自民党の「日本国憲法改正草案」第100条によれば、発議要件を各議員の総議員の2/3以上から過半数へと緩和することとなっております。これでは、あまりにもハードルの下げすぎになるのではないかといった主張があります。この点は、大いに議論の分かれるところだと思いますので、諸外国の憲法改正に関する資料を探しておりましたら「諸外国における戦後の憲法改正【第3 版】」というのがありました。
各国それぞれ特色があって、面白く読ませていただきました。先ずは、現行憲法の草案に深く関与している米国をみてみますと、これはかなり改正要件が厳しいと言えますが、2010年7月までに6回の改正(米国では修正)が行われております。ドイツの改正要件はかなり厳しいにも拘らず57回もの改正が加えられております。これは憲法(ドイツでは基本法)に一般法で規定するような事項も規定されているといった特殊事情があるようです。
改正要件が一番緩やかなのはイタリアでしょうか。イタリアでは15回の改正が行われております。このイタリアの改正要件より、自民党草案の改正要件は緩いように思われます。
確かに、改正要件が緩ければ改正の回数も多いようにも思います。ただ、ドイツの場合のように憲法に何が規定されているかといった事情によっても大いに異なるものとなるでしょう。これは、例え改正要件が厳しくとも、必要性が高ければ憲法は改正されることを意味しています。ですから、改正要件を緩和するためだけの憲法改正については違和感を感じざるを得ません。
また、国民の意思が適切に反映されていることが担保できているかといった議論も必要かと思います。例えば、一票の格差の問題を含む選挙制度も当然議論の対象としなければならないと思います。憲法の制定・改正の原泉は、究極的には一人一人の国民に求められるものであろうと考えます。ですから、この平等性が最も大切なことともいえるのではないでしょうか。
「憲法改正について思うこと」でも書いておりますが、憲法第96条の改正を先行して議論するより、せっかく自民党の憲法改正草案が出来上がっているのですから、これを一体的に議論することの方が望ましいと考えます。仮に憲法第96条の改正を先行させるとしても、自民党草案のような緩やか過ぎる改正要件は、憲法の安定性を害することにもなりかねません。もう少し工夫があっても良いのではないかと思います。