花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

東北大学川内キャンパス「さわって体験 中世写本とその周辺」展

2016-06-13 19:12:35 | 展覧会

たまたま見かけたポスターで知り、東北大学川内キャンパスで「さわって体験 中世写本 とその周辺」展を観た。どうやら「西洋中世学会」との抱き合わせイベントだったようで、会場の上階では学会が開催されていた。

 

中世写本と言えば先ごろ亡くなったウンベルト・エーコの『薔薇の名前』を想起するが、海外の美術館や教会廻りをしていると、ガラスケースの中に鎮座する中世写本を色々と見る機会がある。特に彩色豊かで筆記も美しい写本は、美術品だなぁ!と感心する。例えばダブリンで観た『ケルズの書』も、その美的価値はド素人眼にもわかるほどだった。

今回の展示は「羊皮紙工房」が担当し(展示品も所有!)、その主宰者である八木さん(多分ご本人だと思う)が会場で色々と質問等に応えてくださった。ちなみに「羊皮紙工房」サイトを拝見したら、まぁ凄いこと!!(・・;) 羊皮紙や写本についてのお勉強ができるし、今回の展示物の詳細も書かれているので、ぜひご参照あれ。

今回の展示構成は…

■展示:(1)中世写本模写作品(現代)、(2)羊皮紙の作り方、(3)装飾写本の作り方、(4)中世~近世本零葉、(5)中世~近世の羊皮紙文書、(6)トーラー巻物

■体験:(1)羊皮紙筆写体験(中世写字生体験)、(2)羊皮紙冊子めくり体験(中世読書体験) 

展示は写本の用紙である「羊皮紙」からで、羊皮紙の作り方や素材(羊・山羊・牛・仔牛など)による違いなど、実際に自分で触って違いを確かめることができたし、写本の作り方(造本)過程も展示され、美しいレプリカ作品や当時の実物写本も色々と展示されていた。

 

羊皮紙用に処理・乾燥された羊さん一頭分

羊だけでなく、牛や仔牛、山羊などの種類もあり、触って違いを知ることができた。

写本用のインクや絵具の原料も展示

が、やはり面白かったのは体験コーナーで、「実物展示と筆写体験」と銘打つように、ガラスケースの中ではなく、実物写本が展示され、その頁を自分でめくることもできたこと。更には、傾斜台(中世の写字生気分♪)で羊皮紙に羽ペンで当時仕様のインを使い、15世紀のゴシック体を真似て写字体験ができたこと!

写字のお手本

私も羊皮紙にゴシック体でabcdef(もちろん、ヘタですっ!) 

実物写本の中でも私的に一番目を惹かれたのは、16世紀スペインのPatent of Nobility(叙爵証明書)『神聖ローマ皇帝カール5世発行の叙爵証書』 (1550年 スペイン)で、その挿絵装飾や字体だけでなく、発行者であるカール5世の肩書が何行にも渡って羅列されている様を目にできたこと!!

『神聖ローマ皇帝カール5世発行の叙爵証書』 (1550年 スペイン)  Niculas de Campoo宛て

写本右頁に並ぶ肩書は…

Don Carlos(カール陛下)、神の恩寵による、神聖ローマ皇帝、永遠の尊厳者、ドイツ王、全スペインの王及びカスティーリア王、アラゴン王、シオン王、ナバラ王、グレナダ王、トレド王、バレンシア王、….オーストリア大公、ブルゴーニュ公、ブラパント公、ロレーヌ公、….フランドル伯、ハプスブルク伯、…ブルゴーニュ自由伯、エノー伯、ホラント伯、ゼーラント伯、…。

かなり省略したけど、凄~く長い肩書なのだ(・・;)。カール5世の支配した領土の多様さが、その肩書から透けて見える。装飾写本ではあるけれど、歴史史料としての価値も半端ないと思う。

更に、サイトの解説を読むと…「本物の金を粉末にした絵具「金泥」を地にして描かれたボーダー装飾は、「ヒスパノ・フレミッシュ」(スペイン+フランドル)様式。フランドルのゲント・ブルージュ様式を踏襲し、動植物が立体的に描かれています。」

やはりブルゴーニュ公国を継承し、ネーデルラント育ちのカール5世だわ~♪♪ プラド美術館でもヒスパノ・フレミッシュ絵画が展示されており、スペインにブルゴーニュ(フランドル)文化を持ち込んだ痕跡を見ることができたのだった。 

それにしても、たまたま目にしたポスターから、こんなに楽しく勉強できる展示会を観られたのだから、本当にラーッキーだったと思う(^^)v



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2 コメント

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okiさん (花耀亭)
2016-08-06 01:01:39
お久しぶりです。
『ロマネスク美術革命』は存じませんでした。貴重な情報をありがとうございます。去年、モデナの聖堂を観ながら、ロマネスクも面白いかも!と思ったところでした。
で、ルネサンスは古典古代の文化復興だと思っていたのですが、古代ギリシア精神の復興だったとは...(^^;。そうならば、おっしゃる通り面白いですね。
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Unknown (oki)
2016-06-13 22:11:33
お久しぶり、変な手紙差し上げてすみません。
Juneさん、相変わらずあちこち行かれているようでお元気そうでなにより。
中世と言えば、金沢百枝さんが、去年 ロマネスク美術革命、という本を表されましたね。中世の春、とか面白い表現使って。
まぁ、ルネサンスとは、古代ギリシャ精神の復興と言われますが、ちょっと違って、古代ギリシャの人は感性界に重きを置いてなくて、奴隷制を肯定して、イデア世界を観想していたんですが、所謂ルネサンスは感性の肯定でもある訳でー。
こういう所が面白い。
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