認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

アルツハイマー型認知症の「脳の働き」と「症状」との関係 Q/A Room (A-48)

2012-06-28 | 認知症に対する正しい知識のQ&A
Q:私達夫婦には子供がいない上に、来年には揃って古希を迎えます。年をとってきて一番恐ろしいのは、認知症のことです。認知症の大多数を占める「アルツハイマー型認知症」は、「脳の働き」が衰えることでいろいろな「症状」が出てくる病気と聞いています。正常でない「脳の働き」とはどんなことを言っていて、そのレベルの脳の機能と「症状」との関係はどのようになっているのでしょうか。
       
A:先ず、脳の構造について簡単に概観を述べておきましょう。脳は、大きく4つの機構から成り立っているのです。事故や脳卒中などにより脳が損傷や障害を受けた人をたくさん調べると、脳は場所によって働きが異なり(機構ごとに役割が異なり)、「機能の分担」をしていることが分かります。
 
頭のてっぺんの所には、運動の脳」があります。脳卒中で半身麻痺になる人がいます。運動の脳の左の部分が壊れると右半身麻痺が起き、右の部分が壊れると左半身麻痺が起きます。「運動の脳」は体を動かす働きをしているのです。
 
脳の後ろの左側部分には、勉強や仕事等をする為の左脳」があります。左脳が障害を受けると、論理を操れなくなり、言葉が出てこなくなり、計算もできなくなります。「左脳」は「言葉の脳」、或いは「仕事の脳」とも言われ、言葉や論理や計算といった「デジタルな情報」の処理を担当しているのです。
       
脳の後ろの右側部分には、趣味や遊びや人付きあい等を楽しむ為の右脳」があります。右脳が障害を受けると、色や形や空間の認知ができなくなります。「右脳」は「感性の脳」、或いは「趣味や遊びや人付き合いの脳」とも言われ、色や形や音、感情や感覚といった「アナログな情報」の処理を担当しているのです。
 
額のところには、脳の最高次の機能を担っている「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)があります。前頭葉には、発想したり、計画したり、工夫したり、注意を集中したり、注意を分配したりといったいろいろな働きが詰まっているだけでなくて、もう一つ、脳全体の司令塔の役割という大事な働きがあります。「前頭葉」は、運動の脳、左脳、右脳を統括していて、状況の判断のもとに、それぞれが勝手に働かないようコントロールする、脳全体の司令塔の働きをしているのです。
      
認知症の「症状」は、前頭葉を含む「脳の働き具合」(脳の機能レベル)の衰えとその結果(アウト・プット)なのです。脳の機能が全般的に正常レベルであれば、認知症の症状は出てきません。脳の機能が異常なレベルであれば、認知症の症状が出てくるのです。但し、全ての意識的な行為は、コントロールタワーである「前頭葉」の機能レベルの影響を受けるので、最高次機能の前頭葉だけが正常なレベルでなくなり、左脳、右脳及び運動の脳が正常レベルであっても、アウトプットである行為のレベルは正常レベルではなくなり、認知症の症状が発現してくるのです。「DSN-4」の基準が正しいと信じ込んでいる認知症の専門家達は、この点に気づいていないのです。
 
食事をしたばかりなのにそのことさえ忘れてしまう(思い出せない)「重度の記憶障害」の症状を呈してくるようになる(これは、「前頭葉」がほとんど機能しなくなる「重度認知症」の段階の症状)はるかに前の段階で、左脳や右脳の働きは正常レベルでも「前頭葉」の働きが異常なレベルになった段階で、「アルツハイマー型認知症」はすでに始まっているのです(これが、「軽度認知症の段階」)。
      
「脳の機能が全般的に異常」という要件を「前頭葉の機能が異常」という要件に変更するとともに、その段階で発現する「特有の症状」とリンクさせて判定できる診断基準に変えてやらないと、認知症の最初の段階で「回復容易」な段階である「軽度認知症」(小ボケ)を見落としてしまうことになるのです。従って、脳の機能がどのレベルにあるのか及びそのレベルであればどのような症状が出てくるのか、言い換えれば「脳の機能レベル並びに脳の機能レベルとリンクした特有の症状」を判定基準として、診断することが必要となるのです。医療機関が良く使用する「CT」や「MRI」等の機器では脳の形しか計測できないため、費用が高価なのにこうした判定はできないのです。唯一つ可能で有効なのが、「二段階方式」のような費用が極めて安い「神経心理機能テスト」の活用なのです。(CTやMRI使用の問題点については、ここをクリックしてください
       
「アルツハイマー型認知症」であるかどうかの診断(判定)や、症状の程度の判定並びに「アルツハイマー型認知症」の原因及び回復可能な早期の段階を見つけるには、「症状と脳の働き具合」との関係を基礎とすることが不可欠になります。世間では、脳の委縮の度合いや重度の「記憶障害」を含む重い症状から「アルツハイマー型認知症」の診断を行っていて、回復困難な末期段階の「重度認知症」(「大ボケ」)を見つけているだけなのです。これでは、せっかく見つけても手遅れ、「アルツハイマー型認知症は、原因も分からないし、治らない病気」にされてしまうのです。
       
最近、「軽度認知障害」という概念が専門家たちから提起されてきていますが、その問題点については、前回(N-47)で指摘した通りです。私達の「二段階方式」では、極めて多数に上る「脳の働き具合と段階ごとの特有な症状との関係」のデータの分析から、「アルツハイマー型認知症」の判定、特に回復可能な早期の段階である「軽度認知症」(小ボケ及び「中等度認知症」(中ボケ)を見つけることができるのです。

認知症が専門の精神科医は、認知症の患者は脳が全般的に正常に機能しなくなった結果として、「社会生活」や「家庭生活」や「セルフケア」に支障が出てくる病気を言うとしながら、「症状」については回復困難な末期段階の「重度認知症」(大ボケ)の症状だけを取り上げているのです。「社会生活」に支障が出てくる段階と「セルフケア」に支障が出てくる段階とでは、「脳の機能レベル」も「症状の程度」も全く異なる(次元が異なると言える程の差がある)のに、そのことにさえ気づいていないのです。テレビの番組で、30代や40代のお笑い芸人たちの「物忘れの症状」を取り上げて、「アルツハイマー型認知症」の発病の危険度をうんぬんする名医と言われる人の発言には、驚くばかりです。(「物忘れ」については、ここをクリックしてください

「意識的な行動」は、脳の司令塔の「前頭葉」が左脳や右脳や運動の脳と協働しつつ、それらをコントロールして実行されています。私達が提唱している「二段階方式」では、認知症のレベルは、前頭葉を含む脳の働き具合(脳の機能レベル)とそれにリンクした特有の症状との関係で厳密に規定されており、「三つの段階」に区分します。区分するレベルは、軽度なレベルから順番に社会生活に支障が出てくる「軽度認知症」(小ボケ)、家庭生活に支障が出てくる「中等度認知症」(中ボケ)、セルフケアに支障が出てくる「重度認知症」(大ボケ)となります。回復の可能性から区分すれば、「小ボケ」は回復容易であり、「中ボケ」は回復可能であり、「大ボケ」は回復困難なのです。 (ここをクリックしてください)                

 

上の図は、「前頭葉」によるコントロールの下で協働しながら働く「脳の働き」の衰え方を、「二段階方式」に基づく「神経心理機能テスト」を使って調べた結果を示しています。「社会生活」が支障なくできていた脳の働きが、ナイナイ尽くしの単調な生活の継続により老化が加速されることで、正常な老化の域を超えて加速度的に脳の機能の衰えが速まっていくとき、「衰え方の順序がある」のです。「社会生活」に支障が出てきて、「家庭生活」に支障が出てきて、「セルフケア」に支障が出てくる原因である「脳の機能の衰え方に順序がある」こと及び脳の機能の衰えの段階ごとに「特有の症状がある」ことがが分かるのです。

脳全体の司令塔の役割をしている前頭葉が先に衰えていきます。次いで、前頭葉と相互に情報のやり取りをしている左脳と右脳が衰えていくのです。

 さらにもうひとつ重要なことがあります。前頭葉の働きが衰えてきて「異常なレベル」になっている人達、言い換えると「アルツハイマー型認知症」の症状を示している人達は、脳の働き具合とそれに対応した特有な症状のレベルから区分すると、軽いほうから「小ボケ」(社会生活に支障)、「中ボケ」(家庭生活に支障)、「大ボケ」(セルフケアに支障)の「三つの段階」に区分されるのです。早期の段階の「小ボケ」と「中ボケ」は回復可能なのですが、末期段階の「大ボケ」は回復困難なのです。 

注)本著作物(このブログA-48に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

         エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

      脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

 

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介護及び介護予防は、何を基準に考えるのか  Q/A Room (Aー47)

2012-06-21 | 認知症に対する正しい知識のQ&A

Q: 私は、デイサービスの施設の経営者です。施設に通所されているお年寄りの中には、「正常」者もいれば「軽度認知障害」の方もいれば「アルツハイマー型認知症」の方もいらっしゃいます。その方たちへの「介護の対応」及び「介護の予防」の「テーマ」や対応の仕方或いは実施の内容を適切にするための差別化をするには、何を「基準」にしてどのように考えたら良いのでしょうか。

             

A:私たち人間は、脳が考えるところに従い行動しているのです。特に、脳全体の司令塔である「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)の働き及びそのレベルが極めて重要であり、その点が前頭葉を持たない人間以外の動物とは異次元のレベルの行動となって表れるのです。アルツハイマー型認知症の原因を解明するための研究、或いは認知症の回復に効果がある薬の開発のための研究に日夜励んでいる人達がいます。その人達は、サルよりもはるかに脳の機能が劣る「ラット」を使って、迷路の中を行き来させて餌を探させることにより、「記憶」が良くなる効果があったかどうかを基準にして評価しているという報道をよく見かけます。

「ラット」には、「前頭葉」はありません。こうした人達は、記憶を含む「認知」に「前頭葉」が極めて重要で不可欠な役割を担っていることに気づいていないか、或いはそのことを見落としているのです。末期段階の「重度認知症」の段階にあった「アルツハイマー型認知症」の患者の「解剖所見」を基礎とする従来の発想を転換して、「前頭葉」が支配している「認知の程度と態様」という視点を持たない限り、アルツハイマー型認知症の原因解明に到達することはないでしょう。治療薬の研究については、飲むだけでアルツハイマー型認知症が治るような薬の開発はありえないと考える根拠については、このブログで既に指摘している通りです。

        

状況を判断して、その状況に即したテーマを発案し、起きるべき結果についていくつかのパターンをシミュレーションし、実行した時の予測される結果を評価機能に基づき評価した上で、最終的な実行内容を選択決定し、脳の各部に指令を出す。これが司令塔である「前頭葉」の働きなのです。これらは全て脳の「認知機能」の発現の「態様」であり、且つ実際の行為や行動の場面では、そうした「認知機能」が発現している「程度」が重要になるのです。私達の意識的な行為や行動は、全てこのメカニズムの下で実行されているのです。

       

「記憶」は、前頭葉のいろいろな機能を発揮する上で必要不可欠ではあるが、その「手段」としての機能にすぎないのです。「意識的な行為」を支配している主たる機能は、あくまで「前頭葉」であり、「記憶」は従たる機能(手足)にすぎないのです。アルツハイマー型認知症の原因を解明するには、「前頭葉」が働いているメカニズムとその働き具合とに注目し、その機能レベルを「神経心理機能テスト」で計測することが不可欠になるのです。「前頭葉の機能障害」を「アルツハイマー型認知症」判定の第一要件とすべきなのに、「記憶の障害」を第一の要件とする「DSM-Ⅳ」の診断基準には、この点からみても重大な誤りがあると言わざるを得ないのです。これでは回復困難な末期段階の重度認知症(「大ボケ」)しか見つけることが出来ず、回復可能な早期の段階(「小ボケ」及び「中ボケ」)を見落としてしまうことになるのです。「前頭葉」については、ここをクリックしてください)。

「認知症」の専門家達も薬の開発に従事している人達も、「前頭葉」の中核的な機能でありその三本柱をなす「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」が「記憶」の対象範囲及びその「程度」と「態様」と不可分の関係にあることに気づいていないのです。食欲に基づいて餌を探す「ラット」の行動に発現する程度態様の記憶と、脳の司令塔の「前頭葉」の働きに基づく人間の行動に発現する程度態様の記憶とは「異次元」のものなのだと言うことに早く気づいて欲しいと願うのです。「記憶については」、ここをクリックしてください)。

           

「正常」者ということは、意識的に何かをしようとする時に不可欠の脳の機能である「認知機能」の働き具合(レベル)が正常だと言うことなのです。「軽度認知障害」の方も、「アルツハイマー型認知症」の方も、どちらも「認知機能の障害」が基本にあり、正常に働いていないのです。問題は、「認知機能の働き具合」がどの程度なのかにあるのです。意識的に何らかの「テーマ」を実行しようとする際に働く脳の働き具合言い換えれば脳の「各認知機能の働き具合」の相乗効果としてのアウト・プットが行為(或いは症状)として及びその程度、態様として発現してくるものなのです。逆に、「症状」は程度や態様が様々なので、「症状」から「認知機能の働き具合」を的確に測ることはできないのです。

頭のてっぺんの所には、身体を動かす指令を出す「運動の脳」があります。 脳の後ろの左側部分には、言葉や計算や論理や場合分けなど「デジタルな情報」を処理している「左脳」があります。 脳の後ろの右側部分には、色や形や空間や感情など「アナログな情報」を処理している「右脳」があります。額のところには、脳全体の司令塔の働きをしている「前頭葉」があります。(ここをクリックしてください

              

私たちが意識的に何かのテーマを実行しようとするとき、どのようなテーマをどのように実行するか、全ては司令塔の「前頭葉」が周りの状況を判断して、シミュレーションしたうえで決定し、指令を出しているのです。その「前頭葉」には、発想したり、計画したり、工夫したり、推理やら洞察をしたりするための様々な働きが詰まっています。更に、自分の置かれている状況を判断し、実行テーマの内容や実行の仕方を種々ケースワークした上で、最終的な実行内容を選択し決定するために必要な、人間だけに特有の「評価の物差し」という大事な機能があります。

 これが、意識的な行為における脳の働き方の全体像なのです。言い換えれば、運動の脳、左脳、右脳という三頭建ての馬車をあやつる御者の役割をしているのが、「前頭葉」なのです。 三頭の馬を十分に働かせられるのも、不十分にしか働かせられないのも、前頭葉の働き次第ということなのです。「前頭葉」を含む脳の機能レベルとそれにリンクした行為や症状を的確に測ることが差別化を実行する上で不可欠になります。それらを的確に計測できるのは、CTでもMRIでもなくて、私達が開発した「神経心理機能テスト」を中心とした「二段階方式」の手技なのです。

               

 脳の働き(「認知機能」)が異常なレベルに衰えてきて、そのために社会生活や、家庭生活やセルフ・ケアに支障が起きてくるのが、「アルツハイマー型認知症」という病気なのですが、精神科医が「認知症」と診断するときは、私達の区分で言う「重度認知症」(大ボケ)のレベルだと言うことに注意してください。大ボケのレベルにまで脳の機能(「認知機能」)が衰えてきていると、「中ボケ」や「小ボケ」或いは正常レベルへの回復は困難であり、「大ボケ」の中での更なる重症化を遅らせることだけが可能な目標となるのです。

「軽度認知障害」の基準を提唱する人達によると、それは正常と「認知症」の中間に位置付けられています。「認知機能」の働き具合が正常レベルではないとされているのですが、「認知症」のレベルというほどには衰えていないということなのです但し、精神科医の言う「認知症」のレベルとは、回復困難な「重度認知症」のレベルのことなのです。従って、「軽度認知障害」の基準は極めて幅広く且つ定義自体があいまいであり、対象とされている人達は「正常」と「重度認知症」(大ボケ)との中間に位置することになります。それらの中」には、「アルツハイマー型認知症」の回復可能な早期の段階、私達の区分で言う「軽度認知症」(小ボケ)及び「中等度認知症」(中ボケ)に相当するレベルの人達も含まれることになります。

      

「介護」及び「介護の予防」の中心となる脳を活性化する「テーマ」の遂行による効果を最大限にあげるには、通所施設での「テーマ」の実行だけでなく、在宅での「テーマ」の実行も重要です。「テーマ」の実行により脳を活性化させるには、実行する意欲がわき、実行結果から喜びや感動或いは生き甲斐が得られ、継続的な実行目標が設定できるような「テーマ」であることが重要です。それには、右脳と運動の脳をしっかり使う「テーマ」であることがキーとなります。施設で良く取り上げられている、「一桁の簡単な足し算や引き算」をしたり、「平仮名で書かれた文を音読」するだけの「テーマ」では、脳を活性化する効果は余り期待できないのです。「前頭葉」の三本柱である、「意欲」と「注意の集中力」と「注意の分配力」とが向上してこない限り、「認知機能」の働き具合(レベル)は向上してこないからです。

私達の「二段階方式」では、アルツハイマー型認知症は、三つの段階に区分されます。「小ボケ」も「中ボケ」も「大ボケ」も全て「前頭葉」を含む「脳の機能レベル」とそれにリンクした症状(それぞれのレベルに特有の、限定された症状群)で規定された基準に従い判定されます。更には、脳を活性化する「テーマ」の実行結果について、「脳の機能レベル」及び「症状の変化の度合い」を的確に評価できる(改善、維持又は悪化)ので、その「脳の機能レベル」に合致した的確な「対応」と脳を活性化させるための適切な「テーマ」の設定及び実行が可能になります。また、それらのデータは、こうした目的の為に特別に開発されたソフト(「エイジング」)を活用することにより、個別及び集団別に時系列管理が出来ます。

       

「介護」或いは「介護の予防」という目的を遂行する上で、「脳を活性化」させることが不可欠となります。脳を活性化させるには、その人の「脳の機能レベル」に見合った「テーマ」(内容、程度、態様)を実行させることが必要です。「正常」、「正常下限」、「小ボケ」、「中ボケ」(前期)、「中ボケ」(後期)及び「大ボケ」に区分される、それぞれの「脳の機能レベル」に見合った「テーマ」であることが大前提になるのです。「脳の機能レベル」に見合った「テーマ」でないと効果が薄れてしまうか、実行すること自体が難しくなるからです。

正常者は、「小ボケ」の人達に適した内容(程度、態様)の「テーマ」では、レベルが低すぎて実行する意欲が出てきません。実行しても達成感が得られません。その一方で、「小ボケ」はテーマの目的を理解して、自分なりの工夫をすることが出来ますが、「中ボケ」のレベルになると、自分なりの工夫を期待することはできません。「小ボケ」と「中ボケ」とは、脳の機能レベルが違いすぎて、一緒に同一内容の「テーマ」を実行させるのは意味がありません。

また、同じ「中ボケ」の中でも、「中ボケ」(前期)のレベル(MMSの換算値で20点以上のレベル)であれば、「集団に設定企画されたテーマ」を遂行できるのですが、「中ボケ」(後期)のレベル(MMSの換算値で19点以下のレベル)になると、「個別に設定企画されたテーマ」でないと遂行できなくなります。勿論のこと、「大ボケ」レベルの人に対しては、中ボケよりもさらに達成目標のレベルを下げた「テーマ」を個別に設定し実行させることが必要となります。「小ボケ」については、ここをクリックしてください)。(「中ボケ」については、ここをクリックしてください)。(「大ボケ」については、ここをクリックしてください

       

(コーヒー・ブレイク) 「アルツハイマー型認知症」の人に適切な介護をするにも、「軽度認知障害」の人が精神科医が言う認知症のレベル(この場合は、「大ボケ」)に脳の機能が衰えていくのを予防するにも、「脳の働きという物差し」が不可欠になるということなのです。その場合、脳全体の司令塔の働きをしている「前頭葉」を含む脳の機能レベル(働き具合)を測ることが不可欠になるのです。但し、脳の機能レベルを測るだけでは不十分です。「軽度認知障害」の人であれ、アルツハイマー型認知症の人であれ、脳の機能レベルにリンクした「症状」という視点と物差しを持つことによって初めて、適切な「介護」或いは「介護の予防」を実施することが出来るのです。

 注)本著作物(このブログA-47に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

        エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

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物忘れは認知症の始まりなのか Q/A Room(A-46)

2012-06-14 | 認知症に対する正しい知識のQ&A

Q:70歳になる父がたびたび「物忘れ」をするので、病院に連れて行って診てもらったところ、診察を受けた精神科医から「軽度認知障害」だと言われました。認知症の前駆的なものであり、6~7年後には「アルツハイマー型認知症」を発病する可能性が高いと言われました。アルツハイマー型認知症は、発病の原因がわかっていないので、打つ手はないということでした。

        

A: 認知機能が軽度に低下した状態を「軽度認知障害」(Mild Cognitive Impairment : MCI)と呼び、認知症でも正常でもなく、「認知症」への「前駆的な状態」を言うものと定義されています。「脳の機能レベル」との関係の定義ではなくて、「症状」を基準とした診断基準であり、然も「記憶に関する訴え」を要件にしていたり、或いは、「客観的な認知障害があること」を要件にしているのです。

客観的な認知障害と言われても、例えば「物忘れ」を例に取り上げればわかるように、「脳の働き」との関係で規定され且つその「程度」が限定されていないのでは、言葉の遊びに過ぎないのです。意識的に行われる行為の世界をテーマとして取り上げる以上、「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)の機能及びその機能レベルとの関係が定義され且つその発現としての症状が程度と態様とを限定して定義されていない限り、感覚的な内容にすぎず、「客観的な基準」として使用できない欠陥があると言わざるを得ないのです。

       

私達は、専門家たちが認知症ではないとして見逃している「アルツハイマー型認知症」の早期の段階、私達の区分で言う「軽度認知症」(小ボケ)及び中等度認知症(中ボケ)について、「前頭葉」を含む脳の働きとその機能レベルとの関係及びそれぞれのレベルで「特徴的」(限定的)に発現する「症状」との両面からこれらを定義しています。このような定義がなされて初めて、「客観的な指標」となりうるのです。(「小ボケ」については、ここをクリックしてください)。(「中ボケ」については、ここをクリックしてください)。


       

 「MCI」などと言われるといかにも専門的な響きがありますが、「認知機能の軽度な低下」を示す客観的な基準もありません。脳の機能という面から言うと、前頭葉を全体の司令塔として、左脳、運動の脳及び右脳との共同により「認知」が行われるのです。状況を判断し、テーマを企画し、実行する内容を組み立て、結果をシミュレーションし、必要な修正を加えて、最終的な内容を決定し、実行の指令をする。これらはすべて脳の司令塔の「前頭葉」の重要な機能なのですが、それぞれの工程には、「認知機能」が常になくてはならない中核の機能として係わっているのです。

意識的な行為における認知機能の発現(内心の意思並びに行為及び症状)には極めて多くの種類と程度と態様があるので、問題とされる「認知機能の軽度な低下」がどの工程で起きるどの種類のもので且つどの程度のものなのか或いはどのような態様のものなのかを客観的な基準で定義することが出来ていない(限定できていない)のです。従って、「診断基準」と言いながら、脳の機能面からでなくて機能レベルのアウトプットである症状に頼ったものになってしまっているのです。「軽度認知障害」の定義のレベル自体が、「診断基準」と言えるような程度には程遠いものというしかない内容のものなのです。

        

その上「軽度認知障害」では、「アルツハイマー型認知症」への移行率が取り上げられていて、10%から15%の数値が取りざたされています。「アルツハイマー型認知症」の発病原因も不明であるとしつつ、「アルツハイマー型認知症」への移行率を数値化する主張には賛成できません。

「軽度認知障害」以外の要因の影響があるのかないのか、あるとしたらどの程度の影響があるのかも分析していないのでは、そもそも「軽度認知障害」と呼ばれる病状から「アルツハイマー型認知症」の発病に至る「因果関係」そのものが不明確と言わざるを得ないからです。

        

「アルツハイマー型認知症」の診断基準自体が種々の問題を抱えていることについては、このブログでこれまでに詳しく説明してきたとおりです。「軽度認知障害」の基準についても、診断基準というには、お粗末すぎる内容と言わざるを得ないのです。「アルツハイマー型認知症」の診断基準と同様に「軽度認知障害」の診断基準も、意識的な行為における脳全体のの司令塔の働きをしている「前頭葉」の機能及びその機能レベルとの関係が見過ごされているところに最大の欠陥があるのです。

(コーヒー・ブレイク) 「物忘れ」と「アルツハイマー型認知症」の発病との間には、そもそも「因果関係」は存在しないのです。(ここをクリックしてください)。

 注)本著作物(このブログA-46に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

        エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

      脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

 

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アルツハイマー型認知症の診断と基準 Q/ARoom(A-45)

2012-06-07 | Q/A 認知症の種類と比率

Q:76歳になる義父が、「アルツハイマー型認知症」との診断を受けました。その時、診察を担当された精神科のお医者さんが、「アルツハイマー型認知症」という病気は、原因もわからないし治すこともできないので、家族で介護していくしかないと言われました。私の両親も年をとってきているし、「アルツハイマー型認知症」には効く薬もないというテレビの報道を聞き、介護にとても不安です。    

A:「アルツハイマー型認知症」の診断基準としては、米国の精神医学会が定めた基準である「DSM-4」の規定が、世界で一番権威があるとされています。その基準のもとでは、第一の要件が「記憶の障害」が認められることとされています。第二の要件は、失語(左脳の機能障害)、失行(運動の脳の機能障害)、失認(右脳の機能障害)、又は実行機能の障害(前頭葉の機能障害)のいずれかが認められることとされています。

        

第二の要件とされている「失語」や「失行」や「失認」は、回復可能な早期の段階(軽度認知症「小ボケ」及び中等度認知症「中ボケ」)では出てこない重い症状なのです。回復困難な末期段階の「重度認知症」(大ボケ)の段階になって且つMMSの得点が10点以下のレベルになって初めて出てくる、とても「重い症状」なのです。

一方で、第一の要件とされている「記憶の障害」について程度の規定がない(或いは、前頭葉などの脳との関係が規定されていない)ことに問題があるのです。30代の後半にもなると、脳の機能が正常レベルであっても普通に出てくる「軽い症状」も「記憶の障害」なのです。それは、正常者に見られる、いわゆる「物忘れ」の症状です。この症状は、加齢により頻度が増えてくる「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)の軽度の機能障害による「とても軽いもの」なのです。

       

そのため、第一の要件と第二の要件とを同時に充足するには、言い換えると第一の要件と第二の要件との整合性を考えると、第一の要件に言う「記憶の障害」は「失語」や「失行」や「失認」などの症状が確認できる「重度認知症」のレベルで初めて出てくる記憶障害、直前に起きたことさえ覚えていないような、「重度の記憶障害」になってしまうのです。この記憶の症状は、「前頭葉」がほとんど機能していないために「記銘」することさえ極めて困難な機能レベルで出てくる「とても重いもの」なのです。

「重度の記憶障害」を含む「重度の認知症」の症状を表出している源である脳の働きを考えると、「前頭葉」は殆ど機能していない上に、「左脳」も「運動の脳」も「右脳」もわずかに働く程度の機能しか残っていない段階になるのです。その脳機能レベルのアウト・プットとして、「失語」や「失行」や「失認」の症状が出ているのです。認知症の専門家である精神科医が、「DSM-4」の基準に従って診断すると、「前頭葉」は殆ど機能していなくて、「左脳」や「運動の脳」や「右脳」がわずかな働きしか残っていないレベル、私達の区分で言えば、「重度認知症」(大ボケ)の段階にならないと「アルツハイマー型認知症」とは判定してはならないということになる訳です。ここまで脳の機能が衰えてきていると、せっかく見つけても、「治らない病気」になってしまうのです。(ここをクリックしてください

      

世界的に権威があるとされる「DSM-4」の指針に基づいて「アルツハイマー型認知症」の診断を行うのが一般的なのです。そうすると、「重度の記憶障害」と「重度認知症」の後期に出てくる重い症状である「失語」や「失行」や「失認」を基準に判定することとなることが理解されたでしょうか。その結果、「アルツハイマー型認知症」は、回復困難な末期段階、私達の区分で言う「重度認知症」(大ボケ)の段階でしか見つけることが出来ないことになるのです。

指標が間違っている(重度の段階しか見つけられないものになっている)ために、見つけるのが遅すぎるのです。この段階でせっかく見つけても手遅れ、ここまで脳の機能が衰えてきていると、回復(正常レベルへの脳機能の回復)させるのは困難なのです。認知症の専門家とされる精神科医は、「DSM-4」の規定の問題点に早く気づいて欲しいと思うのです。(ここをクリックしてください

       

アルツハイマー型認知症は、「治らない病気」ではないのです。早期の段階で見つければ治せるのです。但し、世界で最も権威があるとされる「DSMー4」の指針に基づいて診断している限り、「アルツハイマー型認知症」は、原因も分からないし治らない病気ということにされてしまうのです。「DSM-4」は、改訂が検討されていると聞きます。その重大な誤りに早く気づいて、回復可能な早期の段階が見つけられるような、正しい定義をしてほしいと思うのです。       

(コーヒー・ブレイク)「アルツハイマー型認知症」の最初の段階である、「軽度認知症」(小ボケ)の段階では、「前頭葉」の機能が異常なレベルにあるだけで、「左脳」も「運動の脳」も「右脳」も正常レベルにあるのです。従って、失語(左脳の機能障害)の症状も、失行(運動の脳の機能障害)の症状も、失認(右脳の機能障害)の症状も出てこないのです。この段階で認められるのは実行機能の障害(前頭葉の機能障害)の症状だけなのです。(ここをクリックしてください

注)本著作物(このブログA-45に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

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認知症の主な種類とその比率 Q/A Room(A-44)

2012-06-04 | Q/A 認知症の種類と比率

Q:わが国では、認知症のお年寄りがどんどん増えてきているそうです。厚生労働省の予測でも、今後さらに高齢化が進む中で、認知症のお年寄りの数も更に増加していくと予測されているようです。少子高齢化が進む中で、認知症のお年寄りがどんどん増加していくと言われると、介護保険制度が立ち行くのか不安になってくるのですが。

 A:一口に認知症と言っても、いろんな種類があるのです。発病の原因(メカニズム)も色々ですし、治せるものもあれば、治せないものもあるのです。然も、認知症全体に占める割合も全く異なるのです。テレビの放送でいろいろな種類の認知症を重要度の区分もせず並列に取り上げるので、余計に訳が分からなくなるのでしょう。但し、問題は、それほど難しくはないのです。ただ単に怖がるだけでなく、認知症に関する正しい知識を持って、適切な対応をしていただければ少しも怖がることはありません。

      

テレビで取り上げられることが多いのが、認知症の代名詞のように言われる「アルツハイマー病」です。「アルツハイマー病」は、30代から50代までの若い年齢を対象に発病するので、厳密な呼称では「早発型アルツハイマー病」(或いは、「若年性アルツハイマー病」)とも言います。発病の原因は遺伝子の異常で、特定の遺伝子に生まれつき異常がある人だけが、このタイプの認知症を発病します。    

働き盛りの「若い年齢」で発病し、僅か2~3年で寝たきり状態になるほど、症状の進行が極めて急激です。「アルツハイマー病」は、現代の医療技術では、治すことも予防することも出来ません。幸いなことに、「アルツハイマー病」が認知症全体に占める割合は、1%程度です。一般の皆さんの場合は、この本来の「アルツハイマー」(厳密な呼称では、「若年性アルツハイマー病」)の人にお目にかかることは極めてまれなはずです。

       

「二次性認知症」は、いろいろな原因で発病しますが、主として脳腫瘍や正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫等の病気が原因で認知症を引き起こします。早期に発見し適切な手術が行われれば、回復することが出来ます。「二次性認知症」が、認知症全体に占める割合は、2%程度です。

「脳血管性認知症」は、脳出血や脳梗塞など、脳を養う血管からの出血や血管の詰まりが原因となって必要な量の血液が脳に送られなくなり、脳の機能が全般的に低下したため認知症を引き起こすものを言います。「脳血管性認知症」の数も少なくて、認知症全体に占める割合は多く見積もっても5%程度です。「脳血管性認知症」の割合が15%程度と主張する人達がいますが、「アルツハイマー型認知症」との見分けが付けられなくて混同しているのです。何年もかけて徐々に認知症の症状があらわれてくるような「脳血管性認知症」はないのです(このタイプの「脳血管性認知症」が10%を占めるとその人達は主張しています)。

その他にも種類がありますが、量的には取り上げるほどのものではありません。

       

認知症の大多数、90%以上を占めるのが「アルツハイマー型認知症」です。「アルツハイマー型認知症」は、主に60歳以降の高齢者を対象に発病するので、厳密な呼称では「晩発型アルツハイマー病」、或いは「老年性アルツハイマー病」とも呼ばれます。皆さんが普段お目にかかるのは、実は殆どがこのタイプの認知症なのです。「アルツハイマー型認知症」は、60代より70代、70代より80代、80代より90代と高齢になるほど発病する人の年代ごとの割合が多くなっていきます。

その「アルツハイマー型認知症」については、原因も分からないし、治すこともできないと言うのが認知症の専門家たちの主張です。このブログで説明してきたように、「重度の記憶障害」の医療指針に基づいて見つけるので、回復困難な「重度認知症」の段階でしか見つけることが出来ないだけなのです。「アルツハイマー型認知症」は、廃用性の「生活習慣病」であり、早期の段階(「軽度認知症」及び「中等度認知症」)で見つけると治す(脳の機能を正常レベルに「回復」させる)ことが出来るし、脳を活性化する「生活習慣」を日常生活の中に組み込むことで「予防」することもできるのです。「アルツハイマー型認知症」も一般の病気と同じなのです。予防することができるし、早期発見による早期治療が肝心なのです。

       

予防対策もなく、回復可能な早期段階(軽度認知症「小ボケ」及び中等度認知症「中ボケ」)の発見もせず、回復困難な末期段階の「重度認知症」(大ボケ)の段階でしか見つけないで(何も手を打たないで)放置されているのが現状です。このままでいけば、「アルツハイマー型認知症」のお年寄りが増え続けるとの見通しの下、「介護保険」制度の財政面からの破たんが目に見えてくるのです。施設や病院での介護から「在宅での介護」に軸足を移す程度の施策では、この状況を解決することは困難です。「アルツハイマー型認知症」の早期診断(発見)と回復並びに予防のシステムをどのように構築し継続的に実践できるかが、今後のわが国の「介護保険」制度の維持及び適切な運営を確保する上で極めて重要なテーマとなるのです。

(コーヒー・ブレイク) 「アルツハイマー病」と「アルツハイマー型認知症」とをまとめて「アルツハイマー病」と呼ぶ人達がいますが、世間一般の人達に誤解と不必要な恐怖を生むだけです。まさしく「百害あって、一利なし」だと思うのです。両者は解剖所見ベースでは似ていても、発病の原因も、発病のメカニズムも、発病後の症状の進行の度合いも、回復の可能性も全て異なるものなのです。それぞれの呼称を「若年性アルツハイマー病」、「アルツハイマー型認知症」(或いは、「老年性アルツハイマー病」)と使い分けるべきだと思います。

注)本著作物(このブログA-44に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

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