12-38.裏切りのサーカス
■原題:Tinker Tailor Soldier Spy
■製作国、年:イギリス・フランス・ドイツ、2011年
■上映時間:128分
■字幕:松浦美奈
■観賞日:5月14日、TOHOシネマズシャンテ
□監督:トーマス・アルフレッドソン
□原作:ジョン・ル・カレ
◆ゲイリー・オールドマン(ジョージ・スマイリー)
◆キャシー・バーク(コニー・サックス)
◆ベネディクト・カンバーバッチ(ピーター・ギラム)
◆デヴィッド・デンシック(トビー・エスターヘイス、コードネーム:プアマン)
◆コリン・ファース(ビル・ヘイドン、コードネーム:テイラー)
◆トビー・ジョーンズ(パーシー・アレリン、コードネーム:ティンカー)
◆キアラン・ハインズ(ロイ・ブランド、コードネーム:ソルジャー)
◆ジョン・ハート(コントロール)
◆マーク・ストロング(ジム・プリドー)
◆スティーヴン・グレアム(ジェリー・ウェスタービー)
◆トム・ハーディー(リッキー・ター)
◆スヴェトラーナ・コドチェンコワ(イリーナ)
◆サイモン・マクバーニー(オリヴァー・レイコン)
【この映画について】
元MI6諜報(ちょうほう)員の経歴を持つ作家ジョン・ル・カレによる人気スパイ小説を、『ぼくのエリ 200歳の少女』のトーマス・アルフレッドソン監督が映画化したサスペンス。英国諜報組織の中枢に20年も潜入しているソ連の二重スパイを捜すため、引退生活から呼び戻されたスパイが敵味方の区別もつかない中で真相に迫る姿を描く。
主演のゲイリー・オールドマンをはじめ、『英国王のスピーチ』でオスカーを受賞したコリン・ファース、『インセプション』のトム・ハーディら実力派の競演は必見。(この項、シネマトゥデイより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
東西冷戦下、英国情報局秘密情報部MI6とソ連国家保安委員会KGBは熾烈な情報戦を繰り広げていた。そんな中、英国諜報部<サーカス>のリーダー、コントロールは、組織幹部の中に長年にわたり潜り込んでいるソ連の二重スパイ<もぐら>の存在の情報を掴む。ハンガリーの将軍が<もぐら>の名前と引き換えに亡命を要求。コントロールは独断で、工作員ジム・プリドーをブダペストに送り込むが、ジムが撃たれて作戦は失敗に終わる。
責任を問われたコントロールは長年の右腕だった老スパイ、ジョージ・スマイリーと共に組織を去ることとなる。直後にコントロールは謎の死を遂げ、引退したスマイリーのもとに<もぐら>を捜し出せという新たな命が下る。
標的は組織幹部である“ティンカー”ことパーシー・アレリン、“テイラー”ことビル・ヘイドン、“ソルジャー”ことロイ・ブランド、“プアマン”ことトビー・エスタヘイスの4人。過去の記憶を遡り、証言を集め、容疑者を洗いあげていくスマイリー。浮かび上がるソ連の深部情報ソース<ウィッチクラフト>、そしてかつての宿敵・ソ連のスパイ、カーラの影。やがてスマイリーが見い出す意外な裏切り者の正体とは……。
この作品は東西冷戦時代が舞台で、しかも作者が諜報員だったジョン・ル・カレによるものなので所謂小説家が創造した世界とは一線を画し、作者の実体験または業務上知り得ていた事柄が基になっているのは想像に難くない。
登場人物のスパイ達のコードネームは単純でユニークなものが多くてクスッとさせられるが、その同僚達の間でもお互い知らないことが多い。中には同僚の妻と不倫していた者や足を洗って外国で英語教師として生活している者やロシアの女スパイと関係を持つ者など様々だ。
親玉格のコントロールを演じたジョン・ハートの演技を筆頭に、英国の俳優達の演技は流石だったのだが、ストーリー的には旧ソ連のスパイとの微妙な関係が裏で続いていたり、その敵側スパイとの接点、女スパイの存在がチラチラと映し出される場面は冷戦時代のそれを思わせ緊張感を煽いでいる。だが、この旧ソ連スパイとの関係を築いたのは意外な人物だったのがキーポイントだった。そこから展開が早くなったのだが、数少ない女性登場人物の一人の鋭い眼差しと女性ならではの分析力が光ったシーンだった。
結局、この配役から言って、また、容疑者と名指しされた4人+スマイリーの中での知名度の高さからもコリン・ファース(「英国王のスピーチ」で世界的な注目浴びました)が「モグラ」で、死んでいた筈だったプリドーが実は母国に戻っていたのがオチでした。
ゲイリー・オールドマンの渋さも含めて英国人俳優総出演的なオールスター・キャストで、映像的にも英国らしさが存分に出ていて良かったのですが、この映画はやはり1度観ただけでは細部を頭に入れるのは難しかった、と言うのが私の本音。と言って2度観れば納得するのでしょうが、2度目がいつ来るのかは...。