2023.4/24
再選出馬が注目されるバイデン氏(ロイター)
国際投資アナリスト・大原浩氏寄稿
中国やロシア、中東など世界の安全保障環境が厳しさを増している。国際投資アナリストの大原浩氏は、米民主党のジョー・バイデン政権こそ、一連の混乱を招いた元凶だと指摘する。大原氏は寄稿で、24年の米大統領選に向けて「〝米国有事〟が勃発してもおかしくない」と警鐘を鳴らしている。
バイデン大統領は2021年1月の就任以来、アフガン撤退の大失敗だけではなく、米国抜きのイラン・サウジアラビア国交正常化まで許してしまった。バイデン政権が外交で無策であることは明白だ。ウクライナ戦争においても、対ロシア経済制裁やウクライナ支援の手法が稚拙で、結果として中国とロシアを接近させた。習近平国家主席はロシアを訪問してプーチン大統領と会談し、両国の協力をアピールした。
それどころか、バイデン政権の強権的な外交手法を嫌った多くの国々が米国離れを起こした。 例えば、4月13日に中国・上海訪問中のブラジルのルラ大統領が「人民元やその他の通貨が国際決済通貨になってはならないのか。なぜ、自国の通貨で決済できないのか」と発言した。
米国が、ドルが基軸通貨であることを利用して、ロシアの中央銀行の資産を凍結し、国際的な決済システム「SWIFT」から排除したことが影響しているとみられる。この制裁はロシアに大した打撃を与えなかったどころか、世界中の国々に「米ドルで資産を持っていると何をされるかわからない」という恐怖を与え、ドル離れの加速という大ブーメランとなって返ってきた。
ウクライナ戦争でも、米国はバイデン政権自らの覇権を重視しているように見える。最悪なのが天然ガスのパイプライン「ノルドストリーム爆破疑惑」である。バイデン政権は限りなく黒に近い灰色だといえよう。
疑惑をスクープしたジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏は新たに「ゼレンスキー大統領がロシアから安くディーゼル燃料を購入する一方、米国が燃料購入代として送った数億ドルの支援を側近とともに着服している」と報じた。ウクライナをめぐっては、2014年にバイデン大統領の息子、ハンター氏が、国営天然ガス会社ブリスマに高額報酬のコンサルタントとして就任したことも知られる。
米国の内政においても、シリコンバレー銀行などの破綻による「連鎖的金融危機」はまだ序章だといえる。イエレン財務長官は「預金を全額保護する」との発言で沈静化を図っているが、そのための資金の裏付けが必要であり、債務問題がのしかかる。
このように追い込まれたにもかかわらず、バイデン氏は延命を図り、24年大統領選挙への出馬を画策している。
ニューヨーク州の大陪審ではトランプ前大統領が起訴された。民主党支持者が多い同州だが、民主党系のメディアにも起訴は「暴挙」との見方が散見され、中間層だけではなく、党内の良識派にまで見放されつつある。
20年の大統領選以来、多くの人々が民主党の横暴に口をつぐんできたが、バイデン氏が大統領に居座るのであれば、「第2次南北戦争」という「米国有事」の可能性が絵空事では無くなってきたと米国在住の知人も口にしている。
もちろんそれは中国による「台湾有事」にさらされている日本国民に大きな影響を与えるだけではなく、世界情勢にとって重要な問題になる。
■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。
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