今回は、クエンティン・タランティーノ監督、ブラッド・ピット主演の「
Inglorious Basterds イングロリアス・バスターズ 」
ランキングに参加してます。 クリックお願いします。
1941年、フランスの田舎町ナンシー。ナチスのハンス・ランダ大佐(クリストフ・ヴァルツ)が、ある農場主の家を訪れる。“ユダヤ・ハンター”の異名を持つ冷血漢ランダは、巧妙な話術で農場主を追い込み、床下にユダヤ人一家を匿っていることを白状させる。
ランダの部下たちは床下に向けて一斉に射撃を開始。だが、一家の少女・ショシャナ(メラニー・ロラン)だけは銃弾を逃れ、逃げ去った...。
ナチス総統ヒトラー(マルティン・ヴトケ)は“イングロリアス・バスターズ”と呼ばれる連合軍極秘部隊の存在に苛立っていた。ユダヤ系アメリカ人を中心にしたこの組織を率いるのはアルド・レイン中尉(ブラッド・ピット)。
カリスマ的な指導力を持つ彼はナチスの皆殺しを指示、ドニー(イーライ・ロス)やヒューゴ(ティル・シュヴァイガー)といった血気さかんな部下たちと共にドイツ軍に恐れられていた。
1944年、パリ。ショシャナは映画館主として身分を隠しながら暮らしている。そこへ、250人もの連合軍兵士を殺したドイツ軍の若い兵士フレデリック(ダニエル・ブリュール)が現れ、その武勇伝を本人主演で映画化した映画『国民の誇り』のプレミア上映を彼女の映画館で実施したいと申し出る。ヒトラーやナチス高官が集うその夜、劇場もろとも敵を燃やし尽くそうと決意を固めるショシャナ。一方、プレミア上映の報を受けたイギリス軍は、極秘作戦を実行すべくヒコックス中尉(ミヒャエル・ファスベンダー)を現地に派遣。この作戦には“イングロリアス・バスターズ”も動員され、現地近くの村でアルドらに合流、英国の二重スパイでドイツの人気女優ブリジット(ダイアン・クルーガー)にバーで接触する。
だが、そこはその日に限ってドイツ兵たちで賑わっており、ふとしたきっかけから銃撃戦に発展する……。プレミア上映の夜、続々とナチス高官が映画館にやってくる。そこにはイタリア人を装い、ブリジットを連れたアルドの姿もあった。ショシャナは恋人の映写技師マルセル(ジャッキー・イド)に最後の仕事を頼み、自らは復讐心を胸に秘めてこの夜の映写係を務める。様々な思惑が交錯する中、運命のプレミアが幕を開けた...(Movie Walkerより)
頭の皮を剥ぐのは、ネイティブアメリカンの血。
この人が、問題のナチス大佐。助演男優賞級の怪演。
美しく育ったショシャナ。
連合軍を殺しまくったナチスの英雄。
バスターズの一員、思わぬところからボロが。
彼もナチスを殺しまくっていたバスターズの一員。
歴史の汚点、ヒットラー。
この人の演技もよかった。
顔の大きさでハリウッド一を競い、奇抜でオタクな演出のクエンティン・タランティーノ監督。
一作一作の印象強いので、もっと沢山の作品を撮っているかと思ったら、全国規模で上映される作品は、「
キル・ビル 」以来のようだ。
主演は、「
バーン・アフター・リーディング 」の、体育会系おバカ男の役が、自分的には最近のヒットだったブラビ。
そして彼が率いるバスターズの隊長格のドニー・ドノウィッツを、変態スプラッター作品「
ホステル 」を監督し有名になったユダヤ系アメリカ人のイーライ・ロスが演じている。
ナチスに家族を皆殺しになったヒロイン役には、自身もユダヤ人で祖父が実際にナチスの迫害を受けたと語るフランスの女優メラニー・ロラン。
ブラビとは、「
トロイ 」で共演したことのあるダイアン・クルーガーが反ナチスで女優でありながら二重スパイのブリジット・フォン・ハマーシュマルク役を演じている。
どこかで、見たことがあると思いながら、なかなか思い出せなかったのは、自分の記憶力の低下はもちろんだが、彼女も少しの間にずいぶん歳をとったようだ。
そして、脇の中で一際異彩を放ったのが、ナチスのハンス・ランダ大佐役を憎らしく好演したクリストフ・ヴァルツ。彼は、オーストリアのベテラン俳優らしいが、ハリウッドでは無名。
この後、ハリウッドで引っ張りだこになるだろうと思ったら、すでに2010年公開の「
The Green Hornet 」に出演が決まっているようだ。
これって、あのブルース・リーの出世作になったテレビドラマじゃない!
他にも、どこにでも出てくるマイク・マイヤーズ等の癖のある脇役がたくさん。
隠れていた軒下から裸足で逃げるショシャナ。
見た目はひ弱なバスターズ。
バレバレの敵陣侵入。
ずう~っとこういう引きつったアメリカ南部表情のブラビ。
「ビンゴ~」って、うれしそうな大佐。
大きい顔のタランティーノ監督。
作品構成は、タランティーノ監督が得意なチャプター方式。
場面から場面に移るとき、本の目次よろしくチャプターが示される、「
キル・ビル 」で使われた、観客に展開がわかりやすい優しい方式。
冒頭のフランスの田舎町でのシーンは怖い。
ナチスのヘビのようにしつこい大佐から静かに追い詰められていく、農家の主人の冷や汗振りが伝わってくるようだ。
強烈にクリストフ・ヴァルツが脳裏に残る。
フランス農夫役のデニス・マノシェットという役者さんもよかった。
とにかくこの場面で、悪者ナチスを徹底的に観客に植えつける。
そして、アメリカの特殊部隊。ブラビは、南部(テネシー州)出身で祖先にアメリカの開拓歴史上有名なジム・ブリッジャーを祖先に持ち、インディアンの血も流れているという設定。
このキャラクターの訛りがすごい。
日本の吹き替えや字幕でどう表現されているかわからないが、南部特有の発音の間延びしたみゃーみゃーした強烈な訛りだ。
昔なら1960年代のテレビドラマ「じゃじゃ馬億万長者」ばりの訛りだ。
また彼の表情も南部の頑固者のそれで、どんな時でもしかめっ面。こういうので、笑いをとるのもタランティーノ監督の得意技だ。
それと、これ見よがしに彼の首についている絞められた痕については、結局作中何も語られていなかった。知りたい。
これで、ナチス対アメリカ南部の隊長が率いるユダヤ人特殊部隊の構図がハッキリする。
先ずは、ブラビの率いる特殊部隊が、ナチスの真っ只中にはいって行って、ナチス兵を片っ端から惨殺していく。得意なのは頭の皮を剥ぐこと。これは、見ていて痛い。
バットでの撲殺もいたそうだ。
そして、生かして返す捕虜にもちゃんとナチスのマークを付けてあげる。
物語は、フランスの映画館を切り盛りする、その昔ナチスのランダ大佐から裸足で逃げ延びたショシャナと、250人もの連合軍兵士を殺したドイツ軍の英雄フレデリックが出会い、とんとん拍子で彼の主演映画作品をショシャナの劇場で試写会を行うことで話が進んでいく。
そして、それがショシャナのナチスへの復讐の舞台、ブラビの特殊部隊のナチス壊滅作戦の舞台になる。
タランティーノ監督らしい、スプラッタシーンや壮絶な銃撃シーンがテンポよく展開される。
先に触れた、フランスの田舎のシーンのドキドキ感は、そのあと酒場でのドイツ兵対バスターズの銃撃戦でも再現される。
銃撃戦にいたるまでの、緊張感も凄い。陽気に飲んでインディアンポーカーのようなゲームで騒ぐドイツ兵とバスターズの兵士たちの緊張したやり取り、些細なしぐさからボロをだすバスターズ、そして現場に残った口紅のついたハンカチ、細かに計算された脚本が生きている。
そして、なんといっても見ものは、歴史を変えてしまう結末。
豪快に打ち上げ花火のようなクライマックスシーン。
それとは対象的な、ナチスに捕らえられたブラビとランダ大佐の愉快な対決振り。
ランダ大佐がブラビに話を切り出す時の、うれしそうな表情がいい。
そして、ランダ大佐が行き着くところも、勧善懲悪を貫くタランティーノ監督ならでは。
とにかく、スカッとする作品。
映画をトコトン愛するタランティーノ監督が、映画をナチズムを広げるための戦争の道具に使ったヒットラーとナチスに対する彼のメッセージが、ひしひしと伝わってくる作品だ。
試写会では、この人が一番人気?
一人遠近法が出来るタランティーノ監督。
タランティーノ監督、ちょっとラフすぎない?
トリビア
英語のタイトルはスペルが間違っている。
当初は、ディカプリオがハンズ大佐役の候補だったが、タランティーノ監督がドイツ語を話せる役者を使うことに決めた。