認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

アルツハイマー型認知症の回復が可能な本当の意味での初期症状とその正体 (B-06)

2014-03-15 | アルツハイマー型認知症の早期診断

 朝寝して 新聞を見て 昼寝して

     夕さりつかた 水戸の黄門  (6) By  kinukototadao   


        

 アルツハイマー型認知症の症状の発症原因と段階的症状

「アルツハイマー型認知症」は、「前頭葉」(前頭前野のことを言うものとする。以下、同じ)を含む脳の機能レベル自体が直接「認知症の症状」としてそのまま現れてくるのが特徴なのです。世間では「アルツハイマー型認知症」の発病原因(発病のメカニズム)が未だに分からないでいるせいか(因果関係の立証がなされていない「仮説」の学説ばかりが横行している)、認知症の症状を区分けることさえもしません。極めて幅が広く、且つその程度や態様が複雑に発現してくるにもかかわらず、「記憶の障害」に起因するとみられる物忘れなどの症状を中心に、「外観」から認知症の症状らしく見えるものをアトランダムに単に並べているだけなのです。「アルツハイマー型認知症」の発病原因に関わる最も重要な要素である「前頭葉」の働き方のメカニズム及びその老化(年齢別に調べた極めて多人数の「脳機能データ」の解析により、私たちが世界で初めて気づいた「前頭葉」の機能の「正常老化」の性質と「異常老化」の問題)には、関心も注意も全く向けられていないのです。その一方で、「前頭葉」はおろか「左脳」さえもない、ただ本能的に動いているだけの「マウス」などの活動を追いかけまわしているのです。

私たちは、最も軽い本当の意味での初期の症状から、次第に重くなってくる中期の症状を経て、最後に末期の段階になって見られるようになる極めて重い症状へと、段階的に3つに区分した症状を類型化しています。その視点と基準は、「回復させることが可能か否かにある」のです。認知症の専門家とされる医師達は、「アルツハイマー型認知症は、原因不明で治らない」という説をうのみにして、治らないことを前提にして、治すことには無関心なのです。米国精神医学会の診断規定である「DSM-4」の基準を盲目的に信頼し信望して、「失語や失行や失認」といった末期の段階の症状、私たちの区分で言う「重度認知症」(大ボケ)の段階の更に終盤にならないと発現してこない極めて重度の症状を見つけているだけでいながら、それを「アルツハイマー型認知症」の早期診断などと言ってはばからないのです。

私たちが開発した「二段階方式」と呼称する神経心理機能テストに基づいた極めて多数の脳機能データの解析を根拠として、「前頭葉」を含む脳の機能レベルが直接「認知症」の症状として現れてくると考えている私達は、3つの段階に区分される「軽度認知症」(小ボケ)の脳の機能レベル、「中等度認知症」(中ボケ)の脳の機能レベル及び「重度認知症」(大ボケ)の脳の機能レベルに対応しリンクさせて、「軽度認知症」の段階に特有な症状、「中等度認知症」の段階に特有な症状及び「重度認知症」の段階に特有な症状の「3つの段階」に症状を区分し類型化しているのです。

米国精神医学会が定める診断規定である「DSM-4」は、「アルツハイマー型認知症」であると診断するための第一の要件を「記憶の障害」としています。そのため医療機関で受診すると、専門の医師は、第一の要件に規定されている「記憶の障害」の症状があるかどうかを先づ確かめようとするのです。次いで、第二の要件として規定されている「失語や失行や失認」などの症状が出ているかどうかを確認しようとするのです。私たちの脳機能データによれば、「失語や失行や失認」などの症状は、末期段階の「重度認知症」の更にその後半に(MMS の換算値が一桁の点数)ならないと発現して来ない極めて重度の症状なのです。第一の要件とされる記憶の障害についての程度や態様についての規定はないのですが、両者は同じ人に発現している診断時の症状ということになるので、「記憶の障害」自体も極めて重い段階の症状ということになるのです。それがために、「ついさっき食事をとったことさえも想い出せない」ような極めて重度の症状が、「記憶の障害」の診断例として取り上げられている始末なのです。こんなレベルでありながら、どこかの大学の先生達が言い立てると、保健師さんたちはその権威に押されて、「前頭葉」を含む脳の活性化という視点からの「アルツハイマー型認知症」の地域予防という活動の展開を躊躇してしまうのです。

「東日本大震災」の発生から3年が経過してしまいました。私たちがこれまでに集積してきた「脳機能データ」からすれば、被災を「キッカケ」として何事に対しても意欲を喪失した状態が続き、『生き甲斐なく、趣味なく、交遊なく、運動もせず、目標となるものもない』日々の生活、言わば、ナイナイ尽くしの単調な「生活習慣』が始まって、半年から1年が経過すると「アルツハイマー型認知症」を発病することになるのです(最初の段階である「小ボケ」の段階の症状が出てくる)。「アルツハイマー型認知症」の最初の段階である「軽度認知症」(小ボケ)の段階は通常は3年間続くので、次の段階である「中等度認知症」(中ボケ)の段階に入った人達が出てきているはずなのです。「中ボケ」の期間は通常のケースでは2年間、程続いた後、末期の段階である「大ボケ」の段階に入っていくのです。ところが今回の被災は、「キッカケ」が様々な要因が輻輳し重層化した要素から構成されているので、通常のケースとは、程度も態様も比較にならない程のものであり、「意欲」自体を喪失させてしまうリスクが極めて高い上に、復興が遅々として進まないことからくる明日への期待の喪失感とも相まって、症状の重症化が速く進んでしまい、小ボケから中ボケへの移行の期間がそれだけ短くなっているのではないかと私たちは危惧しているのです(ここを「クリック」してください)。

このブログで何度も指摘し問題提起してきているように、回復させることが可能なのは「中ボケ」の段階までなのです。この段階までに見つけて、脳のリハビリ(「前頭葉」を含む脳の活性化を目的とした「生活習慣」の改善)を密に重層的に日々実行することができれば、脳の機能を「正常な機能レベルに回復させることが可能」なのです。言い換えると、治すことができるのです。これこそが、本当の意味での「早期発見」なのです。「アルツハイマー型認知症」は、脳の使い方という視点から言うところの「生活習慣病に過ぎない」のです。何度も言いますが、権威は最高でも規定内容に重大な誤りがある「DSM-4」の規定に依拠して、「重度認知症」(大ボケ)の段階で見つけていたのでは、見つけるのが遅すぎて、治すことはできなくなるのです。何の手だても対策も講じないでこのままに放置して、あと2~3年が無為に経過してしまうと、東日本大震災の被災地の高齢者たちが、他のどの地域の高齢者達と比較した場合にも際立って高い割合で「アルツハイマー型認知症」を発症していると、認知症の専門家とされる人達(学者や製薬会社の研究者や認知症専門の医師)が騒ぎ立てることになるのです。「DSM-4」が規定する「アルツハイマー型認知症」の症状(私たちの区分で言う「大ボケ」の段階の症状)が発現する段階が始まっているはずだからです。

この状況が確認されることになって、私たちの主張の正しさが、疫学的に証明されることとなり、私たちの主張にこれまでの実績だけでなくて権威という錦の御旗が掲げられることにはなるのですが、いかんせんもう手遅れなのです。あの悲惨な体験(故郷の様々な思いでも、景色も、職場も、交友関係も、住む家や家族さえも奪われるという未曽有の体験)を余儀なくされた人たち、然も60才を超える年齢の高齢者に、このうえ回復させることが困難な「重度認知症」のレッテルまで貼り付けてしまうことになるのです。高齢者たち」だけを対象として、これまでに聞いたことも体験したこともない程の極めて高い割合による「アルツハイマー型認知症」の発症という事態が起きてきてしまうのです。いろいろな仮説が出てくるたびに、その仮説とかマウスによる実験とかの報道を見聞きするたびに、強い憤りを覚えながら、このブログを書き続けているのです(ここを「クリック」してください)。

        

〇 「軽度認知症」(小ボケ)の段階で発現する症状の特徴

□ 発想が乏しくなり、画一的な行動が目立つようになってきた

□ 何事をするにも億劫で、何かをやろうという意欲が見られない

□  同じ食材を買ってくることが多く、献立の単調さが目立つ

□ 一日や一週間の計画が立てられず、テーマを自分で思いつかない

□ 朝は遅くまで起きてこないのに、気がつくと昼間に居眠りしている

□ これまでなら感動していたことにも感動しなくなった

□ 問いかけに対する反応が遅く、生き生きした笑顔が見られない

□ 根気が続かず、中途半端な繰り返しや、やりかけの家事が目立つ

□ ぼんやりしていることが多く、何もしないが指示されるとできる

□ お化粧や髪の手入れや服装など、おしゃれに無関心になってくる

□ 自分に自信がなくて、何かにつけ人を頼ろうとするようになった

□ 歩くとき前屈みの姿勢になり、小股でトボトボと歩く

□ 目の光がどんよりしていて、顔つきが無表情になった

□ 思い込みや思い違いが多く、指摘しても訂正や変更ができない

□ 同じ内容を繰り返して話し、そのことに本人が気づかないでいる

上に挙げた症状はすべて、私たちが定義する「軽度認知症」(小ボケ)の段階に特有な「アルツハイマー型認知症」の症状なのです。上記症状のうちの4つ以上に該当するお年寄りで、年齢が60歳を超える高齢者である場合、「二段階方式」による神経心理機能テストを実施すると、殆どの場合、次のことが必ず確認されることになります。

① 「前頭葉」の機能レベルが、異常なレベルに衰えてきていること。

②  左脳も右脳も運動の脳も全て未だ正常な機能レベルにあること。

③ 何かを「キッカケ」にして(典型的なケースの例示をすると、今回の「東日本大震災」のような大きな災害の被災)、生き甲斐なく、趣味なく、交友なく、運動もせず、目標もない、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が日々繰り返されていること(なお、「キッカケ」の類型については、ここを「クリック」してください)。 

④ ナイナイ尽くしの「単調な生活」が始まるその「キッカケ」となった出来事の発生或いは生活状況の変化は、判定時から起算し半年から3年半前の範囲の期間内に起きていること。

上記に列挙した本当の意味での初期症状、すなわち「アルツハイマー型認知症」の最初の段階の症状(「小ボケ」の症状)の殆どは、実は、記憶の障害とは関係がない症状なのです。一番最後に挙げた、「□ 同じ内容を繰り返して話し、そのことに本人が気づかないでいる」という症状だけが、記憶の障害に関わる症状だということにお気づきでしょうか。

      

〇 「軽度認知症」(小ボケ)の段階で確認される脳の機能レベル

「アルツハイマー型認知症」としての「認知症の症状」が現れてくる最初の段階である「軽度認知症」(小ボケ)の段階で認められるそれらの症状は、「DSM-4」が言うようなレベルの「記憶障害」の症状とは全く関係が無いのです。「意欲や注意の集中力や注意の分配力」など、「前頭葉」の機能の根幹(基礎)をなしていて、「前頭葉」の各種の高度な機能の「認知及び発揮」を左右している「三本柱の機能」が異常なレベルに衰えていることの直接の反映が、認知症の症状として現れてくるだけなのです。つまり、「小ボケ」の段階では、「三本柱」の機能障害を反映した症状が「認知症の症状」として現れてくるのです。勿論この段階では、上述の類型化した症状に見る通り、「DSM-4」で第二の要件として規定されている「失語や失行や失認」などの重い症状は、そのカケラさえも認められないのです。

「アルツハイマー型認知症」の初期(最初)の段階であり、私達の区分で言う「軽度認知症」(小ボケ)の段階は、左脳と右脳と運動の脳は未だ正常なレベルにあるのですが、脳全体の司令塔である「前頭葉」の働きだけが異常なレベルに衰えてきているのです。そのため、「前頭葉」の機能のうち最も重要な「三本柱」の機能である「意欲」、「注意集中力」及び「注意分配力」が的確に発揮されなくなります。この「三本柱」の機能の衰え具合の相乗効果としての働き具合いが、いろいろな認知機能の対象となる情報や思考の処理に関わる「認知度」及び「発揮度」を左右しているのです。その結果、「小ボケ」の段階では、この「三本柱」の機能が異常なレベルに衰えてきていることの機能障害を反映した症状が「小ボケの症状」として特徴的に現れてくるということなのです。

    

「三本柱」の機能が異常なレベルに衰えたその反映が、状況の判断や、発想や企画や計画や洞察や機転や感動や決定や抑制といった「前頭葉」の各種機能の「認知度」及び「発揮度」に直接影響してくるために、対象となる情報や思考の認知及び記銘やその保持や想起並びに処理の面でも、機能の発揮が不的確で不十分なものとなるのです。そのため、的確な状況の判断、発想、計画、創意、工夫、機転といった機能、或いは的確な見通しや意思決定などが要求される、「社会生活」の面で、程度や態様を含む種々の支障が出てくるようになります。「社会生活」面での種々のトラブルが生じてくるようになるのです。勿論、この段階では、「家庭生活」の面にも「セルフケア」の面にも何の支障も起きてはきません。それぞれの段階で必要とされる「前頭葉を含む脳の機能レベル」が全く異なる次元にあるからです。

認知症の専門家とされる人達は、「前頭葉」の機能レベルという視点を持たないか、或いはそれを精緻に計測し判定する手技を持たないので、「症状」という外観だけからしか判定しようとしないのです。そのために、外観から分かり易い「記憶の障害」に関わる症状で且つ程度が重い症状ばかりに目が行くことになるのです。記憶の障害に関わる認知症レベルの症状は、次に説明する、私たちの区分で言う「中等度認知症」(中ボケ)の段階にまで「前頭葉」を含む脳全体の機能が衰えてきて初めて発現してくることになるのです。

震災1年後の陸前高田市

ここで皆さんに注意を喚起しておきたいのは、私たちの区分で言う「小ボケ」の段階に特有なこうした症状は、単なる「老化現象」ではないということなのです。老化現象なのであれば、その人の「前頭葉」の機能は正常なレベルにないといけないからです。医師を含め認知症の専門家とされる人達は、「前頭葉」の機能レベルを精緻に計測し判定する手技を持たないので、症状を外観のみから判断する結果、「前頭葉」の機能が異常なレベルに衰えてきたことに起因して発現している症状(「アルツハイマー型認知症」の症状)を「前頭葉」の機能が未だ正常なレベルにあって(単に、機能低下の状態に過ぎない段階で)発現してくるのが特徴である「老化現象」と誤解しているだけなのです。

上述した症状は、左脳や右脳や運動の脳が未だ正常な機能レベルにあるとはいえ、脳全体の司令塔の役割を担う「前頭葉」の機能が異常なレベルにあることの直接のアウト・プットとしての症状、言い換えると「アルツハイマー型認知症」の「軽度認知症」(小ボケ)の段階で確認される認知症の初期に特有な症状ばかりなのです。

     

〇 認知症の初期の症状を発現させる原因となっている正体とは

「前頭葉」には、発想したり、計画したり、工夫したり、注意を集中したり、注意を分配したりといったいろいろな働きが詰まっているだけでなくて、もう一つ、脳全体の「司令塔」の役割という大事な働きがあります。周りの状況を判断してどのようなテーマをどのように実行するのか、「運動の脳」をどのような目的のためにどのように働かせるか(身体を動かすテーマ)、「左脳」をどのような目的のためにどのように働かせるか(言葉や計算や論理や場合分けなどのテーマ)、「右脳」をどのような目的のためにどのように働かせるか(色や形や空間認識や感情の発露などのテーマ)、全ては司令塔の「前頭葉」が決めているのです。

老人会でゲートボールを楽しむ時も、お茶を飲みながら友達と趣味や遊びや家庭問題などの世間話に花を咲かせる時も、家の周りに樹木を植えたり草花を咲かせたりして楽しむ時も、脳全体の司令塔の「前頭葉」が、周りの状況を判断して「テーマを選択し、何をどのようにするかを決めて、必要な指令を出している」のです。これが、意識的な行為における「前頭葉」を核とした脳の働き方のメカニズムなのです。言い換えると、運動の脳、左脳、右脳という「三頭建ての馬車」をあやつる「御者」の役割をしているのが「前頭葉」なのです。三頭の馬を十分に働かせられるのも、不十分にしか働かせられないのも、「前頭葉」の働き次第ということなのです。御者が馬をあやつれなくなったら、どうなりますか?馬はどこへ行ったらいいのか分からなくなってしまうでしょう。

 脳の働きが異常なレベルに衰えてきて、そのことが直接の原因となって、最初の段階では「社会生活」(小ボケ)に、次いで「家庭生活」(中ボケ)に、そして最後には「セルフケア」(大ボケ)にも支障が起きてくるようになるのが、「アルツハイマー型認知症」という病気なのです。脳の司令塔の「前頭葉」がちゃんと働かなくなった時点で、ほんの少し前に食事をしたばかりなのに、そのことさえ思い出せないような重度の記憶障害が出てくるようになるはるか前の段階で、「アルツハイマー型認知症」はもう始まっているのです。「アルツハイマー型認知症」の原因を見つけるにも、早い段階で見つけて治すにも、発病を予防する為にも、「前頭葉を含む脳の働き」という物差しが不可欠になるのです。

          左図は、正常老化のカーブ

〇 前頭葉の三本柱の機能に内在する正常老化の性質

脳全体の司令塔で、置かれている状況を判断したり、何かを思いついたり、計画を立てたり、工夫したり、洞察や推理をしたり、機転を利かせたり、各種の高度な働きを担当している「前頭葉」の機能、中でも、その認知機能を正常に発揮する上でとりわけ重要な認知度や機能の発揮度を直接左右する三本柱の機能である、「意欲」、「注意の集中力」及び「注意の分配力」には、以下に説明するように、自分なりの生き甲斐があり、趣味や交友や運動や遊びを自分なりに仲間と楽しむ生活があり、自分なりの目標がある生活(ナイナイ尽くしの[単調な生活]とは裏腹の生活習慣)を送っていても、「加齢とともに老化し、衰えていく」という特別な性質があるのです(私たちは、これを「正常老化の性質」と呼んでいます)。

私たちが集積してきた年齢別の「脳機能データ」を基にして簡潔に説明すると、「三本柱」の機能には、18歳から20代の半ばまでがピークで、20代の半ばを過ぎる頃から100歳に向かって、緩やかではあるけれど、一直線に衰えていくという性質があるのです。 60代後半にもなると、「三本柱」の働き具合は、ピーク時の18歳から20代の半ばの頃に比べて、働きが半分以下になっているのです。70代、80代、90代、100歳代と、年をとればとるほど、「三本柱」の働きが更に衰えていって、どんどん低空飛行になっていくのです。認知症の大多数90%以上を占めていて、皆さんが普段よく目にしている「アルツハイマー型認知症」というタイプの認知症の正体は、「脳の正常老化」という問題が基本にあるのです。「脳の正常老化」という問題が基本にあるから、「アルツハイマー型認知症」は、若者には関係なくて、「60代以降のお年寄りだけが対象になる」のです。

ところで、「働き盛りの50代の人達の間に、「アルツハイマー型認知症」を発病する人達が増えてきているという」テレビ報道を見かけることがありますが、これは事実の誤認による誤った報道なのです。50代の若い年齢で「アルツハイマー型認知症」を発病する人は、皆無とは言いませんが、極めてまれなケースに過ぎないのです。「アルツハイマー型認知症」の診断に際して、「重度の記憶障害」の症状(或いは、それと紛らわしい症状)さえ確認されると、それらをすべて「アルツハイマー型認知症」と診断してしまっているのが原因なのです。例えば、50代での発症例にみられる「側頭葉性健忘症」の場合、発病前の古い記憶は想起できるのですが、「新しい記憶が全く入っていかない」(「記銘」できない)という特徴的な症状を示すのです。又、「感覚性失語症」の場合は、記憶の障害と紛らわしい症状が誤診されることが多いのです。これらの場合、「前頭葉」の働き具合を「二段階方式」に代表される精緻な「神経心理機能テスト」で計測し判定しさえすれば、重度の顕著な「記憶障害」の症状(或いは、それと紛らわしい症状)が確認される一方で、その人の「前頭葉」の働きは「正常な機能レベル」を保っていることが必ず確認されるはずなのです。費用ばかりがかさむ一方で、「前頭葉」の働き具合を精緻に計測し判定することができない、CTやらMRIやらを診断に使っていたのでは、こうした誤診から抜け出すことさえできないのです。

       左図は、年齢別の発症率

〇「中等度認知症」(中ボケ)の段階で発現する症状の特徴

以下に列記する症状は、「中ボケ」の段階だけにみられる特有な症状です(なお、「アルツハイマー型認知症」の症状は、「前頭葉」を含む脳の機能レベルを直接反映した症状が発現しているものなので、症状全体で言えば、「中ボケ」の段階になると、「小ボケ」の段階に特有にみられる症状に加えて、「中ボケ」の段階に特有にみられる症状が併発して発現してくることになります)。

□ 何度教えても日付けがあいまいになる(「時の見当識」を基準にして説明すると、今日が何日なのか、平成の何年なのか、何月なのか、今の季節が何なのかが言えなくなっていく、然もこの順番に分からなくなっていくのです。但し、昼夜の区別もつかなくなるのは、末期の段階の「大ボケ」になってからなのです)。

□ 簡単な計算ができない(お札ばかりで買い物をし、やたらと小銭がたまる)

□ 電気やガスの消し忘れ、水道の蛇口の閉め忘れなどが目立つ

□ 家庭内の簡単な用事程度のこともきちんとできない(部屋や洗濯物の整理、食後の片付け、畑や庭仕事などがきちんとできなくなる)

□ お金や持ち物のしまい場所をすっかり忘れてしまい、一日中探している

□ 自分が飲む2~3種類の服薬管理ができない

□ 服の着方に無頓着で、重ね着が目立つ(セーターの上からシャツを着る。裏表や前後ろに着る。入浴後、着ていた下着の上に新しい下着を着る)

□ 入浴時の温度管理が出来ず、体を洗わないとか石鹸がついたままとかする

□ 周りを汚したり流してないなど、トイレの後始末がきちんとできない

□ 料理の味付けが変になる(特に、塩加減が極端に変になる。塩辛すぎて、周りが食べられないようなものを作り、本人だけが平気で食べる)

□ 行き慣れている所に行くのに、スムーズに行けない(行き先の違う乗り物に乗ったり、行き道を間違えたりする)

□ 自分の子供の数、生まれ順、居住場所の説明がきちんとできない

□ 季節が分からなくなる(夏にセーターなど、季節違いの服を平気で着る)

□ 昨日の出来事をすっかり忘れてしまう

□ 物盗られ妄想(物の置き場所を忘れて、相手が隠したとか盗んだとか言う)とか、世話をしてくれる人に対して口汚くののしる行為とかがある

       

〇「中等度認知症」(中ボケ)の段階で確認される脳の機能レベル

「中等度認知症」(中ボケ)は、脳の司令塔である「前頭葉」の働きが「軽度認知症」(小ボケ)のときより更に異常なレベルに加速度的に衰えてきている上に、「軽度認知症」のときは未だ正常だった「左脳」と「右脳」と「運動の脳」の働きも異常なレベルに衰えてきていて、「脳全体」の働き具合が異常なレベルになってくるのです。三頭建ての馬車の御者だけでなく、3頭の馬さえもが異常なレベルに衰えてくる、それが「中ボケ」の段階なのです。脳全体の働き具合が異常なレベルに入ってきた「中等度認知症」のお年寄りの脳の働き具合は、「4~6歳児」相当のレベルと考えると、実態によく合致します。 自分が置かれている状況の判断も、状況判断に基づく「テーマ」の発想や企画も、「テーマ」を構成する内容の組立或いはそのやり方の工夫も、実行するに際して事前に行われる洞察や推理やシミュレーションも、最終的な実行の決断も、「4~6歳児」相当のレベルの脳が行っているのです。

「中等度認知症」(中ボケ)の段階になると、情報の認知度を左右する「三本柱」の機能である「意欲、注意集中力及び注意分配力」の働き具合が、「軽度認知症」のレベルよりも更に不十分にしか働かなくなります。認知それ自体とその記銘、保持及び想起の機能の発揮が更に不十分なものとなってしまうのです。従って、上記症状に見るように、「前頭葉」機能の更なる衰えを反映した症状の発現に加えて、(「前頭葉」が正常な機能レベルの下で発現してくる所謂「老化現象」では見られなかった)比較的に重いレベルの「記憶の障害」に起因する症状が目立ってくるようになるのです。「左脳」がらみの論理的思考や計算や言葉に対する理解、或いは「右脳」がらみの色や形や時間や空間などに対する認知、或いは感情の発露など、更には自分が置かれている状況の判断等にも、「社会生活」を送る上で要求される機能レベルよりもはるかに要求レベルが低くなる「家庭生活」を送る上でのトラブルが起きてくるようになる(「家庭生活」面で種々の支障が出てくる)、それが「中ボケ」の段階なのです。

     

ところが、認知症の専門家とされる人達(特に、認知症が専門の医師)は、「前頭葉」を含む脳全体の機能が「中ボケ」の段階よりも更に異常なレベルに衰えてきている人達、私たちの区分で言う「重度認知症」(大ボケ)の段階で発現してくる「失語」や「失行」や「失認」(「DSM-4」が第二の要件として規定している症状)などの重い症状ばかりを見つけて、然もそれこそが「アルツハイマー型認知症」の症状だと勘違いしているのです。「アルツハイマー型認知症」の末期の段階である「大ボケ」の段階で見つけていたのでは、「せっかく見つけても手遅れ、治すことはもはや困難」なのです(「大ボケ」の段階の類型的症状については、ここを「クリック」してください)。

「大ボケ」の段階にまで進んでしまうと、食事をしたり、服を着たり脱いだり、風呂に入ったり、或いは大小便の始末などといった「セルフケア」全般にも支障が出てくるので、「介護」だけがテーマになるのです。然も、回復させる方法も可能性もないので、「前頭葉」を含む脳全体の機能が更に異常な低下を続けていく中で、そのアウト・プットとしての症状が進行し更に重症化していくだけなのです。その過程では、「前頭葉」の異常な機能低下が更に進行していきつつ同時に、「左脳」、「右脳」及び「運動の脳」がその順番に(且つ、同時進行的に)、更なる異常な機能低下を続行させていくのです。

「左脳」は、言葉や計算や論理や場合分けなどデジタルな情報を処理する働きをしています。「右脳」は、色や形や音や空間の認知及び表情や感情などアナログな情報を処理する働きをしています。「運動の脳」は、物や動物などの動きの認知及び自分の身体を動かす働きを担当しています。それらの脳の働き具合や働き方を統括し、コントロールしているのが脳全体の司令塔の役割を担っている「前頭葉」の働きなのです。「アルツハイマー型認知症」は、身体が持つのに脳が持たないのが特徴なのです。「大ボケ」の段階にまで脳の働きが衰えてしまうと、何等かの他の病気が原因で死を迎えることになるその時まで、「前頭葉」を含む脳全体の機能の更なる異常な低下が進行していく中で、相手の言葉の意味の理解や言葉を介して自分の意思を伝える機能が3歳児のレベルから0歳児のレベルに向かって衰えていくのです。その一方で、「右脳は左脳よりも、運動の脳は右脳よりも」働きの衰え方が遅いのが「アルツハイマー型認知症」の特徴なのです。言葉による相互の意思疎通が次第に困難になっていく状況の中で、相手の感情や態度に対する認知は、左脳よりも比較的に良く働くことに注意が必要です。ちょっとした行き違いをきっかけにして相互の関係の乖離が次第に広がっていく中で、極めて感情的な行為やら、粗暴な行為やら、不潔な行為などが表出してくるようになるのです。

 注)本著作物(このブログB-06に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

 エイジングライフ研究所のHPを「クリック」してください)

 脳機能からみた認知症の初期の見わけ方(IEでないとうまく表示されません

  http://blog.goo.ne.jp/quantum_pianist

 http://blog.goo.ne.jp/kuru0214/e/d4801838dd9872301e0d491cd8900f1a


 

 

 

 

 

 

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