大震災による電力不足に際して、電力を融通する際のネックになっている電力周波数の不統一問題がクローズアップされました。日本という狭い国土で異なる周波数が用いられていること自体が異様といえば異様なことです。
そこで周波数を統一してはという主張がなされました。発電機や変圧器を交換すれば良いじゃないかといった乱暴な議論ですが、実現できればそれは良いに決まってます。
それだけでも数十兆円かかると言われております。しかし、それだけではありません。我々需要家側でも問題が発生します。最近は周波数に関係しない製品が多くなりましたが、誘導電動機(モーター)だけはどうにもなりません。周波数が変わると回転数が変わってしまうのです。このモーターは身近なところで数多く使われております。これを交換するとなると発電機や変圧器の比ではありません。
また周波数の統一は、ヨーイ・ドンでやらないと社会的混乱が生じてしまいます。これらのことを総合すると周波数統一は事実上不可能ということになります。
やはり何事も最初が肝心ということでしょう。目先の利益より、長期的見通しが如何に重要かということの見本のようなものです。
さて出来ないことばかりあげつらっても仕様がありませんので、次善の策として直流送電網への移行があります。幹線送電線路を直流送電化するというものです。交流と直流のどちらが良いかという議論は、発明王エジソンの時代に遡ります。現在でも議論のあるところですが、半導体技術の進歩により、直流送電に軍配が挙がりそうです。
送・変電所で交-直変換、直-交変換を行えば、従来の配電設備はそのまま利用できますし、需要家も今まで通りで大丈夫です。
後は設備投資の問題が残りますが、少なくとも周波数を統一するより安くなるでしょうし、一時にやってしまう必要もありません。徐々に出来るところから移行していけば良いのです。
<参考> 「電力の周波数を統一するメリットは?」