花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

Bunkamura 「ピカソとクレーの生きた時代」展

2009-02-12 01:54:21 | 展覧会
最近ブログをサボっているが、実は正月明けに頭痛で倒れてしまった。偏頭痛と緊張型頭痛が重なった混合型だったようだ。幸いCTスキャン及びMRI検査では異常無もなく、疲労とストレスによる神経性のものらしい。どうやら今年は波乱含みの幕開けとなってしまった(^^;

さて、とは言っても体調を見ながら展覧会にはちゃんと行っている(笑)。今年の初展覧会はokiさんから頂いたチケットで観たBunkamura「ピカソとクレーの生きた時代」展だ。(okiさんに感謝!)

今回の展覧会はデュッセルドルフにあるノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館の改修に伴う引越し展のようだった。展覧会名にもなっているが、やはり見所はピカソとクレーの名作で、特にピカソ《座る二人の女》《鏡の前の女》には唸ってしまった。国立新美術館のピカソ展のおかげで食わず嫌いが少し矯正されたようだ(^^ゞ

まず、《座る二人の女》だが、観た瞬間、二人の女の存在感・ボリューム感に圧倒された。ピカソの描く女は手も足も大きいが、そのうえ、この女たちは身体自体も迫力満点。二人の背景の対象や腕の曲線、足元の立方体など、リズムを持った構図であることも了解できた。

しかし、私的に特に魅入ってしまったのは《鏡の前の女》だった。


パブロ・ピカソ《鏡の前の女》1937年 油彩・キャンヴァス
©2008-Succession Pablo Picasso-SPDA(JAPAN)

単純化された造形なのにリアルに情景が伝わってくるのだ。窓からの光は室内の白い壁に反射し、花瓶の植物影が一層明るさを際立たせる。室内で紙を見ているのは(瞑想なのか?)多分マリー=テレーズ。前に置かれた鏡は陽射し(青)だけでなく彼女の心まで映しているかのようだ。明るい日差しのなかで赤と黒の心が葛藤している。もしや、そんな彼女を見ている画家ピカソ自身の心の葛藤なのだろうか?一見静かで穏やかな作品のように見えるが、危うい心理劇をも孕む作品なのではないか?と思ったのだった(^^;;

で、もう一方のパウル・クレー《リズミカルな森のラクダ》は音楽の楽譜のような…という解説に、なるほど!だった。


パウル・クレー《リズミカルな森のラクダ》
1920年 油彩など・ガーゼ、厚紙

頭の丸い木は逆さのおたまじゃくしなのかもしれない♪ラクダの前足をわざわざ修正してずらした跡が良くわかり、リズムのズレまで楽しく描いたんじゃないのかな?クレーの軽妙で繊細な作風が「音楽」というキーワードで語られるとなんとなく親しみが湧く。なにしろ現代美術苦手には取っ掛かりが必要なのだ(^^;;;

クレーはデュッセルドルフの美術アカデミーで教鞭をとっていた時期がある。ヒットラーから「退廃芸術家」の烙印を押され、追放されてしまう。戦後、ノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館がクレーのコレクションを購入したのもそのためのようだ。日本だけでなくドイツの負うものも大きい。

ところで、デュッセルドルフには以前「CARAVAGGIO ―Auf den Spuren eines Genies 展」を観に行ったが、会場のクンスト・パラスト美術館しか観ていなかったので、今回の展覧会を観ながら、デュッセルドルフの文化的な厚みを再確認させてもらった。ライン川沿いの緑も美しかったし、日本人も多く住みやすそうな街だったし、今回の展覧会でなんだか再訪したくなってしまった(^^ゞ