経営コンサルタントへの道

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■■【経営コンサルタントのお勧め図書】410 現場から見た「中国の真実」

2020-07-09 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】410 現場から見た「中国の真実」

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

 

     今日のおすすめ

 

 『中国の大問題』(著者:丹羽 宇一郎 PHP新書)

 

 

     五現主義から見た中国(はじめに)


 私達コンサルタントは、状況を把握するのに、5現主義ということをまず頭に浮かべます。5現主義というの「現場」「現物」「現実」「原理」「原則」を言います。簡単な考え方ですが、コンサルティングの基本で、極めて重要な考え方です。

 この紹介本の素晴らしさは、著者が中国の問題について現場主義を貫き、語っているところです。著者は、現場を足で歩き、目で見て、口と耳と目でコミュニュケーションをし、そこから真実は何かを語ります。

 大使在任中、著者は33ある一級行政区のうち27を回り、現地一般人との対話は勿論、27の行政区の最高責任者全てと会っています。そこには、私たちが持っている中国に関する常識を、大きく変える事実が存在します。元中国大使の丹羽宇一郎でなくては語れない真実があります。

 日頃、私たちは隣国中国に関して並々ならぬ関心を持って、講演会やセミナーに参加をし、知見を学んできました。時にはネイティブの中国人の発表者から聞くこともありました。それらの講演会やセミナーから得た知見は、日本人の嫌中派が95%という数字が示すように、講演会やセミナーの聴衆である日本人の中国観を意識したものであったようにも思えます。

 しかし、丹羽中国論は、現場の事実から、悪い現実も、良い現実も、つまびらかにし、そこから「原理・原則」「問題解決法」を示しています。是非この紹介本を読み、皆さんの持っている中国論を検証してください。「目からうろこ」が沢山あるのではないでしょうか。

 

      新しく知った中国観と再確認した中国観


【重慶とドイツを結ぶ国際貨物列車】


 著者は、現在の中国の経済状況を「世界の工場」から、「世界の市場」へという象徴的表現で表しています。具体的には、2014年1月に中国税関総署が発表した、2013年の輸出入総額は、4.16兆ドルとサービス分野を除くモノの貿易額では米国を抜いて世界首位である。日本の代表的産業である自動車の中国国内における販売台数のシェアは、2008年に25.8%であったものが、2012年には16.4%に減少している。これは、ドイツ、フランスなどの世界各国が14億人の巨大市場を狙い始めている結果といえる。その象徴的ともいえる物流動脈が、新しく重慶とドイツのデュッセルドルフを結ぶ11,179kmに及ぶ国際貨物列車である。これにより、ドイツはヨーロッパのナンバーワンの中国の貿易相手国に上がってきた。日本では反日デモ以来、「チャイナ・リスク」が高まっているが、著者は中国の経済構造の変化や対日意識を、経営者は自ら歩いて判断すべきと薦めている。


【反日的ばかりではない】


 日本人に会ったことのない中国人が98%と著者は言う。著者は更に、「日本人に会ったことのない中国人の日本人に対するイメージは、軍服姿のイメージしかない。そんな中国に親日を期待するのは難しい」と言う。しかし著者は次の親日的事実を挙げる。JICAのODA(政府開発援助)の資金で派遣されるボランティアが2,3人単位で中国各省に2年間滞在する(嘗ては総勢100人位であったが今は40人程度に減っているそうだ。)。彼らは、日本語教師や病院での医療・介護などに力を尽くしている。彼らがその土地を離れるとき、現地の中国人たちは、涙を流しながら「また来て下さい」と口にするという。日本人がいかに優しいか、接してみれば、徐々に中国人の日本に対する感情は変わる。胡錦濤や李克強が若いころ日本に学び親日派であるように。


【世界は意外と中国を好意的に見ている】


 日本人の中国に対する好感度は先にも述べましたように5%と低い数字です。しかし、「ビュー・リサーチ・センター(米国)」の調査によると、アメリカ、ヨーロッパは4~5割、ラテンアメリカやアフリカは6~7割が中国に高感度を持っている結果が出ている。この要因として、著者は、中国の技術やソフトパワーを評価している点や、中国が各国に進出し、経済支援をしている点を上げている。そして、これから人口が増えるアフリカやラテンアメリカの地域において、中国の存在がアメリカに匹敵するほど大きくなっていることを指摘する。

 日本人の抱いている中国に対するイメージは、国際的には大きなギャップがある。このことを認識すると同時に、日本企業がグローバル化を更に進める中で、この現実を認識し織り込んだ戦略を展開する必要があると読み取りたいと思います。


【尖閣諸島国有化問題】


 尖閣諸島国有化問題のメタ(奥底にある真実)は何か、それはこの紹介本を読んでいただくとよく判ります。この問題の発生の原因となった、国有化のタイミングを間違えた稚拙な日本の外交についても、述べられています。著者がこの問題の解決法として、日中双方が『「あなたと私とで話し合っても解決はしない。解決できない話をしても仕方がない。では私たちにできることはないか。」そんなふうに互いが了解できることからはじめればいい』と提言しています。過去の日中外交の歴史から見ても、現実的な解決法ではないでしょうか。

 

     日本と中国の課題(むすび)


 著者は、中国を主に世界を俯瞰してきた中で、将来の日本の問題と絡ませながら、こう結論付けている。『中国を決して侮ってはいけないし、かといって、過剰にひるむ必要もない。中国を知れば知るほど、日本にとって中国市場の開拓はまだまだ十分に可能であり、中国も日本の技術や助けがなければ大きな困難に直面するだろう。日本のためにこそ、中国と互換関係を築いていくことが必要だ』と述べている。

 この様な結論の出てくる事実を、この紹介本から読み取り、私たちが持っている中国観を見直す必要を痛感しました。

 

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

  

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