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『中庸』第十六節

2014-11-13 10:33:23 | 漢文
                   『中庸』第十六節
前節で述べた九原則を君主はどのように行うべきかといえば、祭礼に際しては物忌みをして心身ともに清らかにし、最も大切にしている衣服を着用して祖先に接する。朝廷に臨む場合でも、同じように心身ともに清らかにし、衣服を正し、何事も禮に適わない事は行わない。これが君主の身を修める方法である。讒言と女色とを遠ざけ、財貨を軽んじて二の次とし、それより徳を何よりも重く考え尊ぶ。これが賢者達に勇気を与え、与えられた仕事に勉励させる方法である。誰もが尊敬できるような位を授け、その俸禄を手厚くし、その者たちと好悪の情を同じにする。これが親族に親しみ和合させる方法である。臣下、特に大官には、それに見合った権威を持たせ、十分に手腕を発揮できるようにして、政務をまかせる。これが大臣を勉励させる方法である。忠信の志が篤いものは、それに報いるように禄を重くする、これが士を勉励させる方法である。民を賦役に駆りだす時は、農閑期など本業に支障をきたさない時を選ぶようにし、租税を出来るだけ軽くする、これが百姓を農業に励ませる方法である。日々作業の進み具合を調べ成果を省みて、月毎に製作物の試験を行い、扶持米は其の成果に見合うだけの量を十分に与える、これが工人達を勉励させる方法である。外国からやって來る君主に対しては、禮義を尽くして応対し送り迎えをし、
來る者も帰る者も、令を尽くして応対し、中国の禮義を善く理解しておれば、褒め称え、理解していなくても、慈しみをかけて、相手の意を快く受け入れる、これが遠国からやって來る使者や賓客や商人たちを懐かせる方法である。古の聖人の子孫で衰えて祖先を祭ることも出来ない者には、國を起して祭りを継がせ、廃國と為った諸侯を復興させて新たに國を作り、その人民を治めさせ、諸侯に内乱が生じたときは、出かけて亂を鎮め平らかに治め、諸侯の力が脆弱になり國が危険な状態になれば、安定を取り戻せるように取り計らい、諸侯の朝覲、聘問に際しては、時期を一定にして、できるだけ物心両面の負担を軽減するようにして、諸侯や使者が帰るときは、饗宴や送り物を十二分にして禮を尽くすが、参朝する時は献上品などの負担は出来るだけ軽くさせる、これが諸侯たちを安心して我が方へ靡き寄せる方法である。

齊明盛服、非禮不動、所以修身也。去讒遠色、賤貨而貴、所以勸賢也。尊其位、重其祿、同其好惡、所以勸親親也。官盛任使、所以勸大臣也。忠信重祿、所以勸士也。時使薄斂、所以勸百姓也。日省月試、既廩稱事、所以勸百工也。送往迎來、嘉善而矜不能、所以柔遠人也。繼絕世、舉廢國、治亂持危、朝聘以時、厚往而薄來、所以懷諸侯也。

齊明盛服して、禮に非ざれば動かざるは、身を修むる所以なり。讒を去り色を遠ざけ、貨を賤しくしてを貴ぶは、賢を勸むる所以なり。其の位を尊くし、其の祿を重くし、其の好惡を同じくするは、親を親しむを勸むる所以なり。官盛にして任使せしむるは、大臣を勸むる所以なり。忠信もて祿を重くするは、士を勸むる所以なり。時に使い薄く斂するは、百姓を勸むる所以なり。日に省み月に試み、既廩事に稱うは、百工を勸むる所以なり。往を送り來を迎え、善を嘉みして不能を矜(あわれむ)むは、遠人を柔(やすんず)んずる所以なり。絕世を繼ぎ、廢國を舉げ、亂を治め危を持(たすける)け、朝聘時を以てせしめ、往を厚くして來を薄くするは、諸侯を懷くる所以なり。

<語釈>
○「齊明」、祭りを行う前に物忌みして身を清めること。○「盛服」、最も貴重な服を着ること。○「官盛」、その官職の権威を大きくすること。○「任使」、まかせること。○「既廩稱事」、扶持米は仕事の成果に応じて与えること。○「送往迎來」、外国の君主を送迎する意か、僻地からやって來る者を送迎する意か、意見の分かれるところである。私は外国の君主と解釈した。

<解説>
この節は、前節で述べられた九經の解説であり、内容的に前節の続きと見るのが妥当であり、『禮記』による節の区切り方が疑問視されるところであるが、これについては、第二十節の解説で触れたいと思っている。