kintyre's Diary 新館

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映画『ル・アーヴルの靴みがき』を観て

2012-05-19 22:51:52 | ヨーロッパ映画

12-40.ル・アーブルの靴みがき
■原題:Le Harvre
■製作年・国:2011年、フィンランド・フランス・ドイツ
■上映時間:93分
■字幕:寺尾次郎
■観賞日:5月19日、新宿武蔵野館(新宿)



□監督・脚本・製作:アナ・カウリスマキ
◆アンドレ・ウィルム(マルセル・マルクス)
◆カティ・オウティネン(アルレッティ)
◆ジャン=ピエール・ダルッサン(モネ警視)
◆ブロンダン・ミゲル(イドリッサ)
◆エリナ・サロ(クレール)
◆イヴリヌ・ディディ(イヴェット)
◆フランソワ・モニエ(八百屋)
【この映画について】
政治や経済がどれだけお先真っ暗であっても、世の中そんなに捨てたものではない。うらぶれた港町のごく普通の人々がそう信じさせてくれる。そこはかとない悲しみと笑いが静謐な画面から浮かび上がり、観る者の心にささやかでも温かい幸福感がひたひたと染み渡るのだ。
フィンランドが生んだ世界の巨匠アキ・カウリスマキ監督の『街のあかり』以来5年ぶりに撮る本作は、不条理に満ちた世の中への静かな怒りと、そこに生きる人々への優しさに満ちた新たな名作である。2011年のカンヌ国際映画祭では国際批評家協会賞、エキュメニック賞スペシャル・メンションに加え、愛犬ライカの名演にパルム・ドッグ審査員特別賞が贈られた。
庶民の人情と善意がたぐり寄せる奇跡を、時に優しく、時にこぼれだすオフビートなユーモアを交え、つむぎだされたヒューマン・ドラマの傑作。(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
北フランス、ノルマンディー地方の港町ル・アーヴル。かつてパリでボヘミアンな生活を送っていた元芸術家のマルセル・マルクスは、ここで靴磨きを生業にしている。
駅や高級革靴店の前で仕事をしているが、日々の稼ぎはわずか。だが、家には自慢の女房アルレッティと、愛犬ライカが帰りを待っていてくれる。決して豊かではないが、毎晩呑みに行きマルセルはそんな暮らしに幸せを感じていた。ある日、港にアフリカ・ガボンからの不法難民が乗ったコンテナが漂着する。警察の検挙をすり抜けた一人の少年イドリッサは、港でマルクスと偶然に出会う。イドリッサの母親がいるロンドンに送り出してやるため、密航費を工面しようとマルセルは奮闘するが、時を同じくして、妻アルレッティは体調の不調をうったえ入院、医師から不治の病を宣告される。

カウリスマキ作品は2006年作の「街のあかり」を1本観ただけなのだが、その時の印象は強く残っている。暗めの映像をバックに孤独な人の心を見事に描いていた。だが、残念なことに次の作品はどうなっているのか気になっていたのだが、その前作から5年を経てこの作品は公開された。

今回の舞台はフランス北部の漁港ル・アーブルで、そこに住む靴磨きのマルセルと妻のアルレッティが主役で、そんな田舎町に突如として現れたアフリカからの密航者。密航者の少年イドリッサを匿うマルセルは難民キャンプに収容されている少年の祖父と面会するなど積極的に動く。
そして、少年の母が住むロンドンへ送り届ける為には密航費用3000ユーロを工面しなければならない。靴磨きのマルセルには大金だが、彼は知人のミュージシャンに頼んでチャリティ・コンサートを開催し費用を工面した。
だが、警察官のモネは密航者捜索の過程でマルセルが匿っているのではないかと疑いの眼を向ける。ここで、地元の人情が発揮される。モネは警察官として何とか地元に溶け込もうとするが、マルセルの妻が入院中ということもあって周囲の人間はマルセルへ温かかった。普段は、ツケ払いが溜まる彼を快く思っていなかった者もいたが、こうした協力のもとで彼は少年を密航船に乗せる。
だが、警察の追及は厳しく少年が乗る船場にまでやってきた。そこで、モネは少年の乗る船に乗り込み、ハッチを開けるとそこには少年の姿が...。少年とモネの視線が交差したその瞬間、モネは何も無かったかのようにハッチを閉じる。だが、その様子を見ていた別の警官が怪しみモネにハッチを見せるように迫るが、モネは「職権」を利用してこれを一蹴した。

そして、船は静かにロンドンを目指すのだった。安心して家に戻ったマルセル、そこには容体が悪化していたものの奇跡的に回復した妻が戻っていた。

妻との間には子供は居ないが、彼は妻と過ごす時間が何物にも代えがたい幸せな瞬間だった。その妻の病状が奇跡的に回復したのには驚いたが、少年もきっと無事に海を渡って無事ロンドンの母に会うという「奇跡」に遭遇することだろう。


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