「海の波はどうしてできるか」というのが今朝の朝日新聞のBe版の「Do科学」に出ていた。小さな海の波が風のエネルギーをもらい、だんだん成長していくということらしい。
海の水は波が動いてくるからといっても水が動いてくるわけではない。波とはある場所での振動現象が周りの場所に広がっていくことである。
だから川の水が海へと流れて行くように海の水が動いてくるかのように思えるが、そうではなくてあある箇所の海の水を見ているとそこでは円運動をしているくらいである。
昔、ソリトン研究で有名だった広田良吾先生の集中講義を聴講していたら、波の上の方が普通は波の下の部分よりも速度が速くて、それで波が砕けるのだとの話であった。
ところがそういうふうに砕ける波ではなくて、そのまま波の形を維持して迫ってくる波がある。それをソリトン(soliton)というとの話であったと思う(注)。
私が「きちんと広田先生の意図を理解していれば」の話だが。
波の数学的表現だが、高校生の時に物理の講義で話をいたときはあまりよくわからなかった。それがもう大学に勤めて何年も経ったときに、その当時「フィジックス」という名の雑誌が発行されており、そのある号の中に「波を数学的にどう表すか」とかいうタイトルの記事があってそれをフォローして、ようやく波の数学的な表現が分かったという気がした。
私は鈍才の物理屋だから、秀才の物理屋とは理解の早さも違うのだろう。それから、振動とか波動とかのことを取り扱ったテクストを読んでみたら、波の数学的表現はそこに書かれてあることがわかった。
特に、私が見たのは有山正孝『振動・波動』(裳華房)である。だが、なかなかこれをはじめから読むのは難しかったのではないかと思った。
私はそれからグラフの平行移動は、この波の数学的表現を理解するためには欠かせないのではないかと思うようになった。
愛媛県数学教育協議会を長年牽引してこられた故矢野寛(ゆたか)先生は2次関数でのグラフの平行移動の説明は本質的ではないとのお考えであったが、私は波の数学的表現とグラフの平行移動との関係から捉えるという視点がほしいと思っているので、尊敬する矢野先生のご意見にはあまり賛成ではない。
いや、2次関数だけに話を限ると矢野先生の観点は正しいのだが、グラフの平行移動の話はそこで尽きるわけではないという視点をもちたいと思っている。
だからもう故人となっている、先生に私の見解をもし伝えることができたら、賢明な先生は私に賛成してくださるのではないかと思っている。
いつかもこのブログで書いたかもしれないが、海の潮の満ち干は海の水が波ではなくて実際に動いてくるのである。
私は行ったことがないが、フランスの観光名所の一つのモン・サン ミシェルでは潮が引くと何キロにもわたって干潟ができるが、それが潮が満ちてくると馬が駆けてくるくらいの速さで海水が押し寄せてくるとか聞いた。
それで昔は干潟に遠くまで出ていて、潮に飲み込まれて亡くなった人がいたらしいと聞いたことがある。そしてそういう干潟のできる海のことをdas Wattenmeer(ドイツ語)というとはこのブログで何回か話題にしたことがある。
(注)私の昔の友人の一人は自分のメールのアドレスの一部にsolitonを使っている人がある。