認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

アルツハイマー型認知症は治らない病気とされる本当の理由(A-90)

2013-07-15 | アルツハイマー型認知症の早期診断

○  「アルツハイマー型認知症」は、原因不明で治らない病気というのは、真実なのでしょうか、それとも何か重大な誤り(誤解、或いは見落とし)があるのでしょうか?

世間では(米国を含め世界中で)認知症の専門家達(医師や研究者達)から、「アルツハイマー型認知症」は、発病の原因もわからないし、治すこともできないし、予防することもできないタイプの認知症(「原因不明で、治らない病気」)とされています。本当にそうなのでしょうか?

私のこの「ブログ」を読んでくださっている方ならもうお気づきのように、「アルツハイマー型認知症」というタイプの認知症は、そもそも「原因不明とか、治すことができないとか、予防することができないと」いう病気ではないのです。診断に際して、「米国精神医学会」が定めている「アルツハイマー型認知症」の診断基準である「DSM-4」の内容を(信じきっていて疑うこともなく)金科玉条として、その診断基準に依拠して診断していることが原因に過ぎないのです。「見つけるのが遅すぎる」、「末期の段階で見つけるので治せない」、今日は、そのことを、具体的な事例を取り上げながら説明します。

我が家の庭では、ブーゲンビリアが盛りです。「DSM-4」の規定の第二の要件として、「失語や失行や失認」のいづれかの症状が確認されないと、「アルツハイマー型認知症」と診断してはならないと規定されているのです。そこで、それらの症状がどのようなもので、脳全体の司令塔である「前頭葉」(前頭前野のことを言うものとする。以下、同じ)を含む脳の機能がどの程度に衰えている時に、その症状を確認することができるのかを簡単に説明しておきましょう。認知症の専門家とされる人達は、様々な程度と態様とで現れてくる「アルツハイマー型認知症」の症状をそれなりに知っていても、症状には脳の機能レベルに対応した症状があるということを知らないのです。「アルツハイマー型認知症」の全ての症状が、「重症度区分」という考えもなしに、「十把一絡げ」に扱われているのです。私たちは、「前頭葉」を含む脳の機能レベルに対応した「小ボケ、中ボケ、大ボケのつの段階に区分される症状」として指標化しています。「アルツハイマー型認知症」は、私たちの区分で言う「軽度認知症」(小ボケ)の段階で見つけると、治すこと(脳の機能を正常なレベルに回復させること)が容易なのです。「中等度認知症」(中ボケ)の段階で見つけると、治すことが未だ可能なのです。最後の、末期段階の「重度認知症」(大ボケ)の段階で見つけたのでは、手遅れ、治すことが困難(出来ない)のです。

私たちの区分で言う「重度認知症」(大ボケ)の症状が発現してくるまでに「前頭葉」を含む脳の機能が衰えてくると(脳の機能レベルが低下してくると)、もはや手遅れ、脳の機能を正常なレベルに回復させることは出来ないのです。そればかりか、「小ボケ」のレベルに回復させることも、「中ボケ」のレベルに回復させることさえも出来なくなるのです。「重度認知症」(大ボケ)のレベルにまで脳の機能が衰えてくると、身体が持つ限り認知症の症状が更に重いものになっていくだけで、大ボケのお年寄りを抱えて「介護」する家族の精神的、肉体的及び経済的な負担がどんどん重くなっていくだけなのです。

もうひとつ大切なことは、「アルツハイマー型認知症」の発病のメカニズムから考えてみて、「小ボケ」であれ、「中ボケ」であれ、或いは「大ボケ」であれ、治す(正常な機能レベルに脳の機能を回復させる)ことができる「治療薬」は、ips細胞とか、ワクチンとか、どんな手法を試みようとも、未来永劫開発することはできないのです。世界中の製薬会社が、「アルツハイマー型認知症」の治療薬を開発しようとしのぎを削っていますが、それは研究者達が「アルツハイマー型認知症」発病のメカニズムを理解していないからなのです。「アルツハイマー型認知症」を発病させる原因ではなくて、「アルツハイマー型認知症」を発病したその上に「重度認知症」(大ボケ)の段階にまで症状が進んで、更に「重度認知症」の段階を何年も患っていた結果でしかない「老人斑」や「神経原繊維変化」等が発病の原因と誤解し、「アミロイドベータ」とか「タウタンパク」とかが真犯人と考えて、出口のない迷路にはまり込んでいるだけなのです(ここを「クリック」してください)。

「失語」の症状とは、幼時からの経験によって習得した「言語」の理解と表出とが機能障害された状態に起因する症状を言います。「失語症」は、ほとんどが脳を養う血管の障害が原因で引き起こされます。ところが、脳を養う血管に何等の血管障害がなくても脳の機能が障害される場合が、「アルツハイマー型認知症」の末期段階の症状として確認されるのです。それは、「前頭葉」及び「左脳」の機能が廃用性の異常な機能低下を起こすことが直接の原因なのです。廃用性の機能低下の直接の結果として「前頭葉」を含む脳の機能低下が加速度的に進んでいった最後の段階、私たちの区分で言う「重度認知症」(大ボケ)の段階の後半になって、その段階での脳の機能レベルのアウトプットとして、そうした「失語」の症状が発現してくるのです。MMSでは、「命名、復唱、三段階口頭命令、書字命令及び文を書く」の項目がそれらの検査項目となります。これらの項目は、「アルツハイマー型認知症」の場合は、「重度認知症」(「前頭葉」の機能が異常なレベルに在って、且つMMSの総得点の換算値が14点以下)のレベルにある場合で、MMSが7点を切ってくると、そのうちの大半の人達ができなくなるのです(但し、「文を書く」の項目の分岐点はもう少し高い12点のところにあります)。

「失行」の症状とは、「運動可能な状態であるにもかかわらず、合目的々な運動ができない症状」を言い、観念失行、着衣失行及び構成失行の態様が、「重度認知症」の後半になって初めて確認されるようになるのです(こうした重度の症状は、MMSの総得点が一桁の得点になってこないと、発現してくることはない極めて重い症状なのです:例として「二段階方式」30項目問診票の事例から取り上げると、「服を一人では正しく着られず、上着に足を通したりする」等があります)。それは、「前頭葉」及び「運動の脳」の機能が廃用性の異常な機能低下を起こすことが直接の原因なのです。廃用性の機能低下の直接の結果として脳の機能低下が加速度的に進んでいった最後の段階、私たちの区分で言う「重度認知症」(大ボケ)の段階の後半になって、その段階での脳の機能レベルのアウトプットとして、そうした「失行の症状」が発現してくるのです。

「失認」の症状とは、ある一つの感覚を介して対象物を認知することができない症状のことを言います。要素的な一次視覚が保たれているにも関わらず、その対象をひとつのまとまりとして把握できないので、提示された物品が何であるのかが理解できない状態なのです。形態の認知が障害されていて、物品の模写ができず、類似した視覚刺激の異同を判定することもできません。それは、「前頭葉」及び「右脳」の機能が廃用性の異常な機能低下を起こすことが直接の原因なのです。廃用性の機能低下の直接の結果として脳の機能低下が加速度的に進んでいった最後の段階、私たちの区分で言う「重度認知症」(大ボケ)の段階の後半になって、その段階での脳の機能レベルのアウトプットとして、そうした「失認の症状」が発現してくるのです。「アルツハイマー型認知症」の場合は、「重度認知症」の段階に在って、且つMMSが10点を切ってくると、そのうちの8割の人たちが、「五角形の相貫図」(五角形の一部が交わった平面図)を模写する程度のことさえできなくなります。

上記、「失語、失行及び失認」の概要を知った上で、「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルにリンクした、脳の機能レベルの直接のアウト・プットとして私たちが指標化している「アルツハイマー型認知症」の症状を読み比べてみてください(「アルツハイマー型認知症」の症状を「前頭葉」を含む脳の機能レベルと直接リンクさせて、三段階に区分し、指標化している内容については、ここを「クリック」して参照してみてください)。私たちの区分でいう、「重度認知症」の症状(回復させることはもはや困難な、「アルツハイマー型認知症」の末期段階の症状)、その中でも更に後半になってしか発現することが確認されない症状、言い換えると「MMSの換算値が一桁にならないと発現してくることがない」症状が、「アルツハイマー型認知症」であると診断するための要件として世界的に権威があるとされるあの「DSM―4」に規定されているのです(第二の要件)。

こんなに重度の症状、「アルツハイマー型認知症」の末期の段階の症状の発現を確認できるということは、裏返して言えば、そうした症状の「震源」である脳の働きの具合、「前頭葉」を含む脳の機能レベルは、脳全体の司令塔である「前頭葉」自体が殆ど機能しないレベルに衰えてきている上に、様々な場面でその「前頭葉」と協働している左脳(「失語」の症状が確認される)も運動の脳(「失行」の症状が確認される)も右脳(「失認」の症状が確認される)さえも、その機能レベルが極めて低い状態にあるということを意味しているのです。

ここまで説明したら分かっていただけたでしょうか?「アルツハイマー型認知症」は、治すことができない病気ではないのです。治せる段階がある病気なのに、「DSM-4」の第二の要件とされる重すぎるそれらの症状が原因で(「症状」を発現している震源である「脳の機能」が衰えすぎていることが原因で)、治すことができない病気にされてしまっているだけなのです。もっとわかりやすい言葉で言えば、見つけるのが「遅すぎる」だけなのです。もっと軽い段階(私たちの区分で言う、回復させることが容易な「小ボケ」や回復させることが未だ可能な「中ボケ」の段階)の症状を「第二の要件」に取り入れて規定すべきなのです。それこそが、「早期診断」を可能とし、且つ意味あるものとする必要不可欠の条件なのです。

「早期診断」というのは、本来、その段階で見つけることにより治す(「アルツハイマー型認知症」の場合は、「前頭葉」を含む脳の機能を正常なレベルに回復させる)ことを目的としているはずです。インターネットで検索してみればお分かりのように、いろいろな医療機関が「アルツハイマー型認知症」の「早期診断」を取り上げていて、患者の呼び込みをしています。ところがその中身をよく読んでみると、早期診断により「アルツハイマー型認知症」を見つけて、(回復させる効果はないが、症状の進行を1~2年程度遅らせる効果が期待できるかもしれない)とする「薬」を何種類か服用させるだけなのです。これが、医療の現場で行われている治療の実態なのです。見つけている段階は、失語や失行や失認の症状が確認される「アルツハイマー型認知症」の末期段階の「重度認知症」(大ボケ)の段階なのです。この段階で見つけていたのでは遅すぎるのです。早期診断とは名ばかりで、治すことはできないのが診断の実態なのです。

様々な程度と態様とで発現してくる「アルツハイマー型認知症」の症状は、「前頭葉」を含む脳全体の機能レベルのアウトプットに過ぎないのです。「前頭葉の諸機能」の障害すなわち、色々な認知機能を発揮する上での基礎となる三本柱の「意欲、注意集中力及び注意分配力」の機能の障害並びに理解、考察、発想、企画、計画、観察、分析、洞察、推理、予見、シミュレーション、工夫、機転、抑制、忍耐、興味、創造、感動及び判断等の機能の障害、更にそれらに加えて最終的な実行内容を選択する上で不可欠な機能である「評価の物差し」としての評価機能の障害という「各種の前頭葉機能の障害」を基礎として、左脳、右脳及び運動の脳との協働関係による脳全体の機能レベル(機能障害の異常なレベル)のアウトプット自体が「アルツハイマー型認知症の症状」として発現してくることに気づいていないことが最大の問題なのです。

「アルツハイマー型認知症」は、「前頭葉」を含む脳全体としての機能レベル自体が認知症の症状として直接発現してくるのが特徴なのです。従って、「前頭葉」を含むどの脳の機能が異常なレベルに衰えると、どのレベルの認知症の症状が発現してくることになるのかという一定の診断基準を持たないと、正しい診断をすることもできないし、回復させることが可能な早期の段階(「小ボケ」及び「中ボケ」の段階)を見つけることもできないのです。

「DSM-4」の内容の改善を目的とするのであれば、最新版の「DSM-5」の規定では、「アルツハイマー型認知症」の末期の段階にならないと発現してくることがない極めて重度の症状である「失語、失行、失認」という症状を要件として規定している「DSM-4の第二の要件」を削除し、もっと軽い段階を見つけることができるように要件内容を改訂すべきだというのが私たちからの提言です。

○  「アルツハイマー型認知症」の段階的症状と脳の機能レベルとの関係

私たちは、「ラットの記憶」に関する行動を追ってみたり、「脳の萎縮」の度合いを調べてみたり、重度の認知症患者であった人達の脳の「解剖所見」を追ったりはしていないのです。私たちは、生きている人間の「前頭葉」を含む脳の機能レベルとその直接のアウトプットである「認知症の症状」とを、私たちが開発した「二段階方式」と呼称する「神経心理機能テスト」を活用して、20年以上も精緻なデータを取り続け、且つその成果を「アルツハイマー型認知症」に特化した早期診断と回復及び発病の予防を目的とした「マニュアル」として体系化し(マニュアルA、B及びCの三部作からなり、A4版で、総ページ数590ページの大作です。このほかに、「マニュアル使用の手引き」と脳機能データ管理及び評価ソフトがあります)、1995年以来、市町村での「地域予防活動」としての実践を指導してきているのです。そうしたデータを集積した図が、下記に掲げる(平面図と立体図)なのです。

 

この図からも分かるように、脳全体の司令塔である「前頭葉」の機能は、正常下限、「小ボケ」、「中ボケ」、更には「大ボケ」のレベルへと脳全体の機能レベルが低下していくにつれて、加速度的にどんどん働きが衰えていく(落ちていく)ことが読み取れるのです。脳全体の機能レベル(働き具合)が衰えていく結果として、次第に症状が重くなっていく(認知症の症状が重症化していく)ことが分かるのです。脳全体の機能レベルを加速度的に衰えさせている原因は、「アミロイド・ベータ」でもなく、「タウ・タンパク」でもなく、「脳の萎縮」でもなくて、使われる機会が極端に少ないがために起きてくる廃用性の機能低下なのです。その意味で、世間の権威ある人達から「原因不明の病気」と言われている「アルツハイマー型認知症」というタイプの認知症は、廃用症候群に属する単なる「生活習慣病」だということが私たちの研究と実践指導とにより分かってきたのです。

生き甲斐なく、趣味なく、交友なく、運動もせず、目標もない生活、ナイナイ尽くしの「単調な生活」を繰り返すだけの日々の生活では、使われる機会が極端に少ないが為に出番をなくした「前頭葉」を含む脳の機能が異常な機能低下を加速度的に起こしてくるのです。このことは私たち以外には誰も(認知症のどの専門家も)未だ気づいていないことなのですが、「アルツハイマー型認知症」の場合には、脳の機能に衰えていく順番があることが、私たちが開発した「二段階方式」の神経心理機能テストの3万例を超えるテスト結果データの解析から明確に確認されているのです。つまり、廃用性の機能低下が発病の原因である「アルツハイマー型認知症」の場合には、脳全体の司令塔である「前頭葉」が、最初に異常な機能低下を示すのです。次いで、MMSで計測される「左脳及び右脳」の機能項目について、「規則性」の存在というべきレベルでの「機能が衰えていく項目の順番」が明確に確認されるのです。

「アミロイド・ベータ」とか、「タウ・タンパク」とか、「脳の萎縮」とかが「アルツハイマー型認知症」発病の原因だと考えている認知症の専門家達は、この「規則性の存在」についてどう説明できると言うのでしょうか。私たちは、基礎となる脳機能データが極めて精緻なものであり、且つ極めて多数であることから、廃用性の機能低下が「アルツハイマー型認知症」発病の原因であるからこそ、上述したような、「脳機能低下」の順番があるのだと確信を持って主張しているのです。

度々このブログの中で言及し問題提起してきたように、私たちの主張(見解)が正しいことを疫学的に証明してくれることになるのが、「東日本大震災」の被災地の高齢者達に起きてくる、極めて高率で極めて多数の「アルツハイマー型認知症」の患者の発生と症状の重症化の進展という事実なのです。但し、世間では、上述したように、「DSM-4」に規定されている「失語や失行や失認」といった「重度認知症」(大ボケ)の段階でも後半にならないと発現してこない極めて重度の症状の確認を要件としているが為に、「小ボケ」や「中ボケ」の段階で発現して来ている症状を「アルツハイマー型認知症」の症状とは考えないで、「不活発病」とか「老化現象」などと命名し、或いは誤解して見落としているのです。くり返し指摘しているように、「小ボケ」の段階で見つけると回復させることが「容易」であり、「中ボケ」の段階で見つけると回復させることは「未だ可能」であるが家族も本人も大変な努力が必要となり、「大ボケ」の段階で見つけると回復させることはもはや「困難」になるのです。

震災が発生してから2年と4ヶ月が経過した現在、極めて多人数の「小ボケ」や「中ボケ」の人達が既に発生しているはずなのです。この先2~3年が経過すると、その人たちの症状が更に進んできて、「中ボケ」や「大ボケ」の段階の症状を示すことになるのです。その時になって初めて、認知症の専門家達が大騒ぎすることになると思うのですが、「大ボケ」の段階にまで進行させてしまっては、「回復」への道はもはや閉ざされてしまい、「介護」の道だけが残されてしまうことになるのです(「アルツハイマー型認知症」の症状の進行期間については、ここを「クリック」してください)。

注)本著作物(このブログA-90に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

エイジングライフ研究所のHPここを「クリック」してください。

機能からみた認知症の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

http://blog.goo.ne.jp/kuru0214/e/95c2a476097fda6da8f4056b0d03e5ad

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アルツハイマー型認知症の発病及び進行と前駆的症状との関係(A-89)

2013-07-01 | アルツハイマー型認知症の進行とその特徴

○ 厚生労働省が発表した認知症患者の予測値等に関する問題点

私がフェースブック(及びもうひとつのブログである「脳機能から見た認知症」)に載せてあるように、5月末から6月の中旬までドイツに行ってきたのです。ドイツ南部のミュンヘンからピィディングを経てオーストリアのザルツブルク周辺を中心にして、高校の時の同級生を含む同期生達男女計7人で、大型のボックスワゴンを借りて周遊してきたのです。たまたま、「百年に一度」と言われる大洪水に遭遇はしたのですが、レンタカーでプライベートの旅だったおかげで、カーナビを頼りにルート検索して行程を様々に変更し、たまたま行き会ったレストランで旬で絶品のシュパーゲル(白アスパラガス)を食する等、それほどの支障もなく旅行を楽しめ、「前頭葉」が燃えたぎるほど活性化する濃密な時間を過ごすことができたのです。文章の合間に載せてある写真はその時に撮ったものの一部ですので、ブログを読んでくださっている皆さんも、雰囲気なりともお楽しみください。

私たちが旅行を楽しんでいる間に、厚生労働省が発表した2つの「テーマ」(「認知症患者」の総数とその「予備軍」とされる人達の「判定基準」)の問題点について、ここで少し問題を指摘しておきたいと思うのです。権威ある研究機関が調査したものを厚生労働省が発表した数値や基準なのですから、誰もがその数値や基準(「軽度認知障害」の概念とその定義)をそのまま信じるだろうと思うからです。特に、認知症専門の医師達がその基準を鵜呑みにして診断に使用する可能性が高いと考えられるので、問題提起しておきたいと考えるのです。どちらの見解を信じるかは皆さんの選択なのですが、私達は名もなく、権威には乏しくても、内容については格別の自信と確信を持って、このブログを公開していることを蛇足ながら一言付け加えておきたいと思います。

最初に取り上げるのは、厚生労働省が発表した「認知症」の人達の総数に関わる問題です。昨年の8月に発表された時の数字が300万人でした(それまでは、200万人としていた数値を一気に100万人増やして300万人に修正したのです)。今年の6月に発表された数字は2012年基準で460万人でした(65歳以上の高齢者の15%に相当する人数)。この増え方の単位の大きさから考えるに、実態として毎年それだけの人数が増えているというのではなくて、推計値の出し方或いはその根拠となる算式又は考え方自体に欠陥があると私達は考えるのです(余りにも大雑把過ぎて信頼度が低い)。その根拠と問題点を、今回のブログで提起しておきたいと考え、予定していたテーマを急遽変更して、この問題を取り上げることにしたのです。私たちは、「アルツハイマー型認知症」に特化して、その研究や市町村の「地域予防活動」の指導をしていますので、ここでも「アルツハイマー型認知症」に関わる問題という視点からの指摘ということになります。

いろいろな種類が数多くある認知症の大多数、90%以上を占めるのが「アルツハイマー型認知症」ですので、認知症の患者の総数が460万人いるということから計算すると、「アルツハイマー型認知症」の患者数は約410万人ということになります。但し、認知症の専門の医師達は、米国精神医学会が定める「アルツハイマー型認知症」の診断規定である「DSM-4」を基準として、「アルツハイマー型認知症」の診断をしているのが通常なので、その第二の要件に規定されている「失語や失行や失認」等の極めて重度の症状が確認されないと、「アルツハイマー型認知症」とは診断しないのです。従って410万人という人数は、「失語や失行や失認」という極めて重度の「認知症の症状」を呈しているとされる人達、言い換えると「アルツハイマー型認知症」の末期段階の人達(私たちの区分で言う「重度認知症」の段階の人達)だけの数ということになるのです。ところが、私たちが開発した「二段階方式」を活用して、脳の機能レベルとその直接のアウトプットとしての症状を精緻に調査し判定した実態としては、それよりも症状の程度が軽い「アルツハイマー型認知症の症状」を発現している極めて多人数の高齢者が存在しているのです。その人達は、上記の数字には、算入されていないということが重大な問題なのです。

このブログで何度も指摘し説明しているように、「アルツハイマー型認知症」だとは考えないで、何らの脳リハビリ対策も施さないままに2~3年の間放置していると、「小ボケ」は「中ボケ」の段階に進み、「中ボケ」は「大ボケ」の段階に進むのです。「小ボケ」は回復させることが容易、「中ボケ」は回復させることが未だ可能、「大ボケ」になってしまうと回復させることは困難というのが、極めて多数例での体験に基づく、私たちの「経験法則」なのです。私たちの区分で言う「軽度認知症」(小ボケ)の段階の人達と「中等度認知症」(中ボケ)の段階の人達は、「二段階方式」などの神経心理機能テストで脳全体の司令塔である「前頭葉」(前頭前野のことを言うものとする。以下、同じ)を含む脳の機能レベルを確認すれば、認知症の症状を発現していることが容易に確認できるにも拘わらず、上記の人数に算入されていないことが大問題なのです(「小ボケ」及び「中ボケ」段階の人達の認知症の症状については、ここを「クリック」してください)。

なお、医療機関で脳の機能レベルを判定する場合に神経心理機能テストであるMMS等を使用しているところがたまにありますが、MMSでは肝心の「前頭葉」の機能レベルを測定することはできないのです。脳全体の機能のメカニズムからして、「前頭葉」の機能レベルを測定することなしには、「小ボケ」や「中ボケ」の的確な判定は困難であり、症状に偏った、いい加減な判定になってしまうのです。その上、上記の人数に算入されていない、「小ボケ」と「中ボケ」の数を合算した人数は、「重度認知症」(大ボケ)の段階の人達の人数の4にもなるというのが私たちの推計です。これが、厚生労働省が発表した数字の1つの問題なのです。

(コーヒー・ブレイク)「重度認知症」(大ボケ)の段階にまで脳の機能が衰えてくると、回復させることは困難となり、対応策としては「介護」しか残されていないのです。その上、回復させることが困難なだけでなくて、「アルツハイマー型認知症」の特徴として身体がもつかぎりその間ずっと症状は重症化していくので(脳の機能の衰えに対応して、発現してくる症状が更に重いものになっていく)、介護する側の家族の精神的、肉体的および経済的な負担がとても大きくなっていくことが問題なのです。「重度認知症」のお年寄りを抱え支える人達の人生をどのように考えるのかという問題をここで提起しておきたいのです。「アルツハイマー型認知症」は、廃用症候群に属する単なる生活習慣病であり、早期診断により(「小ボケ」及び「中ボケ」の段階で見つけること)回復させることもできるし、更には発病を予防することもできる認知症だからなのです。「予防」と早期診断による「回復」というテーマをシステム化し、社会の中に構築し、そこで浮いてくる資金を使うことによって、家族介護に頼るのではなくて「施設で介護する」という政策が可能となるのです(ここを「クリック」してください)。

本題に帰って、認知症が専門の精神科医は、米国精神医学会が定める「DSMー4」の規定に依拠した基準で「アルツハイマー型認知症」の有無の診断を行うために、その第二の要件に規定されている「失語や失行や失認」といった「重度認知症」(大ボケ)でも末期にならないと発現することがない「極めて重度の症状」を確認できないと、認知症とは診断しないのです。世界中の認知症専門の医師たちが診断の基準に採用するくらいだから、権威は世界一なのでしょうが、回復させることが困難な末期の段階で見つけているだけなのです。まさしくそのことが原因で、「アルツハイマー型認知症」は、「回復させることが出来ないし、予防することもできない」原因不明の病気にされてしまっているのです(そもそもこの見解自体が重大な誤りであって、見つけるのが遅すぎるだけなのです)。失語や失行や失認という極めて重度の症状だけを取り上げて、且つその症状に限定して、「アルツハイマー型認知症」診断の第二の要件としているDSMー4」の規定のせいで、早期の段階で見つけると回復させることができる病気なのに、「原因不明で治らない病気」にされてしまっているのです。

DSMー4」の規定が幅を利かせている結果として、失語や失行や失認などの重い症状が発現してきていないもっと軽い段階、私達の区分で言う「軽度認知症」や「中等度認知症」の段階で発現してきている症状は、認知症の症状ではなくて、不活発病や単なる老化現象だと考えられ、見過ごされているのです。もっと軽い段階を見つけることが出来る基準に変更すべきなのですが、それも、脳全体の司令塔の役割を担っている「前頭葉」の働きの仕組みや「正常老化」の性質或いは、「意欲と注意の集中力と注意の分配力」という「前頭葉」の三本柱の機能等に対する理解がない現状では、どんなに高名な学者をどれだけ動員したところで無理なことと言わざるを得ないのです(ここを「クリック」してください)。あと2~3年が経過すれば、東日本大震災の被災地の極めて多数の高齢者達の間に、日本の他のどの地域にも見られない極めて高い割合で起きてくる、「アルツハイマー型認知症」の発病と重症化の現象が、このブログで公開している「アルツハイマー型認知症」発病の原因とそのメカニズムについての私達の主張が正しいことを、疫学的に証明してくれることになるのです。

ところで、「若年性のアルツハイマー型認知症」などという言葉が認知症の専門家達から提起され、「働き盛りの50歳代でアルツハイマー型認知症を発病する人達が増えてきている」などとして、テレビなどでも取り上げられているのですが、50歳代で「アルツハイマー型認知症」を発病する人は、極めてまれなケースにすぎないことを指摘しておきたいのです。このブログの中で何度も言及してきたように(「症例を自らの手で多数診断している人なら分かるように)、「アルツハイマー型認知症」の発病は、加齢(60歳を超える年齢)」という要件が、発病の第一要件になるからです。「若年性認知症」とは、本来遺伝子の異常が原因で若年者を対象として発病するのが特徴である「若年性アルツハイマー病」のことであって、その数は、認知症全体の1%程度を占めているにすぎないのです。一部のマスコミ(学者)が騒いで取り上げていて、働き盛りの50歳代で発症するとされる所謂「若年発症のアルツハイマー型認知症」とは、(側頭葉性健忘症などの認知症ではないが、認知症と紛らわしい病気)をよく知らないがために、誤診し或いは誤解している医師や学者の見解の受け売りにすぎないのです(ここを「クリック」してください)。反響が大きいだけに極めて問題だと思うのです。

そもそも、「アルツハイマー型認知症」(老年性アルツハイマー病とも呼称される)であれ、「アルツハイマー病」(若年性アルツハイマー病とも呼称される)であれ、認知症を発病している限りは「前頭葉」の働き具合(機能レベル)が異常なレベルにあることが一番の特徴であり、真っ先に確認されるべき要件なのです。ところが、上述の「側頭葉性健忘症」は、重度の記銘障害(新しい情報が記憶できない)を特徴としながらも、「前頭葉」の働き具合が正常なのが特徴なのです。誤診や誤解をしている人達は、「前頭葉」のことを失念しているか、知らないか、機能レベルを確認する手技を持ち合わせていないかの、いづれかなのです。

最後に、厚生労働省が発表した内容についてのもう1つの問題について、問題を指摘しておきたいと思います。それは、「アルツハイマー型認知症」の「前駆的な段階」の判定(診断)基準として提唱されている、「軽度認知障害」(MCI )という概念が抱えている問題です。権威ある人達は、「軽度認知障害」(MCI)なる概念を持ち出して、認知症になる可能性がある「軽度認知障害」の高齢者も約400万人いると推計されています。65歳以上の4人に1人が認知症の“予備軍”ということのようです。しかも、認知症の予備軍とされる人達、「軽度認知障害」と判定される人達のうち最終的に認知症を発病するとされる人たちは、その僅か10~15%程度だと予測されてもいるのです。

そもそも、「MCI」(mild cognitive impairment)の概念は、「軽度認知障害」、或いは「軽度認知機能障害」と訳されていて、種々の認知症(特に、「アルツハイマー型認知症」)に進行する可能性がある、認知症の前駆状態に関わる概念とされているのですが、これにも大きな問題があることを指摘せざるを得ないのです。MCIは、日常生活は送れるが、1日前の出来事を忘れることがあるなど「認知機能」が低下した状態を言い、「認知症ではないが、アルツハイマー型認知症に進行する場合が相当程度考えられる」とされていて、正常加齢と認知症との間に位置する知的グレイゾーンとしてクローズ・アップされてきた概念なのです。

このMCIという概念もそれなりに権威があるとされているのだろうとは思いますが、脳の機能を取り上げながら、そもそも脳全体の司令塔の役割を担っている「前頭葉」を含む脳の機能レベルが取り上げられないで、且つそのアウト・プットである症状(然も、「記憶の障害」を中心とした極めて対象範囲が広くて、且つその程度及び態様が曖昧な症状)だけを選択的に取り上げて、「アルツハイマー型認知症」の前駆的な状態を判定する基準としていること自体が、判定基準としては、適切な機能を発揮し得ないと考えるのです(取り扱う医師の考え方次第で、「アルツハイマー型認知症」の前駆的なものでもないのに「前駆的症状」と診断してみたり、或いは「アルツハイマー型認知症」の症状そのものであるのに「前駆的な症状」と診断されるというようなことが、しばしば起こりうると考えられるからです)。DSMの規定のように、末期の段階にならないと発現してくることがない極めて重い症状を「診断の要件」としているがために、せっかく見つけても手遅れ(治せる可能性がない)となっているのに対して、MCIの場合は、もっと軽い段階をみつけようとする姿勢或いは考え方自体は素晴らしいと思うのですが、「記憶を中心」とする症状に目が向きすぎていたり、相変わらず程度や態様についての客観的な基準がない(私たちが採用しているような「前頭葉」を含む脳の機能レベルというような客観的な基準がない)ところに重大な問題があると言わざるを得ないのです。

 「前頭葉」の働きが異常なレベルになってくると、左脳も右脳も運動の脳も正常な機能レベルにあろうとも、その条件下での脳全体としてのアウトプットは、異常なものとなり、認知症の症状を示すのです。この段階が、私たちの区分で言う「軽度認知症」(小ボケ)の段階であり、「社会生活面」に明確な支障が出てくるのです。この段階を放置しておくと、「前頭葉」の機能低下がさらに加速度的に進行していく中で同時に、「軽度認知症」の段階では未だ正常な機能レベルにあった左脳、右脳及び運動の脳も異常なレベルに機能が低下していくのです。この段階を私たちは、「中等度認知症」(中ボケ)と定義しているのですが、この段階での脳の機能レベルのアウトプットは、「家庭生活面」に明確な支障が出てくるのです

世間では、上述したように、DSMの規定に依拠した「アルツハイマー型認知症」の診断を行うために、失語や失行や失認といった私たちの区分で言うところの「重度認知症」(大ボケ)の段階でも後半にならないと発現してこない極めて重い症状が確認されないと「アルツハイマー型認知症」とは診断されないのです。そのため、私たちが開発した「二段階方式」のような神経心理機能テストを活用して判定すれば、「前頭葉」を含む脳の異常な機能レベルとその直接のアウトプットである認知症の症状が確認されるにも拘わらず、「アルツハイマー型認知症」そのものであり、回復させることが可能な早期の段階である「軽度認知症」(小ボケ)も「中等度認知症」(中ボケ)も、認知症とはされないで見落とされているのです。その問題を解決することを目的として考案されたのかどうかは知りませんが、「軽度認知障害」(MCI)などという極めて曖昧な基準に頼っていたのでは、これまた見落とされてしまうことになるのではと危惧しているのです。

「認知機能」という表現を使用しながらも、認知機能の根幹をなす「前頭葉」の機能レベル及びその三本柱の機能である「意欲、注意の集中力及び注意の分配力」の機能レベルを客観的に計測し判定することもしないで(その客観的な手技さえ持たないで)、更には、「DSM-4」の改訂版である最新の診断基準「DSM-5」では捨て去られた、「記憶の障害」という極めて曖昧な概念(「記憶の障害」の程度を規定する基準さえも持たない)を未だに判定の重要な要素とするMCI(軽度認知障害)という概念/基準は、個別ケースでの医師による判定結果がそれぞれに異なる危険を内包していることを指摘し問題提起しておきたいのです。

 注)本著作物(このブログA-89に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

エイジングライフ研究所のHPここを「クリック」してください)

 脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする