花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

REMBRANDT/CARAVAGGIO展(1)

2006-04-23 04:39:54 | 展覧会

アムステルダムのゴッホ美術館で「REMBRANDT/CARAVAGGIO展」を観てきた。
http://www.rembrandt-caravaggio.nl/index_en.htm#loca

レンブラントの光と影がCARAVAGGIOからの直接の影響とは言えなくとも、ユトレヒト派カラヴァッジェスキからの影響は否定できないものがあろう。今回の展覧会でも、まずはレンブラントに先行するユトレヒト派とCARAVAGGIO作品が展示されていた。

・ヘンドリック・テル・ブリュッヘン「聖トマスの懐疑」(国立ミュージアム・アムステルダム)
・ヘリット・ファン・ホントホルスト「キリストへの嘲笑」(国立ミュージアム・アムステルダム)
・ CARAVAGGIO「聖アンデレの磔刑」(クリーヴランド美術館・クリーヴランド)
 http://www.wga.hu/html/c/caravagg/09/54andrew.html
・ ディレク・ファン・バビューレン「ウルカヌスによって鎖に繋がれるプロメテウス」(国立ミュージアム・アムステルダム)

勉強を怠っていた花耀亭はユトレヒトに行って初めてオランダにおけるユトレヒトの特殊事情に気がついた。プロテスタント国オランダの中でユトレヒトはカトリックが多い土地柄で、ユトレヒトにおいてはカトリック的宗教画の需要がまだあったのかもしれない。ユトレヒトの画家たちがローマ教皇のお膝元ローマに修行に出かけ、そこで観たCARAVAGGIO作品から多くの影響を得て帰国したことも、なんだかすんなりわかるような気がする。

ちなみに、歴史を100年ほど遡れば、ローマ教皇ハドリアヌス6世(在位1522-23年)がユトレヒト出身で(歴史的にもかなり異色)、なんとスペインでカール5世の家庭教師をしていたというから驚く。そうそう、ゲントに行ったのも映画「女王ファナ」でカール5世が生まれた所だという記憶があったからでもあり(もちろんお目当てはファン・アイクの祭壇画)、お隣ブルージュ救世主大聖堂地下にはカール5世少年時の肖像画があった♪

話を戻すが、ユトレヒト派の扱う主題も構図にもCARAVAGGIOの影響を色濃く観る事ができる。画像はテル・ブリュッヘンの「聖トマスの懐疑」だが、キリストのわき腹の傷に指を差し込むところなど、サンスーシ絵画館所蔵のCARAVAGGIO「聖トマスの懐疑」にっそっくり!
http://www.wga.hu/html/c/caravagg/06/34thomas.html

ホントホルストの場合は、CARAVAGGIOが光源をあまり直接描かないのに較べ、蝋燭だったり松明だったりその光源を効果的に画面の中に持ち込み、逆光を使ったりと、後のレンブラントへの影響を強く見てしまう。

バビューレンはローマからの帰国後テル・ブリュッヘンと共同で工房を持つ。今回の展示作品「プロメテウス…」↓は
http://www.wga.hu/html/b/baburen/promethe.html
「聖アンデレの磔刑」もだが、私的には聖ポポロ教会チェラージ礼拝堂の「聖ペトロの磔刑」の影響の方が強いと思う。
http://www.wga.hu/html/c/caravagg/05/28ceras.html

CARAVAGGIOの光と闇の明暗による実在感と劇的効果はユトレヒトの画家たちにとっては多分ショックだったにちがいない。その衝撃の跡をユトレヒトだけでなくデーフェンテールでも堪能してしまった。

※追記:一部誤記があった為削除済(汗)



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4 コメント

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Unknown (ユウスケ)
2006-04-28 13:21:54
レンブラント=カラヴァッジョ、ご覧になられたのですね。私は指をくわえてカタログだけ眺めております。



ところで、ユトレヒトがカトリック都市だったのは事実ですが、テルブルッヘンはカトリック教徒ではなかったみたいです。ものの本によると、彼の祖父はカトリックだと分かっているのですが、画家はプロテスタント教会で結婚式を挙げて、その子供もプロテスタントで洗礼を受けているのが知られているそうです。



だとすると、晩年のネオゴシックのような金ぴかの祭壇画なんか、ずっと面白く見えてきますよね。
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ありがとうございます! (花耀亭)
2006-04-30 01:09:19
ユウスケ所長さま、ようこそです♪

ウィーンとアムステルダムの2本立てを狙っていたのですが、レンブラント=カラヴァッジョ展だけになりました。で、今回は英語版カタログも出ていたので私もほっとしました(でも英語苦手(汗))が、ご覧の通りめちゃくちゃ凄い並べ方(企画)で驚いてしまいました。ユウスケ所長さまは指をくわえているだけでガマンできますでしょうか?実はけしかけていたり(^^;;。私もバルセロナのカラヴァッジョ展では、指をくわえて所長さまのブログを拝見しておりましたし(笑)



ところで、本当に貴重なご教授、ありがとうございます!!テルブリュッヘンがプロテスタントだったとは存じませんでした(大汗)。それに、晩年の金ぴかの祭壇画がどんなものなのかも知らない美術ド素人です(涙)。画像をぜひぜひ探したいと思います。とても興味のある画家なのですが、取っ掛かりがわからないのです。

今回、DEVENDER歴史博物館でもテルブリュッヘンの(CARAVAGGIOの影響濃厚な)聖人画4枚を観てきました。プロテスタントであろうと、仕事として力の入った良作品だと思いました。画風も変わっていくのでしょうが、画家にとっての宗教画というのも本当に興味深いですね。いつも所長さまには新鮮な喝!をいただいておるような気がいたします(^^ゞ
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Unknown (ユウスケ)
2006-05-01 12:07:32
こちらこそ展覧会のレポート、ありがとうございます。うーん夏もヨーロッパには行くのですが、アムスの展覧会はパスします。でもダブリンのキリスト捕縛はいつか見たいですね…



>晩年の金ぴかの祭壇画

URL欄の作品などです。



あと個人的には、レンブラントのキアロスクーロはカラヴァッジョと同じくらいエルスハイマーから着想を得ていると思います。こちらも是非作品をご覧になってみてください。

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感謝でございます! (花曜亭)
2006-05-02 02:48:04
ユウスケ所長さま、画像ありがとうございました!1628年ごろの祭壇画を一生懸命探しておりました(^^ゞ。実はご紹介いただいた「聖母と聖ヨハネのいる磔刑図」は2度観ています。初めて観たのはなんとダブリン国立美術館で、2度目は先のMET「Realityの画家たち展」の時です。下↓は恥ずかしくもダブリンでのド素人感想です(汗)

http://pure.cool-rock.com/caravag/report8b.htm

おっしゃる通り確かにゴシック的であり、解説にもあるようにコルマールで観たグリューネヴァルトを想起させるキリストの生々しい硬さが見られますね。グリューネヴァルトもイーデンハイムの祭壇画を描いたすぐ後にルター派に身を投じますが、テル・ブリュッヘンもプロテスタントでありながらゴシック的な祭壇画を描いたというのも実に面白いですね。オランダでは肩身の狭いカトリックのために描いたのですよねぇ…。描いた状況や画家の心理にますます興味が湧いてきます。



で、エルスハイマーもご紹介いただき感謝でございます!

http://www.wga.hu/frames-e.html?/html/e/elsheime/index.html

エルスハイマーがレンブラントに影響を与えたことは作品からも確かに見ることができますね!ヴェネツィア滞在の後にローマに来ますが、年代的にCARAVAGGIOと重なりますので、エルスハイマーのキアロスクーロがCARAVAGGIOからなんらかの影響を受けたとは考えられないものでしょうか? (^^;;;

ところで最近、ミュンヘンのアルテ・ピナコテークでエルスハイマーとレンブラントの《エジプトへの逃避》を並べた面白い展覧会があったようですね。

http://www.pinakothek.de/alte-pinakothek/kalender/kalender_index_en.php?haupt=ausstellungen&inc=ausstellung&action=archiv&which=1815

エルスハイマーは夜空を観察していたようで…読もうと思っていた本があるのを思い出しました(汗)。

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=9980319836

テル・ブリュッヘンのあの星空も出てこないかと興味があります。



なんだか、長々となりましたが、所長さまから刺激をいただき、頑張らなくては!と勉強する気が出てまいりましたです(^^ゞ。ところで、今年の夏の欧州はどちらにお出かけなのでしょうか?こちらも興味津々ですね~♪
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