テーブルの端に置き去りにされ、かろうじてしがみついている汚いくたくたの小さなマッチ箱。中箱を引き出すと、最後のマッチ棒が一本残っている。指先を焦がす可憐な炎がなつかしくなり、その一本を摘み上げると、マッチ棒の下に隠れていた細かな文字が中箱の底に見える。目をこすってなんとか読んでみると、こんなことが書いてある。
「やっと私を見つけてくれましたね」
どうやら人生の相貌なんてのもこういった按配式に現れるものかも知れない。
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