経営コンサルタントへの道

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■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 2012 『「Tax Literacy」ストーリーでわかるグローバルビジネス・スキル』

2020-12-22 16:24:37 | 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 2012 『「Tax Literacy」ストーリーでわかるグローバルビジネス・スキル』

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

        

『「Tax Literacy」ストーリーでわかるグローバルビジネス・スキル』

                   (村田 守弘著 中央経済社)

 

■ 「Tax Literacy」とは(はじめに)

 

【日本人は「Tax Literacy」が低い?】

 Literacyを辞書で引くと“特定の分野の知識・能力”と出てきます。著者は「Tax Literacy」を、“税金の取り扱いを適切に理解・解釈・分析し、改めて記述・表現する能力”と定義付けます。
 この定義は、紹介本を通じて著者が訴えたいことを表す適切な定義と言えます。
 それは、日本を含む国際税務に於いて、二つの相反するテーマである税務リスク回避と税務コスト削減のバランスを如何に取るかという極めて重要なテーマを、国際税務争訟でトップレベルの実力・実績を有する著者が、卓越した理解・解釈・分析をベースに、読者に向けて記述・表現・発信しているのです。
 紹介本では、ストーリー風にさりげなく国際税務について語りかけていますが、グローバルビジネス・プレイヤーが身に付けるべき国際税務の知識・能力を総括的に記述しています。

 

【国際税務の“グローバル”“インターナショナル”“ローカル”を理解しておこう】

 著者は「グローバルプレイヤーが身に付けるべき重要な能力は、グローバル基準がなくインターナショナル・ルールもなく課税国のローカル・ルールに従う、しかし全てのインターナショナル取引に係ってくる税務即ち国際(グローバル)税務の能力である」と言います。
 つまり、「OECD租税条約モデル」を除いては地球規模でのグローバル基準がなく、二重課税を回避する租税条約以外は課税主体国から見た他国への適用・関係性(インターナショナル性)のない国際税務の世界で、税務リスクを避け税務コストの効率化を図るためには、グローバルな領域でインターナショナル取引に活用でき、各国のローカル・ルール税務に対応する、国際税務の知識が不可欠なのです。

 

【国際税務の“きも(急所)”】
 国際税務の“きも”について、是非、紹介本を手に取り読み取って下さい。得るものが多くあります。
 その“きも”の中でも特に重要な「移転価格税務と関税」について次項でご紹介します。

 

■ 知っておきたい「『Tax Literacy』のEssential Point」

 

【移転価格税制と関税】
 グローバルビジネスに於いて、日頃ほとんど関係なく過ごしている、それ故に管理上の大きな抜け穴となり、大きなリスクを抱えている分野、それが「移転価格税制と関税」です。それは、ある時突然に国内外の税務当局又は税関当局から事後調査が入り、アット驚く多額の追徴課税を受けるリスクです。
 この二つのリスクは、第三者が取引相手の場合は有りません。取引の価格を恣意的に決められる親子会社間の取引に生ずるリスクです。
 リスクを避けるための親会社と海外現地法人の間の恣意的ではない“あるべき移転価格”の算定方法について、日本の国税庁は6つの算定方法(この点では「OECD移転価格ガイドライン」通り)を定めています。
 紹介本は実務において広く使われている“あるべき移転価格”の算定方法として、取引単位営業利益法(TNMM:Transactional Net Margin Method)を採り上げています。TNMMのポイントは、比較的簡単に情報を取れる、類似製品を扱う他社海外現地法人の客観的(幾つかの他社・一定期間の情報から適切に選ぶ)営業利益率をベースに“あるべき移転価格”を算定します。(詳細は紹介本をお読みください。)
 移転価格税制は、適用ルールの差はあれ、どこの国に於いても適用されます。つまり、TNMMより低い仕切り価格で取引すると親会社サイドで、TNMMより高い仕切り価格で取引をすると海外現地法人サイドで移転価格課税リスクが発生します。
 どこの国でも適用される移転価格税制ですが、「OECD移転価格ガイドライン」が在っても“グローバル基準”には成り得ていません。例えば、日本の移転価格税制では、「ガイドライン」で禁止されている納税者に比較対象取引が開示されない“シークレット・コンパラブル”が在ります(平成23年度税制改正で「守秘義務の範囲内でその内容等を説明する」に改正)。米国では、「ガイドライン」のTNMMに対し利益比準法(CPM: Comparable Profit Method )が主流の独立企業間価格算定方法になっています。CPMはTNMMと酷似した計算方法ですが、TNMMが取引単位の検証であるのに対しCPMは会社単位で検証する点が異なります。
 一方関税(輸入)に関しては、上記親子会社間取引の例による場合、海外現地法人が“あるべき通関価格”より低く輸入した場合、税関当局から追加関税を受けるリスクが高くなる一方、海外税務当局からの移転価格課税リスクは減少します。逆に、海外現地法人が“あるべき通関価格”より高く輸入した場合、追加関税リスクは減少しますが、海外現地法人の税務当局からの移転価格課税リスクが高くなります。つまり、移転価格課税リスクと追加関税リスクはトレードオフの関係にあり、リスク・フリーの価格は移転価格と通関価格のハザマにあると言えます。
 要は各国ルールによる“あるべき移転価格”“あるべき通関価格”による仕切り価格のみがリスクを避けられるのです。
 国内外における移転価格課税、追加関税に臨機応変に対応するために、“あるべき移転価格”の算定方法の文書化と適切な改定が有用です(各国に文書化規定が存在/日本は租税特別法施行規則22条10)。
 また、“あるべき移転価格”の算定方法の文書化は“あるべき通関価格”の対応にも有用です。それは、世界税関機構(World Customs Organization)が「関税評価及び移転価格に関するガイドライン(2018年)」を公布し、関税評価プロセスにおいて移転価格文書を利用する指針を示しているからです。
 “あるべき移転価格”の算定方法につき、税務当局と事前に確認を取る事前確認制度(APA: Advance Pricing Arrangement)の活用も有用です。親子会社所属国の税務当局とそれぞれに行う必要があります(日、米、中、韓など約30ヵ国で可能/内国APAと呼称)。なお、2カ国以上にまたがる税務当局間の合意による事前確認を取る相互協議申立制度も在ります(租税条約を根拠とする/ニ国間APA、多国間APAと呼称)。

 

■ 更なるグローバル展開を志向する企業の意外な盲点は「国際税務」(むすび)

 

 去る11月15日にRCEP(FTA+経済連携=EPA)が署名されました。日・中の初めてのFTA/EPAであり、日本企業のアジアにおけるグローバル化が一層促進されるのではないでしょうか。
 一方GDPに対する輸出比率の世界平均は41.07%、輸出総額3位のドイツは46.1%。これに対し総額4位の日本は16.1%です。特に中小企業に於いて、欠如しているとされる“輸出したいという意欲・識見”を強化し、輸出潜在能力を発揮し、中小企業の輸出企業・中堅企業化、生産性の向上を計る好機と言えます(デービッド・アトキンソン「日本人の勝算」より)。
 かかる輸出をはじめとする更なるグローバル展開を志向する企業の意外な盲点が国際税務ではないでしょうか。
 紹介本により、国際税務のセンスを身に付け、更には国際税務の実務、実践のための領域に歩みを進めて行こうではありませんか。

■ 

【酒井 闊 先生 プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

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■■【心de経営】 采根譚01 前集147 精神は万古に新たなる 実践編30

2020-12-22 12:03:00 | 【心 de 経営】 菜根譚

■■【心de経営】 采根譚01 実践編30 前集147 精神は万古に新たなる


 【心de経営】は、「経営は心deするもの」という意味になります。それとともにフランス語の前置詞であります「de(英語のof)」を活かしますと、「経営の心」すなわち、経営管理として、あるいは経営コンサルタントとして、企業経営をどの様にすべきか、経営の真髄を、筆者の体験を通じて、毎月第二火曜日12時に発信いたします。


 

■【第一連載】────────────────────────────■

     ■■ 采 根 譚 (解説:井原隆一)  :  前集147 ■■

        精 神 は 万 古 に 新 た な る
 
           日本経営士協会理事長 経営士 藤原 久子

■──────────────────────────────────■

【筆者紹介】

 北海道札幌市出身、平成元年7月に財務の記帳代行業務並びに経理事務員の人材派遣業の会社を設立し代表取締役として現在に至っています。平素、自社においては、従業員満足・顧客満足・地域貢献企業を目指し、「心で経営」を実践し、経営士・コンサルタントとしての専門知識を活用しながら、客観的に現状を認識し、問題発見や解決策の提案や業務改善案・経営戦略への提言など、企業の様々な問題の共有を図りながらアドバイスをしています。

   現職:特定非営利活動法人日本経営士協会会長、経営士


『采根譚』の著者は洪自誠といわれ、日本に江戸時代中期に伝えられ、以来知識人の隠れた教養書として、明治以降も多くの人々に愛読されてきました。『采根譚』の書名は宋代の学者(思想家)汪信民の「人よく菜根を咬みえば、則ち百事なすべし」によると言われています。
「菜根」すなわち、野菜の根は硬く筋が多いですが、これをよく咬みうる者のみが、物の真の味を味わうことが出来る、ということを意味しています。また「菜根」は貧しい生活、暮らしをいうことから、貧苦に十分耐え得るもののみが人生百般の事業を達成できることも意味しています。
『采根譚』が日本に紹介されたのは江戸時代中期、加賀前田藩の儒者、林瑜(はやしゆ)が紹介したのが初めとされています。以来おびただしい数の復刻本が出版され、中国よりも、日本で広く愛読されてきました。実業・ビジネスの世界で活躍されている多くの人々に、心の指南書として親しまれてきました。時が移り人が変わっても、変わる事のない哲理を今に活かそうとしているからだと思っています。
 この『采根譚』は前集、後集合わせて357編からなり前集の222編は現実を生きる処世の智恵を説き、後集134編は心豊かな閉居の楽しみを語ったものが多いとされています。
 それでは、解説者・井原隆一氏のプロフィールをご紹介します。1910年に埼玉県で生まれました。14歳で埼玉銀行(現りそな銀行)に入行し、18歳で夜間中学を卒業しました。父親の死亡に伴い20歳で莫大な借金を背負いながらも独力で完済したのです。その間、並はずれた向学心から、独学で、法律、経済、経営、哲学、歴史を修めた苦学力行の人といえます。
 最年少で課長に抜擢され、日本ではじめてコンピュータのオンライン化するなど、その先見性が広く注目され銀行の筆頭専務にまで上りつめました。60歳になって大赤字と労働紛争で危機に陥った会社の助っ人となり、40社に分社するなど、独自の再建策を打ち出し、数々の企業再建の名人として知られるようになったといわれています。

         参考文献 采根譚 (解説:井原隆一)  プレジデント社


 ■■ 采 根 譚 (解説:井原隆一)  :  前集147 ■■ 

        精神は万古に新たなる
 
【読み下し文】

    精(せい) 神(しん)は 万(ばん) 古(こ) に
         新(あら) た な る

 事業文章は身に隋(したが)って銷毀(しょうき)すれども、精神は万古に新たなるが如し。

 功名富貴(こうみょうふうき)は世を遂(お)うて転移すれども、気節(きせつ)は千載(せんざい)に一日(いちじつ)なり。

 君子は信(まこと)に当(まさ)に彼を以て此れに易(か)うべからざるなり。


【口語訳】

 どんな事業・学問でも、死んでしまえば肉体と共に滅んでしまうが、人の精神は永遠で日々新たに生き続ける。

 地位・財産も時の流れにつれて人に移ったり、価値を失ったりしてしまうが、人の節操は千年の後になっても変わることはなく、尊いものである。したがって、人々はよくこれを自覚し、本末を誤ってはならない。


【解説に出てくるキーワード】

「創業は易く守成は難し」【『貞観政要』】唐の太宗から、「帝王の事業は、創業と守成といずれが難しいか」と問われたとき、側近の魏徴(ぎちょう)が答えた言葉。ちなみに宰相(さいそう)の房玄齢(ぼうげんれい)は「創業の方が困難です」と答えた。

 前集147につきましては、実は私の「座右の銘」として掲げ、雑誌・セミナー等でご紹介させていただいておりますが、私の創業時の心根でもあります。


【コメント】

 自分の生き方の模範や戒めのために、日頃から大切にしている言葉や信条を「座右の銘」として、私が起業した頃を振り返ってみますと、当初は純粋な気持ちで単に事業の継続を願いつつ5年先の姿を創造(単なる「想像」ではありません)しながら事業展開をして参りました。

 

 たとえすべての物資がなくなっても自らの生き方、歩みは尊く後世に残るという、つまり人の精神は永遠に生き続けることになります。そこから道理を守って生きることによって出来る限り寛容の心で人に接し、不満の心を抱かない様にしたいと思いますし、また世をさった後にも、できるだけ恩恵を残して多くの人々に満足の心を持ってもらいたいと願うのです。

 

 一歩下がる事が、さらに前進するための土台になり、人のためを考えることが結果的に自分に利益をもたらす基礎となります。常に冷静な眼で他人を観察し、冷静な耳で言葉を傾聴し、冷静な感情で道理を考えるという意味においては「采根譚」の解説者である井原隆一氏に見る生き方そのものの様に感じます。それは本来の経営士・コンサルタントの鏡でもあるかと思います。

 

 一方で富貴の人に近づこうとしないのは、ある意味潔癖であると思いますが、私は近づいても、その影響に染まらないのが本当の潔癖というものと考えます。世の中の手練手管など知らないほうがよろしいのですが、知りながらも決して用いようとしないのが、本当の人格者だと思います。企業経営においても、同様の精神が求められ、本当の意味における経営者様の「心」を感じ取り、コンサルタントとして困難を乗り越えた先に、人間として磨かれると信じます。

 

 日本経営士協会の歴史には、先人の智恵からなる財産や素晴らしい格式と伝統があります。とりわけ直近の10年余に今井会長か蓄積して下さいました経営士・コンサルタントのノウハウは、日本経営士協会の財産、宝物として今後に活かしていかなければなりません。会員活動指針であります三共「共業・共用・共育」の精神を継承してゆく中で、共に成長してゆく事がやがて協会の発展にも繋がる事と確信致します。

 

 何事に於いても謙虚な心で傾聴、そして研鑽を重ね学んでゆく事こそが未来の輝く星となって成長してゆく事を期待しております。会員の皆々様の心がひとつになり、前進していくことを強く願っています。

 

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◆【話材】 昨日12/21のつぶやき クリスマスシーズンに思う遠距離恋愛

2020-12-22 07:29:00 | ブログ

◆【話材】 昨日12/21のつぶやき クリスマスシーズンに思う遠距離恋愛

 

経営コンサルタントとして感じたことを毎日複数のつぶやきをブログでお届けしています。

もし、お見落としがありましたり、昨日のブログで再度読みたいつぶやきがあるというときに便利なページです。

本日の【今日は何の日】も、つぶやき済ですので、そちらもあわせて【話材】としてご覧くださいますと幸いです。

  https://blog.goo.ne.jp/keieishi17/e/7d36781914c4cad8d246805f5c9d018a

 

 

晴れ

 

■ 昨日は、下記のリストのようなことをつぶやきました。

konsarutanto   ◇ 昨日のつぶやき ◇ 

 

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