スヴェトラーナ・アルパース(著)『描写の芸術-十七世紀のオランダ絵画』(ありな書房)の序文に興味深い記述があった。
「ホントホルストやテル・ブリュッヘンといったユトレヒトの画家たちは、しばしばカラヴァッジョの後継者とみなされる。しかし彼らが反応したのは、イタリアの画家ではあるが北ヨーロッパの伝統に深くとらわれていたカラヴァッジョという画家であったことを見落としてはならないだろう。すなわち彼らは、カラヴァッジョを通じて彼ら自身の北方的根源へと導かれていったとも言えるのである。」(p22)
美術ド素人の私見だが、テル・ブリュッヘンは北方的根源ついでに北方ルネサンス・ゴシックまで遡ったのではないかと思えるのだけど(^^ゞ
多分、池上先生はイタリア美術がご専門なので、パノフスキー的(イコノロジー的)解釈を妥当とされているのかもしれませんね。
アルパースの問題提起は美術史上の事件だったようですが、やはり今日的には重要な意味(意義)を持っていたと思われます。
などと、美術ド素人が知った風なこと言ってすみませんですっm(__)m
アーウィン(エルヴィン)・パノフスキー(1892年3月30日 - 1968年) 流 美術史
への反発・アンティテーゼが大きいのではないかと思います。
この件については、昨年、
2016年04月22日
池上 英洋氏の西洋美術史入門
http://reijiyamashina.sblo.jp/article/174999980.html
の中で書いておきました。
私の浅過ぎる読解ではありますが、西洋絵画には二つのスタイルがあるようで...誤解を恐れず超簡単にまとめてしまうと(大汗)
①イタリア的絵画は言葉重視の物語画
②ネーデルラント絵画はイメージ重視の描写の絵画
この描写の芸術であるネーデルラント絵画をイタリア絵画と同じ手法で読み解くことは果たして良いのだろうか?というような疑問を呈したようです。
発表当時(1983年)、美術史家からかなり反発を受けたようなのですが、その中に「オランダにおけるイタリア主義の問題、例えばイタリア的風景画家やカラヴァッジョに影響を受けたユトレヒトの画家たちがまったく論じられず、オランダとイタリアの差異ばかりが強調されている」という批判もあった(「訳者あとがき」より)ようです。でも、一応「序文」で超あっさりながら言及されていたので、思わずブログにつぶやいてしまいました(^^;;;
確か、レンブラントプロジェクトが話題になっていたころに出版されたレンブラントの大きな本の著者の一人だったように記憶してます。
レンブラントには、あまり触れていないので、覚えておりません。