花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

「ボルゲーゼ美術館」講演会で支倉常長

2010-02-11 14:42:36 | 講演会
本当は「ボルゲーゼ美術館展」と「マッキアイオーリ展」の感想を書きたいのだが、先に石鍋真澄氏の東京都美術館「ボルゲーゼ美術館展」講演会の感想を書こうと思う。理由は、閑散とした「サン・ファン館」の紹介でジモティ魂が目覚めてしまったから(笑)

宮城県民なら学校で支倉常長の慶長遣欧使節について教えられるのだが、多分、全国的にはメジャーじゃないのだろう。今回の「ボルゲーゼ美術館展」に《支倉常長像》が出展され、初めて知る方たちも多かったようだ。ちなみに、あの肖像を描いたのはクロード・デリュエではなく、アルキータ・リッチであるという資料が最近発見されたそうだ。


アルキータ・リッチ《支倉常長像》(1615年)

さて、石鍋氏の講演テーマは「ボルゲーゼ美術館 ラファエロ・カラヴァッジョ・ベルニーニ」ということで、主にボルゲーゼ美術館のコレクション形成過程に関わるお話が中心だった。拙ブログでも扱ったが、そのコレクションはローマ教皇パウルス5世の甥で大の美術愛好家であったシピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿の収集が基になっている。


ボルゲーゼ美術館(ローマ)

彼はピンチアーナ門外に広大な土地を所有し、1612年から1615年にかけて、芸術コレクションを収め展示する館としてヴィッラを建設した。この白亜の館は、教皇庁の迎賓館としても使われ、完成直後の1615年には日本の支倉常長率いる慶長遣欧使節団がここを訪れて歓待されている。今回展示されている支倉の肖像画もシピオーネが描かせたものだ。

と言うことは、支倉が館内に飾られたカラヴァッジョ作品を目にした可能性は極めて高く、石鍋氏のお話にも出たが、以前から私もカラヴァッジョ作品を観た最初の日本人は支倉常長ではないかと思っている(^^;;;

また、石鍋氏は今回の展覧会でパネル展示されている仙台市博物館所蔵の《支倉常長像》の「一条ロザリオ」についても研究をされていて、通常「環状のロザリオ」が多いが、当時の絵画から「一条ロザリオ」も使用されていたことを画像で説明してくれた。

ところが、だ。ネットで調べていたら、興味深い話が出てきた。

「仙台市博物館が所蔵する国宝の肖像画「支倉常長像」をめぐり、真贋(しんがん)論争が起きている。青森中央学院大(青森市)の大泉光一教授(日欧交渉史)が「博物館の現存画は模写」と偽物説を打ち出し、博物館の浜田直嗣前館長が「現存画が本物なのは史実的に明らか」と反論。学界を巻き込んだ議論に発展している。」とのこと(・.・;)


捏造された慶長遣欧使節記―間違いだらけの「支倉常長」論考」(大泉光一・著/雄山閣・発行/2008年)

どうやら論争は、古写真と現在展示作品が異なっている点が多いことから来ているようだ。その争点の一つに挙げられているのが「一条のロザリオ」である。古写真は「環状のロザリオ」なのだ。

この論争についてネットで調べた大泉氏側に同調する意見。その1その2
その中で論拠として紹介されている信憑性が高いという古写真。伊勢斎助・大内大円編『支倉六右衛門常長斎帰品宝物写真』帳(昭和三年発行)から。

実は、何故か私も「伊達政宗 欧南遣使考全書」(伊勢斎助・輯/東京書肆裳華房・発行/昭和3年)という本を持っている(^^;;。確かに仙台市博物館で展示されている「支倉常長像」と、そこに掲載されている《支倉常長油絵の肖像》の写真とは異なっている。「宝物写真」を若干修整している写真のようで、私的にはやや荒っぽい絵と感じられる(汗)。そして、写真のロザリオは環状である。

 
「支倉常長油絵の肖像」(仏国名画師・モンスー・クラウヂョ筆?)  (仙台市博物館所蔵)

更に、同書に掲載されている「パウルス5世の肖像」写真は現在博物館に展示されている絵と同じに見える。だとしたら、何故支倉像だけが違うのか??

 
「パウルス5世の肖像」(仏国名画師・モンスー・クラウヂョ筆?)     (仙台市博物館所蔵)

多分、石鍋先生のお話は大泉氏の指摘する「一条のロザリオ」に関しての反証をされたのだと思う。私は大泉氏の本も、それに対する仙台市博物館側の反論も読んでいないので、何とも言えないが、肖像画自体に関しての謎は依然として残るような気もするのだ。仙台に帰省することがあったらもっと調べてみたいと思う。

今回の感想文は講演会感想と言うより、なんだか美術ド素人の興味本位な感想文になってしまったようでお許しあれ(^^;;;