か ら け ん


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「むつ」は太平洋に醜態をさらした

2012年06月29日 | 技術
1974年、一隻の船が華々しく就航した。進水式には皇族が呼ばれ、記念切手も出た。加圧水型原子炉を積む10000馬力の船で総トン数は8240トンになった。

若い研究者を中心に就航前から廃船にすべきだという声が強かった。「むつ」と「もんじゅ」と「ふげん」で人は死んだが得るものは何もなかった。どころか今のカネにすると2兆円以上を海に捨てた。

今回は「むつ」に絞る。わずか戦後20年しかたっていない国が原子力船を持つ必要があったのか。当時のGDPは現在の10分の1にも満たない。2500億円とは国家予算の2.5%の相当した。

個人も国家も団体も実力のないやつほど背伸びしたがる。なぜか原子力官僚と言われる低脳集団は船の完成を急いだ。アメリカもソ連もドイツも持っているから日本も持つんだ。こういった単純な頭脳にはたいてい悲劇的なことが起こる。

諸外国が原子力船に見切りをつけ軍事用を除いて廃船にしていた時、我が国は涙目になって「むつ」の成功を祈った。なんとその原子炉は地上実験を省略された。のみならず係留試験もせずに出航した。

同年、洋上800キロでさっそく放射線漏れをおこす。これはアメリカの設計会社から三菱は指摘を受けていたにもかかわらず手直しを怠ったことにより起こった。

また一部に隠ぺい工作もあり沿岸住民の不信感はつのった。母港は受け入れを断り日本各地を受け入れ港を求めてさまようことになった。だれも責任をとらず海にカネをばらまき続けた。社会保障費の3分の1が消えた。

たしかに当時、増え続ける海運需要とそれに伴う経費の増大はどの国にとっても頭の痛い問題であり、やすい原子力に頼ろうとしたのは無理からぬことではあった。ただ低脳官僚、自民党が企業献金を背景に国防に資するという伏線があると勝手に思い込んでいたことが問題だ。

このとき日本学術会議の越智勇一は政府にこう申し入れをしている。

現在(1974)「むつ」で起きている事態は極めて深刻である。設計製造においてミスがあったことは明らかである。我が国の原子力の平和利用に国民の信頼を取り戻すことを切に希望する。民主自主公開の3原則に従って原子力開発の在り方について根本的な再検討がなされることを勧告する。(一部文章省略)

30年以上前に出たこの勧告は、1955年にできた原子力基本法の内容に近い。繰り返しのべねばならぬほど国民の知らぬ間に事態は展開していった。

今回(2012)自民党は原子力の平和利用にくさびを打ち込んだ。「安全保障に資する」という一文を入れた。

平和利用すらまともにできていない人間がそれを武器に使ったらどうなるのか。

福島原発事故現場の醜態はまるで猿が初めて火を手にして慌てふためく様子だった。
Posted at 2012/06/26 23:32:43

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