ジローのヨーロッパ考

デンマークやドイツの農家に長期(?)滞在、体験したり感じたことを綴ります。

イギリス: オーストリアでの難民悲劇を報道

2015-08-29 21:48:51 | 日記
2015年8月29日(Sat.)、BBCは昨日に続き、オーストリアのハンガリー国境付近で発見されたトラックでの難民悲劇を伝えています。(ニュースソース: BBC) 尚、関連する内容は、ドイツ等でも報じられていることは言うまでもありません。






日本でも報道されていますが、事件のトラックに乗っていた難民の死者数は71人に至っているようです。難民の目指したルートは不明な点もあるようですが、難民や亡命者の問題は、今やEU全体としての、最大の問題になりつつあります。


<原文の一部>

On Thursday 71 people, thought to be Syrians, were found dead in a lorry in Austria. Some 200 others are feared dead after two boats sank off Libya.

亡くなった71人は、シリアの人と思われると伝えています。


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"A large majority of people undertaking these arduous and dangerous journeys are refugees fleeing from places such as Syria, Iraq and Afghanistan," he said.

こうした辛く危険な旅を強いられている大半は、シリア、イラク、アフガニスタンからの人々のようです。


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これ以外にも、アフリカ方面から地中海を渡ってEUを目指す難民も多く、本当に大変な状態が続いているようです。


以下は、BBCのサイトに掲載された写真や資料の一部です。









トラックが発見されたのはオーストリアのハンガリー国境に近い場所のようです。





トルコ方面からバルカン半島を経由してドイツ等を目指すルートを示しています。





アフリカ方面も含む難民の流れを示した資料です。









今や、政治亡命と言うよりは、生活や、まさに生き延びるための避難行動と思われます。貧困が原因のケースもあるでしょうが、ISや過激派組織による内戦状態による混乱からの脱出が多いのでしょう。それぞれの国家としての政治的安定が実現できていないためとも言えるでしょう。

そして、これまでの当ブログでも複数回に渡って関連する内容をUPしていますが、EUに於ける難民・亡命の受入数の最大国家はドイツなのです。今年2015年の受入数は、当初は昨年の倍強の45~50万人かと予測されましたが、数日で75~80万人に達するかも知れないと訂正されています。


ドイツが何故、このように多くの難民を受け入れているのでしょうか。詳細には調べきっていないのですが、ことは1985年頃から始まっていたようです。当時は主に、ルーマニア、ユーゴスラビア、ブルガリア、トルコ・・・、中にはヴェトナム、・・・と言った国々からの亡命(難民)だったようで、現在の流出元とは異なるものでした。

しかし、1990年代においても、既にドイツとして約200万人(累計)を受け入れていたとの情報もあります。 一つの大きな理由があります。それはドイツ国内に「アジール法」と言う制度があるためでした。

これは、近年になって成立した法律ではなく、中世の時代から続くアジール権(庇護権)が今日に続くものなのです。例えば、迫害されているような人がいたとしても、教会などに逃げ込めば、時の為政者や公権力も及ばないとされて、身の安全が確保されるという考えのものです。つまり、庇護されるのです。

これが形を変え、細則等が整備されてアジール法として現代に続いているわけで、特に、他国に於いて政治的に迫害された人を特権的に受け入れようとするものと言われています。

これに加えて、ナチス時代のユダヤ人を迫害してしまったことへの反省も含めて、その罪滅ぼし・・・と解説するものもあるようです。


私が、2013年にドイツ滞在した時、人口は約8250万人で、その約10%(800万人前後)は外国人だと聞かされましたが、数値的にもつながりが解明して行く思いなのです。

昨年(2014年)のドイツでの難民(移民)受入数が20万人強、そして今年が80万人になったと仮定すると、この2年間で100万人に達すると思われます。これで、ドイツの人口は、およそ8400万人を超え、その比率は11%ぐらいになるかも知れません。

一方、1990年と言えば、東西ドイツが統合した年であり、東西の格差が問題にもなっていたようです。そんな時期にも多くの移民を受け入れることになって、特に旧東ドイツの人々は、仕事にも就けない状態が少なからずあった中で、何故、外国人が入ってきて就労機会を奪うのか・・・と問題視されたようです。

現代のドイツの経済状態は、1990年頃とは大きく違うのでしょうが、アイデンティティーが崩れる問題や、治安・テロ、そして税金で難民たちをサポートすることへの限界オーバー(妥当な範囲内は別として)等々、極右勢力(ネオナチとか)の難民受け入れ抗議活動にもつながっているようです。そして、これは、極右のみならず、一般の国民としても受忍限度を超えるところにきているのかも知れません。


国連が、ドイツやスウェーデン以外の諸国も、分担して受け入れるべきだと言っていますが、各国とも許容限度はあるのでしょう。一時的に避難する収容施設を確保した上で、5~10年以内には、母国に帰れるような国際的な支援活動が必要なのではないでしょうか。


ちなみに、シェンゲン協定を結んでいるEU各国間では、最初に入国した国で入管手続きした後は、協定国間内の移動は自由になっていますので、EU国内での移動は本当に容易な現状になっています。従って、テロリストにとっても好都合の状態になってしまっているのです。


人道的観点からも、日本としても可能な援助ができると良いと思います。そしてそれは、お金を出すだけではなく、平和的な形での人的援助もすべきでしょう。但し、安倍の言うまやかしの積極的平和主義であってはなりません。平和憲法に基づく、平和的主導(協議の場を持つとか)で世界をリードすべきです。これができるのは逆に日本しかないのかも知れません。(永世中立国の日本・・・これも良い考えかも。)