中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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あなたの会社はトヨタではありません。

2018年07月01日 | コンサルティング

管理職向けの研修では、事前課題として何冊か本を読んできてもらうことがあります。本の選択は、研修担当者の方やその会社の役員さんからのリクエストによる場合がほとんどです。選ばれる本は、ときどき松下幸之助やドラッカー、論語などがありますが、やはりビジネス書が大半を占めます。中でも圧倒的な人気を誇るのは「トヨタのXXX」といったトヨタ自動車が実践している仕事の進め方に関する本です。

「トヨタのXXX」には生産現場の改善や企画の作り方に留まらず、人材育成や片づけまで、様々なテーマがあります。その内容は理論的であり大変わかりやすく、すぐにでも実践できそうなことばかりです。

研修前にこうした本をしっかり読み、重要な言葉の意味や考え方をインプットしてきてもらいます。それにより研修中のグループ討議では無駄な議論が無くなり、クリアでレベルの高い意見のやり取りが実現します。

ただし困ったことも、多少起こります。

たとえば「トヨタではこういう片づけをしている」という事例を読むと、なるほど大変効率的で簡単にできそうだと一瞬思ってしまいます。これが困ったことなのです。

「はじめに必要な書類と要らない書類を分けましょう。」

これを読んだ役員クラスの方々はたいてい大喜びします。自分たちは研修に参加しないにもかかわらず、「そうか今度の研修でそういうことをウチの管理職の連中に学ばせるんだな。それは期待できそうだ」というわけです。

役員や経営者にとって、書類の分別は難しくありません。自分が必要だと思えば必要だし、不要だと思えば不要だからです。また、秘書やそれに準ずるスタッフが日常的な事務作業を行っていれば、それすら考えなくても済みます。

一方、係長、課長クラスの方は「必要な書類と要らない書類を分ける」のがいかに大変であるかを瞬時に理解できます。一度「要らない」と判断して廃棄した書類を、かなり後になって役員から「持ってこい」と言われたらどうでしょう。「捨てました」では済まされません。判断ミスを責められるばかりか、責任を取らされるかもしれません。

あなたの会社はいかがですか?もし、現場の管理職が適切な判断を行い、仮に多少のミスがあったとしても経営者が現場を尊重して口を出さないなら、あなたの会社の職場もトヨタ同様きれいに片づくことでしょう。

しかし、あなたの会社の管理職はトヨタの管理職とは違います。あなたの会社の経営者はトヨタの経営者とは違います。残念ながら、あなたの会社では必要な書類と要らない書類を分類することは不可能なのです。これが多くの会社の現実なのです。くれぐれも誤解なさらないように。

それでもトヨタから学ぶことはたくさんあります。

研修では「トヨタではない会社でもできることは何かを徹底的に考えてもらい、職場で実践すべきことを具体的に決めていきます。そして、職場でそれを実践してもらい、半年から1年後のフォローアップで検証します。そこで修正を加え、さらに1年、2年・・・とトライ・アンド・エラーを繰り返すのです。これが会社の無駄をなくし、効率化を実現するための最短にして最善の道です。

「そんな面倒なことできないよ!」と思われた方も多いでしょう。

でもあなたの会社はトヨタではないのです。

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