kintyre's Diary 新館

野球(西武ファン)や映画観賞記等を書き綴っています。野球のオフ期には関心の高いニュース等も取り上げています。

映画『アーティスト』を観て~アカデミー賞受賞作品

2012-05-12 12:43:43 | ヨーロッパ映画

12-36.アーティスト
■原題:The Artist
■製作国・年:フランス、2011年
■上映時間:101分
■字幕:寺尾次郎
■観賞日:5月12日、TOHOシネマズ六本木ヒルズ



□監督・脚本・編集:ミシェル・アザナヴィシウス
◆ジャン・デュジャルダン(ジョージ・ヴァレンティン)
◆ベレニス・ベジョ(ペピー・ミラー)
◆ジョン・グッドマン(アル・ジマー)
◆ジェームズ・クロムウェル(クリプトン)
◆ペネロープ・アン・ミラー(ドリス)
◆ミッシー・パイル(コンスタンス)
◆アギー(ジョージの愛犬)
【この映画について】
第84回アカデミー賞の作品賞、主演男優賞、監督賞、衣装デザイン賞、作曲賞の5部門を受賞。フランス人監督とフランス人による主演、しかもモノクロでサイレント(無声映画)。そんなハンディをものともしない受賞結果は、セリフや音響効果に頼らなくても、素晴らしい映画ができるという“証(あかし)”でもある。
サイレント映画が作品賞を受賞するのは、第1回アカデミー賞以来83年ぶり。ストーリーはごくシンプルながら、感情を表情や動きで表現するサイレント映画の手法が、現代では逆に新鮮に見えるから不思議だ。主演の2人が実に魅力的で、戦前のハリウッドスターを演じながらも、現代アメリカ人俳優には出せない味をよく出している。(この項、gooより一部転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
1927年、サイレント映画全盛のハリウッド。大スター、ジョージ・ヴァレンティンは、共演した愛犬とともに新作の舞台挨拶で拍手喝采を浴びていた。熱狂する観客たちで映画館前は大混乱となり、若い女性ファンがジョージを突き飛ばしてしまう。それでも優しく微笑むジョージに感激した彼女は、大胆にも憧れの大スターの頬にキス。その瞬間を捉えた写真は、翌日の新聞の一面を飾る。写真の彼女の名前はペピー・ミラー、未来のスターを目指す新人女優だった。

映画会社キノグラフでオーディションを受けた彼女は、愛らしい笑顔とキュートなダンスで、ジョージ主演作のエキストラ役を獲得。撮影後、楽屋を訪ねてきたペピーに、ジョージは“女優を目指すのなら、目立つ特徴がないと”と、アイライナーで唇の上にほくろを描く。その日を境に、ペピーの快進撃が始まる。踊り子、メイド、名前のある役、そして遂にヒロインに。
1929年、セリフのあるトーキー映画が登場すると、過去の栄光に固執し、“サイレント映画こそ芸術”と主張するジョージは、キノグラフ社の社長と決別する。しかし数か月後、自ら初監督と主演を務めたサイレント映画は大コケ。心を閉ざしたジョージは、心配して訪ねてきたペピーすら追い返してしまう。それから1年。今やペピーはトーキー映画の新進スターとして人気を獲得していた。一方、妻に追い出されたジョージは、運転手クリフトンすら雇えなくなり、オークションで想い出の品々を売り払う。執事にその全てを買い取らせたペピーは、ジョージの孤独な背中に涙を流す。

酒に溺れるジョージは自分に絶望し、唯一の財産であるフィルムに放火。愛犬の活躍で救出されたジョージの元へ駆けつけたのは、変わらぬ愛を抱くペピーだった。“銀幕のスター”ジョージを復活させる名案を携えて……。

フランス映画がハリウッドのサイレント時代を舞台にした作品でアカデミー賞を5部門も受賞したのは快挙だ。大作やリメイク物が幅を利かせているハリウッド映画界に取って、フランス映画界が放ったサイレント映画は盲点だった。今の映画ファンはサイレント映画と言われても観た経験は皆無に近く、そうした意味でも新鮮さを感じた作品。そういう自分もチャップリン映画を数本観た程度のレベルで、劇場でサイレント映画を観たのは初めて。
サイレント映画なので当然ながらセリフが無く、所々でスクリーンに字幕が出るが会話全てをフォローしている訳では無いので、そこはストーリーの流れを読んでセリフを自分で「感じる」という作業を頭の中で繰り返す、こういう作業が必要なので眠くなっている暇は無い。

ストーリー的にはトーキーへの変換期についていけなかった無声映画のスターと、その転換期の流れに上手く乗ってスターダムを駈けあがった女優との対比を描いている。こういう時代の境目、例えばラジオからTVへ、LPからCDへ、ビデオからDVDへと時代の変化は必ず訪れる。そこで旧時代にしがみついて流れに乗れなかったジョージは言わば旧時代の象徴、逆にそのジョージに見出されたぺピーは新時代の申し子である。ただこのぺピーはジョージに見出された「恩」をスターになっても忘れることは無かった。
これがストーリー上のポイントであり、ぺピーはスクリーンから消えて忘れられた存在になっているジョージを、再び引っ張り出そうと画策。かつての思い出の品々を次々と売り飛ばして辛うじて生活費の糧にしていたジョージだが、ぺピーは密かにそれらを買い戻していた。ぺピーのジョージへの思いは通じ、ラストは二人で活き活きとスタジオでダンスを披露するのだが、この時のジョージを観ているとジーン・ケリーのようだった。

このサイレント映画が作った流れがこのままハリウッドへ逆輸出されるとは思えないが、フランス映画界にしてやられたとの思いはあるだろう。フランスがここまで見事にサイレント映画へのオマージュを捧げるとはお見事の一言に尽きる。

余談ですが、ジョージの愛犬「アギー」の名演技にも拍手


時計