認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

介護及び介護予防は、何を基準に考えるのか  Q/A Room (Aー47)

2012-06-21 | 認知症に対する正しい知識のQ&A

Q: 私は、デイサービスの施設の経営者です。施設に通所されているお年寄りの中には、「正常」者もいれば「軽度認知障害」の方もいれば「アルツハイマー型認知症」の方もいらっしゃいます。その方たちへの「介護の対応」及び「介護の予防」の「テーマ」や対応の仕方或いは実施の内容を適切にするための差別化をするには、何を「基準」にしてどのように考えたら良いのでしょうか。

             

A:私たち人間は、脳が考えるところに従い行動しているのです。特に、脳全体の司令塔である「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)の働き及びそのレベルが極めて重要であり、その点が前頭葉を持たない人間以外の動物とは異次元のレベルの行動となって表れるのです。アルツハイマー型認知症の原因を解明するための研究、或いは認知症の回復に効果がある薬の開発のための研究に日夜励んでいる人達がいます。その人達は、サルよりもはるかに脳の機能が劣る「ラット」を使って、迷路の中を行き来させて餌を探させることにより、「記憶」が良くなる効果があったかどうかを基準にして評価しているという報道をよく見かけます。

「ラット」には、「前頭葉」はありません。こうした人達は、記憶を含む「認知」に「前頭葉」が極めて重要で不可欠な役割を担っていることに気づいていないか、或いはそのことを見落としているのです。末期段階の「重度認知症」の段階にあった「アルツハイマー型認知症」の患者の「解剖所見」を基礎とする従来の発想を転換して、「前頭葉」が支配している「認知の程度と態様」という視点を持たない限り、アルツハイマー型認知症の原因解明に到達することはないでしょう。治療薬の研究については、飲むだけでアルツハイマー型認知症が治るような薬の開発はありえないと考える根拠については、このブログで既に指摘している通りです。

        

状況を判断して、その状況に即したテーマを発案し、起きるべき結果についていくつかのパターンをシミュレーションし、実行した時の予測される結果を評価機能に基づき評価した上で、最終的な実行内容を選択決定し、脳の各部に指令を出す。これが司令塔である「前頭葉」の働きなのです。これらは全て脳の「認知機能」の発現の「態様」であり、且つ実際の行為や行動の場面では、そうした「認知機能」が発現している「程度」が重要になるのです。私達の意識的な行為や行動は、全てこのメカニズムの下で実行されているのです。

       

「記憶」は、前頭葉のいろいろな機能を発揮する上で必要不可欠ではあるが、その「手段」としての機能にすぎないのです。「意識的な行為」を支配している主たる機能は、あくまで「前頭葉」であり、「記憶」は従たる機能(手足)にすぎないのです。アルツハイマー型認知症の原因を解明するには、「前頭葉」が働いているメカニズムとその働き具合とに注目し、その機能レベルを「神経心理機能テスト」で計測することが不可欠になるのです。「前頭葉の機能障害」を「アルツハイマー型認知症」判定の第一要件とすべきなのに、「記憶の障害」を第一の要件とする「DSM-Ⅳ」の診断基準には、この点からみても重大な誤りがあると言わざるを得ないのです。これでは回復困難な末期段階の重度認知症(「大ボケ」)しか見つけることが出来ず、回復可能な早期の段階(「小ボケ」及び「中ボケ」)を見落としてしまうことになるのです。「前頭葉」については、ここをクリックしてください)。

「認知症」の専門家達も薬の開発に従事している人達も、「前頭葉」の中核的な機能でありその三本柱をなす「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」が「記憶」の対象範囲及びその「程度」と「態様」と不可分の関係にあることに気づいていないのです。食欲に基づいて餌を探す「ラット」の行動に発現する程度態様の記憶と、脳の司令塔の「前頭葉」の働きに基づく人間の行動に発現する程度態様の記憶とは「異次元」のものなのだと言うことに早く気づいて欲しいと願うのです。「記憶については」、ここをクリックしてください)。

           

「正常」者ということは、意識的に何かをしようとする時に不可欠の脳の機能である「認知機能」の働き具合(レベル)が正常だと言うことなのです。「軽度認知障害」の方も、「アルツハイマー型認知症」の方も、どちらも「認知機能の障害」が基本にあり、正常に働いていないのです。問題は、「認知機能の働き具合」がどの程度なのかにあるのです。意識的に何らかの「テーマ」を実行しようとする際に働く脳の働き具合言い換えれば脳の「各認知機能の働き具合」の相乗効果としてのアウト・プットが行為(或いは症状)として及びその程度、態様として発現してくるものなのです。逆に、「症状」は程度や態様が様々なので、「症状」から「認知機能の働き具合」を的確に測ることはできないのです。

頭のてっぺんの所には、身体を動かす指令を出す「運動の脳」があります。 脳の後ろの左側部分には、言葉や計算や論理や場合分けなど「デジタルな情報」を処理している「左脳」があります。 脳の後ろの右側部分には、色や形や空間や感情など「アナログな情報」を処理している「右脳」があります。額のところには、脳全体の司令塔の働きをしている「前頭葉」があります。(ここをクリックしてください

              

私たちが意識的に何かのテーマを実行しようとするとき、どのようなテーマをどのように実行するか、全ては司令塔の「前頭葉」が周りの状況を判断して、シミュレーションしたうえで決定し、指令を出しているのです。その「前頭葉」には、発想したり、計画したり、工夫したり、推理やら洞察をしたりするための様々な働きが詰まっています。更に、自分の置かれている状況を判断し、実行テーマの内容や実行の仕方を種々ケースワークした上で、最終的な実行内容を選択し決定するために必要な、人間だけに特有の「評価の物差し」という大事な機能があります。

 これが、意識的な行為における脳の働き方の全体像なのです。言い換えれば、運動の脳、左脳、右脳という三頭建ての馬車をあやつる御者の役割をしているのが、「前頭葉」なのです。 三頭の馬を十分に働かせられるのも、不十分にしか働かせられないのも、前頭葉の働き次第ということなのです。「前頭葉」を含む脳の機能レベルとそれにリンクした行為や症状を的確に測ることが差別化を実行する上で不可欠になります。それらを的確に計測できるのは、CTでもMRIでもなくて、私達が開発した「神経心理機能テスト」を中心とした「二段階方式」の手技なのです。

               

 脳の働き(「認知機能」)が異常なレベルに衰えてきて、そのために社会生活や、家庭生活やセルフ・ケアに支障が起きてくるのが、「アルツハイマー型認知症」という病気なのですが、精神科医が「認知症」と診断するときは、私達の区分で言う「重度認知症」(大ボケ)のレベルだと言うことに注意してください。大ボケのレベルにまで脳の機能(「認知機能」)が衰えてきていると、「中ボケ」や「小ボケ」或いは正常レベルへの回復は困難であり、「大ボケ」の中での更なる重症化を遅らせることだけが可能な目標となるのです。

「軽度認知障害」の基準を提唱する人達によると、それは正常と「認知症」の中間に位置付けられています。「認知機能」の働き具合が正常レベルではないとされているのですが、「認知症」のレベルというほどには衰えていないということなのです但し、精神科医の言う「認知症」のレベルとは、回復困難な「重度認知症」のレベルのことなのです。従って、「軽度認知障害」の基準は極めて幅広く且つ定義自体があいまいであり、対象とされている人達は「正常」と「重度認知症」(大ボケ)との中間に位置することになります。それらの中」には、「アルツハイマー型認知症」の回復可能な早期の段階、私達の区分で言う「軽度認知症」(小ボケ)及び「中等度認知症」(中ボケ)に相当するレベルの人達も含まれることになります。

      

「介護」及び「介護の予防」の中心となる脳を活性化する「テーマ」の遂行による効果を最大限にあげるには、通所施設での「テーマ」の実行だけでなく、在宅での「テーマ」の実行も重要です。「テーマ」の実行により脳を活性化させるには、実行する意欲がわき、実行結果から喜びや感動或いは生き甲斐が得られ、継続的な実行目標が設定できるような「テーマ」であることが重要です。それには、右脳と運動の脳をしっかり使う「テーマ」であることがキーとなります。施設で良く取り上げられている、「一桁の簡単な足し算や引き算」をしたり、「平仮名で書かれた文を音読」するだけの「テーマ」では、脳を活性化する効果は余り期待できないのです。「前頭葉」の三本柱である、「意欲」と「注意の集中力」と「注意の分配力」とが向上してこない限り、「認知機能」の働き具合(レベル)は向上してこないからです。

私達の「二段階方式」では、アルツハイマー型認知症は、三つの段階に区分されます。「小ボケ」も「中ボケ」も「大ボケ」も全て「前頭葉」を含む「脳の機能レベル」とそれにリンクした症状(それぞれのレベルに特有の、限定された症状群)で規定された基準に従い判定されます。更には、脳を活性化する「テーマ」の実行結果について、「脳の機能レベル」及び「症状の変化の度合い」を的確に評価できる(改善、維持又は悪化)ので、その「脳の機能レベル」に合致した的確な「対応」と脳を活性化させるための適切な「テーマ」の設定及び実行が可能になります。また、それらのデータは、こうした目的の為に特別に開発されたソフト(「エイジング」)を活用することにより、個別及び集団別に時系列管理が出来ます。

       

「介護」或いは「介護の予防」という目的を遂行する上で、「脳を活性化」させることが不可欠となります。脳を活性化させるには、その人の「脳の機能レベル」に見合った「テーマ」(内容、程度、態様)を実行させることが必要です。「正常」、「正常下限」、「小ボケ」、「中ボケ」(前期)、「中ボケ」(後期)及び「大ボケ」に区分される、それぞれの「脳の機能レベル」に見合った「テーマ」であることが大前提になるのです。「脳の機能レベル」に見合った「テーマ」でないと効果が薄れてしまうか、実行すること自体が難しくなるからです。

正常者は、「小ボケ」の人達に適した内容(程度、態様)の「テーマ」では、レベルが低すぎて実行する意欲が出てきません。実行しても達成感が得られません。その一方で、「小ボケ」はテーマの目的を理解して、自分なりの工夫をすることが出来ますが、「中ボケ」のレベルになると、自分なりの工夫を期待することはできません。「小ボケ」と「中ボケ」とは、脳の機能レベルが違いすぎて、一緒に同一内容の「テーマ」を実行させるのは意味がありません。

また、同じ「中ボケ」の中でも、「中ボケ」(前期)のレベル(MMSの換算値で20点以上のレベル)であれば、「集団に設定企画されたテーマ」を遂行できるのですが、「中ボケ」(後期)のレベル(MMSの換算値で19点以下のレベル)になると、「個別に設定企画されたテーマ」でないと遂行できなくなります。勿論のこと、「大ボケ」レベルの人に対しては、中ボケよりもさらに達成目標のレベルを下げた「テーマ」を個別に設定し実行させることが必要となります。「小ボケ」については、ここをクリックしてください)。(「中ボケ」については、ここをクリックしてください)。(「大ボケ」については、ここをクリックしてください

       

(コーヒー・ブレイク) 「アルツハイマー型認知症」の人に適切な介護をするにも、「軽度認知障害」の人が精神科医が言う認知症のレベル(この場合は、「大ボケ」)に脳の機能が衰えていくのを予防するにも、「脳の働きという物差し」が不可欠になるということなのです。その場合、脳全体の司令塔の働きをしている「前頭葉」を含む脳の機能レベル(働き具合)を測ることが不可欠になるのです。但し、脳の機能レベルを測るだけでは不十分です。「軽度認知障害」の人であれ、アルツハイマー型認知症の人であれ、脳の機能レベルにリンクした「症状」という視点と物差しを持つことによって初めて、適切な「介護」或いは「介護の予防」を実施することが出来るのです。

 注)本著作物(このブログA-47に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

        エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

      脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

 

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