スラムドッグ$ミリオネア/Slumdog Millionaire

2009-01-11 | 映画
今回は、2009年のアカデミー賞8部門を獲得した「Slumdog Millionaire スラムドッグ$ミリオネア

ネタばれの部分は反転してますので、ご安心を





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インドのスラム街で育った孤児のジャミール(イルファン・カーン)は、世界的な人気番組「クイズ$ミリオネア」で、あと一問で全問正解という状況にいた。
だが、無学の少年が答えられるはずないと、司会者には疑われ、賞金の支払いを渋るTV番組会社の差し金で警察に連行され、尋問を受けることになる。
一体なぜ、ジャミールは100ドル札に印刷された大統領の名前や、ピストルの発明者を知り得たのか...(Cinamacafeより)

     
     突然出てきたスラム上がりの若者があと1問の迫る。右は髭のみのもんた

     
     訳のわからない拷問で、ふてくされ気味のジャミール

     
     この刑事もいい味出してる

2008年の最後に観た作品。
年末に、毎日のように映画館通いをしたので、他に特に観たいものが無かったので、深く考えることなく選んだ作品。
今考えると、この作品に対して失礼な選び方だった。
インドのスラム育ちの若者が、クイズ・ミリオネアで全問正解になるかという、聞いただけでは、何か奇をてらっただけのストーリーのようだが、そこには愛、勇気、欲望、貧困、金が凝縮された名作だった。

     
     貧乏でも幸せだった

     
     汚くても幸せだった

     
     ほのかな愛もあった

監督は、イギリス人のダニー・ボイル監督。
この人の代表作は、ヘロイン中毒の享楽的な若者たちを描いた「トレインスポッティング」、イギリス紙幣がユーロに変わる数日前に、母親を亡くしたばかり兄弟に降ってきた大量の紙幣をめぐるファンタジー作品「ミリオンズ」、ゾンビの感染したロンドンの28日後の狂気の世界を描いた「28日後...」と、毎回全く違うテーマの作品を斬新な映像と定評の高い音楽でみせてくれる。

俳優は、無名の役者ばかりだが、主人公のジャミールを演じたデブ・パテルは、無欲で、淡々としていているが、内に秘めた情熱を時折みせてくれる若者を好演していた。

     
     生きるために一生懸命だった兄弟

     
     いつからか、違う価値を追い始め、長い時を越えての再会

インド、ボンベイのスラム街で育った孤児のジャミールが、クイズ・ミリオネアで、みのもんたに髭を生やした、調子のいい司会者に解答している。
彼は、最終問題まであと1問というところまで来ていて、その最終問題は翌日出題される。

その前後に、ランニングシャツを着たデブが彼に対して拷問しているシーンがフラッシュバックされる。
たいした拷問ではないのだが、映像がざらついてリアルなので、観客に結構痛さが伝わってくる。
実は、このデブは警察官で、学校にも行っていないジャミールが、こんなにクイズに答えられるはずがないと、彼に対する観客の人気の妬みもあって、胡散臭いみのもんた司会者が、警察に不正をしてると通報したのだ。

そしてここから、彼の生い立ちと何故クイズに答えられるかが語られる。

ここからネタばれ反転
ジャミールと兄のサリムは、ボンベイのスラムでどん底の生活だが、元気いっぱいに暮らしていた。
そこに反イスラムの暴動が起きて、スラムになだれ込んできた暴徒たちに母親が殴り殺され、街を焼かれ、文字通りの一文無しになった。
暴動がら逃げるうちに、いつの間にかラティカという少女がついて来ていた。

3人で残飯を漁りながらの生活に、ママンという人のよさそうな男が現れ、3人を孤児たちが住む寄宿舎に連れて行ってくれる。
このママンという男は、実は子供達に物乞いをさせてお金を稼いでいる、信じられない悪党で、そのためには子供の目を焼いて盲目にさせて、物乞いをさせていた。

ジャミールが目を焼かれることを知ったサリムは、兄弟2人で寄宿舎から脱出する。
その時、ラティカも逃げよとするが、足手まといになるのを恐れたサリムが彼女に助けの手をのばさなかった。

その後、2人は電車の屋根で暮らし、タージ・マハルで観光客を騙したり、スリをして何とか生き延びていく。

数年後に、ボンベイに戻った2人はママンの売春宿でダンサーになっているラティカを見つける。
彼女を連れ出そうとした2人をママンが見つけ、逃げられた事への復讐をしようとするが、逆にサリムが彼を撃ち殺す。
サリムは、その足でママンと対立していたギャングのジャベドの所に行き、彼の組織に入る。
サリムは、ラティカも自分のものにして、ジャミールを追い出してしまう。

時が経って、携帯電話のオペレーターのお茶酌みの仕事についたジャミールは、サリムとラティカを探し出す。
サリムは、組織の幹部に、ラティカはジャベドの女になっていた。

ジャミールは、ジャベドの家に忍び込みラティカを見つける。
そして何とか、彼女を助け出そうと、ボンベイの大きな駅で毎日5時に彼女を待つと告げた。
ある日、とうとうラティカが現れるが、後をつけて来たサリムにつかまり、またジャベドのところに連れ去られ、居場所がわからなくなる。

ジャミールは、もう一度彼女に会うために、インドで一番の人気番組のクイズ・ミリオネアに応募する。
ジャミールが最後の問題を解答する日、街は彼の話題で持ちきりで、ラティカもサリムもジャベドの屋敷で、その様子を見ている。
ここにきて、自分のジャミールとラティカに対する仕打ちを後悔した、サリムはラティカを密かに逃がし、札束を敷き詰めたバスルームで、拳銃を手にジャベドが来るのを待つ。

テレビ局に向かうラティカの持っているサリムから渡された携帯に、ジャミールから最後の問題に対してライフラインの電話が入る。

その問題とは、3人が出会った頃や寄宿舎で、自分達を物語の主人公に当てはめていたあの「三銃士」の3人の名前だった。
「1人は、アトス、もう1人はとポルトス、そして最後の1人?」


ここまで

     
     サリムが得たものはこのバスタブいっぱいのお金と拳銃

     
     ジャミールとラティカが得たもの

前半のスラム街で暮らす兄弟の様子は、はつらつとして明るい。
不幸さは、微塵も見られない。
母親の愛情を受けながら、元気に駆け回る様子が描かれている。
孤児になってからの兄弟は、愛に価値を求める弟に対し、と金・権力で成り上がろうとする兄と、価値観が分かれていく。
そしてその愛のために金の象徴である、クイズ・ミリオネアに応募するジャミール。
作り手の皮肉が伝わってくる。

悪役もわかり易く描かれている。
暴力の象徴を、子供を虐待するママンと対立するギャングのジャベドに。
そして、エゴの象徴を司会者の髭のみのもんたに。
特に、髭のみのもんたのいやらしい悪は、一番たちが悪い。

この作品は、いくつかの要素が入っているが、まずは純愛ストーリーだ。ラブストーリーより、純愛という表現があっているような気がする。
そして、スラム育ちの孤児兄弟の青春映画でもある。
最後が、孤児のお茶酌みが、ある日億万長者に手が届こうとする、ファンタジーでもある。

3つのテーマと、貧困問題、宗教差別、売春、子供への虐待等、インドで本当に起きている問題が、上手く絡み合ってわかり易く伝わってくる。
しかもそれをクイズの問題とその解答で表現していく、新鮮なストーリーの語り口だ。

アカデミー賞の作品賞をとっても全くおかしくない秀作だ。
(追記:作品賞ほか計8部門を受賞

     
     インド映画では、お決まり(と思われる)みんなでダンス

     
     ジャミールも踊る

トリビア
インドで主役の候補が見つからなかったダニー・ボイルは、イギリスのテレビショーに出ていたデブ・パテルを見た、娘の勧めで知った。

貧困街と結び付けられてイメージが落ちることを恐れたベンツ社は、スラム街で走るベンツのロゴを外すように依頼した。(なんて会社だ!!)

ダニー・ボイルは、3人の子役の出演料を16歳で10年生の終了の時に、支払うと契約した。プロダクション会社は、彼らが16歳になるまで毎日学校の送り迎えの車を提供する。(ベンツも見習え!!)



このミリオネアは凄い
(埋め込みが無効になっている為、画像をダブルクリックして下さい)
http://www.youtube.com/watch?v=0jeAEXeY9ew


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24 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (中原)
2009-03-05 07:06:10
ほんと良かったですよね。
日本なら幾らくらいの金額なのかのかと思わず計算してしまいました。(;^_^A アセアセ…
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中原さん、 (かめ)
2009-03-14 15:07:07
2008年の作品中、エンターテーメントという言葉が、一番合う作品でした。
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TBありがとうございます。 (かからないエンジン)
2009-04-19 09:11:27
8部門受賞も納得の傑作でした。
ここのところパッとしなかった
ダニー・ボイル、やってくれましたね。

個人的にはあの司会者結構好きですね。
まあ悪いやつなんですが、
表情の変化とかが結構面白くて(笑)

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Unknown (latifa)
2009-04-19 10:36:23
こんにちは~。凄く好きな映画です。多分今年2009年度の1位になりそう・・・

ひげのみのもんたは、悪いヤツでしたね~。私なんか、すっかり騙されてしまったと思います。
さすがわ、人生経験豊かなジャマール、騙されませんでしたね。

最後の動画が、残念ながら見れなくなっちゃってるみたいです^^
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こんにちわ (HIROMI)
2009-04-19 10:59:43
子役の三人、かわいかったですね。実際にスラムに住む子どもたちと聞いたので、この後どうなるのかな、と思っていましたが、就学が保障されたのなら本当によかったです。
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素晴らしい映画 (にゃむばなな)
2009-04-19 15:13:17
ジャマール、ラティカ、サリームの3人を中心に見事な映画として仕上げてくれてましたよね。

ラストでサリームがラティカを通して弟に全てを託すくだりもよかったです。
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こんにちは☆ (dai)
2009-04-19 17:38:12
流石アカデミーをイギリス人監督の映画ながらとった作品だけのことはあるぐらいの作品でした。

終わりがダンスバージョンじゃないパターンをDVDで期待したいです☆
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こんばんは♪ (non)
2009-04-19 21:05:04
こんばんは♪ コメントありがとうございました☆

見せ方が上手くテンポ良く、面白く見れました。
過酷な生活の中での少年達がエネルギッシュで、
元気をもらえました♪
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最後の答え (悠雅)
2009-04-19 21:09:27
まず最初に原作の題材がよかったのでしょうが、
それを巧い脚本と、ダニー・ボイル監督らしい映像や音楽の構成、無名の俳優たちの好演で見事な作品にしてくれた、と思いました。
1つ1つの要素が巧く作用しあって、とっても纏まりのいい作品でしたよね。
オスカー8部門受賞も納得です。

偶々、最後の答えを知っていたので、余計にハラハラドキドキ・・・
彼が答えを言った時には、小躍りしそうになりました。
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かからないエンジンさん、 (かめ)
2009-04-20 01:33:46
こんにちは、
司会者も含めて、それぞれ登場人物がいい味出してました。
取調べの刑事もよかったと思います。
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