認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

発病の引き金を引くのは、記憶障害ではなくて、前頭葉の機能障害 (F-12)

2021-09-30 | アルツハイマー型認知症の予防が国民的課題

 コロナ下に 狂騒と迷走招く 世の乱れ カンナ咲く庭 忌中の札

&1 重層的な『意識』の構築、分離、統合及び管理と注意の分配力との関係

1.「意識的(目的的)」な思索、行為、行動、発言及び言動の世界と『前頭葉』の個別認知機能群(『実行機能=Executive Function』と総称)によるその認知及び機能の発揮の仕組み

意識的(目的的)に何等かの「テーマ」を実行する場面では、自発性、観察、分析、考察、洞察、推理、憶測、忖度、想像、理解、興味、関心、発想、連想、企画、計画、創意、工夫、予測、シミュレーション、検索、比較、選択、修正、整理、機転、感動、抑制、決定及び決断等、「前頭葉」の機能を構成している各種の個別の認知機能(実行機能)を正常に発揮する上で、一定レベル以上での『認知度』が確保されていることが不可欠となるのです。

認知度が一定レベル以下だと、上記に例示した「前頭葉」の各種個別の認知機能(=実行機能)自体が必要なレベルで発揮されなくなるのです。

評価の物差し(意識の首座=自我)」による評価、注意、観方に基づいて、『注意の分配力』の機能が、「実行機能」を駆使して、メタ認知し及び実体験認知する際、意欲、注意の集中力及び注意の分配力という『前頭葉の三本柱』の機能がわらないと、「認知度」と「発揮度」とが共に発揮されないこと、即ち「前頭葉の三本柱」の機能レベルと評価の物差し及び実行機能の発揮とが「リンク」していることに注意して下さい。この機能構造を、『機能発揮上の二重構造』と私たち「二段階方式」が独自に命名しているのです。

2.『前頭葉』(前頭葉の三本柱の機能、評価の物差しの機能及び実行機能から構成されている複合機能体であると、私たち「二段階方式」は理解)を中核の機能として、有機的な連携のもとに、手足となる「左脳」、「右脳」及び「運動の脳」並びに「記憶の倉庫」も参加して、脳全体で何をどのように実行するのかを組み立てるには(自分が置かれているその状況を分析し、理解し、判断し、判断に沿って実行すべき「テーマ」をいくつか発想し、その中から1つを選択し、その実行内容及び実行の程度と態様とを企画し、計画するには)、先立って且つ、常に、必要な機能レベルでの「意欲」と「注意の集中力」の継続的な発揮が不可欠となるのです。自分が現在置かれている状況と環境の判断をベースとして、様々な状況の変化を予測して考慮しつつ、いく通りかのケース・シミュレーションを経た上で最終的な実行内容及び実行の程度と態様とを決定し、実行の決断を下して最終的に実行に移すには、『注意の分配力』の機能の継続的で、高度な発揮が不可欠となるのです。これが、意識的で、目的的な世界に於ける脳の働き方なのです。

上述のように、私たちが「前頭葉の三本柱」の機能と名付けている「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」の機能が、「三頭立ての馬車」の「御者」の役割、意識的な世界における脳全体の司令塔の役割を担っている『前頭葉』の機能の構成要素である「個別認知機能群」(=実行機能)によるその認知度及び機能の発揮度を左右し、下支えする働きを担っていて、個別の「認知機能群」の機能を十分に発揮するに際しての『二重構造の関係』(私たちのネーミング)が存在しているのです。世界中の脳科学者や認知症の専門家とされる人達の誰もが、未だ気づいてはいないその「テーマ」である、「アルツハイマー型認知症」の発病のメカニズムが解明され、脳全体の司令塔の役割を担っている『前頭葉』という脳機能の働き方のメカニズムにも注目が集まることにより、「重層的」な複数の意識の同時存在並びにそれらの覚醒度及び内容を構築し、統合し、分離し、管理し、コントロールしている機能が、『注意の分配力』の機能を核心とした『前頭葉の三本柱』の機能であるという視点と理解とが、専門家達に要求されるのです。

3.そのテーマには、「前頭葉」の三本柱の機能の一つであり、廃用性の異常な機能低下という視点で言うと最初にその機能が衰えていくところの『注意の分配力』の機能が直結しているのです( アルツハイマー型認知症発病のメカニズムを解明する上で、不可欠の視点)。「意識」が存在している世界と言っても、各「意識」の覚醒度及び内容が様々に異なる(複数の意識の並存)が常態である世界、対象となる特定の「主題」に絞り込まない限り基本的には常に複数の重層的な「意識」が構築されて存在しているという、私たち人間だけに特有な「意識の世界」に、脳科学者達が未だ気づいていないのです。

或る特定の「主題」に「意識」を集中させ、一定レベルでの機能を発揮させるには、「意欲」と「注意の集中力」の機能の発揮が不可欠となり、複数の「主題」について「注意」を同時に分配させて、一定レベルでの機能を同時に発揮させるには、一定レベルでの『注意の分配力』の機能の正常な発揮が不可欠となるのです。但し、我が身が置かれている状況下での「主題」を選択し/特定の内容に意識を集中させる機能は、「前頭葉の三本柱」の機能ではなくて、別の機能である、即ち、『評価の物差し=意識の首座=自我が関与することにより/且つ同時に、「覚醒された意識」の世界が出現することになるのです。『評価の物差し』の機能には、カメラのレンズの焦点を特定の主題に選択的に切り変え、且つ絞るかのような機能が備わっているのです。

4.ナイナイ尽くしの単調な生活習慣の継続に起因する廃用性の加速度的で異常な機能低下の進行を本態とする『アルツハイマー型認知症』の場合は、脳の機能に衰えていく明確な順番があり、「前頭葉」の三本柱の機能、就中最も高度な機能である『注意の分配力』の機能から異常なレベルに衰えていくのです(前頭葉、左脳、右脳、運動の脳の順番に、廃用性の機能低下が進行して行く=アミロイドβ仮説では、説明が不可能)。私たちの区分で言う「軽度認知症」(小ボケ)の段階では、自分が置かれている状況の分析と理解と判断も、状況判断に沿った「テーマ」の発想も、テーマに沿った実行内容の企画や計画も、実行結果についてのシミュレーションも、実行の決断も、「前頭葉の三本柱」の機能、就中、『注意の分配力』の機能の発揮が異常なレベルに機能低下が進行してきていることを基礎/反映した「アルツハイマー型認知症の症状」が発現してくるのです。世界中の権威が有るとされる人たちは、この機能構造に気づいていない為に、「記憶の障害」と言う誤った的に焦点を絞って、間違った場所に、間違った方法で矢を射かけているだけなのです。

&2「アルツハイマー型認知症」の発病と「記憶障害」の要因との関係

1.生まれつき「特定の遺伝子に異常」が存する人だけを対象に発病するタイプの認知症を最初に発見したドイツ人「アルツハイマー」の名にちなんで「アルツハイマー病」と呼びます。その「アルツハイマー病」の場合は、30歳代から50歳代までの「若年で発症」するのが特徴なのです。

「器質的な原因病変」は何等存在していなくて、認知症の症状が発現して来るお年寄りが居ます。そのお年寄りの症状について、極めて重度の症状である失語や失認や失行(紛いの)症状が確認されていたお年寄りの死後の「脳の解剖所見」で、アミロイドβの蓄積に因る老人斑、タウ蛋白の蓄積に因る神経原線維変化、脳の顕著な萎縮が確認されるだけなのです。後者については、特定の遺伝子異常が確認できないものの、死後の「脳の解剖所見」で同じものが確認されることから、後者を「アルツハイマー認知症」と呼ぶことになったのです。

2.『3つの仮説』は、未だに主張されているものの、現状は瀕死の状態

アルツハイマー型認知症』(生まれつき「特定の遺伝子に異常」がある人達だけが発病の対象となり、30歳代から50代までの若年発症が特徴である所謂「アルツハイマー病」とは、全く異なるものであることに注意して下さい。

専門家と称しながら、両者を纏めてアルツハイマー病」と呼称する人たちが多いのです)の発病原因については、以下に例示する「3つの仮説」が、世界的に、今猶主張されています。「仮説」という扱いが為される意味は、各々が、「発病の原因」と主張する内容と「アルツハイマー型認知症」の発病との間の『因果関係』が存在していることについて、未だに実証できていない為に仮説の扱いが為されているという訳なのです。

➡ 『記憶障害という原因条件が存在しない限り、アルツハイマー型認知症の発病という結果は起きてこない』ということが、実証されない限り、「記憶障害」が「アルツハイマー型認知症」の発病を惹き起こす直接の原因とは言えないということになるのです。夫々が、世界的に、それなりに権威がある(支持する学者の数が、それなりに有る)とはいえ、それ等「3つの仮説」は、全てが、『アルツハイマー型認知症は、記憶の障害に起因して発病する』との想定に立脚した構想の下での単なる仮説なのです。

⇒米国精神医学会が策定した「アルツハイマー型認知症」の診断基準である『DSM-4』の第一要件が、「記憶の障害に起因した症状が発現する』と規定してある内容を鵜呑みにして、「末期の段階」にまで症状の重症化が進行していたお年寄りの死後の「脳の解剖所見」に見られる3つの特徴が「発病原因である記憶の障害を惹き起こす要因と想定」したのが、以下の(1)、(2)、(3)の「仮説」の始まりなのです(想像と憶測と推理に基づいて、記憶障害に起因して発病するという前提条件を想定し、それが原因で発病する/症状が発現すると憶測し、構想しただけの仮説に過ぎないのです)。

(1) アミロイドベータ仮説(通説=支持している学者の数が一番多いだけ):

アミロイドベータの蓄積により発現して来る老人斑が持つ毒性が、情報を連絡する神経細胞の大量死を惹き起こすことに因る記憶障害に起因して、「アルツハイマー型認知症」の症状が発現すると主張する仮説。アミロイドベータ仮説の考え方に基づいて、治療薬の開発が試みられたが、全てが失敗に終わっている。同じアミロイドベータ仮説の考え方に基づいて開発された「アデュカヌマブ」という薬は、一旦発病してからでは、治療の効能を有する薬の開発は困難であるとの考えで、アミロイドベータが僅かでも確認された段階でその除去を目的とした発病の予防薬という謳い文句ではあるが、&4に詳細を説明するように、二段階方式が解明した「アルツハイマー型認知症」の発病のメカニズムからも、発病を予防及び/又は症状の進行を抑制する効能は有していないものなのです。

(2) タウタンパク仮説:

情報を連絡する神経細胞にタウタンパクが沈着することにより、情報を連絡する神経細胞の神経原線維変化を惹き起こすことに因る記憶障害に起因して、「アルツハイマー型認知症」の症状が発現すると主張する仮説。

(3) アセチルコリン仮説:

情報の連絡に関わるアセチルコリンの不足が惹き起こすことになる記憶の障害に起因して発病すると主張する仮説。

(4) 3つの仮説は、「DSM-4 」の第一要件の内容が(正しいことを前提とした)仮説にすぎないのです。

3.記憶の障害(それに起因した症状)は、発病原因ではなくて、結果

記憶の障害というとき、彼等が取り上げるのは、物忘れの症状のことなのです。物忘れの症状が、①加齢(正常老化の要因)に起因して発現して来る軽度の物忘れから、②アルツハイマー型認知症の発病ではないが、①の物忘れの症状よりは、もう少し重い物忘れの症状と、同時に軽度の認知機能障害を伴うレベルのものという極めて曖昧で単純な基準で『MCI』(軽度認知障害)の基準 (&6で、MCIの基準が抱える問題点について詳細に説明します)が取り上げる段階の症状があり、その次に、③「アルツハイマー型認知症」の発病としての「重度の記憶障害」に起因した失語や失認や失行(紛いの)症状を初期症状とするアルツハイマー型認知症の症状が存在していると主張するのが、世界中の専門家達の言い方なのです。➡ 失語や失認や失行(紛い)の症状が認知症発病の初期症状であると主張(重大な誤り)しているのです。

(1) このMCIの基準も、「記憶の障害」(物忘れの症状)がアルツハイマー型認知症発病の有無を判定する上での核となる要因だと主張(単なる誤解)しているのです。

(2) 記憶の障害自体が、後述するように、前頭葉の機能障害に起因して発現して来ることに無知なのです。その意味からも、「アルツハイマー型認知症」を発病させている原因は、記憶障害でなくて、「前頭葉の機能障害」なのであり、解明すべきは、『前頭葉の機能障害』を惹き起こさせている要因なのです。

人間だけに特有な世界の要の機能、「意識的な世界」における脳全体の司令塔の役割を担っている『前頭葉』の機能について、何が、どのようなメカニズムが、その機能障害を惹き起こしているのかの解明が、すなわち、『アルツハイマー型認知症』の発病及び症状が重症化するメカニズム、更には、症状の回復、症状の重症化の進行の抑制、果ては、「発病自体の予防」の方法の解明へとつながるものであることを、世界中の、専門家達に問題提起したいのです。アミロイドベータ仮説の主張者は、マウスを研究材料にして、「アミロイドベータの注入量とマウスの記憶の機能レベルの変化」を追求しているのですが、「前頭葉の機能が備わってもいない、ましてや、『注意の分配力』の機能が備わっていないマウスの行動を追求するのは、時間と費用と人材の無駄遣いなのです。

&3 『注意の分配力』という脳機能の特徴的な役割と重要性

1.『注意の分配力』という脳機能の特徴

(1) 「散歩しながら暗算をする」とか言う風に、『異なる二つのテーマを同時に並行して実行する』ことが、『脳を活性化させる』とか唱える人達が出てきて、『デュアル・タスク』という言葉が一世を風靡したのは、まだ、記憶に新しい出来事なのです。「注意の分配力」という脳機能の紹介をしている訳なのですが、実は、その人たち自身が、「注意の分配力」の機能についての深く正しい意味を知らないのです。私たち人間だけに特有な世界である「意識的な世界」、目的的な世界を構築している要の機能が、『注意の分配力』という脳機能であり、デュアル等という簡単な機能ではないのです。彼等に対する啓蒙の意味も含めて、「正しい意味」を詳しく説明しておくことにします(『意識』の機能構造自体が、世界的にも、未だに解明されていない状況の中で、「注意の分配力」の機能は、意識に関わる要の機能でもあるのです。「あの人は頭の回転が速い」と言う言葉に代表されるように、とっさの判断や処理にも不可欠の機能なのです=高齢者が惹き起こす日常的で軽微な自損事故や、ときには重大な自動車事故の原因=二段階方式の脳機能データとその解析結果)。

(2) 『注意の分配力』の機能と言うのは、「意欲」及び「注意の集中力」の三者を含めて、私たち「二段階方式」が、『前頭葉の三本柱』の機能と名付けている極めて重要で核心的な機能なのです。

「二段階方式」の定義で言うと、『注意の分配力』の機能は、『3つ以上の異なる複数の「テーマ」或いは、「意識」を同時に、並行して処理し、管理する上で不可欠の機能であり、並びに、「意識」(覚醒の度合い及び内容がそれぞれに異なるのが、意識的な世界の常態であることに注意)を構築し、統合し、統括し、分離し、管理し、コントロールする上で、不可欠の機能なのです(意識の研究者達、世界中の権威機関が、このことに、未だに気付いていないことが、重大問題)。

加齢の進行という要因(正常な老化現象)に因り、「物忘れの症状」が発現して、頻度が増し、程度や態様がより重いものになって行く原因が、この「注意の分配力」の機能の加齢に因る機能低下の進行の直接的な反映であることが、専門家とされる人達の間でも、殆ど知られていないことなのです。そもそも、『物忘れの症状』が発現して来る原因は、記銘する機能の低下と想起の機能の低下との「相剰効果」に因るものであり、両者がともに、「注意の分配力」の機能の機能低下の「直接的な影響」を受けることに気づいていないのです。

私たち「二段階方式」が集積した脳機能データである「正常老化の曲線」は、実行機能の発揮度を下支えし、支配している「注意の分配力」の機能を核心とする「前頭葉の三本柱」の機能は、30歳代の半に入ると緩やかではあるが明確に下降して行くカーブを描き出すことを示しているのです。その直接の反映として、所謂『正常な物忘れの症状』が発現して来ることになるのです。

その、加齢という要因のみに起因したものとしての所謂『物忘れの症状』は、加齢の進行に連れて、頻度や程度や態様が増していき、仕事とは無縁の日々となる「第二の人生」を送る高齢者の場合は、日常茶飯事のものとなってくるのです。従って、老化要因のみに因る記憶障害であるか(正常な物忘れの症状)、アルツハイマー型認知症の発病の結果としての記憶障害の症状であるか(異常な物忘れの症状)は、『前頭葉』の機能レベルが、①正常なレベルに在るか(所謂、物忘れの症状)、②異常なレベルに在るか(認知症発病の症状としての記憶障害の症状)を精緻に、客観的に判定することでしか、鑑別することが出来ないのです。その『前頭葉』の機能レベルが正常であるか、異常であるかを客観的な方法で、且つ、精緻に評価し、判定し、鑑別出来る手技は、世界中を見渡しても、私たち「二段階方式」の『改訂版かなひろいテスト』しか、開発されていないのです。そのため、権威とされる人達は、物忘れの症状について、主観的な言葉による区分けしかできないでいるのです。

生きた人間の『認知機能』を問題とする以上、手足の役割を担っていて、大脳後半領域の機能である左脳と右脳の機能レベルでなくて、前頭前野の穹窿部局在する脳全体の司令塔の役割を担っている『前頭葉』の機能レベルを第一に評価し、判定し、鑑別すべきことに、専門家の誰も異論がないはずなのです。

※ 『注意の分配力の機能』の分かり易い説明として、前回のブログで説明した、車の運転時の「注意の分配力」の機能の発揮の状況を以下に、引用し、説明します。⇔仲のいいお友達を助手席に乗せ、好みのBGMを流しながら、女性の活躍が目立ったオリンピックの思い出話に花を咲かせながら、交通量が比較的に多い街中を、昼間に運転している状況を想像してください。こうした状況が、異なる3つ以上の複数のテーマを、同時に並行して処理している状況なのです。会話の流れを把握し、会話の内容を理解し、楽しみながら、他方で、BGMを楽しみながら、更には、行き交う車の動きやその変化にも注意しつつ、信号の色の変化にも気を配りつつ、どんどん代わって変化して行く周囲の景色にも目をやり、楽しみつつ、運行する周りの車のスピードの変化に合わせてアクセルを踏んだり、時にはブレーキを踏んだりして、自分の車の速度の維持や変化にも注意しながら、目的とする喫茶店に向けて、適切に車を運行して行くことが出来るのです(小ボケになると、それが、出来なくなるのです)。

(3) 私たち二段階方式の「改訂版かなひろいテスト」は、『かなで書かれた「お話」を①読んで行きながら、同時に並行して、②読んだところまでの話の概要を把握し、理解し、③覚えて行きながら、④「あ、い、う、え、お」が出てくるその度に、そのかなに丸を付けて行く』という作業を実行して行く「神経心理機能テスト」なのです。作業が終わった時点で、⑤読んだところまでの「話の概要」を書いてもらうのです(ここまでが、テスト)。

このテストの目的は、被験者の有する「意欲、注意の集中力及び注意の分配力の機能」の働き具合(機能レベル)、を個別に及び三者を総合的に評価することにあるのです。

私たち人間だけに特有な世界である「意識的な」世界、意識が関わる世界は、「注意の分配力」の機能を核心としている「前頭葉の三本柱」の機能が構築し、統合し、統括し、分離し、管理し、コントロールしている世界なのであり、&4で詳細を説明するように、ナイナイ尽くしの単調な『生活習慣』が継続されている状況下で、「第二の人生」を送る「高齢者だけを対象(老年発症が特徴となることに注意)として、『前頭葉』を含む脳全体の機能が、廃用性加速度的異常な機能低下を進行させていくことに因り、『アルツハイマー型認知症』を発病し、症状の重症化が進行して行くことになるのです。

2.「記銘」と「想起」の機能の項目困難度の差異分析

(1)『記憶の構造』

記憶は、記銘した事象の内容を保持して、想起してくると言う過程を辿ります。その場合、記銘する対象の事象の内容(範囲と記銘度の深さ)は、様々な程度と態様となることは、経験則上明らかな事だと思うのです。その時の「自身の脳機能のレベルと機能の発揮度」とが常に関わってくるものなので、一旦認知された事象の範囲と内容とがそのまま記銘されることにはならないのであり、その上更に、機能構造的に、想起される範囲と内容とが直接的な影響を受ける結果として、想起される範囲と内容とは、記銘された通りのものとはなりにくいことになるのです。前頭葉の三本柱の関わり、就中、『注意の分配力の機能』の発揮度が記銘度及び想起の発揮度に対して、直接的に影響する為に、認知≧記銘≧保持≧想起という結果が生じてくるのです。

(2) 『MMSE下位項目の項目困難度の指標』という「脳機能データ」

①「想起」が最も困難度が高い(最も早くに、機能が衰えて行く)項目であるのに対して、「記銘」は、項目困難度が低い項目となるのです。

➡ 『MMSE下位項目の項目困難度』の脳機能データは、『アルツハイマー型認知症』の発病者(小ボケ、中ボケ及び大ボケの全ての段階を含む)と判定されたお年寄り14689人の「脳機能データ」であり、『事象の事実』を示す極めて重要な意味があるものなのです。

⇔「二段階方式」の手技を活用して集積し、解析した結果は、以下の通りとなるのです(以下に、「項目困難度が高い順」に表示します)。

想起、注意と計算、時の見当識、所の見当識、三段階口頭命令、模写、

文を書く、記銘、書字命令、復唱、命名

注)ここに示す『MMSE下位項目の低下順』は、極めて厳密な低下順を示すものであり、アルツハイマー型認知症の発病者である場合は、且つ、その場合に限って、必ず、この低下順に出来なくなっていくことが事象事実として示されているのです。世界的に通説の地位にあるアミロイドβ仮説も、タウタンパク仮説及びアセチルコリン仮説も、事象の事実としての『MMSE下位項目の項目困難度の指標』を説明することが出来ない(=それらの仮説の主張内容は、100%誤りとなる)のです。⇔この一事をもってしても、アミロイドベータ仮説の主張内容が、間違った内容であることの、科学的で、客観的な証拠データであると言い切れるのです。

(3) 「記銘と想起」の機能の関係の比較と分析

私たち人間だけに特有な「意識的な世界」、「目的的な世界」では、何等かの「テーマ」を実行して行く為に、『実行機能』がその機能を発揮することが不可欠となります。その「実行機能」の発揮度を下支えし、支配しているのが、『注意の分配力』の機能なのです。何かの事象を記銘するに際しては、異なる複数のテーマ及び意識を構築し、統合し、統括し、管理し、コントロールしている「注意の分配力」の機能の関与を出来るだけ(特定の記憶の対象に集中)して、意欲と注意の集中力の発揮度を高めて、記銘度を高めることが必要になります。よく記銘された対象が、よく保持されるからなのです。

記銘され、保持されている事象を(想起)するには、逆に、意欲注意の集中力の発揮度を出来るだけ高めると同時に、(記憶の倉庫)とのやり取りについて、あれこれ条件建てして検索する為に、注意の分配力の機能を最大限発揮させていくことが不可欠となるのです。

3.人間に特有な意識的な世界と「記憶のメカニズム」

(1) 「重度の記銘力障害」と海馬の萎縮

前頭葉』の機能レベルを精緻に判定する「手技」を持たない為に『側頭葉性健忘症』という病気が誤診されて、『架空の病気』である「若年性アルツハイマー型認知症」という病名が冠されているのです。1998年にオーストラリア人の女性、クリスティーン・ボーデンさんが、「私は誰になって行くの」という本を出版して、一躍世界的に有名になったのが、所謂『若年性アルツハイマー型認知症』と言う病気なのです。海馬の萎縮に始まる脳の変性により、『重度の記銘力障害』(記銘できないことに因り、想起が出来ない=直ぐに忘れてしまうと単純に考えられている)が発現して来ることから、「アルツハイマー型認知症」と誤解されていて、若年で発症するのが特徴であることから、単純に、「若年性のアルツハイマー型認知症」として世界的に有名となり、現在もなお、その誤診が世界的に広まっている架空の病気なのです。

「アルツハイマー型認知症」の発病による記憶障害の症状は、&3の2で詳細にデータを付して説明してあるように、「記銘」は出来るのです。末期の段階である「大ボケ」の後期の段階、30点が満点であるMMSEの総得点が一桁(9点以下)の段階になっても、3点が満点の記銘の項目は、満点をとるお年寄りが一番多い、良くできる項目なのです。一方で、『想起』は、11の下位項目中で最も難しい項目(機能が、一番最初に衰えて行く項目)であり、MMSEの総得点が26点の段階になると、3点が満点の想起の項目は、0点をとるお年寄りが一番多い項目、最も難しい項目(一番最初に、衰えて行く項目)なのです。

⇔(記銘)自体に極めて重度の障害が存する為に(想起)に重大な支障が出ることが特徴である記憶障害、即ち、(重度の記銘力障害が特徴)である『側頭葉性健忘症』並びに記銘する機能は、最後まで残っているのが特徴である「アルツハイマー型認知症」の特徴を知らないで、鑑別が出来ない為に、両者を混同しているのです。

(2) 『側頭葉性健忘症』の特徴は、重度の記銘力障害と海馬の萎縮が確認されるものの、『前頭葉』の機能が正常なレベルに在ることが確認される特徴を有する病気なのです。専門の医師達から、重度の記銘力障害と海馬の萎縮の確認だけにより、アルツハイマー型認知症の発病者とされ、(若年で発症することから)若年性アルツハイマー型認知症と(誤診されている)のです。

脳の変性により情報の入り口としての海馬の機能が障害されることに因り、重度の記銘力障害が発現して来るのです。「直前の事象」でさえも、「記銘」されない為に、「想起」出来ないことに因り、重度の記憶障害の症状と考えられていて、海馬の萎縮の発現を伴うことから、『アルツハイマー型認知症』の発病であると誤診されているものなのです。

※1『側頭葉性健忘症』についても、さしたる知識が無くて(鑑別する手技を有していない)、更には、『アルツハイマー型認知症』についてもさしたる知識が無くて(鑑別する手技を有していない)、両者の間には、①記銘力の相違だけでなくて、②『前頭葉の機能レベルの相違』が存在していることも知らないのです(『側頭葉性健忘症』は、「前頭葉」の機能が正常なレベルに在ることが特徴であるのに対して、『アルツハイマー型認知症』は、「前頭葉」の機能が真っ先に異常なレベルに衰えて行くのが特徴なのです。肝心の「前頭葉」の機能レベルを精緻に判定する手技を持たない上に、記銘力の相違にも気付いていなくて、両者を混同していて、『側頭葉性健忘症』の発病者を『アルツハイマー型認知症』の発病者であると誤診しているのです。側頭葉性健忘症は若年発症が特徴であり、アルツハイマー型認知症は老年発症が特徴であることも知らないで、『若年性アルツハイマー型認知症』という架空の病気が、実在しているかのような誤診が、世界的に横行していて、誤った報道がなされているのです。

2 二段階方式の区分で言う「中ボケ」の段階(脳の機能年齢は、幼稚園児程度)になると、発病している本人には、中ボケの段階で発現して来る様々な症状についての認識が持てないのです。自分が置かれている生活状況での種々の問題点を整理して、他人に言葉で伝えたりは出来ないのです。他方では、専門家達は、失語や失認や失行(紛いの)の症状が「初期症状」であると誤解しているので、中ボケの段階のお年寄りをアルツハイマー型認知症の発病者とは考えてもいない(見落としている)のです。

(2) 『長期記憶と短期記憶』が生じる機能構造の背景理解

上述のように、「よく記銘されたものが良く想起される」のであり、深い悲しみ憤り恐怖心或いは、心の傷を残すこととなった『心に深く刻み込まれた』事象、或いは、繰り返し記銘し覚え込んだ事象は、更には、内容の深い理解を伴う事象という要因が存在する分、記銘度が高くなる為に、良く保持されて、良く想起されるのです。これが、長期記憶と短期記憶を生じるメカニズムなのです。「海馬が、長期記憶と短期記憶とを区分けている」とする専門家達の説明は、単なる憶測や推測の産物なのであり、誤りなのです。そもそも、「どのような基準」で区分けているのかを考えてみるだけで、そうしたことが起こり得ないこととわかるでしょう。基本的に、記憶の対象となる事象は、左脳、右脳、運動の脳、「実行機能」、「前頭葉の三本柱」の機能が、夫々に/相互に関わりを持ちながら、複雑な関係上の役割をもって関わってくるものであり、「記憶の対象となる事象を都度、長期に保存すべきものと短期に保存すべきものに区分ける基準などは、存在し得ないはずと考えるべきもの」だからなのです。

(3) 長期に記憶されている記憶が、加齢とともに想起しにくくなる理由

想起の機能についても、加齢に起因した機能低下の進行という問題が存在しているからなのです。『チコちゃんに叱られる』に登場した脳機能データであり、二段階方式が誇る「加齢に因る前頭葉の老化曲線」がその証拠データなのです。

このデータは、各年齢についての多数の被験者に対して「かなひろいテスト」を実施したデータを集積したものなのです。前頭葉の三本柱の機能である意欲注意の集中力及び注意の分配力の機能を個別に及び総合的に判定し、評価した脳機能データであり、即ち、機能構造的に、「実行機能」及び「前頭葉」の老化曲線でもあるというものなのです。此処に取り上げた3種類の機能が、意識を構築している要の機能なのであり、「アルツハイマー型認知症」というタイプの認知症が、何等の器質的な原因病変が確認できない(実は、存在していない)にも拘わらず、認知機能が異常なレベルに衰えてきて、認知症の症状が発現して来る原因(根拠)なのです。専門家達が、このことに気づくべきなのです。世界中の専門家達は、未だに、『器質的な原因病変』を探し求めているのです。

➡ 「中ボケ」の前期の段階にある「お年寄り」の特徴として、「最近の事象」について思い出せない(想起出来ない)のに対して、「過去の事象」については、以外にも、よく思い出すという特徴が確認できるのです。最近の事象は、記銘時の記銘度が低い(記銘する機能が異常なレベルに低下している)のに対して、過去の事象は、記銘度が高い(記銘時は、年齢が若く、且つ、発病してもいなかった為、前頭葉の三本柱の機能が正常で、もっと高度な機能レベルに在った)為、想起し易いのです。

&4『記憶の障害』が発現するメカニズム

(1) 人間だけに特有な「記憶のメカニズム」

そもそも、私たち人間の「記憶」は、無意識下で行われたり、睡眠中に整理されたりする機能構造にはなっていないのです。私たち人間だけに特有な世界である「意識的な世界」、即ち、「目的的な世界」で、行われているものなのです。意識的に何かのテーマを発想し、実行に移す際に、記憶が行われる(記銘して、想起する)ものなのです。記銘想起のはざまに存在する保持は、記銘に連動して起きてくるだけのものなのです。記銘度の高さに応じた保持が起きてくるだけのことなのです。その記銘と想起の問題については、前出の&2で、詳しく説明した通りなのです。「よく記銘された事象は、良く保持されて、良く想起される」のです。

睡眠中は、意識の覚醒の度合いが極めて低い状態を維持しつつ、サーカディアン・リズムの規制の下で、レム睡眠とノン・レム睡眠とを繰り返しているのです。意識の覚醒の度合いが極めて低い状態下では、意欲や注意の集中力及び/又は注意の分配力の機能を発揮しようにも機能レベル自体が極めて低い状態にあるのであり、その結果として、記銘度自体が極めて低いものとなる為、人は、睡眠中には記憶の整理など行われ得ないことを知るべきなのです。➡ マウスと人間とでは、「記憶のメカニズム」が根本的に異なるのです。

(2) 所謂「物忘れの症状」(加齢に起因した記憶障害)

記憶』は、①記銘して、②保持して、③想起する3つの過程を辿ります。

所謂「物忘れ」の症状も、「意識的な世界」、「目的的な世界」で起きてくるものなのです。意識的に何かのテーマを実行しようとしている際に起きてくるものなのです。その意識的な世界(且つ、目的的な世界)で、『実行機能』の働き具合を(機能の発揮度を)下支えし、支配し、管理し、コントロールしているのが、『前頭葉の三本柱』の機能なのです。その際に、異なる複数のテーマを処理する場面が起きてくるのが常態なのであり、その要となる脳機能が、『注意の分配力』の機能という訳なのです。分かり易い例で説明しましょう。遠く離れた町にお嫁に行って、生活している娘が、新型コロナに感染して、発症して、発熱が続いているのに、娘を受け入れてくれる医療施設が無くて、家で寝たままで居ると知らされたとしましょう。居ても立っても居られないのに、家には、アルツハイマー型認知症を患っていて、徘徊迄する義父が居るとしましょう。夫はと言うと、中国の武漢に海外駐在で行っていて、独りで、留守宅を守っている状況なのです。

夕ご飯の準備をしていても(冷蔵庫を開けて、アレッ?!何を取ろうとしてたんだっけ?)、階段を二階に上がって行き、部屋の扉を開けた途端に(アレッ?!何をしようとして二階に上がって来たんだっけ?)という風になってしまうのです。原因はどこに有るのか? 実行機能の働き具合を下支えし、支配している『注意の分配力』の機能が備わっていることに因り、私たち人間だけが、『3つ以上の異なるテーマを同時に並行して実行することが出来る』のです。「物忘れの」症状が発現して来る最大の原因は、此処に在るのです。

新型コロナに感染して自宅で療養している娘のことが、何をしていても、常に気になってしょうがないのです。夕ご飯のおかずにと、魚を煮つけようとしていて、しょうゆを取り出そうと考えたときも、娘のことが気になって仕方がないのです。『高熱が出てきてないか、医師との連絡は取れているのか』心配で、娘のことがあれこれと気に懸かりながら、『同時に並行して、他のテーマを処理しようとしていた』為に、起きて来た事件なのです。心ここに有らざる状態下で、醬油を取ろうとしたり、或いは、二階の部屋にスマホを置き忘れたことに気づいて取りに行こうとしていた訳なのです。この状況を脳の機能面から説明すると、『注意の分配力』の働きによって、「異なる複数のテーマを同時に並行して処理」しようとしていた訳なのです。

その際に、無意識に何かをしようとしていたのでなくて、意識的にしようとしていたのです。「注意の大半の部分」が娘のことに分配されていて、しょうゆを取り出そうとか、スマホを取ってこようとか言うテーマに対しては、ほんのわずかしか分配されていなかったということなのです。ほんのわずかしか注意が分配されていないテーマについては、『記銘度が低くなる』為に、想起できなかった(「物忘れ」が生じた)いうことなのです。これは、注意の分配力の機能を筆頭にして、「前頭葉の三本柱」の機能について起きてくる、『加齢に起因した脳機能の老化=機能低下』の進行という要因が犯人なのです。

➡ 『アルツハイマー型認知症』の発病原因については、&5で詳細を説明してあるように、『加齢』に因る機能低下の進行(=機能の老化)が、第一要件なのですが、加齢という要因だけでは、発病はしないのです(第二要件が必要)。

3.「アルツハイマー型認知症」発病としての「重い記憶障害の症状」

(1) 『DSMー4』の第二要件が規定する失語、失認、失行の症状問題点

米国精神医学会が策定した「アルツハイマー型認知症」の診断基準である『DSM-4』の規定は、その「第一要件」で、「記憶障害」に起因して発病すると規定していて及び「第二要件」で、失語や失認や失行の症状が発病の「初期症状」であると規定しています。実は、失語や失認や失行(紛いの)の症状は、MMSEの総得点が一桁、9点以下の段階にあるお年寄りに初めて確認される症状、極めて重度の症状なのです。その結果として、「第一要件」で確認を要求されている「記憶の障害」を充足するものとしては、『重度の記憶障害の症状である』こととなってしまうのです。専門家とされる人でさえ、『昨日友達とレストランに行ったこと自体を思い出せないのは、「アルツハイマー型認知症」発病としての記憶障害の症状であり、その時何を食べたか思い出せないのは、「加齢」による物忘れの症状である』等と、思わず笑い出したくなるような説明をしているのです。正しい判定、鑑別を行う為には、『廃用性の加速度的で異常な機能低下の進行に因り、前頭葉の機能が、異常なレベルに在ることが確認される』ことを必要とするのです(&5参照)。

(2) 徘徊』に特別の意味は無い

アルツハイマー型認知症』を発病して、末期の段階にまで重症化が進行したお年寄りに確認される症状として『徘徊』が有ります。その徘徊には、本人なりの「目的」があると説明する人達がいます(介護従事者の発言の場合が多い)。脳の機能レベルという視点が無くて、「前頭葉」の機能レベルを精緻に判定する手技も有していなくて、介護している中で、外観的に観察し、憶測しただけの「素人の感想と発言」のレベルに過ぎないものなのです(脳機能について無知)。

MMSE下位項目の項目困難度のデータから説明します。①「時の見当識」は、MMSEの総得点が一桁(9点)になった時から、5点満点である「時の見当識」の得点が0点のお年寄りが一番多くなるのです(0点であるということは、昼夜の区別もつかないという意味なのです)。②「所の見当識」は、MMSEの総得点が一桁(9点)になった時から、5点満点である「所の見当識」の得点が0点のお年寄りが一番多くなるのです(0点であるということは、自分が今いる場所の区別もつかないという意味なのです)。③『アルツハイマー型認知症』を発病して、「徘徊」するお年寄りとは、「時の見当識」も「所の見当識」も、「人の見当識」も機能が殆ど残っていない、働いていないのです。『意識的な世界』における「脳全体の司令塔の役割」を担っている「前頭葉」の機能が、就中、注意の分配力の機能が極めて異常なレベルに在るものの、身体が丈夫である為に、何かの拍子に「住んでいる住居を出たら、意味も目的も無く、歩いて行き、自分が現在何処にいるのかも分からない儘に歩き続ける」結果、「徘徊」して歩き回るということになるのです。家のある場所を忘れた(重度の記憶障害)ことが原因ではないのです➡ 夜中に騒ぎ回ったり、「田圃へ様子を見に行く」とか言い張って、外に出て行こうとするのも、同じことなのです。失語が確認されるということは、簡単な会話さえも、意味の有るやり取りは出来ないということなのです。徘徊や発言は、なにか特別の意味がある行動でも、発言でもないのです。『注意の分配力』の機能が極めて異常なレベルに在って殆ど働かないことの反映、『前頭葉』を含む脳全体の機能レベルのアウトプットが、『大ボケ』の段階の症状として発現してくるものなのですから。

※『DSM-4』の第二要件が、失語や失認や失行(紛いの)の症状が「初期症状」であると規定している為に、中ボケは、発病とは考えられていないのですが、「中ボケ」の段階で既に、日々我が身に起きている『症状の自覚が出来ない』のが、特徴なのです。

&5 「アルツハイマー型認知症」の発病のメカニズム

1.「意識的な世界」と「実行機能」の機能構造

(1) アルツハイマー型認知症というタイプの認知症は、器質的な原因病変が確認されないにも拘らず、私たち人間だけに特有な「意識的な世界」、且つ、「目的的な世界」において、すなわち、何等かの「テーマ」を実行する場面で、『実行機能』の発揮レベルが異常なものとなることに因り、認知症発病としての症状が発現して来るのが特徴なのです(世界中の専門家とされる人たちが、この視点に未だに気づいていない為に、発病の原因をめぐって、迷走を続けているのです)。

※ ここに、『実行機能』(Executive Function)とは、自分が置かれている「状況」を分析し、理解し、判断して、状況判断に沿った何等かの「テーマ」を発想し、発想したテーマの実行内容を企画し、計画して、想定した条件の下で実行の結果を洞察し、推理し、シミュレーションして、シミュレーションの結果を比較し、評価し、修正し、最終的な実行内容及び実行の仕方を選択し、決定し、実行の決断をして、脳の各部に対し実行の指令を出す等、テーマの発想とその実行に必要となる様々な個別認知機能総称した脳機能なのです(他に、抑制感動等もある)。

(2) その「実行機能」が肝心の機能を発揮するには、「前頭葉の三本柱」の機能の要である『注意の分配力』の機能が関与しないと機能が発揮できないという機能構造上の問題、私たち「二段階方式」が世界で初めて発見し、『実行機能の機能発揮上の二重構造』と名付けている問題が存在しているのです。

(3) そうした個別の「認知機能」(それらの総称が、『実行機能』)が必要なレベルでの機能を発揮するには、常に、『注意の分配力』の機能が関与し、下支えし、管理し、コントロールしているという機能構造が存在している訳なのです。

(4) 「小ボケ」の段階で確認される症状(□発想が乏しくなり、画一的な行動が目立つようになってくる、□同じ食材を買ってくることが多く、献立の単調さが目立つ、□一日や一週間の計画が立てられず、テーマを自分で思いつかない)、「中ボケ」の段階で確認される症状(□何度教えても、日付があいまいになる、□自分が飲む2~3種類の服薬管理が出来ない、□行き慣れている所に行くのに、スムーズにいけない)及び「大ボケ」の段階で確認される症状(□着ている服を脱ぎたがらず、便で汚れた下着をそのまま平気で来ている、□服を正しく着られなくなり、ズボンを頭から被ったり、上着に足を通したりする、□住んでいる家を出た後、帰える途が分からなくなり、そのまま徘徊する)等の症状は、全て、『注意の分配力』の機能が、廃用性の加速度的で異常な機能低下の進行に因り、異常なレベルに衰えてきて、次第に働かなくなっている為に起きてくることを直接的に反映した症状なのです。末期の段階である大ボケの更に後期になって初めて発現が確認される失語や失認や失行(紛い)の症状も、同じメカニズムの下で、発現してきているものなのです。「記憶の障害」に起因した症状であると考えている人達は、脳機能についての理解が浅すぎるのです。

2.「加齢」による機能低下と「廃用性」の機能低下という要因

(1) 『アルツハイマー型認知症』は、何等の「器質的な原因病変が確認されない」にも拘らず、『前頭葉』を含む脳全体の機能が、廃用性の加速度的で異常な機能低下を進行させていくことが原因で発病し、前頭葉を含む脳全体の機能レベルに厳密にリンクした『三段階に区分される症状』が発現して来るのが特徴です。

(2) 発病後の症状が末期の段階にまで進行し、失語や失認や失行(紛いの)、極めて重度の症状が確認されていた発病者(第二の人生を送っていた高齢者)の、死後の脳の解剖所見で確認されるアミロイドベータの蓄積に因る老人斑の沈着やタウ蛋白の沈着による神経原線維変化や脳の顕著な萎縮等は、発病の原因ではなくて、発病し、症状の重症化が進行し、末期の段階である大ボケの後期にまで進んだ結果としての産物に過ぎないのです。

3.「二段階方式」の主張(正しいことを疫学的に実証済み)

(1) 発病の「第一要件」(『基礎要件』)

発病の第一要件は、加齢に起因した『前頭葉』機能の老化に在るのです。我が国での実態としては、「60歳を超える年齢の高齢者」が、発病の第一要件となるのです(二段階方式独自の規定内容であり、現時点で他に類例が存しないもの)。このことが基礎要因であるために、アルツハイマー型認知症は、『老年発症』が特徴となるのです(「正常老化の性質」のカーブが根拠)。但し、発病する為には、第二の要件の充足が不可欠となるのであり、「第一の要件の充足」だけでは、『アルツハイマー型認知症の発病は、起きてこない』ことに注意して下さい

(2) 発病の「第二要件」(『加重要件』)

発病を惹き起こす「第二の要件」、決定的な要件(『加重要件』)が、第二の人生を送る上で展開されるナイナイ尽くしの単調な『生活習慣の継続に起因した廃用性の異常な機能低下の進行(二段階方式独自の規定内容であり、現時点で他に類例が存しないもの)という要件なのです。猶、ここに言う『ナイナイ尽くしの単調な生活習慣』とは、「自分なりに追求する特定のテーマもなく、生き甲斐なく、趣味なく、交遊なく、運動もせず、達成すべき目標も無い単調な生活習慣」を言います。この要因が、発病するか/しないか、症状の重症化が進行するか/しないかを区分け、決定づける『唯一の要因』なのです。このことを言い換えると、『仕事』とは無縁の日々となる「第二の人生」を送る上で展開され、継続される『脳の使い方』としての『単調な生活習慣の継続』なのであり、食生活も、学歴も、糖尿病の発病とも無関係のものである(直接の因果関係は存在しない)ことを注意喚起したいのです。

(3) 『アルツハイマー型認知症』の発病のメカニズムと正体(本態)

第一の要件」と「第二の要件」という、異なる二つの要因が同時に存在し、充足されることに因る「相剰効果」により、『前頭葉』を含む脳全体の機能が、廃用性の加速度的で異常な機能低下を進行させていくことに因り、①「前頭葉の三本柱」の機能に端を発し、②評価の物差しの機能が、③「実行機能」が、更には、④複合機能体である『前頭葉』の機能が異常なレベルに衰えて行くことを直接反映したもの、即ち、『前頭葉』を含む脳全体の機能レベルのアウトプットそれ自体が、『アルツハイマー型認知症』発病の症状として発現して来ることになるのです。

アルツハイマー型認知症』は、廃用性症候群に属する老化・廃用型の単なる『生活習慣病』に過ぎないというのが、「二段階方式」独自の主張なのです。

猶、この主張については、北海道から九州に跨る452の市町村での実践、「アルツハイマー型認知症の早期診断による回復及び発病自体の予防を明確な目的とした住民参加型の地域予防活動」の実践展開指導により、正しい主張内容であることを、疫学的方法により実証して来ていて、その成果については、厚労省の認知症施策推進室との協議の際に、実証データを提示してもいるのです。とはいえ、世界中の権威達が、『アルツハイマー型認知症は、発病の原因が不明であり、治すことも、発病を予防することも出来ないタイプの認知症である』と未だに主張していて、二段階方式の主張内容が彼等とは真反対の主張内容であることもあり、未だに、陽の目を見ていないのです。

(4) 様々な程度及び態様により発現して来る『アルツハイマー型認知症』の症状は、前頭葉を含む脳全体の機能レベルに厳密にリンクした症状が発現して来るのが特徴であり、早期診断(小ボケ及び中ボケの段階で発病を見つけること)と早期治療の実施(「脳のリハビリ」の実践)に因る回復の可能性の有無及び程度により「3つの段階」に区分されるべきものなのです。専門の医師達が、『アルツハイマー型認知症は、治すことが出来ない』と主張しているのは、彼等が発病を見つけている段階が遅すぎるせいなのです(&5で詳細を説明)。なお、三段階に区分される症状の類型については、「ブログF-11」の&6を参照)。

&6 『MCI』(軽度認知障害)の基準の問題点

1.基準の概要

(1) 市町村に対し「介護の予防」(介護が不可欠となる段階にまで認知症の症状が進行する時期を少しでも遅らせることを目的)措置の実施を求める認知症施策推進室の「認知症ケアパス作成の手引き」によると、「MCI」(軽度認知障害))の定義は、次の5項目となります。これらに全てが当てはまれば、「軽度認知障害(MCI)」にー相当と判断されるということなのです。

(2)『軽度認知障害(MCI)の定義』は:

①年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない「記憶障害」が存在することが確認される。

②本人または家族による『物忘れの症状』の訴えがある。

③全般的な認知機能は正常範囲である(注:認知機能を問題としながら脳全体の「司令塔の役割」を担っている『前頭葉』の機能レベルが正常であるか、異常であるかの客観的な判定は為されていないことに注意して下さい)。

④日常生活動作は自立していると観測される。

⑤認知症ではないこと(注:ここで言う認知症ではないという意味は、「極めて重度の症状」であり、30点が満点のMMSEの総得点が9点以下にならないと発現が確認されないものである「失語や失認や失行(紛いの)」の症状を「初期症状」であると誤解し、考えているものであることに注意して下さい)。

2.MCIの基準の問題点

(1) 重視される要素が、本人または家族の訴えによる物忘れの症状であること

(2) 認知機能を問題としながら、前頭葉の機能レベルの判定が行われないので、単なる言葉上だけのチェックに過ぎないのです(せいぜい、MMSE程度か)。

(3) 言葉の上では、色々記述が為されているのですが、全てが主観的で、客観性の担保が全くなくて、言葉の遊びに過ぎず、恣意的運用を是認したもの。

(4) 「アルツハイマー型認知症」の発病の有無については、失語や失認や失行の症状が確認されていなければ、「認知症ではないと判定される」こと。

(5) 「アルツハイマー型認知症」は、意識的な世界における脳全体の「司令塔の役割」を担っている『前頭葉』の機能が、真っ先に異常なレベルに衰えて行くのが特徴であり、前頭葉を含む脳全体の機能レベルに厳密にリンクした症状が発現して来るものであり、その判定が要素に入っていない基準は、無意味。

本著作物「F-12」に掲載され、記載され、表現された内容に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。このブログ中の内容の一部を引用する際は、必ず、著作権法の規定に則って引用してくださるようお願いします(特に、医学界に身を置く人達に、お願いします)。


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