認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

ボケ(「アルツハイマー型認知症」)は、予防できるし、治せるというのが、正しい主張なのです(C-18)

2018-12-01 | 定年後の第二の人生をどう生きるか

様々な種類が数ある認知症(「ボケ」とも言う)の内の大多数を占める『アルツハイマー型認知症』というタイプの認知症は、世界中の認知症専門の研究者達の間で『原因も分からないし、治すことも出来ないし、予防することも出来ない』と言われているんだけど、皆さんの周りにいる『お年寄り』の日々の行動をよく観察してみると分かるんです。周りの人達から見て、『第二の人生』としての社会生活や家庭生活を普通に送れていた『お年寄り』が、一晩寝たら突然、身の回りのこともできなくなり、ズボンを頭から被ったり、住んでいる家が分からなくて徘徊したり、昼と夜の区別がつかなくて夜中に騒いだり、同居している家族の顔も分からなくなったりすると思いますか。

そんなことは、絶対にないんです。その段階は、最重度の段階の症状が発現しているもの、即ち「末期の段階」の症状だから、そこまで症状が進んでしまうと(前頭葉を含む脳全体の機能レベルが低下してしまうと)確かに治すことは困難となるんです。でも、同居して一緒に生活している家族の方から、普段の状況や生活ぶりの変化を詳しく聞いてみると、最初に、「ちょっとおかしいな」と気づいたときから5年以上、時には、7~8年もかかって末期の段階にまで症状が進行していることが分かるんです。「末期の段階」の症状が出てきて、どうにも手に負えない状態になってから家族が病院に連れていくので(かつては、老人性痴呆疾患センターに選定された大病院の精神科だけが診察していたこともあり)、末期の段階の症状が発病の初期症状と誤解されてしまい、『アルツハイマー型認知症は、「原因もわからないし、治らない』という誤解が世間の常識にされてしまったのです。 私たちは、「二段階方式」と呼ぶ脳の働き具合とその結果である症状との関係がどのようになっているかを調べる方法を開発し、早くから「脳の働き」という物指しを使って、全国規模でデータの収集を実施してきました。その結果、アルツハイマー型認知症は、『第二の人生を送っているお年寄り』の「脳」の使い方とししての生活習慣」に起因する病気であることをつきとめました。北海道から九州に跨る全国452の市町村で、『アルツハイマー型認知症の早期診断による回復及び発病の予防を明確な目的とした住民参加型の「地域予防活動」の実践』を指導し、顕著な成果を挙げてきました。その経験から、「脳の使い方としての生活習慣の改善による前頭葉を含む脳全体の活性化」により、アルツハイマー型認知症の予防と早期診断による(早期段階からの)回復が可能になることを、このブログという場を借りて、皆さんに情報発信しているのです。

Ⅰ-01 認知症の種類と比率

国全体での高齢化率が25%を超えていて、40%を超える市町村も珍しくはなくなってきている我が国では、『アルツハイマー型認知症』を発病するお年よりの数がどんどん増えてきています。とは言え、ただ単に怖がるだけでなくて、アルツハイマー型認知症に対する正しい知識を持って、適切な対応をしていただきさえすれば、少しも怖がることはないのです。発病自体を予防することができるし、早期の段階で見つければ治すこともできるのですから。

ところで一口に認知症と言っても、認知症に様々な種類があるのをご存知でしょうか?発病の原因も色々ですし、治せるものもあれば、治せないものもあるのです。先ず最初に取り上げるのは、認知症の代名詞のように言われる『アルツハイマー病』。アルツハイマー病は、30歳代~50歳代の若い年齢を対象に発病し、若年性(或いは、早発性)アルツハイマー病とも言います。発病の原因は遺伝子の異常特定の遺伝子に生まれつき異常がある人だけが、このタイプの認知症を発病します。30代から50代、働き盛りの「若い年齢」で発病し、僅か数年で寝たきり状態になるほど、症状の進行が極めて急激なのです。アルツハイマー病は、現代の医療技術では、治すことも予防することも出来ません。アルツハイマー病が認知症全体に占める割合は、1%程度。家族性のものも含めて、皆さんの目に留まることは、滅多にありません。

二次性認知症』は、様々な病気が原因で発病します。例えば、脳腫瘍や水頭症、慢性硬膜下血腫等の病気が原因で認知症を引き起こします。二次性認知症が、認知症全体に占める割合は、2%程度です。このタイプの認知症も、極めて少ないものなのです。

脳血管性認知症』は、脳出血や脳梗塞など、脳を養う血管からの出血や血管の詰まりが原因となって、十分な量の血液が脳の機能部位に送られなくなるため認知症を引き起こします。脳血管性認知症の数も少なくて、認知症全体に占める割合は5%程度です。

様々な種類が数ある認知症の内の大多数、90%以上を占めるのが『アルツハイマー型認知症』です。アルツハイマー型認知症は、60歳以降の「高齢者」だけを対象に発病するので、老年性(或いは晩発性)アルツハイマー病とも呼ばれています。皆さんが普段街中で見かけるものは、殆どがこのタイプの認知症なのです。その、アルツハイマー型認知症は、60代より70代、70代より80代、80代より90代と、高齢になるほど発病する人の割合が多くなっていきます。アルツハイマー病とアルツハイマー型認知症とをまとめてアルツハイマー病と呼ぶ人達がいますが、両者は全く性質が異なるものなので注意してください。発病のメカニズムが根本的に異なり、発病後の症状の進行スピードも異なるし、回復及び予防の可能性の有無も全く異なるのです。これから先、このブログ中では、「アルツハイマー型認知症」に的を絞って、「発病のメカニズム」、「治療法」、「予防法」等について、分かりやすく、説明していきます。その鍵は、発病を惹き起こす原因である「第二の人生における脳の使い方としての生活習慣」と「それを反映した前頭葉を含む脳全体の機能レベル」にあります。

Ⅰ-02 「症状」で見つける認知症とそのレベル 

アルツハイマー型認知症は、60歳代以降のお年寄りだけ、「第二の人生」を送っている『高齢者』だけを対象にして発病します(高齢者であろうと、現職で発病することは無いのです。畑仕事であれ、裁縫仕事であれ、板前の仕事であれ、会社勤めであれ)。その上、60代より70代、70代より80代、80代より90代と年をとるほどこのタイプの認知症を発病する割合が多くなるのが特徴なのです。高齢化率が30%を超えるような町や村、高齢化率がそれほど高くない市や町でも、お年寄りが大勢集まって住んでいる地域では、アルツハイマー型認知症の症状を示すお年寄りの姿をよく見かけるようになります。

ところで、皆さんの周りで「認知症のお年寄り」のことを口にするとき、どんな症状のお年寄りを『アルツハイマー型認知症を発病した人』と言っていますか?服を自分で着られなくてズボンを頭から被る;自分の家が分からなくて徘徊して迷子になる;同居している、家族の顔も分からない;お漏らしした服を、平気で着ている。こんな症状が見られるようになると「その人はアルツハイマー型認知症を発病している」と言うのではないでしょうか。 

正確に言うと、こんな症状が出ている人は、「アルツハイマー型認知症の末期段階」の人なのです。こんな症状が出てくるもっと前の「軽い段階」があるのを、世間(専門の医師達)では見落としているだけなのです。「アルツハイマー型認知症」というタイプの認知症は、「実は、何年もかけて、症状が徐々に、段階的に進行していく」のが、もう一つの特徴なのです。最も肝心なことは、私たち人間だけに特有な意識的な世界を支配し、コントロールしていて、脳全体の司令塔の役割を担っている「前頭葉」の機能レベルを判定しない限り、回復可能な早期の段階(小ボケ及び中ボケの症状は老化現象(或いは、軽度認知障害MCI)と間違えられやすいのです。

Ⅰ-03  脳の働きという物指し

自動車事故などにより脳が障害を受けた人をたくさん調べると、脳は場所によって働きが異なり、それぞれの場所に特有の機能があることが分かります。脳のそれぞれの場所が、「機能の分担」をしていることが分かるのです。『運動の脳』は、体を動かす働きをしているのですが、左の部分が障害を受けると右半身麻痺になり、右の部分が障害を受けると左半身麻痺になります。『左脳』が障害を受けると、論理を操れなくなり、言葉が出てこなくなり、計算もできなくなります。左脳は、言葉の脳、仕事の脳とも言われ、言葉や論理や計算や場合分けといった「デジタルな情報」の処理を担当しています。『右脳』が障害を受けると、色彩や形や空間の認知が困難になります。右脳は、感情や感性の脳。趣味や遊びや人付き合いの脳とも言われ、色や形や音、感情や感覚や空間や時間といった「アナログな情報」の処理を担当しています。額のところにある『前頭葉』は、脳全体の司令塔の役割を担っています。運動の脳・左脳・右脳を統括し、それぞれが勝手に働かないよう調整し、統括し、コントロールする、脳全体の司令塔の働きをしています。『アルツハイマー型認知症』の症状は、脳の働き具合(前頭葉を含む脳全体の働き具合)の結果なのですから、発病の原因や回復させることが可能な早期の段階を見つけるには、症状と脳の働き具合との関係を見つけることが不可欠になります。世間では、死後の脳の解剖所見と症状の外観からアルツハイマー型認知症の原因を推測して、様々な仮説が主張されていますが、私達は、色々なレベルの「脳の働き具合と症状との関係」という『脳の働き具合と言う物差し』の導入と客観的な「脳機能データ」の分析から、アルツハイマー型認知症の真の原因と発病のメカニズムとを見つけたのです。「脳の働き具合」と言う物差しは、私たちが独自に開発した「二段階方式」と呼ぶ神経心理機能テストで、「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルを判定することから始まります。

Ⅰ-04 「脳の働き」で見つけるアルツハイマー型認知症とその段階的な症状のレベル 

私たちが何かのテーマを発想し、実行に移す世界、私たち人間だけに特有な世界である意識的な行為や行動、思索或いは感情の発露は、『脳全体の司令塔の役割を担う「前頭葉」が主導しつつ、左脳や右脳や運動の脳と協働して実行』されています。世界中の「認知症研究の専門家」とされる人達から、発病の原因が未だに不明とされている『アルツハイマー型認知症』は、「器質的な原因病変」が存在していないのに、私達が意識的に何かのテーマを発想し、実行しようとする際に、様々な程度での支障が出てくる病気なのです。どのレベルのことが出来ないのかで区分すると、高度なレベルから順番に、「社会生活」、「家庭生活」、「セルフケア」の3つに区分されるのです。この区分は、結論を先に言うと、「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルと厳密にリンクしているのです。更なる核心的な問題を提起すると、社会生活が支障なくできていた脳の働きが、単調な『生活習慣』が継続されることにより老化が加速される(加齢を基礎としていた脳の機能の衰えが、単調な生活習慣の継続に起因した廃用性の機能低下の進行という要因が加重されることにより速まっていく)とき、衰え方の順序があることが分かってきたのです(私たちが見つけた「MMSE下位項目の項目困難度」の指標)。

脳全体の司令塔の役割をしている前頭葉から先に衰えていきます。次いで、前頭葉と相互に情報のやり取りをしている左脳、右脳及び運動の脳がその順に衰えていくのです。もうひとつ重要なことがあります。更には、MMSEの下位項目には衰えて行く厳格な順番が存在しているのです。更にもう一つ付け加えると、廃用性の加速度的で異常な機能低下の進行により、前頭葉を含む脳全体の働きが衰えてきて異常レベルになった人達、言い換えるとアルツハイマー型認知症の症状を示している人達は、前頭葉を含む脳全体の働き具合とそれに対応した「症状のレベル」から区分すると、軽い方から順に、「小ボケ」(社会生活のみに支障)、「中ボケ」(家庭生活にも支障)、「大ボケ」(セルフケアにも支障)の「三つの段階」に区分されるのです。 

Ⅱ-0 認知症の三段階-「小ボケ」(認知症の極く初期)

アルツハイマー型認知症の極く初期の段階である「小ボケ」(軽度認知症)は、左脳と右脳は(運動の脳も)未だ正常レベルなのですが、脳全体の司令塔の役割を担う『前頭葉』の働きだけが、廃用性の機能低下により異常なレベルに衰えてきているのです。そのため、前頭葉の機能の中でも最も基礎的で重要な働きである「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」の働きが的確には機能しなくなってきているのです(特定のテーマに集中が出来ないのが特徴)。即ち、単調な『生活習慣』の継続が原因で、廃用性の加速度的で異常な機能低下が進行。その結果として、自分が置かれている状況の分析や理解や判断、状況判断に沿ったテーマの発想、実行内容の企画や計画、実行の仕方の創意や工夫、更には、実行結果の見通し及び実行の決断が的確にはできなくなり、家から出ていき、他人と交わり、共通の目的を実行する世界である「社会生活」にトラブルが出てくるようになります(「社会生活」面に支障が出てくるようになる)。

「小ボケ」になると、「前頭葉」を含む脳全体の機能レベル、就中、注意の分配力の機能が異常なレベルに衰えてきていることの反映により、発想も湧いてこなくて、見通しも立たず、何をどうするのかという「テーマの構想と実行の計画や工夫」が的確には出来なくなるのです。肝心の「意欲」が出てこなくて/「注意の集中力」が続かなくて/「注意の分配力」も働かなくなり、毎日をボンヤリと過ごし、居眠りばかりするようになります。その人らしい生活態度としての生活習慣が消えていき「以前は、こんな人ではなかったのに」等と、周りからも言われるようになり、本質的な人柄自体が変わっていくのです。

Ⅱ-02  「小ボケ」の類型的で代表的な症状

同じ内容を繰り返して話したり、尋ねたりし、思いついた簡単な用事もすぐに忘れる

□ 注意が分配できず、簡単な3つの用事が同時にさばけない

□ 目の光がどんよりしていて、顔つきが無表情( 問いかけに対する反応が遅く、生き生きした笑顔が見られない)

□ 発想が乏しくて、画一的な行動が目立つ(機転がきかなくて、創意工夫ができない)

□ 一日や一週間の計画が自分で立てられず、何も思いつかない( 一日中ぼんやりしていることが多く、自分からは何もしようとしないが、指示されるとできる)

□ 根気が続かず中途半端なことを繰り返し、やりかけが目立つ

□ 同じ食材を買ってくることが多く、献立の単調さが目立つ

□ 自分に自信がなくなり、何かにつけて他人を頼ろうとする

□ 髪の手入れや、おしゃれに無関心となる

Ⅱ-03  認知症の三段階-「中ボケ」(認知症の中期)

『アルツハイマー型認知症』の中期の段階である「中ボケ」(中等度認知症)は、廃用性の機能低下により脳の司令塔の前頭葉の働きが「小ボケ」のときより更に異常なレベルに衰えてきています。その上、「小ボケ」のときは未だ正常だった左脳右脳と運動の脳の働きも、廃用性の機能低下により異常なレベルに衰えてきて、『脳全体の働き具合が異常なレベル』に衰えてきています。

脳全体の働きが異常なレベルに衰えてきていて、意欲、注意集中力、注意分配力の働きが不十分にしか機能しなくなります。その結果、対象の認知と記銘、その保持及び想起の機能の発揮が不十分なものとなる為に、状況の分析や理解や洞察や判断が幼稚な程度のものとなり、「家庭生活」の面でもトラブルが起きてくるようになります。「中ボケ」になると、食器の片付けや、洗濯物の取り込み、庭の草むしりといった、家庭内での簡単な用事程度のこともちゃんとこなせなくなり、『4~6歳の幼児』がやる程度にしかできません。せっかく洗ってくれたお茶碗はもう一度洗いなおさないといけないし、庭の草取りをしてもらうと花の苗まで抜いてしまいます。「中ボケ」のイメージは、「家庭内の簡単な用事」程度のこともきちんとは出来ないのに、口先だけは達者なのです。『失敗しては、言い訳ばかりしている幼稚園児』が、「中ボケ」のお年寄りの特徴です。

Ⅱ-04   中ボケ」の類型的で代表的な症状

□ 何度教えても、「日付け」があいまいになる(最初の段階が日、次いで年、月、最後に季節の順番で、分からなくなる。昼夜の区別はまだできる)

□ 簡単な程度の計算ができなくなる(お札ばかりで買い物をし、やたらと小銭がたまるようになる)

□ 電気やガスの消し忘れ、水道の蛇口の閉め忘れなどが目立つ

□ 家庭内の簡単な用事もきちんと出来ない(部屋や洗濯物の整理、食後の片付け、畑や庭仕事等までもがきちんと出来なくなる)

□ お金や持ち物のしまい場所をすっかり忘れてしまい、タンス等をかき回しては、一日中探している

□ 自分が飲む2~3種類程度の「服薬管理」が出来なくなる

□ 服の着方に無頓着で、重ね着が目立つ(セーターの上からシャツを着る。裏表や前後ろに着る。入浴後、着ていた下着の上に新しい下着を着る)

□ 入浴時の「温度管理」が出来なくなり、身体を洗わないとか、石鹸がついたままで平気でいる

□ 料理の味付けが変になる(特に、塩加減が極端に変になる。塩辛すぎて、周りが食べられないようなものを作り、本人だけが平気で食べる)

□ 行き慣れている所に行くのに、スムーズに行けない(行き先の違う乗り物に乗ったり、行き道を間違えたりする)

□ 季節が分からなくなる(夏にセーターなど、季節違いの服を平気で着ているようになる)

□ 物盗られ妄想(物の置き場所を忘れて、相手が隠したとか盗んだとか言う)とか、世話をしてくれる人に対し口汚くののしる

Ⅱ-05  「大ボケ」の類型的で代表的な症状

廃用性の加速度的で異常な機能低下の進行により、脳の司令塔の前頭葉が眠り込んで居て、ほとんど働かなくなる結果として、「前頭葉」の個別認知機能である種々の実行機能、自分が置かれている状況の分析や理解や判断、状況判断に沿ったテーマの発想、実行内容の企画や計画、実行の仕方の創意や工夫、更には、実行結果の見通し及び実行の決断が肝心の意欲や注意の集中力や注意の分配力の働きが殆ど機能していない為に、認知とその保持及び想起が不完全なものにしかならない「大ボケ」は、自分の身の回りのことをする「セルフケア」にも支障が出てきます。状況の理解や判断、さらには、目的の理解もできなくなっているので、食事をしたり、服を着たり脱いだり、お風呂に入ったり、トイレの後始末をしたりといった身の回りのことも、自分ではできなくて、日常生活に「介助」や「介護」が要るようになります。

□ 着ている服を脱ぎたがらず、便で汚れた下着をそのまま平気で着ている

□ 風呂に入るのを嫌がるようになる

□ 服を正しく着られず、ズボンを頭から被ったり、上着に足を通したりする

□ 家族の名前を間違えたり、我が子を配偶者と間違えたりする

□ 食事や挨拶をしたことなど直前に起きたことをすぐに忘れてしまうようになる

□ 家庭生活に介護(介助)が必要になる(食事、入浴、排泄)

□ 自宅に居ても落ちつかず、外に出て行きたがる

□ 大小便を失敗しても、その処置ができない(大小便で汚れた下着を、押し入れなどに隠すようなこともあります)

□ 自宅の方向が、たびたび分からなくなる

□ 同居している家族の名前も顔も分からない(家族かどうかも分からない)

□ 今は昼なのか夜なのかが分からなくて、夜中に起きだして騒ぐ(夜中に起きてくる。家中の電気をつけて回る。会社に行くとか田んぼに行くとか言い張る)(※廃用性の機能低下の特徴として、日、年、月、季節、昼夜の順に衰えてくる『時の見当識』の得点が、0点になります。昼夜の区別がつかないので、夜中に騒ぐのです)

□ 痛んだものを平気で食べ、食べ物でないものを口にする

注)後で詳しく説明するのですが、ナイナイ尽くしの単調な生活習慣が始まるその「キッカケ」となる出来事(生活上の大きな変化)が起きてから半年から1年経つと「アルツハイマー型認知症」を発病します。発病してから3年の間が小ボケの期間、中ボケの期間が2~3年間続き、発病してから5~6年経つと大ボケ(体が持つ限り、その期間が続くことになる)になるのが原則です。廃用性の機能低下が特徴であるアルツハイマー型認知症は、小ボケ及び中ボケの期間について標準的な経過期間が存在するのです。

Ⅲ-01 脳の司令塔の『前頭葉』の諸機能とその役割

1.私たち人間だけに特有な意識的な世界、私達が意識的に何かを実行しようとする際、思索や、発言や動作、行為や行動は、全て、『前頭葉』が支配し、コントロールしています。前頭葉という脳機能が備わる人間は、意思に基づいて、行為や行動やその実行の程度及び態様を選択できますが、動物は、本能に基づいてしか行動できないのです。そこのところが人間と動物とでは根本的に異なるのです。

私達が意識的に何らかのテーマを発想して、実行しようとするとき、『前頭葉』が、脳の各部と協働し、それらを主導し、全体を統括しながら:

①  自分のおかれている状況を分析し、理解し、判断して;

②  目的となる「テーマ」を発想し、その実行内容を構想し、組み立て;

③  テーマの内容を実行する手順を計画し;

④  実行結果をシミュレーションし;

⑤  結果の予測に基づく必要な修正を施し;

⑥  構想から実行に至る全体の構成を保持し;

⑦  結果に向けた実行を決断し;

⑧  左脳、右脳、運動の脳の各部に、実行の指令を出す;という一連の作業を「同時に並行」して、「重層的」に行います。

2.   これら一連の作業が、前頭葉が担う「脳全体の司令塔としての働き」(『実行機能』)なのです。言い換えれば、左脳、右脳、運動の脳という「三頭立ての馬車」を操る、「御者」の役割を担っているのです。前述したように、「小ボケ」は、前頭葉の機能の中でも最も核心的で重要な機能である「意欲」、「注意の集中力」と「注意の分配力」の機能が異常なレベルにある為に、的確に働かなくなっています。その結果、認知とその保持及び想起の機能の発揮度が低く、不的確なものとなります。従って、状況の判断、実行テーマの発想と実行内容の創意と工夫、機転や見通し及び決断が的確にはできなくなります。

そうした馬車を操る役目をしている『御者』の前頭葉が度々居眠りする状態で、馬を適切に操れなくなったら、どうなりますか?馬車は、どこへ駆けて行けば良いのか分からなくなってしまうでしょう。三頭の馬が元気一杯でも(左脳、右脳及び運動の脳が正常な機能レベルに在ろうとも)、御者が居眠りしていると(司令塔の前頭葉の機能が異常なレベルに衰えてきていると)、馬車は目的地に行きつけないのです(「前頭葉」を含む「脳全体の機能レベル」のアウトプットは、認知症の症状と考えるべきもの)。

3.私たち人間だけに備わる「前頭葉」には、脳全体の「司令塔の役割」(『実行機能』)と言う大事な働きがあります。その前頭葉の働き具合は、小ボケに始まり、中ボケの段階を経て大ボケへと症状が進行するにつれて、廃用性の機能低下が進行してきて、「大ボケ」のレベルでは殆ど機能していない状態になっているのです。                                          認知症診断の専門医達は、「大ボケ」の段階の症状が現れるようにならないと認知症の発病と認めないのです。『米国精神医学会』が策定したアルツハイマー型認知症の診断規定である『DSM-4』の第二の要件が、失語、失認又は、失行の症状という『極めて重度の症状』が確認されないとアルツハイマー型認知症の発病とは認めない『重大な誤り』の内容である規定に縛られたままだからなのです。もっと軽い段階、私たちの区分で言う、小ボケ及び中ボケの段階が存在することに気が付いていないのです(見逃しているのです)。上述のように、脳全体の司令塔としての『前頭葉』の役割を考えると、脳の司令塔の前頭葉が異常なレベルに衰えてきて、的確には機能しなくなった「小ボケ」の段階で「アルツハイマー型認知症」は始まっているのです(発病しているのです)。逆に、『この前頭葉が正常な機能レベルで機能している限り、アルツハイマー型認知症の発病ではない』のです。「大ボケ」のレベルを疑わせるような重度の記憶障害の症状が現れていても、前頭葉が正常な機能レベルにある場合は、アルツハイマー型認知症の発病でなく、「側頭葉性健忘症」(脳の変性により、新しい記憶が入っていかない)や「感覚性失語症」を疑うべきなのです。テレビ放映などで最近流行の『若年性アルツハイマー型認知症』なるものは、両者との鑑別の方法を持たない(前頭葉の機能レベルの判定方法を持たない)無知からくる誤解であり、実在しない病気なのです。

Ⅲ-02 『加齢』に起因した「前頭葉」の老化を示す曲線

私達が意識的に何かをしようとするとき、状況を的確に理解して適切に判断し、やるべきテーマを考え、具体的な実行の中身を考え、実行したときの結果を推測し見通して、必要と考えればその内容を修正します。こうした一連の思考の過程で、不可欠の役割を果たしているのが上述した『前頭葉』という脳機能なのです。そうした、①状況の判断、②テーマの構想、③実行内容の計画、④全体構成の保持、⑤実行の決断等の機能を十分に発揮するには、思考と行為の過程中での、正常な機能レベルでの脳の働きに基づいた、認知度の継続的な維持が、常に要求されることになります。その認知度は、前頭葉の働きの中で最も基礎的で核心的な機能である「意欲」、「注意の集中力」と「注意の分配力」の機能が正常に働くことが不可欠の条件となります。ところが、「認知度」を左右する「意欲」、「注意の集中力」と「注意の分配力」の機能の働き具合は、高齢者と呼ばれる年代の入り口の60代にもなると大幅に衰えてきて、65歳頃ではピーク時の20代前半に比べて半分程度にまで衰えてきています。80代、90代と年をとるにつれ、その働き具合は更に低空飛行になっていきます。

「意欲、注意の集中力と注意の分配力」の機能には、「加齢」と共に働きが衰えていくという生来的な性質が誰の脳にもあるのです。世間では、アルツハイマー型認知症発病の原因は未だに分からないとされています。高齢者と呼ばれる年齢の60代になってから、アルツハイマー型認知症を発病するお年寄りが現れるようになり、70代80代90代と、更には加齢の極まりの100歳に向けて、年をとるにつれて、アルツハイマー型認知症を発病する「お年寄り」の割合が大幅に増えていく実態に注目することが、発病のメカニズムを解明する第一歩となるのです(但し、「加齢」は必要条件ではあるのですが、決定的な条件ではないのです。発病するかしないかを決定づける要因で、唯一の要因が、後述する単調な『生活習慣』の継続に起因した廃用性の機能低下という要因なのです)。

Ⅳ-01 アルツハイマー型認知症の年齢別発生頻度

1.厚生労働省の発表では、わが国には、現在500万人を超える認知症のお年寄りがいるそうです(2012年度ベースでの数字が、462万人だそうです)。その大半、90%以上がアルツハイマー型認知症と言うタイプの認知症を発病している「お年寄り」なのです。然し、ここで言っている認知症老人とは、「大ボケ」の段階の人達だけだということに注意してください。「小ボケ」と「中ボケ」は、不活発病とか老化現象等と混同され、見落とされているのです。アルツハイマー型認知症の発病者とは、小ボケ以下の認知症老人の全て(私たちの区分で言う小ボケ中ボケ及び大ボケの全て)なのです。早期診断による回復にも、発病自体の予防にも関心がなくて、回復させることが困難で介護の途しか残されていない『大ボケ』の症状が確認されるお年寄りしか注目していないのでは、この先、『介護関連の総費用』が増大していくばかりなのです。

必要な生活改善(脳の使い方としての「生活習慣」の改善による前頭葉を含む脳全体の活性化)などの対策を何もしないでいると、小ボケは中ボケになり、中ボケは大ボケになります。頭の働きは悪くなっていっても、身体はそれなりにもつからなのです。「身体はもつのに、肝心の脳がもたない」、それが、アルツハイマー型認知症と言うタイプの認知症の大きな特徴なのです(専門家達が、無知!)。

2.「二段階方式」の立ち上げによる1995年の活動開始以来、私たちがこれまでに蓄積してきた3万人を越える全国規模の調査によるデータによると、小ボケ以下の人達(小ボケ、中ボケ及び大ボケの全ての人達)の年代ごとの発病者の割合は、定年退職などで、仕事とは無縁となり、「左脳」の出番が有る機会が極端に減少する『第二の人生』が始まったばかりの60歳代に12%もの高い割合を示し、70代に30%、80代に50%、90代に75%、加齢の極まりの100歳代に97%と、年をとるにつれてどんどん増加していくのが特徴なのです。とはいえ、発病しない人の割合も相当に高いので、「加齢」の延長線上に発病がある訳でもないのです。

①  アルツハイマー型認知症発病の対象は、仕事が現役である60歳未満の若い年齢での事例は殆ど無くて、『第二の人生』を送っている60歳を超える年齢の『お年寄り』に限られていること

②  年をとるほど、アルツハイマー型認知症を発病するお年寄りの年代別の割合がどんどん増えていき、命の極まりの100歳代では、殆どの人が(97%の人が)認知症を発病していること

③  認知症になるお年寄りの年代ごとの割合が、日本のどの地域をとってみても、どこも殆ど同じで、地域差が認められないこと

こうしたデータから、アルツハイマー型認知症を発病する要因には、食べ物でも金属の摂取でもなくて、「加齢による脳の老化」という問題が『基本的な条件』として考えられるのです。

3.上述したように、アルツハイマー型認知症を発病する対象者は基本的に60歳以降の高齢者だけなのです。『脳の老化』と言う問題が基本にあるから、アルツハイマー型認知症は若者には関係なくて、60歳以降の『お年寄り』だけが発病の対象になるのです。

アルツハイマー型認知症を発病するお年寄りの年代ごとの割合に、地域差が認められないということは、「何が重要かを判断する評価の尺度にも、地域差がない」ことを意味しています。前頭葉は、状況やテーマの内容を評価し、どのような行為をどのようにするのか選択し、決定する「物差し」の働きも持っているからです。

仕事に対する評価と趣味や遊びや人付き合いを楽しむことに対する評価、言い換えれば、「どのような生活習慣(脳の使い方)」を重視するのかということに関して、私たち日本人の考え方は、日本全国ほとんど同じで、地域差がないということなのです。生き方や日常生活での脳の使い方としての生活習慣が、ほとんど同じなのです。私達日本人は、仕事偏重の考えの人が多いのです。第一の人生を仕事一辺倒の生き方をしてきた人は、「第二の人生」が始まり、生きていく上での大きな目標を与えてくれていた仕事がなくなったら、どうやって毎日を過ごしだらいいのかが分からない。時間をもてあまして、「単調な生活」の日々を過ごすのです。

Ⅳ-02 「アルツハイマー型認知症」発病のメカニズム

60歳代以降の高齢者が、何かを「キッカケ」にして脳を積極的に使わないナイナイ尽くしの「単調な生活習慣」を続けていると、出番が少なくなり使われる場面が極端に減った前頭葉が廃用性の機能低下を急速に進行させていきます(下段の注1)。『加齢』に起因した脳の老化(機能低下)という要因(私たちが定義する「第一の条件」)に加えて、キッカケを契機に開始されたナイナイ尽くしの単調な生活が継続され、生活習慣となることにより(私たちが定義する「第二の条件」)、前頭葉を含む脳全体の老化(機能低下)が加速されて、働きが急速に衰えてていきます。前頭葉を含む脳全体の働きが加速度的に衰えてくるその先に、「アルツハイマー型認知症」の発病が待っているということなのです(「器質的な原因病変」は存在していないし、「DSM-4」が提示するような「記憶障害」が発病の原因ではないのです)。上述した『廃用性の、加速度的で異常な』機能低下が進行していく場合に、脳の司令塔の前頭葉が最初に異常なレベルに衰えていき、次いで、左脳や右脳や運動の脳が(且つ、高度な機能から順番に)異常なレベルに衰えていくのが特徴です。

認知症の大多数90%以上を占める「アルツハイマー型認知症」というタイプの認知症は、ナイナイ尽くしの「単調な生活習慣」の継続という、脳の使い方としての「生活習慣」に起因する病気なのです。これを言い換えると、廃用症候群に属する老化廃用型の『生活習慣病』なのです(「食生活」ではなく、脳の使い方としての生活習慣であることに注意)。「第二の人生」を送っている高齢者といわれる年齢のお年寄りが、ナイナイ尽くしの「単調な生活」を日々送っていると、前頭葉を含む脳全体の機能が廃用性の加速度的で異常な機能低下を進行させていくこととなり、その先に、『アルツハイマー型認知症の発病及び症状の重症化の進行』が待っているのです(『世紀の発見』!)。

このメカニズムを解明するには、前頭葉の機能構造、前頭葉の三本柱と私たちが名づける意欲、注意の集中力及び注意の分配力の機能、特に、注意の分配力の機能の廃用性の機能低下という要因、更には、前頭葉の個別認知機能の機能発揮度を左右し下支えしているのが前頭葉の三本柱の機能であるという『機能発揮上の二重構造の問題』及び意識の機能構造についての深い理解が不可欠となるのです。その意味と視点から指摘すると、『前頭葉の機能も、注意の分配力の機能も、意識も備わっていない』マウス(アルツハイマーマウスとて同じこと)が餌を探して檻の中を動き回る行動をどれほど子細に観察してみたところで、何も見えないのです。

生来的に宿る脳機能の老化の性質という条件とナイナイ尽くしの単調な生活習慣の継続による廃用性の機能低下という条件とが同時に充足されることによる相乗効果により、前頭葉を含む脳全体の機能が、廃用性の加速度的で異常な機能低下を進行させていくことにより、且つ、その機能低下の進行の度合いにより、私たちの区分で言う小ボケ、中ボケ及び大ボケの三つの段階の症状が、アルツハイマー型認知症の症状が、発現してくるのです。これが、世界中の認知症の専門家達の間で未だに『発病の原因が分からないし、治すことができないし、予防することも出来ない』と言われている「アルツハイマー型認知症」発病のメカニズムなのです。

Ⅳ-03  単調な生活が始まる「キッカケ」の類型

ナイナイ尽くしの単調な生活(「生活習慣」)が始まる「キッカケ」の共通項は、次の2点に集約することができます。

一、 頑張って生きようという意欲を支えてきた生活がなくなること

二、 頑張って生きようという意欲を喪失してしまうような状況が発生し、継続する下で、心の支えとなっていた生活ができなくなること

注1)ナイナイ尽くしの単調な生活とは、目標や喜びや生き甲斐もない生活、趣味や遊びや人付き合いもなく運動もしない生活のこと。

注2)「キッカケ」の発生により、自分なりの喜びや生き甲斐が得られる源になっていたそれまでの生活が継続していけなくなります。その結果、何事に対しても、努力や挑戦する『意欲を喪失』してしまい、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まるのです。単調な生活に変化すると、いろんなことを発想して計画を立てたり、やりかたを工夫してみたり、あれこれ洞察や推理や分析をしなくなります。喜びが得られたり、なにかに感動する場面も少なくなります。毎日の脳の使い方(生活習慣)が大きく変化して、脳の司令塔としての『前頭葉』の出番が極端に少なくなるのです。

Ⅳ-04 『かくしゃく老人』の日々の生き方(「生活を楽しむ」)

脳の司令塔の役割を担っている「前頭葉」という脳機能は、60歳より70歳、70歳より80歳、80歳より90歳と、年をとればとるほど誰でも老化が進んでいき、働きが次第に悪くなっていきます。それなら、『お年より』は誰でも認知症になるのかと言うと、そうではありません。あなたの周りを見回してみてください。『第二の人生』が始まったばかりの60歳代で早々と認知症になる人もいれば、普通の人もいれば、身体がもつ限り脳ももたせて、生涯かくしゃくとしているカクシャク老人もいるのです。

早々と認知症になるお年寄りと生涯かくしゃくとして生きるお年より;その違いはどこにあるのでしょうか?

①  『かくしゃく老人』の場合は、「前頭葉」の老化の進み方が、年をとるスピードよりもずっと緩やかなのです。

②  『早々と認知症になっていくお年寄り』は、「前頭葉」の老化の進み方が、年をとるスピードよりもずっと速いのです。

③  「認知症になるか、ならないか」「早々と認知症になるか、身体が持つ限り脳もイキイキと保てるか」。それは、毎日の脳の使い方としての「生活習慣」の差が、絶対的条件決め手になるのです。

かくしゃく老人』の場合は、脳を生き生きと使う「生活習慣」をもっているのです:日々の暮らしの中で、「テーマ」を発想し、「目標」を定め、創意工夫し、何をどのようにするのかを決める「前頭葉」の出番が多い生活を楽しんで暮らしているのです。「運動の脳」を使ってスポーツや散歩を楽しむ生活、「右脳」や「左脳」を使って趣味や遊びや人付き合いを楽しむ生活、地域活性化の為のボランティア活動を楽しむ生活をして暮らしているのです。

自分なりのテーマがあり、自分なりの目標や喜びや生き甲斐を持てる生活を送っていて『前頭葉』の出番が多い生活が継続されているので、「前頭葉」を含む脳全体の機能がイキイキと働き、活性化していて、『アルツハイマー型認知症』の発病とは無縁なのです。

Ⅳ-05   認知症になるお年寄りの基礎にある単調な「生活習慣」 

「第二の人生」に入っている人達は、60歳代以降の高齢者と呼ばれる年齢になってから、アルツハイマー型認知症を発病する割合が年代が上がるにつれ、どんどん増していきます。「第二の人生」に入っている人達ということは、高齢者と呼ばれる年齢になっているということなので、誰でも、『「加齢」による「前頭葉」の老化という問題を抱えている』のです。とは言え、「高齢者」であれば誰でも認知症になるかと言うとそうではありません。70代のお年寄りの30%が認知症になるのに対し、80代のお年寄りの50%は認知症にならないで、特段の支障もなく「社会生活」を送っていけているのです。「第二の人生」を送っていて、アルツハイマー型認知症を発病するお年寄りと発病しないお年寄りが居る、両者の差は一体どこからくるのでしょうか。

注)アルツハイマー型認知症になるお年寄りは、カクシャク老人と呼ばれる人達の生活習慣とは対極的な生活習慣を送っているのが特徴なのです。「時間はたっぷり有るのに、することがない」毎日、ただボンヤリと暮らすだけの「単調な生活」を送っているのです。

アルツハイマー型認知症を発病するお年寄りは、毎日の脳の使い方としての「生活習慣」に重大な問題があるのです。脳の使い方は、言い換えれば、『前頭葉』の使い方でもあるのです。アルツハイマー型認知症を発病することになるか、ならないか、その差は、毎日の前頭葉の使い方としての『生活習慣』の差にあるのです。

Ⅳ-06  単調な生活が始まる「キッカケ」の具体例 

ナイナイ尽くしの単調な生活に入る「キッカケ」としては、以下のようなものを例示できます。以下にあげる具体例がそのまま「キッカケ」になるかどうかは人それぞれで、一概には言えません。本人にとっての「失われた生活」が占めていた重要度と『生活の変化』に対する痛手を感じる深さによる『意欲の喪失』の度合い次第で、本人の対応の仕方が変わってくることに注意が必要です。

☆或る程度重要なものでも本人が受けた痛手の程度が小さければ、立ち上がる「意欲」自体が残っているので、「キッカケ」にならないし、周りから見てそれ程重要でなくても、本人にとっての痛手が大きい為に立ち上がる『意欲を喪失』してしまうことになれば、単調な生活習慣が始まる「キッカケ」になるということなのです。

□ 仕事の第一線を退くこと(定年退職。家業を息子に譲ること。専業主婦なら台所と財布を嫁に明け渡すこと。子供や孫の手離れ)

□  配偶者の死亡(夫を亡くした妻は、不死鳥のように蘇る!)

□ 趣味や遊びやお茶飲み会などの「集いの会」の中止

□ 重大な病気や怪我。身体上の不具合。看病だけの生活(自身の病気や怪我による入院生活。病気や怪我あるいは身体の痛みなどの不具合の継続。認知症の相手の看病生活)

□  家庭内のトラブルや心配事が継続すること(息子のリストラや離婚。サラ金問題。孫の不登校。家庭内

の不和等により何をしていてもうわの空状態)

□ 重大な自然災害の被災により家族、友人、財産等を失うこと

□ ペットの死亡

□ 友人や自分自身の転居(転居により旧来の友達を失って後、新しい友達が出来ないままの状況)

□ 兄弟姉妹の死(特に、相手が自分より年少の場合には痛手が大きい)

 □ 周囲との接触もない孤独な一人暮らし(趣味や遊びや交遊を楽しんでいるような暮らし振りの一人暮らしなら、ボケとは無縁)

□ 寂しい生活 (二世代同居といいながら、家庭の隅に追いやられて家族との会話もない毎日)

Ⅳ-07 「脳の老化のスピード差」をもたらす要因

1.「キッカケ」が起きてから半年から1年の経過により発病し、『3年の期間が小ボケの期間、中ボケの期間が2~3年間あって、5~6年経つと、大ボケになる』というのが、症状の「滞留期間」の大原則なのです。

この基準に適合しないケースは、次ページに示すプラス要因とマイナス要因の質と量とが脳に働いて、「アルツハイマー型認知症」の症状の更なる進行や回復に影響を与えているのです。

2.前述の1.に掲げる「認知症の段階区分ごとの滞留期間に関する原則」は、エイジングライフ研究所が小ボケ、中ボケ及び大ボケと判定された極めて多数の症例を分析して得られたものです。

アルツハイマー型認知症の最初の段階である軽度認知症になってから以降の生活が基本的に変化しないでそのまま継続されていく場合(生活改善が行われないで、従来どおりの生活が継続されていく場合)には、この原則に従って認知症の症状が進行していくその期間を述べたものです。この滞留期間の原則は、多数の症例の分析結果による為に、とてもよく当たります。

もちろん実際の生活場面では、前頭葉の出番が増え、活性化するような楽しい生活(家族や仲間と共に散歩や運動を楽しむ生活;家族とのイベントを楽しむ生活;趣味の教室へ通う楽しい生活;友人や仲間とのふれあいがある生活)の増加という要因があると、その楽しい生活の質と量とにリンクして前頭葉の出番が増え働きが回復してくるので、認知症の進行が遅くなり、進行が止まり、或いは、回復の方向に向かうのです。

逆に、前頭葉の出番が減り、不活性化するような辛く苦しい状況下での生活(友人や趣味の仲間との別離; 趣味や遊びの会の中止;腰痛など身体の虚弱化の進行; 自分自身の病気の発生;家族の病気や介護に自分の時間をとられてしまうような生活;重大な心配事の発生;家族内の重大な問題)の増加という要因が重なると、その辛く苦しい生活の質と量とにリンクして前頭葉の出番が減り働きの衰えが進行するので、認知症が更に速く進んでいくのです。

3. エイジングライフ研究所では、こうしたデータの分析から、本人の生活歴と生活環境並びに認知症のレベルに応じた生活の改善(前頭葉の出番が増えるような脳の使い方としての「生活習慣」の改善)を「二段階方式」を導入して住民参加型の「地域予防活動」を実践する市町村で、20年以上も前から指導をしてきて、多大な成果を挙げてきているのです(集積した「脳機能データ」の解析)。

Ⅴ-01 ボケの治療は『脳のリハビリ』

1.アルツハイマー型認知症も早期発見、早期治療が大切です。早く見つける程、回復する(症状を治せる)可能性が高いのです。

小ボケで見つければ、比較的簡単に治せます(回復容易)。

中ボケで見つければ、手間はかかり大変だけど、家族の協力があれば何とか治せます(未だ回復可能)。

大ボケで見つけたのでは、見つけても手遅れ、治らないのです(回復は最早困難)。

世間では、末期段階の大ボケの症状を物指しとして見つけようとするので、せっかく見つけても「治すことが出来ない」のです。

2.このブログでは、字数枠の関係で、中ボケだけを対象として回復方法を説明します。アルツハイマー型認知症を治す(脳の働きを正常レベルに引き戻す)には、前頭葉の出番が多い生活に変えて、前頭葉【複数の異なるテーマを同時に並行して操る機能であり、創意工夫する機能である注意の分配力】の働きを活発にしてやることが必要です。前頭葉の働きを活発にするのに最も効果的な方法は、「右脳」をしっかり使う生活、趣味や遊びや人づきあいをしっかり楽しむ生活を送ることが不可欠になります。趣味や遊びや人づきあいなどを自分なりに楽しむ生活を送ることで、自分なりに目標や喜びや生き甲斐があり、意欲が湧いてくるような毎日を過ごすのです(趣味や遊びや人づきあいといった「右脳」中心の生活が、前頭葉の出番を増やし働きを活性化させることになり、前頭葉の元気を取り戻せるのです)。やるのが楽しくて、時間があっという間に経ち、またやりたくなるような趣味や遊びや人づきあいを楽しむ生活を実践することが対策。周りが助けて、本人なりに毎日を楽しめる「生活習慣」を組み立てるのです。

3.過去の生活習慣にさかのぼって、どんなことに熱中していたのか、どんなことなら意欲を持って取り組めていたのかを調べてあげることも必要です。趣味も遊びも人づきあいも苦手と言う人には、運動の脳からの刺激が意外と効果的です。『一日一時間の速足での散歩』が目標(5000歩が目安)となります。

その場合も、散歩をするのが楽しくなるような工夫が大切です。散歩するのに安全な場所を選び、散歩してみたくなるような場所を探し、家族や友人が一緒に歩いてあげると効果が一層大きくなります。速足の散歩は、『意欲』の機能を復活させてくれるのです。考えること、動作をすること、行動すること、発言することに始まり、状況の分析や理解や判断、状況判断に沿った「テーマ」の発想、実行内容の企画や計画、実行結果のシミュレーション、実行の決断など、全ての機能の発揮の核心に「意欲」という機能の働き(働きの程度)があることを忘れないでください。「意欲」の機能がバージョンアップされることで、「注意の集中力」の機能がバージョンアップされ、更には、『注意の分配力』の機能もバージョンアップされるのです。

Ⅴ-02 家族が支える「脳のリハビリ」と留意点(中ボケ)

1.中ボケは、小ボケより達成目標を下げ、一層の手間をかけることが重要です。中ボケのレベルになると「時間」や「場所」がわからなくなります。その上、「自分の脳の働き具合が、どこかおかしいという自覚もない」のが普通です。自分の脳の働き具合がどこかおかしいという自覚がもてるのは、「小ボケ」のレベルまでになります。テーマは小ボケと同じでも、目標値を変えるのです。家族がいくら説明して、おかしな言動があるといっても、「わたしは、ボケてはいないよ、何ともないよ」と言い張って、一向に家族の話を聞こうとしなくなります。中ボケのいろいろな症状が出てきていて、家庭生活に具体的に支障が起きていても、自分自身の問題としての理解ができないのです(口先に騙されないこと)。「中ボケ」のレベルになると、努力の必要性を理解することも出来ません。それでいて、理解力や判断力が衰えてきている割に口は立つので、いろいろと言い訳を並べ立てます(ヘリクツの類)。本人に任せたままでおくと、脳が活性化する「生活習慣」の改善(「脳のリハビリ」)に真剣に取り組もうとはしません。

周りの人(できれば同居の家族)が、本人の過去の趣味や遊びや人づきあいの仕方の程度とか生活環境などを考えて計画してあげてください。具体的な生活習慣の改善を計画し家族全員で本人を支えて、「脳のリハビリ」の実行に一緒に取り組んであげることが、改善への道につながる不可欠の条件になります(『要支援!』)。

2.口だけが達者な中ボケに対する脳リハビリのコツは、本人の発言に惑わされずに、行動をよく観察することから始まります。着衣・食作法・トイレや入浴・家事(炊事・洗濯・片付け・掃除・庭や畑仕事)などです。身についた行動なのでたまにはスムーズにできることもありますが、判断が必要な状況になると、とたんに『トラブルが発生』することになります。その状態を、こどもの行動レベルと比較してみると、よく理解できます。大体幼稚園の年少・年中・年長に相当すると納得がいくはずです(「中ボケ」の脳の機能年齢は、「4~6歳児」のレベル)。

『脳のリハビリ』の項目は小ボケと同じでも、目標値を下げて、噛み砕いて簡単にすること。幼稚園児に対する指導と同じです(努力の継続が重要なので、目標レベルが高すぎないことが肝心です)。行動は幼稚園レベルに低下していても、数十年生きてきた体験そのものは消えるわけではないので、言葉遣いには注意が必要です。但し、前頭葉自体の機能レベルが低下してきているので、口先で言うほどのプライド自体は無いのです(過大に評価しないこと)。『ボケるくらいなら、死んだほうがまし』とかの発言に、真実味も現実感も全く無いことを知っておいて頂きたいのです。

認知症の診断が専門の医師のレベルはというと、大ボケの段階の症状が発現してきて初めて、アルツハイマー型認知症の発病と診断し騒ぐのです。その為、施設では、大ボケの段階のお年寄りが介護の対象となっているのです。大ボケの段階にあるお年寄りがどんな発言をしようと、偶々飛び出した程度のものに過ぎないのです。例示してある『前頭葉』を含む脳全体の機能レベルの反映としての「症状」を見てください(自覚できるのは、小ボケまでなのです)。猶、医師達は、発病の診断を「DSM-4」の規定の「第二の要件」に依拠するので、失語や失認や失行の症状(MMSEの得点が一桁になって初めて発現する極めて重度の症状)を確認しないと、アルツハイマー型認知症の発病とは考えないのです。

Ⅴ-03   アルツハイマー型認知症予防の為の五カ条

1.左脳中心、仕事偏重だった「第一の人生」とは、大きく方向転換して、日々の生き方を変え、『第二の人生』では、右脳中心の生き方への転換を図り、周囲の目を気にせず、自分らしさが前面に出るような生き方をして、毎日の生活の中に自分がイキイキしていると感じられる「生活習慣」を打ち立てることが必要です。自分らしい『生活の楽しみ方』をして、意欲が湧いてくるような『生活の暮らし方』を出来るだけ心がけるようにしましょう。

一、熱中し、夢中になれる趣味や遊びを出来るだけたくさん持つ

二、出来るだけたくさんの仲間と交わる機会を増やす

三、自分なりの生活目標を設定し、喜びや生き甲斐を見つける

四、精神的な張りと適度に緊張感のある毎日を過ごす

五、散歩程度でも良いから、出来るだけ「運動する機会」を持つ

2.脳全体の司令塔の役割をしている前頭葉が正常に働いている限り、アルツハイマー型認知症は発病しません(下記注2を参照)。

前頭葉を活性化させるには、人生を自分なりに楽しむ「生活習慣」を組み立てて、「前頭葉の出番が多い生活」に変えてやるのです。

趣味や遊びや人づきあいといった「右脳」中心の生活が、前頭葉の働きを活性化させ、前頭葉の元気を取り戻させるのです。

趣味も遊びも人づきあいも苦手と言う人には、「運動の脳」からの刺激が意外と効果的です。一日一時間の速足での散歩が目標(5000歩が目安)です。『意欲』の機能が拡大されるのです。

)創意や工夫ができるなど『前頭葉』が正常レベルなのに、認知症かと疑われるような『重度の記銘障害』の症状がある場合は、『側頭葉性健忘症』が疑われます。病院で前頭葉の働きのレベルも同時に検査してもらうことをお勧めします。      

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      脳機能から見た認知症(具体例をベースとしたもう一つのブログです)

             

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