認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

アルツハイマー型認知症の診断と基準 Q/ARoom(A-45)

2012-06-07 | Q/A 認知症の種類と比率

Q:76歳になる義父が、「アルツハイマー型認知症」との診断を受けました。その時、診察を担当された精神科のお医者さんが、「アルツハイマー型認知症」という病気は、原因もわからないし治すこともできないので、家族で介護していくしかないと言われました。私の両親も年をとってきているし、「アルツハイマー型認知症」には効く薬もないというテレビの報道を聞き、介護にとても不安です。    

A:「アルツハイマー型認知症」の診断基準としては、米国の精神医学会が定めた基準である「DSM-4」の規定が、世界で一番権威があるとされています。その基準のもとでは、第一の要件が「記憶の障害」が認められることとされています。第二の要件は、失語(左脳の機能障害)、失行(運動の脳の機能障害)、失認(右脳の機能障害)、又は実行機能の障害(前頭葉の機能障害)のいずれかが認められることとされています。

        

第二の要件とされている「失語」や「失行」や「失認」は、回復可能な早期の段階(軽度認知症「小ボケ」及び中等度認知症「中ボケ」)では出てこない重い症状なのです。回復困難な末期段階の「重度認知症」(大ボケ)の段階になって且つMMSの得点が10点以下のレベルになって初めて出てくる、とても「重い症状」なのです。

一方で、第一の要件とされている「記憶の障害」について程度の規定がない(或いは、前頭葉などの脳との関係が規定されていない)ことに問題があるのです。30代の後半にもなると、脳の機能が正常レベルであっても普通に出てくる「軽い症状」も「記憶の障害」なのです。それは、正常者に見られる、いわゆる「物忘れ」の症状です。この症状は、加齢により頻度が増えてくる「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)の軽度の機能障害による「とても軽いもの」なのです。

       

そのため、第一の要件と第二の要件とを同時に充足するには、言い換えると第一の要件と第二の要件との整合性を考えると、第一の要件に言う「記憶の障害」は「失語」や「失行」や「失認」などの症状が確認できる「重度認知症」のレベルで初めて出てくる記憶障害、直前に起きたことさえ覚えていないような、「重度の記憶障害」になってしまうのです。この記憶の症状は、「前頭葉」がほとんど機能していないために「記銘」することさえ極めて困難な機能レベルで出てくる「とても重いもの」なのです。

「重度の記憶障害」を含む「重度の認知症」の症状を表出している源である脳の働きを考えると、「前頭葉」は殆ど機能していない上に、「左脳」も「運動の脳」も「右脳」もわずかに働く程度の機能しか残っていない段階になるのです。その脳機能レベルのアウト・プットとして、「失語」や「失行」や「失認」の症状が出ているのです。認知症の専門家である精神科医が、「DSM-4」の基準に従って診断すると、「前頭葉」は殆ど機能していなくて、「左脳」や「運動の脳」や「右脳」がわずかな働きしか残っていないレベル、私達の区分で言えば、「重度認知症」(大ボケ)の段階にならないと「アルツハイマー型認知症」とは判定してはならないということになる訳です。ここまで脳の機能が衰えてきていると、せっかく見つけても、「治らない病気」になってしまうのです。(ここをクリックしてください

      

世界的に権威があるとされる「DSM-4」の指針に基づいて「アルツハイマー型認知症」の診断を行うのが一般的なのです。そうすると、「重度の記憶障害」と「重度認知症」の後期に出てくる重い症状である「失語」や「失行」や「失認」を基準に判定することとなることが理解されたでしょうか。その結果、「アルツハイマー型認知症」は、回復困難な末期段階、私達の区分で言う「重度認知症」(大ボケ)の段階でしか見つけることが出来ないことになるのです。

指標が間違っている(重度の段階しか見つけられないものになっている)ために、見つけるのが遅すぎるのです。この段階でせっかく見つけても手遅れ、ここまで脳の機能が衰えてきていると、回復(正常レベルへの脳機能の回復)させるのは困難なのです。認知症の専門家とされる精神科医は、「DSM-4」の規定の問題点に早く気づいて欲しいと思うのです。(ここをクリックしてください

       

アルツハイマー型認知症は、「治らない病気」ではないのです。早期の段階で見つければ治せるのです。但し、世界で最も権威があるとされる「DSMー4」の指針に基づいて診断している限り、「アルツハイマー型認知症」は、原因も分からないし治らない病気ということにされてしまうのです。「DSM-4」は、改訂が検討されていると聞きます。その重大な誤りに早く気づいて、回復可能な早期の段階が見つけられるような、正しい定義をしてほしいと思うのです。       

(コーヒー・ブレイク)「アルツハイマー型認知症」の最初の段階である、「軽度認知症」(小ボケ)の段階では、「前頭葉」の機能が異常なレベルにあるだけで、「左脳」も「運動の脳」も「右脳」も正常レベルにあるのです。従って、失語(左脳の機能障害)の症状も、失行(運動の脳の機能障害)の症状も、失認(右脳の機能障害)の症状も出てこないのです。この段階で認められるのは実行機能の障害(前頭葉の機能障害)の症状だけなのです。(ここをクリックしてください

注)本著作物(このブログA-45に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

   エイジングライフ研究所のHP(ここをクリックしてください)

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認知症の主な種類とその比率 Q/A Room(A-44)

2012-06-04 | Q/A 認知症の種類と比率

Q:わが国では、認知症のお年寄りがどんどん増えてきているそうです。厚生労働省の予測でも、今後さらに高齢化が進む中で、認知症のお年寄りの数も更に増加していくと予測されているようです。少子高齢化が進む中で、認知症のお年寄りがどんどん増加していくと言われると、介護保険制度が立ち行くのか不安になってくるのですが。

 A:一口に認知症と言っても、いろんな種類があるのです。発病の原因(メカニズム)も色々ですし、治せるものもあれば、治せないものもあるのです。然も、認知症全体に占める割合も全く異なるのです。テレビの放送でいろいろな種類の認知症を重要度の区分もせず並列に取り上げるので、余計に訳が分からなくなるのでしょう。但し、問題は、それほど難しくはないのです。ただ単に怖がるだけでなく、認知症に関する正しい知識を持って、適切な対応をしていただければ少しも怖がることはありません。

      

テレビで取り上げられることが多いのが、認知症の代名詞のように言われる「アルツハイマー病」です。「アルツハイマー病」は、30代から50代までの若い年齢を対象に発病するので、厳密な呼称では「早発型アルツハイマー病」(或いは、「若年性アルツハイマー病」)とも言います。発病の原因は遺伝子の異常で、特定の遺伝子に生まれつき異常がある人だけが、このタイプの認知症を発病します。    

働き盛りの「若い年齢」で発病し、僅か2~3年で寝たきり状態になるほど、症状の進行が極めて急激です。「アルツハイマー病」は、現代の医療技術では、治すことも予防することも出来ません。幸いなことに、「アルツハイマー病」が認知症全体に占める割合は、1%程度です。一般の皆さんの場合は、この本来の「アルツハイマー」(厳密な呼称では、「若年性アルツハイマー病」)の人にお目にかかることは極めてまれなはずです。

       

「二次性認知症」は、いろいろな原因で発病しますが、主として脳腫瘍や正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫等の病気が原因で認知症を引き起こします。早期に発見し適切な手術が行われれば、回復することが出来ます。「二次性認知症」が、認知症全体に占める割合は、2%程度です。

「脳血管性認知症」は、脳出血や脳梗塞など、脳を養う血管からの出血や血管の詰まりが原因となって必要な量の血液が脳に送られなくなり、脳の機能が全般的に低下したため認知症を引き起こすものを言います。「脳血管性認知症」の数も少なくて、認知症全体に占める割合は多く見積もっても5%程度です。「脳血管性認知症」の割合が15%程度と主張する人達がいますが、「アルツハイマー型認知症」との見分けが付けられなくて混同しているのです。何年もかけて徐々に認知症の症状があらわれてくるような「脳血管性認知症」はないのです(このタイプの「脳血管性認知症」が10%を占めるとその人達は主張しています)。

その他にも種類がありますが、量的には取り上げるほどのものではありません。

       

認知症の大多数、90%以上を占めるのが「アルツハイマー型認知症」です。「アルツハイマー型認知症」は、主に60歳以降の高齢者を対象に発病するので、厳密な呼称では「晩発型アルツハイマー病」、或いは「老年性アルツハイマー病」とも呼ばれます。皆さんが普段お目にかかるのは、実は殆どがこのタイプの認知症なのです。「アルツハイマー型認知症」は、60代より70代、70代より80代、80代より90代と高齢になるほど発病する人の年代ごとの割合が多くなっていきます。

その「アルツハイマー型認知症」については、原因も分からないし、治すこともできないと言うのが認知症の専門家たちの主張です。このブログで説明してきたように、「重度の記憶障害」の医療指針に基づいて見つけるので、回復困難な「重度認知症」の段階でしか見つけることが出来ないだけなのです。「アルツハイマー型認知症」は、廃用性の「生活習慣病」であり、早期の段階(「軽度認知症」及び「中等度認知症」)で見つけると治す(脳の機能を正常レベルに「回復」させる)ことが出来るし、脳を活性化する「生活習慣」を日常生活の中に組み込むことで「予防」することもできるのです。「アルツハイマー型認知症」も一般の病気と同じなのです。予防することができるし、早期発見による早期治療が肝心なのです。

       

予防対策もなく、回復可能な早期段階(軽度認知症「小ボケ」及び中等度認知症「中ボケ」)の発見もせず、回復困難な末期段階の「重度認知症」(大ボケ)の段階でしか見つけないで(何も手を打たないで)放置されているのが現状です。このままでいけば、「アルツハイマー型認知症」のお年寄りが増え続けるとの見通しの下、「介護保険」制度の財政面からの破たんが目に見えてくるのです。施設や病院での介護から「在宅での介護」に軸足を移す程度の施策では、この状況を解決することは困難です。「アルツハイマー型認知症」の早期診断(発見)と回復並びに予防のシステムをどのように構築し継続的に実践できるかが、今後のわが国の「介護保険」制度の維持及び適切な運営を確保する上で極めて重要なテーマとなるのです。

(コーヒー・ブレイク) 「アルツハイマー病」と「アルツハイマー型認知症」とをまとめて「アルツハイマー病」と呼ぶ人達がいますが、世間一般の人達に誤解と不必要な恐怖を生むだけです。まさしく「百害あって、一利なし」だと思うのです。両者は解剖所見ベースでは似ていても、発病の原因も、発病のメカニズムも、発病後の症状の進行の度合いも、回復の可能性も全て異なるものなのです。それぞれの呼称を「若年性アルツハイマー病」、「アルツハイマー型認知症」(或いは、「老年性アルツハイマー病」)と使い分けるべきだと思います。

注)本著作物(このブログA-44に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

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