認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

アルツハイマー型認知症の「脳の働き」と「症状」との関係 Q/A Room (A-48)

2012-06-28 | 認知症に対する正しい知識のQ&A
Q:私達夫婦には子供がいない上に、来年には揃って古希を迎えます。年をとってきて一番恐ろしいのは、認知症のことです。認知症の大多数を占める「アルツハイマー型認知症」は、「脳の働き」が衰えることでいろいろな「症状」が出てくる病気と聞いています。正常でない「脳の働き」とはどんなことを言っていて、そのレベルの脳の機能と「症状」との関係はどのようになっているのでしょうか。
       
A:先ず、脳の構造について簡単に概観を述べておきましょう。脳は、大きく4つの機構から成り立っているのです。事故や脳卒中などにより脳が損傷や障害を受けた人をたくさん調べると、脳は場所によって働きが異なり(機構ごとに役割が異なり)、「機能の分担」をしていることが分かります。
 
頭のてっぺんの所には、運動の脳」があります。脳卒中で半身麻痺になる人がいます。運動の脳の左の部分が壊れると右半身麻痺が起き、右の部分が壊れると左半身麻痺が起きます。「運動の脳」は体を動かす働きをしているのです。
 
脳の後ろの左側部分には、勉強や仕事等をする為の左脳」があります。左脳が障害を受けると、論理を操れなくなり、言葉が出てこなくなり、計算もできなくなります。「左脳」は「言葉の脳」、或いは「仕事の脳」とも言われ、言葉や論理や計算といった「デジタルな情報」の処理を担当しているのです。
       
脳の後ろの右側部分には、趣味や遊びや人付きあい等を楽しむ為の右脳」があります。右脳が障害を受けると、色や形や空間の認知ができなくなります。「右脳」は「感性の脳」、或いは「趣味や遊びや人付き合いの脳」とも言われ、色や形や音、感情や感覚といった「アナログな情報」の処理を担当しているのです。
 
額のところには、脳の最高次の機能を担っている「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)があります。前頭葉には、発想したり、計画したり、工夫したり、注意を集中したり、注意を分配したりといったいろいろな働きが詰まっているだけでなくて、もう一つ、脳全体の司令塔の役割という大事な働きがあります。「前頭葉」は、運動の脳、左脳、右脳を統括していて、状況の判断のもとに、それぞれが勝手に働かないようコントロールする、脳全体の司令塔の働きをしているのです。
      
認知症の「症状」は、前頭葉を含む「脳の働き具合」(脳の機能レベル)の衰えとその結果(アウト・プット)なのです。脳の機能が全般的に正常レベルであれば、認知症の症状は出てきません。脳の機能が異常なレベルであれば、認知症の症状が出てくるのです。但し、全ての意識的な行為は、コントロールタワーである「前頭葉」の機能レベルの影響を受けるので、最高次機能の前頭葉だけが正常なレベルでなくなり、左脳、右脳及び運動の脳が正常レベルであっても、アウトプットである行為のレベルは正常レベルではなくなり、認知症の症状が発現してくるのです。「DSN-4」の基準が正しいと信じ込んでいる認知症の専門家達は、この点に気づいていないのです。
 
食事をしたばかりなのにそのことさえ忘れてしまう(思い出せない)「重度の記憶障害」の症状を呈してくるようになる(これは、「前頭葉」がほとんど機能しなくなる「重度認知症」の段階の症状)はるかに前の段階で、左脳や右脳の働きは正常レベルでも「前頭葉」の働きが異常なレベルになった段階で、「アルツハイマー型認知症」はすでに始まっているのです(これが、「軽度認知症の段階」)。
      
「脳の機能が全般的に異常」という要件を「前頭葉の機能が異常」という要件に変更するとともに、その段階で発現する「特有の症状」とリンクさせて判定できる診断基準に変えてやらないと、認知症の最初の段階で「回復容易」な段階である「軽度認知症」(小ボケ)を見落としてしまうことになるのです。従って、脳の機能がどのレベルにあるのか及びそのレベルであればどのような症状が出てくるのか、言い換えれば「脳の機能レベル並びに脳の機能レベルとリンクした特有の症状」を判定基準として、診断することが必要となるのです。医療機関が良く使用する「CT」や「MRI」等の機器では脳の形しか計測できないため、費用が高価なのにこうした判定はできないのです。唯一つ可能で有効なのが、「二段階方式」のような費用が極めて安い「神経心理機能テスト」の活用なのです。(CTやMRI使用の問題点については、ここをクリックしてください
       
「アルツハイマー型認知症」であるかどうかの診断(判定)や、症状の程度の判定並びに「アルツハイマー型認知症」の原因及び回復可能な早期の段階を見つけるには、「症状と脳の働き具合」との関係を基礎とすることが不可欠になります。世間では、脳の委縮の度合いや重度の「記憶障害」を含む重い症状から「アルツハイマー型認知症」の診断を行っていて、回復困難な末期段階の「重度認知症」(「大ボケ」)を見つけているだけなのです。これでは、せっかく見つけても手遅れ、「アルツハイマー型認知症は、原因も分からないし、治らない病気」にされてしまうのです。
       
最近、「軽度認知障害」という概念が専門家たちから提起されてきていますが、その問題点については、前回(N-47)で指摘した通りです。私達の「二段階方式」では、極めて多数に上る「脳の働き具合と段階ごとの特有な症状との関係」のデータの分析から、「アルツハイマー型認知症」の判定、特に回復可能な早期の段階である「軽度認知症」(小ボケ及び「中等度認知症」(中ボケ)を見つけることができるのです。

認知症が専門の精神科医は、認知症の患者は脳が全般的に正常に機能しなくなった結果として、「社会生活」や「家庭生活」や「セルフケア」に支障が出てくる病気を言うとしながら、「症状」については回復困難な末期段階の「重度認知症」(大ボケ)の症状だけを取り上げているのです。「社会生活」に支障が出てくる段階と「セルフケア」に支障が出てくる段階とでは、「脳の機能レベル」も「症状の程度」も全く異なる(次元が異なると言える程の差がある)のに、そのことにさえ気づいていないのです。テレビの番組で、30代や40代のお笑い芸人たちの「物忘れの症状」を取り上げて、「アルツハイマー型認知症」の発病の危険度をうんぬんする名医と言われる人の発言には、驚くばかりです。(「物忘れ」については、ここをクリックしてください

「意識的な行動」は、脳の司令塔の「前頭葉」が左脳や右脳や運動の脳と協働しつつ、それらをコントロールして実行されています。私達が提唱している「二段階方式」では、認知症のレベルは、前頭葉を含む脳の働き具合(脳の機能レベル)とそれにリンクした特有の症状との関係で厳密に規定されており、「三つの段階」に区分します。区分するレベルは、軽度なレベルから順番に社会生活に支障が出てくる「軽度認知症」(小ボケ)、家庭生活に支障が出てくる「中等度認知症」(中ボケ)、セルフケアに支障が出てくる「重度認知症」(大ボケ)となります。回復の可能性から区分すれば、「小ボケ」は回復容易であり、「中ボケ」は回復可能であり、「大ボケ」は回復困難なのです。 (ここをクリックしてください)                

 

上の図は、「前頭葉」によるコントロールの下で協働しながら働く「脳の働き」の衰え方を、「二段階方式」に基づく「神経心理機能テスト」を使って調べた結果を示しています。「社会生活」が支障なくできていた脳の働きが、ナイナイ尽くしの単調な生活の継続により老化が加速されることで、正常な老化の域を超えて加速度的に脳の機能の衰えが速まっていくとき、「衰え方の順序がある」のです。「社会生活」に支障が出てきて、「家庭生活」に支障が出てきて、「セルフケア」に支障が出てくる原因である「脳の機能の衰え方に順序がある」こと及び脳の機能の衰えの段階ごとに「特有の症状がある」ことがが分かるのです。

脳全体の司令塔の役割をしている前頭葉が先に衰えていきます。次いで、前頭葉と相互に情報のやり取りをしている左脳と右脳が衰えていくのです。

 さらにもうひとつ重要なことがあります。前頭葉の働きが衰えてきて「異常なレベル」になっている人達、言い換えると「アルツハイマー型認知症」の症状を示している人達は、脳の働き具合とそれに対応した特有な症状のレベルから区分すると、軽いほうから「小ボケ」(社会生活に支障)、「中ボケ」(家庭生活に支障)、「大ボケ」(セルフケアに支障)の「三つの段階」に区分されるのです。早期の段階の「小ボケ」と「中ボケ」は回復可能なのですが、末期段階の「大ボケ」は回復困難なのです。 

注)本著作物(このブログA-48に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

         エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

      脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

 

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