『微積分教育の新しい方向』(東数協ゼミナール1)(1988.8刊行)という幻の書を最近手に入れた。
これは近数協の古本市場で格安で手に入れたものである。私にとってはまことに幻の書であった。
これは一言でいえば、いかに量の理論の観点にもとづいて「微積分を教えるか」ということに焦点を当てた、宮本敏雄さんの『数学教室』連載の記事をまとめたものである。
矢野 寛(ゆたか)先生の『中学・高校における水道方式』(愛数協ブックレット)にたびたびその内容の一部が引用されていたが、私には幻の書であった。
これに明治大学名誉教授の銀林浩さんが解説をつけておられる。銀林さんは手放しで礼賛一方ではなく、その宮本さんの考えられたことの発展を考えておられる。
そして現に彼は『量の世界』(むぎ書房)という書を出されてもいる。今回まだ宮本先生の内容にはまだ立ち入っていないが、解説のところを読みつつある。
そのある個所で以下のように書いてある。
内包量を生み出す割り算の延長線上に微分を、そして外延量を生み出す掛け算の一般化として積分を位置づけようという遠山啓の根本理念は、すでに小学校算数の検定教科書『みんなの算数』編集当時1959年にできていた。しかし、理念だけでは『絵に描いた餅」同然であって、教育上の実効は期待できない。どうしてもカリキュラムと具体的教授プランが確立されなければならないのである。『量の問題とその発展』(森毅:引用者追加)にしても『微積分教育の新しい方向』(宮本敏雄:引用者追加)にしても同じことがいえるだろう。わが『量の世界』(銀林浩:引用者追加)だって同罪であって、理念のリファインに留まっているとしかいえない。(引用終り)
実際にその具体的第一歩は自由の森学園の増島高敬氏によって乗り出されたとその後に書かれている。
しかし、高校の教育課程ではそれでいいだろうが、高校だけではなく、大学の基礎教育の観点から見た、微積分学の具体的内容という点ではまたもう一つ問題があるのではないかと思われる。
高校から大学基礎数学へと移行していくときにそのテキストとカリキュラムをどうするのかという問題が残っている。
『微積分教育の新しい方向』にしても優れた著作ではあるが、それでもそれは高校レベルに重点があり、大学の基礎数学レベルまで含めた『微積分教育の新しい方向』ではない。そこに問題が残っている。
その後、高校での具体的な授業の実践は増島高敬さんが報告をブックレットにされていることを知った。
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