美濃屋商店〈瓶詰の古本日誌〉

呑んだくれの下郎ながら本を読めるというだけでも、古本に感謝せざるを得ない。

徒然草第二百十五段

2013年04月10日 | 瓶詰の古本

  平宣時朝臣の話に、急に宵のうちに召しだされて正装もせずに駈け付けて、さて台所をごそごそ不器用に探した末に小土器に味噌の付いたのを酒菜に、主従二人して心よく数献に及んだという話など、歳を重ねてから振り返ってみて解し得る交歓の味わいがあり、相識が差し向かいに酒を飲み交わすという、無上の喜びが心に静かに沁みてくる。年寄りになってから読む参考書も、これはこれで、お酒と同様に飽きることのない楽しみを与えてくれるのがありがたい。遠き世の文人の不朽の文章を、斯学の泰斗が篤実に解説してくれる、こんな贅沢をある世代や職域だけに独り占めさせておいてはいけない。と言うことで、次は、捨ててしまった学生社の『日本史』でも探しに行くか。それか、杯を傾けにでも。

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