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『孟子』巻第十萬章章句下 百三十九節、百四十節

2018-12-13 10:22:41 | 四書解読
百三十九節

孟子が萬章に言った。
「村の優れた人物は、同じく村の優れた人物を友とする。一国の優れた人物は、同じく一国の優れた人物を友とする。天下の優れた人物は、やはり天下の優れた人物を友とする。天下の優れた人物を友としても、それでも満足できない場合は、さかのぼって古の人を論評して友とする。だが、いかに古人の作った詩を吟唱し、その書を読んでも、その人物を知らなければ、はじまらない。そこで古人の活動した時代を研究して、その環境や行いを知らばならない。これが尚友、乃ちさかのぼって古人を友とする、ということだ。」

孟子謂萬章曰、一鄉之善士、斯友一鄉之善士。一國之善士、斯友一國之善士。天下之善士、斯友天下之善士。以友天下之善士為未足、又尚論古之人。頌其詩、讀其書、不知其人、可乎。是以論其世也。是尚友也。

孟子、萬章に謂いて曰く、「一鄉の善士は、斯に一鄉の善士を友とす。一國の善士は、斯に一國の善士を友とす。天下の善士は、斯に天下の善士を友とす。天下の善士を友とするを以て、未だ足らずと為すや、又古の人を尚論す。其の詩を頌し、其の書を讀むも、其の人を知らずして、可ならんや。是を以て其の世を論ず。是れ尚友なり。」

<語釈>
○「尚論」、趙注:「尚」は「上」なり、乃ち復り上って古の人を論ず。

<解説>
その人を理解しようと思えば、その人が残した言葉や書籍を読むだけでは十分でない。その人の生きた時代や行動を理解して始めてその人を知ることが出来る、と説いている。これは我々が古の人物を理解する為にも大切なことである。孔子を理解しようと思えば、論語を読んでいるだけでは、その真意は分からない。孔子の生きた時代を深く理解し、その行動を理解することが、孔子の思想を知るためには大事なことなのである。

百四十節

齊の宣王が卿の職責について孟子に尋ねた。孟子は答えた。
「王様はどのような卿をお尋ねですか。」
王は言った。
「卿は皆同じではないのか。」
「同じではございません。王様のご一族に属する卿と異姓の卿とがございます。」
王は言った。
「一族に属する卿について是非聞きたい。」
「君主に重大な過失が有れば諫めますが、繰り返し諫めても聞き入れられないと、その君を廃して一族の中からより優れた人物を選び出して君に立てます。」
それを聞いた王はさっと顔色を変えた。それを見て孟子は言った。
「王様、驚くことはございません。お尋ねになられたので、あえて正しい道理を以てお答えしたのでございます。」
それを聞いて王様は顔色が戻り、それから今度は異姓の卿について尋ねた。孟子は言った。
「君主に重大な過失が有れば諫めますが、繰り返し諫めても聞き入れられないと、身を引いて立ち去ります。」


齊宣王問卿。孟子曰、王何卿之問也。王曰、卿不同乎。曰、不同。有貴戚之卿、有異姓之卿。王曰、請問貴戚之卿。曰、君有大過則諫、反覆之而不聽、則易位。王勃然變乎色。曰、王勿異也。王問臣、臣不敢不以正對。王色定、然後請問異姓之卿。曰、君有過則諫、反覆之而不聽、則去。

齊の宣王、卿を問う。孟子曰く、「王何の卿を之れ問うや。」王曰く、「卿同じからざるか。」曰く、「同じからず。貴戚の卿有り、異姓の卿有り。」王曰く、「貴戚の卿を請い問う。」曰く、「君に大過有れば則ち諫め、之を反覆して聽かざれば、則ち位を易う。」王勃然として色を變ず。曰く、「王異むこと勿れ。王、臣に問う、臣敢て正を以て對えずんばあらず。」王色定まり、然る後異姓の卿を請い問う。曰く、「君に過ち有れば則ち諫め、之を反覆して聽かざれば、則ち去る。」

<語釈>
○「勃然」、さっと顔色を変える貌。○「王勿異」、趙注:孟子曰く、「王、怪しむ勿れ。」。この注により、「異」を「怪」の義に読み、“あやしむ”と訓ず。

<解説>
この節の趣旨は大臣の義を述べたものであろう。貴戚の卿は王が諫めを聞かなければ、王を取り換える、異姓の卿は立ち去る、と述べ、責任の取り方の違いを明らかにしている。これからするとこの時代の君主の立場は後代の皇帝のように絶対的なものでなく、非常に不安定であったことが分かる。それは『春秋左氏伝』などを読んでいても感じることである。

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