佐藤猛 著『百年戦争』(中公新書)を読んだ感想を書いていなかったので、超サクッと。
読もうと思ったのは、ブルゴーニュ公国を百年戦争の中で俯瞰的に見てみたいという興味だったが、なんのなんの!イングランドとフランスという国家意識もまだ混沌としていた時代から、近代的国家意識の形成に至る、百年を超える両国の思惑と領地をめぐる戦いの歴史の複雑さに、もう読みながらヘトヘトになってしまった。
「百年戦争は、イングランド王が主従関係を切断しようとして始まった。その後、フランス貴族のさまざまな思惑に引きずられながら拡大し、複雑化した。そして、フランスの軍事力が勝ったからではなく、フランスの国家が統一されることによって終結した。」(P269)
フランスの白百合貴族であるブルゴーニュ公家の思惑が色々と事を複雑にしたのも確かで、アラス会議でフランス王家と手打ちした後でも、薔薇戦争中のヨーク家と手を組んだり(シャルル・ル・テメレールとマーガレット・オブ・ヨークの結婚ね)、結局シャルルがナンシーで戦死した後に本貫の地ブルゴーニュを含めフランス王国内の領地を失うのだから…。
そう言えば、昔見た映画「冬のライオン」の主人公はアンジュー伯ヘンリー2世プランタジネットと王妃アキテーヌのエレオノールだったが、それに息子たちとフランス王フィリップ2世が絡む話で、舞台はシノン城だった。
ヘンリー2世がフランス王国内にフランス国王よりも広大な領土を所有していた時代(アンジュー帝国!)の話であり、その息子たちがその領土を失うのは時間の問題だったのだぁと、今にして思う。