花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

ポーラ美術館の印象派コレクション展

2006-01-09 22:25:16 | 展覧会
新春美術館初巡りはゲストのokiさんから招待券を頂いた「ポーラ美術館の印象派コレクション展」となった。ポーラ美術館が質の高い作品を多く所蔵していることはゲストのいづつやさんやRUNさんからも聞いていたが、他展覧会で観たことのあるお気に入りの作品も並んでいて、なるほどと思わせる充実した展覧会だった。
http://www.bunkamura.co.jp/museum/event/pola/index.html

今回の展示は外光派のコローから始まり、世紀末のボナールに至る印象派中心の展覧会だったが、その中でも、まず、何と言ってもルノワールが良かった!《レースの帽子の少女》の甘やかで煙るような色調と柔らかなタッチは、少女の横顔をふんわりやさしく浮かび上がらせ、観ている私まで夢見るような幸せ感で包み込んでくれる。白いレースのたわわな帽子の質感表現などしみじみ観ていると、この淡い色調を統べるのが繊細な赤茶の差し色であることに気が付く。フィリップス・コレクションに引き続き、なんだかルノワールの筆致が面白く感じられるようになった。
また、嬉しかったのは東京都現代美術館「花と植物画展(?)」で気に入った《アネモネ》に再会できたこと。花弁の赤と紫を盛り立てる青の混じった背景色で、色彩が素敵なハーモニーを奏でているのだ。ルノワールの絵には観ている者をうっとりとさせる魅力がある。

ドガやクールベにも眼を惹く作品があった。ドガ《休息する二人の踊り子》は緊張感の溶けたくつろぎと疲労がバーにもたれた二人のポーズから伝わってくる。二人は何をおしゃべりしているのだろうと聞き耳を立てたくなる。黄と緑の渦巻くような色彩の階調が面白い作品だった。クールベ《波》は海の波塔が壁のように立ち上がり、その向うに水平に濃紺の海が横たわる。そして、その上には空。クールベらしい写実的色調と縦横の重層的な構図が面白く、海の絵好きの私はしばし絵の前で佇んでしまった。

ところで、やはり一番充実していたのはモネの作品群であろう。一室がまるまるモネ専用の展示室になっているのが壮観だった。《アルジャントュイユの花咲く堤》も以前観たことがあり、その遠近感のある構図の面白さに魅了されていたのだが、今回解説からその構図が日本の浮世絵の影響を受けたようだと知った。だが、その遠近感は色調の強弱で構成されているようにも思える。手前の花咲く堤の生命力あふれる花々の美しさよ!
もちろん定番の睡蓮シリーズも展示されている。《睡蓮》《睡蓮の池》…ポーラのこの《睡蓮》は数あるシリーズ中でも、可憐な睡蓮と水面に映るたゆたうような光と色彩のハーモニーはその美しさにおいて絶品だと思う。
さて、ご存知シリーズ《ジヴェルニーの積みわら》《国会議事堂、バラ色のシンフォニー》《ルーアン大聖堂》からの各1枚づつも、他国の美術館作品に遜色無い良作品だった。光の一瞬一瞬を色彩で捉えようとした壮大な試みは、光のゆらめく色調のなかに陶然となって魅了する。あ、オルセーの《国会議事堂》だけには負けるかも(^^;;;

展示はスーラやシニャックらの点描派からセザンヌとポスト印象派、そして世紀末ロートレック、ルドン、シダネル、ボナールへと続いた。私的に興味深かったのはセザンヌの宗教画《宗教的な場面》であり、ゴーガン《異国のエヴァ》だった。やはり画家にとっても宗教は切り離せない基底に存在するものなのだろうと思う。
ちなみにゴッホはシャープでデザイン感覚に富んだ《草むら》が出展されていた。《アザミの花》とセザンヌ《アルルカン》は2月からの後期展示だというのでガッカリ(涙)。また行かねば…。

これほどの粒揃いの印象派コレクションを集めた故鈴木常司氏の鑑賞眼と熱意(&財力?)には絵画好きとして感謝しなくてはならないだろう。遠い箱根からの引越し興行で観られたこともハッピーだと思う。そして、招待券を頂いたokiさんにも心から感謝したい。正月から素敵な展覧会を観られたのだから。
それにしても、いつか箱根のポーラ美術館を訪れ、コレクションの全容を観てみたいものである。


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