花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

国立西洋美術館「ウルビーノのヴィーナス展」(2)

2008-03-08 22:18:00 | 展覧会
今回の展覧会の面白さはヴィーナス像の変遷が、古代ギリシア・ローマの彫刻や絵画からルネサンスの復興期を経てマニエリスム・バロックまで辿れることで、中でもティツィアーノ《ウルビーノのヴィーナス》(1538年)の美しくも媚惑的な眼差しにドキドキさせられることになる。

《ウルビーノのヴィーナス》はヴェネツイア派らしい輝くばかりの色彩と、ジョルジョーネ《眠れるヴィーナス》(1509-10年)の図像を引き継ぎながらより一層官能美を漂わす。


ジョルジョーネ《眠れるヴィーナス》


ティツィアーノ《ウルビーノのヴィーナス》

注文主のウルビーノ公グイドバルド・デッラ・ローヴェレもすっかり魅了されたに違いない。「裸の女」なんて手紙に書いたりしているが、絵の支払いが遅れたら他に売られてしまうよ~と、母(エレオノーラ)に泣きついたりしている(^^;;;。でも、わかる、本当に綺麗だものぉ~!私だって今回も惚れ惚れ眺めてしまったのだ。

貴族のヴィラの室内に横たわるヴィーナス。渦巻き流れ落ちる艶やかな黄金の髪、観る者を誘うような眼差。ヴィーナスが身につけているものはイヤリングとブレスレットだけ…。深赤色のマットレスと深緑色のカーテンが白いシーツの上のヴィーナスの裸体を艶かしく際たせる。手からこぼれんばかりの紅薔薇はヴィーナスのアトリビュートとか。この薔薇を持つからこそ「裸の女」ではなくなるのだよね。

背後の窓辺の植木(ミルト)や長持ち(カッツォーネ)、眠る犬(忠節)、二人の侍女の持つ衣装からグイドバルドの結婚の愛を表しているとか….まぁ色々と解釈があるようだ。でも、私的にはそんな解釈抜きで、この魅惑的なヴィーナスを輝く色彩とともにひたすら眼で楽しんでしまった(*^_^*)。