中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,224話 役職定年廃止による影響は如何に

2024年07月17日 | キャリア

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「上司の役職定年が延長されなければ、退職しようとは考えなかったです」

これは、ある企業に20年以上勤務し、監督職として働いていたAさんが自らの退職を決断した際に、その理由として私に語ってくれた言葉です。私はAさんが勤める企業の研修を以前から担当させていただいていたため、Aさんとは何度かお会いしたことがありました。Aさんの研修中の発言や研修に取り組む姿勢を見ていて、前向きに仕事に取り組む人であると同時にリーダーシップもある人ではないかと考えていましたので、将来が楽しみな逸材だと感じていました。

そのAさんが冒頭のように今回、退職を決断したということなのです。話によると、Aさんは自分たちの世代が管理職になったら「今よりも、もっとよい会社にしたい」と考えていたとのことで、彼なりの夢があったとのことです。そしてそれを実現するためには、監督職よりさらに大きな権限が必要となることから、早く管理職になってプラスの影響力を発揮したいと考えていたそうです。しかし、この度会社が役職定年の廃止を決めたため、上の世代が会社に残っている以上、会社を変えていくのは簡単なことではないと判断して、退職の決断に至ったとのことでした。

近年、役職定年制を廃止する企業が増えています。パーソル総合研究所の役職定年制導入の有無などについてのヒアリング調査によると、役職定年制の制度があるとした企業は31%、新設した企業は13%、反対に制度廃止が16%、廃止予定が13%、制度なしが28%とのことです。(2024年7月15日 朝日新聞 朝刊)

調査から見えてきたのは、今後も役職定年を廃止する企業は増える傾向にあり、その割合は約6割になるとのことです。役職定年を廃止する理由には、給与が下がることによる役職者の仕事に対するモチベーションの低下、管理職の不足、また労働人口の減少により若手を採用することが難しくなっていることから、労働力の補足などがあると言われています。こうした状況の中では、役職者のこれまでの経験により培われた様々なノウハウを維持できることは、組織とって魅力があることは確かだと思います。

しかし同時に、組織には定期的に人が入れ替わることで次の世代が育つという面や、それによる活性化が期待できるという面があります。先述のAさんの例ように、役職定年の廃止によって組織の新陳代謝が阻まれることになり、人事が硬直化してしまう結果になってしまうことや、次世代を担う人材のモチベーションが低下してしまうなどの弊害が生じる可能性があることも、また事実です。

人件費の抑制や組織の活性化などを目的に始まった役職定年制度ですが、人手不足やモチベーションの低下をはじめとする現在の状況は、制度の導入当初の想定を超えるものになり、企業などでは様々な試行錯誤をしながら、そのバランスを探っている状況だと思います。

今後、役職定年制度がどのように推移していくのかは今の時点では定かではありません。仮になくしていくような流れであるにしても、単純に以前と同じ形に戻すのではなく、どのような形が一番合っているのか、それぞれの企業にはさらなる工夫が求められるのではないかと考えています。

前述の新聞記事でも、各社様々な取組みを既に行っているとのことであり、今後どのような形にまとまっていくのか、引き続き注視していきたいと考えています。

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第1,222話 ライバルの存在は必要か否か

2024年07月03日 | キャリア

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「AにとってBはライバルなんですよ。たぶん双方が意識していると思います」

これは、先日弊社がある企業の中堅社員研修を担当させていただいた際に、研修終了後にご担当者から聞いた言葉です。

私は以前にもAさんとBさんにお会いしたことがあるのですが、今回研修で再会したところお二人とも実に溌溂とした表情で研修に参加し、演習にも終始前向きな姿勢で取り組んでいらっしゃいましたので、頼もしさを感じると同時に着実に成長されているように感じました。そのことをご担当者にお伝えした際にお聞きしたのが、冒頭の言葉です。

ご担当者のおっしゃるように、AさんとBさんは互いにライバルとして、日々切磋琢磨しているのかもしれません。ライバルとは言うまでもありませんが、競争相手、対抗者、好敵手という意味です。AさんとBさんが普段からお互いに相手をどのように思って仕事をしているのか、直接聞いたことはないので実際のところは定かではありません。しかし共に生き生きとした表情でリーダーシップを発揮しながらグループ演習に参加していましたので、お互いの存在が良い意味での刺激になっているのではないかと想像しています。

私は、様々な企業などの昇格や採用試験の面接官、また研修を担当させていただく中で、Z世代と言われる近年の若手社員の特徴の一つに、「競争心の低下」があるのではないかと感じていました。それは、採用試験の集団討議や研修中のディスカッションの中で、相手を気遣いすぎるあまり自身の発言を控えたり、しっかり話し合わずにジャンケンで結論を出したりするような場面を見ることがしばしばあるからなのです。

しかし、AさんやBさんのような前向きに研修に取組む中堅社員に出会い、その理由の一つにライバルの存在があるとしたら、それはライバルが身近にいることによるプラスの刺激によるものであり、とても素敵なことだと感じました。

あらためてライバルの存在について考えてみると、メリットとしては何と言っても競争心が刺激されるということがあると思います。「負けたくない」という思いが、自身が積極的に努力をする動機づけになるのであり、それによって自身の目標が明確になります。そしてそれが具体的な行動につながり、その結果としてパフォーマンスの向上に結び付いていくように考えています。

しかし一方では、ライバルのことを過度に意識しすぎてしまうと、自身との相対的な比較に囚われてしまい、相手が新たな役割を得たり活躍しているようなことを見聞きすると、嫉妬心を燃やすようなことになってしまいます。それは本末転倒な状態であり、自身のモチベーションやパフォーマンスの低下にもつながりかねないものだと思います。

ライバルの存在にはこのように多くのメリットがある一方、デメリットもあるわけです。ネガティブな感情に陥らないように意識し、ポジティブでバランスの取れた競争心を保ちながらライバルとの健全な競争関係を築き、それを自己の成長や目標達成に向けたモチベーションとしていくことが大切だと考えています。

ライバルとの良き出会いを!

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第1,221話 ジェンダーの平等が進む将来はいつ来るのか

2024年06月26日 | キャリア

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「管理職研修は男性講師に担当していただきたいと考えています」

これは私の知り合いの女性講師のAさんが、今から30年ほど前にある企業の研修担当者から告げられた言葉です。Aさんはその企業で長年マナー研修とコミュニケーション研修を担当してきた経験があるのですが、打ち合わせの中で話が管理職研修に及んだ際に冒頭の言葉を言われたそうです。Aさんが研修担当者に理由を尋ねたところ、「マナーやコミュニケーションは易しいテーマだから女性講師でも担当できるが、管理職研修は難易度が高いから女性講師には無理。そして管理職になっているのは男性だけであり、女性は管理職にはなっていない。にもかかわらず女性講師から研修を受けることは、受講者が到底受け入れらないはずだ」と言われたとのことでした。

この話をAさんから聞いたのは20年以上前のことですが、今回思い出すきっかけとなったのが、現在放映されているNHKの朝ドラ(連続テレビ小説)「虎に翼」でのやりとりでした。そこでは、主人公は日本初の女性弁護士となったものの、弁護士を探している依頼者から「弁護士は男性にお願いしたい。女性はちょっと・・・」と何度も言われてしまい、活躍する機会になかなか恵まれないという場面が描かれていました。

「虎に翼」の主人公がこうした経験をしたのは、今から80年以上も前(1940年頃)のことですが、それから50年経過した今から30年前にも先述のようにAさんも同様の経験をしていました。

さらに30年が経過した現在、はたして女性の活躍は進んだのだろうかと考えると、最近でも大学の医学部入試において女性差別があったことが報道されるなど、相変わらずの状況が残っていることは記憶に新しいところです。

そして、さらに先日(2024年6月12日)世界経済フォーラムが、世界各国の男女平等の度合いを数値化した「ジェンダーギャップ指数」2024年版報告書発表し、日本は146か国中118位だったとのことです。この順位に驚いた人も少なくないとは思いますが、日本は特に政治と経済の分野で女性の進出の遅れが際立っているとのことでした。

報道では特に議員や政府高官、それに企業の管理職に占める女性の割合は14.6%であり、各国の中では130位と「日本の重要な役職における男女格差は依然として顕著だ」と指摘されているとのことでした。日本でも女性活躍の重要性が叫ばれるようになって久しいですが、それに向けた歩みが遅々としていることが改めて顕在化したわけです。

報道の中で私が特にショックを受けたのは、現在のペースだと日本だけでなく世界全体で男女格差を解消するには134年かかることから、男女平等の実現に向けた取り組みを強化する必要性があるとしていた部分です。その実現は長く大変な道のりと言わざるを得ないと思います。

今後、日本においてジェンダー平等を実現していくためにはどうすればよいのか。その答を実現していくのにはまだまだ時間がかかるだろうと思います。たとば組織においては女性役員や管理職の登用のための目標を改めて設定して、具体的な行動計画に基づいて取り組みを進めていくしかないのだと考えます。現在は法曹界で活躍している女性も数多くいますし、私自身も女性講師として日々管理職研修を担当しているなど、歩みは遅々としているように見えるかもしれませんが、確実に前進はしているのです。

将来、2024年を振り返ったときに、当時は女性の活躍は進んでいなかったけれど「ジェンダーの平等が大きく進んだ」と言える時代が来るように、周囲に委ねるだけでなく私自身が今できることは何かを絶えず問いかけ、一つ一つの課題に取り組んで後進のための道を開く一助になるように取り組んでいきたいと考えています。

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第1,218話 現場こそが出発点でありゴールでもある

2024年06月05日 | キャリア

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学生優位の「売り手市場」が続いており、計画人数通りに新入社員を採用できない企業が中小企業を中心に増えているとの報道にたびたび接します。

こうした状況の中、学生を惹きつけるために入社直後の職種や勤務地を確約する企業がここ数年相次いでいるとのことです。6月4日の朝日新聞の記事では、コース別採用を導入し入社後に経営企画や商品開発などに進むコース、企業営業などに進むコースなど、配属先によって4つのコースに分けて募集している企業が紹介されていました。

こうしたコース別採用には、学生にアピールして計画どおりに人を採りやすくする狙いがあるのだとは思いますが、その一方で応募者が集中する人気コースがある一方、応募者が少ないコースができてしまうのではないかという、新たな懸念も考えられるのではないでしょうか。

私は定期的に、入社1年目から10年くらいの若手社員の話を聞く機会があるのですが、彼らが入社時に希望していた配属先は、経営企画や商品企画を中心にマーケティングやグローバル〇〇部というように、比較的華やかなイメージの部署が圧倒的に多いのです。それらの部署は、テレビドラマなどで取り上げられることもあるため、仕事経験がない若手にとってもイメージがしやすく、同時にかっこよく見える部署だと感じられるからということのようです。

この観点からコース別採用を考えると、学生には仕事の内容が想像しにくい部署は応募者が少なくなってしまうのではないかということが心配されます。

一般的に、企業にはバリューチェーンという考え方(ある製品を世に送り出す際の一連のプロセスを価値のつながりとして捉える考え方。業務(仕事)の連鎖のこと)があります。

「購買物流」→「製造」→「出荷流通」→「販売マーケティング」→「サービス」という一連のバリューチェーンの主活動や、「全般管理」、「人事・労務管理」、「技術開発」、「調達活動」といった主活動を側面から支援する活動などです。それに関わるどの部署もなくなっては困る働きをしているわけですから、部署の間で人気に偏りが生じるのは問題です。そのように考えると、今後コース別採用を導入する企業が増加した結果、組織内の部署の人数にアンバランスが生じてしまうなどの新たな問題の発生が懸念されるのではないでしょうか。

私は、応募者数を確保するとともに、入社後に引き続き活躍してもらうためには、採用の部分だけを手厚くするのではなく、従来から多くの組織が取り入れているように、業種に限らずまずは「現場」に配属して経験を積んでもらうことが大切だと考えています。サービス業であれば顧客と接する最前線の現場に、製造業であれば製造現場などですが、直接顧客と触れあったり企業の製造現場の最前線を経験することを通して企業や組織の土台・基本を知ることができるのです。その意味で、現場こそが出発点でありゴールでもあると言ってもいいのではないかと考えています。現場で十分に経験を積んでから経営企画や商品開発などの部署で仕事をしたいと考えても遅くはないですし、より活躍ができるのではないでしょうか。

キャリア形成や成長は、配属された部署が担ってくれるものではなく、個々の日々の取り組みが未来の自分を作るということを忘れないでいただきたいと考えています。

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第1,209話 経験を自らの財産として蓄積していけるか否か

2024年03月27日 | キャリア

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「良い店に出会うまでには、あまたの失敗経験があるんですよ」

これは、おいしいお店を見つけるのが上手な知り合いのビジネスパーソンA氏からよく聞く言葉です。A氏は美味しくて雰囲気が良く、値段もあまり高くない店を見つけるのがうまい人です。私もこれまでにA氏から紹介された店で何度か食事をしたことがあるのですが、毎回期待以上のお店だと感じており、その後A氏に会ったときにその旨を伝えた際に聞くのが冒頭の言葉なのです。

A氏はそうしたお店を探すのに絶えずアンテナを張っているのだそうですが、それでも良い店に出会う確率は決して高くはないそうです。長年の勘に基づき良さそうだと思って入った店であっても案外普通だったり、値段が高かったりお店の人の感じがあまりよくなかったことも少なくないそうで、実際に良い店に出会える確率はせいぜい1割位だそうです。この数字が高いのか低いのかはわかりませんが、一つ言えるのは「良い店との出会いはたくさんの失敗経験の結果」なのだということでしょう。

そして、同じことはビジネスや人生においても言えるのではないかと思います。それを裏付けるように「成功するまでにはたくさん失敗している」という意味合いの諺は古今東西たくさんあります。日本の諺には「失敗は成功のもと」というのがありますし、発明王のトーマス・エジソンも「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」、「私は失敗したことがない。ただ、1万通りのうまくいかない方法を見つけただけだ」と言っています。さらに現代においても「経営の神様」と言われた松下幸之助も「失敗したところでやめてしまうから失敗になる。成功するところまで続ければそれは成功になる。」と言っています。

これらの言葉が示しているように、成功することは決して簡単なものではなく、そのためには失敗や挫折がつきものであるということです。あらためて言うまでもないでしょうが、成功するためには失敗から学ぶことが不可欠であり、そのプロセスにおいては挫折を経験したり試行錯誤をしたりすることがつきものなのだということだと思います。

冒頭のお店探しの例に限らず、私たちの仕事などでも何度も何度も失敗や挫折などを繰り返しつつ、その経験からいろいろなことを学ぶことによって成長し、最終的に成功につなげることができるというものなのではないでしょうか。

成功に至る道のりは決してまっすぐなものではなく、しばしば曲がりくねっているもののように思います。それ故にその過程での失敗や挫折は目標に向かって進む上で価値のある経験であり、最終的な成功への重要な一歩と言ってもいいのではないかと思います。

失敗を過度に恐れることなく、A氏の例のように前向きに取組んで、その中から絶えず学びを得ながら、さらに進み続ける。諦めずにそうした取り組みを続け経験を自らの財産として蓄積していけるか否かが、成功への鍵なのだと考えています。

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第1,206話 自分とは何者なのか

2024年03月06日 | キャリア

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「私は穏やかな性格です」

ある私の知り合いは、かつて自身の性格を評してこのように言っていました。確かにその人は普段はわりと穏やかではあったのですが、追い込まれて余裕がなくなったりすると、一転して激しく怒鳴ったりするなど、周囲はその変貌ぶりに驚かされることが度々ありました。

この例のように、人は自分のことをわかっているようで、案外わかっていない生き物なのかもしれません。もちろん人間はいろいろな面を持ち合わせているわけですから、一概に「〇〇だ」と言えるような単純な存在ではないことも、また確かだと思います。

これに関して、古代ギリシアの哲学者タレス(Thales)は、人から問われた際に「自分を知ることが一番難しい、反対に容易なことは他人に忠告すること」と答えたとのことです。また日本にも同様の意味の諺「遠きを知りて近きを知らず」がありますから、古今東西、人は「自分のことを知る難しさ」を感じてきたのではないでしょうか。

話は変わりますが、近年就職活動をしている新卒者や入社間もない若手社員から、「就職活動において最も大変だったことは何か」という質問に対して、「自己分析をすること」という答えを聞くケースが多くなってきています。

自己分析とは、文字どおり自身の性格、考え方の傾向、興味の対象や嗜好などを顕在化させ、把握・分析して強みを見出すことです。中には早い段階でできている人もいるのでしょうが、まだ20代前半とさほど人生経験が多くはない若者が自己分析をし、それを文章化することはさぞかし難しいであろうことは、想像に難くありません。

では若者に限らず私たちは、どうすれば自分のことをより深く知り、それを分析することができるのでしょうか。その答えは簡単なものではないのだろうとは思います。たとえば自分にとってあまり歓迎しないような事柄が起こったときや難題にぶつかったときなどの場面において、自らがどのように感じ、考え、その事柄に対峙するのか、そうした自分にしっかり向き合うということが大切なのではないかと私は考えています。そうすることで自分にとっても普段は見えない、意識していない自分の姿が見えてくるということがあるのではないでしょうか。そして、定期的に自己をリフレクションしたり、他者からのフィードバックや専門家の助言を得ることも、自身への理解を深めた上で分析をする際の手助けとなってくれるのではないかと思います。

このように考えると、私たちは普段あまり意識していなくても、人生のいろいろな節目節目で「自分とは何者なのか」という問いを続け、その答えを探し続けるものなのではないだろうかとも思えてきます。

話を若い人の就職活動に戻すと、受け入れ側の組織に求められるのは、応募者の自己分析はまだ人生における「発展途上」の段階での分析にすぎないことをきちんと押さえておくこと、そしてそれを踏まえてどのように育成していくかをしっかり考えて当人と共有していくことが、いるのではないでしょうか。

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第1,205話 ロールモデルはいますか?

2024年02月28日 | キャリア

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「特にロールモデルはいないです」

これは、弊社が女性を対象にしたキャリア研修を担当させていただく際に、必ずと言っていいくらい聞くことが多い言葉です。

ロールモデルとは、「目指したいと考える、模範としたい人材」のことであり、お手本としたいと考えている人の具体的な行動から学んだり、その人が保有しているスキルを自らも獲得したりしようとすることです。

身近にロールモデルがいれば、その人から日々様々な刺激を受けることができるわけですから、そういうお手本となる存在がいる場合には、とても心強いと感じることができるのではないかと思います。しかし、私が研修でお会いする前述のような女性社員達は、女性管理職の絶対数が少ないなどの理由により、女性のロールモデルを探すことが難しいという現状をやむなく受け入れている人が多いように感じています。

それでは、若手の男性社員にはロールモデルとしている人がどれくらいいるのでしょうか?私は機会がある度に男性社員にこの質問をすることがあるのですが、答えは女性の場合と同様に、「ロールモデルはいません」という人が圧倒的に多いのです。女性の場合と比べ、はるかに管理職などの絶対数が多いであろう男性でも、ロールモデルに関しては同様の返答となるのです。

これらのことから考えると、そもそもロールモデルがいる人は男女とも限られており、ロールモデルがいるのならば幸いなことではあるものの、仮に現段階でそれがいないという人であっても、一概にそのことを悲観するようなものではないのではないかと思っています。

では、今ロールモデルがいないという人は、今後どのように動いていけばよいのでしょうか。これについては、ロールモデルを一人だけに限るのではなく、複数の人から良いところを学ぶという視点を持つことが、まずは重要だと私は考えています。全ての点を特定の人に求めてお手本にしようとすると、それにかなうような人はそうはいないという可能性もあります。逆にはじめからある程度の数の人を対象にして、それぞれの人の良いところをピックアップして、ロボット型のようなモデルとすることがお勧めです。また、ロールモデルは必ずしも同性でなければならないということではないですから、女性社員にとって男性社員も対象になりますし、その逆も然りです。

さらには、同じ組織内においてロールモデルが見つからないという場合には、組織外のネットワークを活用して他組織で活躍している人をロールモデルとすることも一つの方法なのではないでしょうか。

あくまで理想とするロールモデルを探し求め続けるというよりは、まずは身近な人に「見習いたい、お手本にしたい」という部分を見出すのです。その人の行動をしっかりと観察してポイントを把握し、簡単なことから実際に自分の行動に取り入れてみるということから始めてみてはいかがでしょうか。そして、その場合には一連の行動の結果を振り返り、適宜改善していくPDCAの観点で取り組んでみることも大切なことだと思っています。

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第1,202話 生き生きと働くシニア層になるためには

2024年02月07日 | キャリア

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「昨年と同じものをやっていても面白くないから、新しいものを考えたい」

これは先日、ある組織に非正規雇用されている68歳の男性A氏から聞いた言葉です。私は今から30年程前に当時人事の研修担当の係長だったA氏と初めてお会いしたのですが、A氏は当時からとても前向きな姿勢で仕事に取り組む方であり、私も研修の打ち合わせをする中で随分とプラスの影響を受けたものでした。

A氏はその組織を定年退職後に、再雇用で65歳まで働いた後、現在は1年ごとの契約更新の非正規職員として勤めています。今回私がその組織で仕事をすることになったことを伝え聞いたとのことで、研修終了後にわざわざ訪ねてくださり、久しぶりに再会することができたのでした。A氏は当時と変わらずに颯爽と現れ、今の状況などについて色々と話してくださったのですが、そのときに話されたのが冒頭の言葉だったのです。そこからは、現在も当時と変わらずに積極的に生き生きと仕事に向き合っていることが伝わってきました。

さて、組織におけるシニア層の雇用や戦力化にかかる、様々な課題が顕在化するようになって久しいです。シニア層の割合は年々増え続けており、直近では全就業者の約7人に1人(総務省統計)にもなるようですが、多くの場合年収や待遇の低下により働く意欲を喪失する傾向が強いことが課題になっています。私がお会いするシニアの方からも「給与は現役時代の6割程度にもかかわらず、仕事の負担はあまり変わらないので、モチベーションが下がってしまっている」というような話を聞くことがたびたびあります。

こうした人が圧倒的に多い中で、A氏が今も「やる気」を維持している理由は何なのでしょうか。私は話をお聞きしている中で、A氏が新しいものを企画することを楽しんでいること、事業に参加した人の反応に高い関心を持っていること、何より飽くなき好奇心を持ち続けていることなどを強く感じました。その証拠に、A氏は今でも非常にフットワークが軽いのです。新しい企画の際には机上だけではなく、遠方であっても自腹を切って実際に現場に足を運んでその場所を見たり、様々な人から話を聞いたりするなどして進めていくのです。そしてその結果、新たな人と人との関係が繋がるなどにより、それがまた新たな企画につながるなどの好循環を生んでいるようです。

こうしたことを踏まえると、A氏がここまで仕事に前向きに取り組めている理由とは、内発的に動機づけされているからではないかと私は考えています。内発的動機づけとは、給与や名誉などのためではなく、その人にとっての達成感や充実感など内的な要因に基づくものによって自分の内部から湧き出る意思のことを言いますが、前述のA氏の様子はまさにそれそのものではないかと思えるのです。

もちろん、全てのシニア層がA氏のように簡単に内発的動機付けができるわけではないとは思います。しかしどうせ働くのであれば、以前の状況と比べて不満に思いながら働くのでなく、A氏のように自ら達成感を得られるように前向きな姿勢で取り組めたら、何より自身が幸せな気持ちで働くことができるのではないでしょうか。まずは何か一つでいいので楽しみながらはじめてみていただければと、A氏の生き生きとした表情を見ていて感じたのでした。

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第1,200話 管理職に登用する際に、どのように選抜すればよいのか

2024年01月24日 | キャリア

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社員(職員)を管理職に登用する際に、どのように選抜すればよいのか。これについては、古今・官民問わず様々な考え方があると思います。私がこれまでお付き合いをいただいている組織においては、本人の希望の有無にかかわらず人事考課の結果によって昇格を判断しているところが圧倒的に多いと感じています。実際、「等級制度と昇進昇格・降格の最新実態」(労務行政『労政時報』第4036号⦅2022. 6.10⦆)によると、一般社員から管理職への昇進・昇格の際に試験を導入しているのは1,000人以上の組織の場合で76.3%とのことです。このデータからは、規模が大きい組織の方が昇格試験を導入しているところが多いということが読み取れます。

昇格試験にはメリット・デメリットの双方が考えられ、一概にどちらがよいと言えるものではありません。試験を導入するメリットとしては、管理職として活躍したいというやる気がある人を見出せること、試験を通して管理職としての適性の有無を見極めることができ、その後の活躍が期待できることが挙げられます。一方、昇格試験を導入しないのであれば、昇進・昇格にかかる上司の部下の評価のレベルを一定に保つためにも継続的な訓練が必要となりますが、それはそれで簡単なものではありません。

そのように考えると、昇格試験はもっとも公平・公正な手段だと言えます。しかし、昇格試験と一言で言ってもその中身にはいろいろな方法があります。具体的には、筆記試験・論文試験・プレゼンテーション・面接試験等々あり、フルコースで導入している組織もあれば、一部のみを実施しているところがあります。

外部の私が担当させていただくことが最も多いのが面接試験で、受験者に対して先入観がない外部の面接官として、受験者に様々な質問をすることにより、管理職としての適性を評価させていただいています。これまでの経験では、面接でお会いする受験者は課長になりたいという思いが強く伝わってくる人が多く、真面目で真摯に業務に取り組んでいる様子が伝わってくる人がほとんどです。一方で、管理職とし組織の目標を達成するためにリーダーシップを発揮することができるだろうか、部下指導を熱心に行えるだろうかなど、管理職としてはやや物足りないと感じる受験者がいるのも事実です。そして当然のことながら、ある一定の割合で合格には至らない人もいます。翌年以降再びチャレンジする人も多いのですが、1年間で見違えるほど成長して管理職としての適性が感じられるようになる人がいる一方で、残念ながらあまり変わらない人もいます。

それらを踏まえ、私が昇格試験を担当させていただく中で改めて思うことは、不合格だった人にはなぜ不合格になってしまったのか、今後どのような改善を行っていけばよいのかなどについて、適切なフィードバックをすることが大切だということです。管理職への登用試験は確かに公平・公正な手段ではありますが、同時に適切なフィードバックを怠ってしまうと受験者のやる気が失われたり、仕事そのものへのモチベーションが下がったりという危険性も考えられるのです。そうした事態を避けるためにも、残念ながら不合格となってしまった人には、どういった点が足りなかったのか等についてのフィードバックを必ず行い、それをふまえて上司と部下で話し合って、その後の成長につなげていくことが強く望まれます。

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第1,197話 組織以外の人との接点を作るには

2023年12月27日 | キャリア

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今年の年末は久しぶりに忘年会を開催したという組織が多いと思います。実際に繁華街は4年ぶりに賑わいを取り戻したように感じます。先日、2020年4月に入社した人から話を聞く機会がありましたが、この12月に初めて会社の飲み会があったと嬉しそうに話をしてくれました。

この会社等の「飲み会」、最近は行われることが減ったと言われるようになって久しいです。理由は様々あるかと思いますが、たとえば上司や先輩と飲みに行くと気を使わなければならない、また組織内の飲み会ではどうしても内部の人のうわさ話が中心になりがちで、居心地が悪いと感じる人もいるようです。私自身も以前会社員をしていた頃には、同様の感想を持ったことがありました。

話は変わりますが、最近私がお伝えしたいと考えているのは、組織の外の人と接点を持つことの楽しさです。しかし、いざ社外の人との接点を持とうとしても、その機会をどのように得たらよいのか迷う人もいるかもしれません。簡単なところでは異業種交流会が思い浮かびますが、私自身の経験上でも交流会は一度に大勢の人と出会えるというメリットはあるものの、名刺交換をした相手から一方的な売り込みを受けるだけで終わってしまうこともあり、あまり得るものがなかったという感想をもつことがあります。

それでは、どのようにして社外の人と出会う場所を見つければよいのでしょうか。私のお勧めは、友人知人の行きつけのお店を紹介してもらうことです。私は知り合いが10年以上通い続けている、ある飲み屋に一緒に行く機会があり、そこで出会った人達から聞く話が非常に面白く、かつ勉強にもなると感じてよく行っていました。

そこに集まる人達の年齢や職業は千差万別で、大企業から中小企業までの会社員、医師や教員(小学校から大学まで)、公務員、NPO法人を立ち上げた人、さらには大学生まで実に様々です。その人達とは名刺交換をしてもその後に売り込みをされるようなこともなく、仕事や趣味まで実に多岐にわたる話を聞くことができるのです。私もこれまでに大勢の人と名刺交換して話を聞いてきましたが、特に印象に残っているのは大型クルーズ船の船長のリーダーシップ談や、あるNPO法人を立ち上げた人の経験談です。

お聞きする話は、私からすると素晴らしいと言える経験にもかかわらず、自慢するでもなく普通のこととして淡々と話すため非常に興味深く、そこで出会う人達はまさに「一騎当千」と言ってもいいよう感じています。

では一体なぜ、このように一騎当千者が多く集うのか、それはおそらく店主の人柄によるところが大きいと私は考えています。店主は元々大手企業の要職に就いていたのですが、30代後半に一念発起して今のお店を始め、かれこれ40年になります。開店当初から通っている客も多く、一見緩い雰囲気の店主が醸し出す空気によって老若男女が集うようになったのではないかと思うのです。

この店に行くようになり様々な人達と接点を持つことで、書籍やテレビでは得ることができない知識や人柄に触れることができ、毎回とても充実した時間を過ごすことができました。残念ながら1年半ほど前に、店主の体調等の理由によりお店は閉店してしまったのですが、こういう雰囲気のお店でしたので、現在でも店主を囲んだ飲み会が定期的に行われています。先日のクリスマスパーティにも50名ほどが集まり、ワイワイガヤガヤ、それぞれの近況をはじめ、久しぶりに旧友とのコミュニケーションを楽しんだのでした。

このようなお店(場)に出会えることは、そう多くはないのかもしれません。しかし、人とのコミュニケーションに苦手意識を持っている人、特に若い人達にこそ、飲み会に限らずぜひ会社以外の人との接点を持つ機会を積極的に作っていただきたいと考えています。

さて、お読みいただきましたこのブログ、2023年はこれが最後となります。今年1年もお読みいただきありがとうございました。来年度もよろしくお願いいたします。

それでは皆様、良いお年をお迎えください。

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