は「従来の(良好だった)中独関係は去った」と中国紙のインタビューに語った。
というのも、王毅が帰国した翌日、ドイツは「ドイツ、EU、アジアがともに21世紀を切り開こう」と外交の概要を説明し、「インド太平洋パートナーシップ」を唱えた。つまり外交方針の評価替えである。
これは中国にとってはブローになる。貿易と国際取引は続けるが、米英仏主導の「インド太平洋」戦略に加わると、実質的に表明したことになり、こうなるとドイツ海軍艦船が、米英仏の空母の列に、何時、加わるのかという問題に繋がるからだ。
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