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◆◆【時代の読み方】 シャープはなぜ経営不振に陥ったか 2016/02/18

2016-02-18 08:33:00 | 知り得情報

◆◆【時代の読み方】 シャープはなぜ経営不振に陥ったか 2016/02/18

 時代の流れを時系列的に見ると、見えないものが見えてきます。NHKの放送や新聞・雑誌などを見て、お節介心から紹介しています。

【経営コンサルタントの視点】シャープはなぜ経営不振に陥ったか 2016/02/11

 経営不振に陥っていたシャープは、液晶技術の海外流出を望まない政府系ファンドの産業革新機構による、官主導での再編案が本命と見られていました。ところが、台湾のEMS・大手電子機器メーカーでありますホンハイ精密工業の傘下に入って再建を目指すことが大々的に発表されました。

 なぜ、シャープが産業革新機構を袖にして、ホンハイに走ったのかは、ぶら下げられたにんじんに釣られたというところがホンネのところかもしれません。支援金額が、前者の二倍以上の金額であれば当然のことかもしれません。

 ホンハイは、社員の解雇をしないとか、ブランドを残すとかいっています。しかし、数年後には、それがどうなるかは解りません。パナソニックという日本企業でさえ、サンヨーを買収したときには同じようなことを言っておきながら、結局サンヨーは消えてしまいました。

 では、なぜシャープは経営不振に陥ってしまったのでしょうか?同じ轍を踏まないためにもその理由を知っておくべきでしょう。

 シャープに限らず、日本のメーカーはほとんど垂直型統合といわれる経営形態をとってきました。開発から、製品化、製造、販売、アフターサービスと一貫して経営を行うやりかたです。

 すでに30年も前から、水平型といわれます経営への移行が、経営コンサルタント業界から持ち上がっていました。

 水平型経営では、例えば開発に経営資源を集中して、製造はホンハイのようなEMS企業に委託生産してもらうというアップルに代表されるやり方です。

 それに対して、シャープのみならず、多くの日本企業は垂直型を執ってきました。垂直型というのは、自社の技術をフルに活かすという点で、私は優れたやり方だと考えています。

 では、それにも関わりませず、なぜシャープは経営不振に陥ってしまったのでしょうか?

 エコノミストの大半が、シャープの経営悪化の原因は、液晶テレビの「亀山モデル」にあると言っています。

 2004年に奈良県の亀山工場でフルライン生産を始め、その工場名がブランドになる程の注目度を浴び、シャープとしても2007年には、その投資のおかげで過去最高の利益を挙げることができました。

 しかし、韓国を初めとする海外勢の追い上げで好調は長続きできませんでした。2009年には、逆に液晶事業を一気に拡大しようと大阪の堺工場で操業を始めました。しかし、時すでに遅く、タイミングを外してしまい、一時的に収支トントンレベルまでに至りましたが、過大な投資は、経営の足を強く引っ張ることになりました。

 この頃から主力製品は、スマートフォン用の中小型液晶パネルに替わり、業績も一時的に回復した。その前後にホンハイからの経営支援策が提案されましたが、一時的回復に期待を寄せすぎ、構造改革が先送りされてしまったのです。

 その時にホンハイは、シャープの意思決定の遅さに苦言を呈しましたが、シャープは謙虚にそれに耳を傾けませんでした。

 シャープの意思決定の遅さは、シャープに限らず、日本におけます大半の大手企業と同様に「大手企業病」にかかっていて、その認識の甘さが原因です。それが顕著に表れたのが、シャープだったのです。

 日本企業に共通した問題点は、それ以前の経営体質にも由来しているのです。

 日本メーカーは、かつては「日立のモーター」とか「東芝の電球」とか、とそのコアコンピタンスが明確でした。それが、高度成長期、ITバブル期などを経るに従い、総合メーカーを目指すことになりました。

 その結果に、自社のコアコンピタンスが何処にあるのかを見失ってしまったのです。

 この問題に真剣に取り組んだのが、カゴメであり、電機業界では、経営不振をいち早く体験した日立、続いてパナソニックが代表的です。その動向を横目に見ていたシャープは、今のなって遂にそのつけが回ってきたといえます。

 垂直統合と多角化から、経営資源の分散状態に陥りました。その組み合わせによるマトリックスのひとつひとつのセルは、貧弱で、中小企業にも劣る開発力となってしまいました。

 海外のメーカーが、選択と集中で経営資源を集中してきたことと比べれば、競争力の弱体化は火を見るよりも明らかです。

 謙虚さを取り戻せる日本企業は、これからも生き残れ、その間に真の経営力を蓄積することに繋がり、勝てる企業へ返り咲くことができるのではないでしょうか。

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