認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

物忘れは認知症の始まりなのか Q/A Room(A-46)

2012-06-14 | 認知症に対する正しい知識のQ&A

Q:70歳になる父がたびたび「物忘れ」をするので、病院に連れて行って診てもらったところ、診察を受けた精神科医から「軽度認知障害」だと言われました。認知症の前駆的なものであり、6~7年後には「アルツハイマー型認知症」を発病する可能性が高いと言われました。アルツハイマー型認知症は、発病の原因がわかっていないので、打つ手はないということでした。

        

A: 認知機能が軽度に低下した状態を「軽度認知障害」(Mild Cognitive Impairment : MCI)と呼び、認知症でも正常でもなく、「認知症」への「前駆的な状態」を言うものと定義されています。「脳の機能レベル」との関係の定義ではなくて、「症状」を基準とした診断基準であり、然も「記憶に関する訴え」を要件にしていたり、或いは、「客観的な認知障害があること」を要件にしているのです。

客観的な認知障害と言われても、例えば「物忘れ」を例に取り上げればわかるように、「脳の働き」との関係で規定され且つその「程度」が限定されていないのでは、言葉の遊びに過ぎないのです。意識的に行われる行為の世界をテーマとして取り上げる以上、「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)の機能及びその機能レベルとの関係が定義され且つその発現としての症状が程度と態様とを限定して定義されていない限り、感覚的な内容にすぎず、「客観的な基準」として使用できない欠陥があると言わざるを得ないのです。

       

私達は、専門家たちが認知症ではないとして見逃している「アルツハイマー型認知症」の早期の段階、私達の区分で言う「軽度認知症」(小ボケ)及び中等度認知症(中ボケ)について、「前頭葉」を含む脳の働きとその機能レベルとの関係及びそれぞれのレベルで「特徴的」(限定的)に発現する「症状」との両面からこれらを定義しています。このような定義がなされて初めて、「客観的な指標」となりうるのです。(「小ボケ」については、ここをクリックしてください)。(「中ボケ」については、ここをクリックしてください)。


       

 「MCI」などと言われるといかにも専門的な響きがありますが、「認知機能の軽度な低下」を示す客観的な基準もありません。脳の機能という面から言うと、前頭葉を全体の司令塔として、左脳、運動の脳及び右脳との共同により「認知」が行われるのです。状況を判断し、テーマを企画し、実行する内容を組み立て、結果をシミュレーションし、必要な修正を加えて、最終的な内容を決定し、実行の指令をする。これらはすべて脳の司令塔の「前頭葉」の重要な機能なのですが、それぞれの工程には、「認知機能」が常になくてはならない中核の機能として係わっているのです。

意識的な行為における認知機能の発現(内心の意思並びに行為及び症状)には極めて多くの種類と程度と態様があるので、問題とされる「認知機能の軽度な低下」がどの工程で起きるどの種類のもので且つどの程度のものなのか或いはどのような態様のものなのかを客観的な基準で定義することが出来ていない(限定できていない)のです。従って、「診断基準」と言いながら、脳の機能面からでなくて機能レベルのアウトプットである症状に頼ったものになってしまっているのです。「軽度認知障害」の定義のレベル自体が、「診断基準」と言えるような程度には程遠いものというしかない内容のものなのです。

        

その上「軽度認知障害」では、「アルツハイマー型認知症」への移行率が取り上げられていて、10%から15%の数値が取りざたされています。「アルツハイマー型認知症」の発病原因も不明であるとしつつ、「アルツハイマー型認知症」への移行率を数値化する主張には賛成できません。

「軽度認知障害」以外の要因の影響があるのかないのか、あるとしたらどの程度の影響があるのかも分析していないのでは、そもそも「軽度認知障害」と呼ばれる病状から「アルツハイマー型認知症」の発病に至る「因果関係」そのものが不明確と言わざるを得ないからです。

        

「アルツハイマー型認知症」の診断基準自体が種々の問題を抱えていることについては、このブログでこれまでに詳しく説明してきたとおりです。「軽度認知障害」の基準についても、診断基準というには、お粗末すぎる内容と言わざるを得ないのです。「アルツハイマー型認知症」の診断基準と同様に「軽度認知障害」の診断基準も、意識的な行為における脳全体のの司令塔の働きをしている「前頭葉」の機能及びその機能レベルとの関係が見過ごされているところに最大の欠陥があるのです。

(コーヒー・ブレイク) 「物忘れ」と「アルツハイマー型認知症」の発病との間には、そもそも「因果関係」は存在しないのです。(ここをクリックしてください)。

 注)本著作物(このブログA-46に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

        エイジングライフ研究所のHPここをクリックしてください)

      脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません)

 

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