認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

脳血管性認知症に対する問題の提起(A-11)

2012-03-18 | 脳血管性認知症の診断と誤診の問題

ところで前回の報告で、脳出血や脳梗塞の後、直ぐに認知症と認められるような程度や態様の症状が出てくるケースは、とても少ないと言いました。 専門家の間では、「脳血管性認知症」と診断されるケースの多くのものは、認知症と認められるような程度や態様の症状が直ぐには出てこないで、「何年もかけて、じわじわと症状が出てくる」ものが主流だとされています。そして、それらは、“まだら性”とか“多発梗塞性”の「脳血管性認知症」と呼ばれています。

  “ま だら性”の脳血管性認知症の特徴として、初期には、記憶力が低下している一方で、理解力や判断力がしっかりしていて、更には人格が保たれていて、「認知症の症状が“まだらに”出てくる」のが特徴とされています。

初期の症状を発現させている前頭葉の働き具合を、前頭葉の機能レベルを調べることが出来る「かなひろい」テストなどの神経心理機能テストを使って、正常レベルかどうかを調べてみないと、「初期の特徴とされている症状」がどのレベルの脳機能の結果として発現したものなのかが不明なのです。理解力や判断力がしっかりしているとか、人格が保たれているという表現の意味している程度や内容自体がとても「あいまいで、疑わしい」ものなのです。

前頭葉の機能レベルを計測し評価することを怠っている上に、重度認知症のレベルにならないと認知症であるとは考えない基準によって診断していたのでは、既に前頭葉の機能が異常なレベルに衰えているレベル、私たちが指摘している軽度認知症(小ボケ)や中等度認知症(中ボケ)のレベルであっても、理解力や判断力がしっかりしているとか、人格が保たれているとかの誤った評価をしてしまうことになるのです。

この初期の症状の特徴とされていることを言い換えれば、「初期には、前頭葉の機能は正常レベルに保たれている」と言っているのと同じことなのです。前頭葉は、脳全体のコントロールタワーであり、最高次の機能なのだから、前頭葉が正常に機能しているということは、脳の全般的な機能の低下が起きていないことを意味します。その初期の何年かの間で、前頭葉の機能が正常レベルに保たれている期間は、認知症を発病していなくて、左脳や右脳や運動の脳の局部的な機能の障害による「後遺症」の症状が出てきているだけということなのです。「まだらな症状が、じわじわと出てくる」と言っているのは、認知症の症状ではなくて、単なる「後遺症」としての症状のことなのです。

本人やその家族の側にとって、局部的なものとはいえ、「脳梗塞や脳出血」は重大な病気です。診察を受けて、局部的な脳出血や脳梗塞であれ、重大な脳の病気が発生した結果としての後遺症の出現に驚くと同時に、それを怖がり、いろいろな後遺症が発現しているその状態を恥ずかしがり、その状況からくる肉体的精神的負担に負けてしまうことがとても多いのです。

 その結果、局部的なものであれ、脳梗塞や脳出血という脳の機能の障害による後遺症の発現を「キッカケ」として、趣味も遊びも人付き合いも運動もしない、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まるケースがとても多いのです。

脳を不十分にしか使わない「単調な生活」が何年も継続していく中で、前頭葉を含めた脳の機能が廃用性の機能退化を起こしてきて、その機能退化の進行につれて、アルツハイマー型認知症の症状が、軽度認知症(小ボケ)、次いで中等度認知症(中ボケ)、最後に重度認知症(大ボケ)の症状として、段階的に進行して現れてくるのです。

”まだら性”の「脳血管性認知症」の初期の症状の期間が終わって以降に最終的に認知症の症状であると診断されている症状(私たちの言う「重度認知症」)へと症状が進行していく過程は、後にそのメカニズムについて詳説する「アルツハイマー型認知症」の「小ボケ」、「中ボケ」を経て最後に「大ボケ」の段階へと段階的に進行していく進行過程に見られるものなのです。

専門家たちは重度の記憶障害を認知症と診断する第一の要件と考えているので、重度の記憶障害の症状があらわれてくる認知症の段階(私たちの区分で言えば、「重度認知症(大ボケ)」の段階)にならないと認知症とは考えないのです。そのため、回復可能な軽度の認知症(小ボケと中ボケ)の段階は、記憶障害の程度を含めて軽度の症状が主となるので、見落としているのです。その期間中は、認知症の症状が”まだら”に現れていると考えているのです。そして、重度の症状が継続的に現れるようになる(私たちの区分で言う「重度認知症」の段階)と、”まだら”な症状の期間が終わったと考えているのです。

“まだら性”とか“多発梗塞性”の「脳血管性認知症」と世間で呼ばれているものの多くは、私たちの見解からすれば、「脳血管性認知症」ではないのです。本来は「アルツハイマー型認知症」と診断されるべきものが、”まだら性”、或いは”多発梗塞性”の「脳血管性認知症」と誤診されているだけなのです。

「脳血管性認知症」が認知症全体に占める割合を最近の有力説でさえ15%~20%としているのに対し、私たちは5%と主張していますが、アルツハイマー型認知症であるはずのものを脳血管性認知症としているという上記の誤った診断が両者の数値の差となって現れていると考えられるのです。(難しい話は、これで終わりです!)。

 上記の誤りが是正されることになれば、認知症の大多数はアルツハイマー型認知症が占めることとなり、アルツハイマー型認知症の早期発見による回復、或いは予防というテーマが、喫緊の「国民的な課題」となるのです。これまでの報告で何度も説明しているように、アルツハイマー型認知症は生活習慣病であり、早期発見(小ボケと中ボケの軽度な段階の認知症の発見)と脳リハビリにより「回復」させることも、脳の使い方という視点からの「生活習慣の改善」により「予防」することもできるものだからです。

  注)本著作物(このブログA-11に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

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