12-39.タクシー・ドライバー
■原題:Taxi Driver
■製作国・年:アメリカ、1976年
■上映時間:114分
■字幕:野中重雄
■観賞日:5月14日、みゆき座
□監督:マーティン・スコセッシ
◆ロバート・デ・ニーロ(トラヴィス・ビックル)
◆シビル・シェパード(ベッツィー)
◆ピーター・ボイル(ウィザード)
◆ジョディ・フォスター(アイリス)
◆アルバート・ブルックス(トム)
◆ハーヴェイ・カイテル(スポート)
【この映画について】
カンヌ映画祭でグランプリを獲得し、マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デニーロの名を知らしめた問題作。夜のNYの街を走る、ひとりのタクシー・ドライバーを主人公に、大都会に潜む狂気と混乱を描き出す。
製作は「スティング」のマイケルとジュリア・フィリップス、監督は「アリスの恋」のマーティン・スコーシージ、脚本は「ザ・ヤクザ」のポール・シュレイダー、撮影はマイケル・チャップマン、音楽はバーナード・ハーマン、編集はマーシア・ルーカスがそれぞれ担当。出演はロバート・デ・ニーロ、シビル・シェパード、ピーター・ボイル、ジョディ・フォスター、アルバート・ブルックス、ハーヴェイ・カイテルなど。
(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
ニューヨーク。毒々しい夜の色彩と光の洪水に飾りたてられたその『闇』をじっと見つめる虚ろな、しかし熱っぽい感情をこめた視線があった。彼の名はトラヴィス・ビックル、タクシーの運転手である。彼は他の運転手のように仕事場をきめていない。客の命令するまま、高級地区だろうと黒人街だろうと、どんなところへも行く。そんなトラヴィスを、仲間たちは守銭奴と仇名した。
ある日、トラヴィスは大統領候補パランタインの選挙事務所に勤める美しい選挙運動員ベッツィに目をつけた。数日後、彼は事務所をたずね、選挙運動に参加したいとベッツィに申し込み、デートに誘うことに成功した。
だが、デートの日、トラヴィスはこともあろうに、ベッツィをポルノ映画館に連れて行き、彼女を怒らせてしまったのだ。以来、トラヴィスはベッツィに花を贈ったり、電話をかけても、なしのつぶてだった。
毎日、街をタクシーで流すトラヴィスは、「この世の中は堕落し、汚れきっている。自分がクリーンにしてやる」という思いにとりつかれ、それはいつしか確信に近いものにまでなった。そんなある日、麻薬患者、ポン引き、娼婦たちがたむろするイースト・ヴィレッジで、ポン引きのスポートに追われた13歳の売春婦アイリスが、トラヴィスの車に逃げ込んできた。
トラヴィスはスポートに連れ去られるアイリスをいつまでも見送っていた。やがて、トラヴィスは闇のルートで、マグナム、ウェッソン、ワルサーなどの強力な拳銃を買った。そして射撃の訓練にはげみ、やがて4丁の拳銃と軍用ナイフを身体に携帯し、それらを手足のように使いこなせるまでになった。
ある夜、トラヴィスは食料品店を襲った黒人の強盗を射殺した。この頃から、彼はタクシー仲間から『キラー』と呼ばれるようになった。そしてアイリスとの再会。泥沼から足を洗うように説得するトラヴィスは、運命的な使命を信じるようになった。大統領候補パランタインの大集会。サングラスをかけモヒカン刈りにしたトラヴィスが現われ、拳銃を抜こうとしてシークレット・サービスに発見され、トラヴィスは人ごみを利用して逃げた。
ダウンタウン。トラヴィスはスポートの売春アパートを襲撃、重傷を負いながらもスポートをはじめ、用心棒、アイリスの客を射殺した。アイリスは救われ、新聞はトラヴィスを英雄扱いにした。やがて、トラヴィスは何事もなかったように、またタクシー稼業に戻るのだった。
名監督スコセッシの代表作でもある「タクシー・ドライバー」はこれまでTVでも観たことが無かった。TOHOシネマズ系列で「午前10時の映画祭」と称して過去の名作を上映していたのと、丁度タイミングが合って観に行った。DVD買えば良いのにだって?DVDは買わない主義なのと、映画は基本的に映画館で観るものと思っているので。
最近のスコセッシ作品は確かに質は高いのですが大作に走っているような感じもあって、名声を高めるきっかけとなったこの作品はどうしても観ておきたかった。今更、ストーリーのネタバレを書いても意味が無いので、ここでは割愛しますがデ・ニーロはここ数年でも出演作が途切れることなく、中には役柄に疑問を感じる作品への出演もあるが、彼が出て来るだけでその存在感が増すのは流石だ。
このタクシー・ドライバーはデ・ニーロ33歳の時の出演だが、この映画では13歳だった今では大女優の一人ジョディ・フォスターが12歳の売春婦アイリスとして強烈な個性を発揮しているのも印象に残る。その堂々とした演技ぶりは既に子役としてキャリアを積んでいたのだが、デ・ニーロと共演してもその演技力は見劣りしない。
また、この映画はスコセッシによるNYの映像と音楽も魅力の一つだ。デ・ニーロの表情、タクシー・ドライバー稼業の内幕を見事な音楽が情感を醸し出す上で役に立っていた。
最近のハリウッド映画は派手な演出やCGや3Dなどを多用しているが、特殊効果に頼らなくても工夫すれば印象的なものが作れるということをこの作品は教えているように思う。音楽とロケ映像の融合、見事でしたね。