中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,194話 物ごとを浸透させるためには

2023年12月06日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「+(タス)×(カケル)ヒビク 終わらない力の始まり」

これは先月開催された「令和5年度自衛隊音楽まつり」のスローガンです。ご存じの方も多いと思いますが、自衛隊音楽まつりは防衛省が毎年11月に日本武道館で行う各自衛隊音楽部隊の演奏会です。1963年に第1回目が開催されて以降、東京オリンピックが行われた1964年と、昭和天皇の病状が悪化し祝典行事等の自粛が要請された1988年、および新型コロナウィルス感染症の拡大防止が求められた2020年と2021年を除いて毎年実施されているとのことです。

今年も陸・海・空3自衛隊のみならず、在日米軍軍楽隊の演奏やマレーシア軍中央音楽隊がゲストで演奏したほか、防衛大学校儀仗隊によるファンシードリルや全国の基地・駐屯地の和太鼓チームによる演舞がありました。大変盛りだくさんの内容の演奏が冒頭の「+(タス)×(カケル)ヒビク 終わらない力の始まり」に基づいて行われ、私も観覧する機会がありました。

私をはじめ、このスローガンを聞いたのは当日が初めてという観客が多かったのではないかと思いますが、おそらく大半の観客の心にこのスローガンがしっかりと刻まれたのではないかと思います。と言うのも、私は当日自由席だったこともあり開演の1時間前くらいに会場に到着したのですが、それから開演までの1時間の間、そして2時間の演奏中に繰り返しこのスローガンを耳にすることになったのです。(ちなみに、今年はこれまで以上に人材の募集に力が入っており、このスローガンもその流れなのだろうなと思いました。)

はじめに聞いたときには「なるほど。そういうスローガンの基に今年の演奏会が行われるのね」という程度に軽い気持ちで聞いていました。ところが、10回くらい聞いているうちに徐々に「+(タス)×(カケル)ヒビク・・・」が頭の中で繰り返されるようになり、最後のころは主催者のナレーションとともに、私の中でこの言葉が繰り返されるようになっていったのです。

話は変わりますが、組織において理念やミッションやバリューなど様々な「パーパス」を掲げているところが多いかと思います。しかし同時に、「従業員に言葉が浸透しない、思いが伝わらない。どうすれば全従業員で共有することができるのか」という問題意識を持っている経営者は少なくないと思います。

今回、自衛隊音楽まつりのスローガンを繰り返し聞いたことで、あらためて「物ごとを浸透させるためには、繰り返し繰り返し伝えていくことが最もシンプルであり、かつ効果発揮を期待できる方法なのではないか」と感じました。

もちろん、ただ単に言葉を覚えたからと言って、それだけですぐに全従業員が同じ方向性に向かえるというものではないのは当然ですが、それでもまずは言葉を共有することがはじめの一歩なのではないかと、今回の経験を通して改めて考えたのでした。

それにしても、コロナ禍を経て4年振りに本格的に開催された自衛隊音楽まつり、マーチングのように様々なフォーメーションをしながら演奏するなど、以前に比べエンターテイメント色が強くなり、より楽しめるようになったと私には感じました。YouTubeなどでも視聴できると思いますので、見ていないという方はぜひご覧になってください。

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第1,189話 部下指導は脈々と受け継がれる?

2023年11月01日 | 仕事

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「Aさんから教わりました」

これは、先日弊社が担当させていただいた中堅社員を対象にしたある研修で、2人の受講者から異口同音に聞いた言葉です。

2人とAさんは別の部署で働いていますが、仕事の関係で定期的に接点があり、2人はその際にAさんから「仕事で使うと便利だから覚えるように」とあるフレームワークを習い、使うようになったと話をしてくれました。

この話を2人から聞いた際に私の頭に浮かんだのは、かつてAさんの上司だったBさんのことです。当時Bさんはある支社で管理職として働いていましたが、様々な部署のメンバーへもリーダーシップを発揮していたことを覚えています。Bさんはメンバーと積極的にコミュニケーションをとっており、日々気軽に声をかけていましたし、仕事だけでなくアフター5には飲み会や花見会などのレクリエーションも積極的に開催していることなどを、本人や周囲のメンバーからも聞いていました。

こうしたことから、Bさんは直属の部下だけでなく、他のメンバーからも相談事を持ちかけられることも多々あったようで、それに対してBさんからアドバイスをしたり、ときには注意をしたり厳しく指導したりすることもあったということを聞いていました。そのときにBさんから様々に影響を受けたメンバーの一人が、Aさんだったのです。Aさんは当時30代でしたが、Bさんから様々な指導を受けて40代後半になった今、監督職として活躍していることを人事の研修担当者から伝え聞いていました。

そうした中で今回、冒頭の言葉を中堅の2人の受講者から聞いたのです。私は以前から「部下指導を熱心に行う人に育てられた部下は、やがてその人が管理監督職になった際に今度は自身が部下や後輩の育成を積極的に行う人になる」と考えていましたが、かつてBさんに熱心に指導を受けたAさんが、今度は自分が後輩や部下を熱心に指導するようになったということで、これはまさにプラスの意味での「因果応報」とも言えるような気がしているのです。

そのように考えると、後輩や部下育成を時間の流れで考えてみると、それは単なる「点」ではなく、その「点」がつながって「線」となり、それがやがては広がりをもって「面」となるといったように、将来に向かって脈々とつながっていくものなのではないかと思うのです。ですから、もし管理監督職が「部下の育成なんて、大したことではない」などと考え疎かにしてしまうようなことがあると、それが次の世代にも、さらには後々の世代にもマイナスの影響を与えてしまうということになってしまうのではないでしょうか。

たった一人の管理監督職の部下への対応が、その組織の未来にも大きな影響を及ぼすと言っても過言ではありません。そのことをしっかりと考えて対応しなければならないと今回の一連の話をお聞きして改めて考えました。

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第1,186話 社歌の効用とは

2023年10月11日 | 仕事

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「社歌を作ります」

時々、弊社がお付き合いをさせていただいている会社の中で、社歌を作る予定であることを経営者やご担当者からお聞きすることがあります。社歌と言えば、つい先日「NIKKEI社歌コンテスト2024」の応募が締め切られ、今後は11月の一般投票と審査員推薦によって来年開催される決勝大会への参加者が決定されるとの記事を目にしたところでした。

さて、あなたの会社には社歌はありますか?日本初の社歌をどこの会社が制作したかという記録は残っていないようですが、一説には南満州鉄道が1917年(大正6年)に制作したという話があるそうです(Wikipediaより)。日本では、これまでに定期的に社歌のブームがあり、現在は5回目のブームの到来かと言われ、社歌にまた注目が集まっているとのことです。

私自身は、最近では社歌の話を聞くことはあまり多くないように感じていたのですが、かつて私が就職した40年近く前は、様相が大きく異なりました。入社式で社歌を斉唱する新入社員の姿や社内運動会などの催しを前に社歌を練習している姿が報道されているのを見たり、毎日朝礼で歌っているという友人の話を聞いたりしたことがあります。

それでは、組織が社歌を作成する理由は何なのでしょうか?社員の一致団結や士気高揚、愛社精神の醸成などが代表的なところだと考えられます。最近は新入社員の採用を目的にしたり、取引先に対して自社のイメージアップのために社歌を作る組織もあるようです。

かつて私がお会いしたある中小企業の社長は、自ら作詞を手掛け、完成した社歌を自らピアノを演奏して社員に披露したという話を誇らしげにされていました。この会社では社歌のおかげなのか業績が向上し、また新入社員の採用活動でもフルにこの映像を活用することによって、応募者が増えたということです。

私自身は、これまで社歌がある組織に勤めた経験はないのですが、数年前から「青春かながわ校歌祭」に出場する機会があり、それ以来、愛社精神ならず愛校精神?といったものを感じています。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、「青春かながわ校歌祭」とは神奈川県内の県立高校の同窓生(在校生)有志を中心に、各校の校歌・応援歌等を披露し、卒業生と在校生が交流するなどして、親睦を深めることを目的として行われているものです。

今年はちょうど2週間後に開催されるため、各校とも練習に励んでいるタイミングだと思いますが、当日は県立青少年センターホールに25校が集結し歌います。各校ともそれぞれに趣向を凝らすため、見応え・聞き応えがあるのですが、この校歌祭は結果に優劣をつけるものではありません。他者に聞いていただくためのものではなく、あくまで歌っている自分たち自身がそれぞれ学校に通っていた青春の日々を思い出し、懐かしみ楽しむというものなのです。

社歌と校歌は目的も意味合いも異なる場合が多いように思いますので、必ずしも同じ土俵考えることはできませんが、社歌であっても校歌であっても歌っているその一瞬に帰属意識のようなものを感じられることが大切なのではないかと考えています。特に社歌は、外部の人へのアピールというよりも、まずは「この会社が好きだ、ここで働いていることが楽しい」と感じられるものであってほしいと考えています。

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第1,180話 部長職へ昇格するために必要となるスキルとは

2023年08月30日 | 仕事

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「どういうスキルを身に着ければ、部長になれるのでしょうか?」

これは、私の知り合いが「万年課長」として活躍している部下のA氏から相談された際の言葉だそうです。

知り合いによると、A氏は非常に真面目な人柄で業務にも丁寧に取り組み、部下の育成も熱心に行うタイプとのことです。そのため、課長としては及第点がとれるそうですが、知り合いが言うには残念ながら「部長の器」としては十分ではないと感じるのだそうです。

それでは、A氏が部長の器として足りないのはどのような点で、部長になるためにはどのようにすればよいのでしょうか?

管理職として活躍するために必要となるスキルには、様々なものがあります。まず、コミュニケーションを筆頭に、折衝力や交渉力が必要になります。また、部下を評価する力も必要ですし、問題解決や数字に関する力、さらにはリスク管理など幅広いスキルが求められるのです。もちろん、これらのスキルは部長だけに求められるものではなく、課長職にも必要になるものですが、課のトップである課長とそれより規模の大きい部のトップである部長では、当然求められるレベルが大きく異なってくるわけです。

A氏が望む部長職には部長だからこそのハイレベルが求められるわけですが、私はもう一つ大切なスキルがあると考えています。

それは、業種業態により異なるものだとは思いますが、ある程度共通するものとして、大きな問題やトラブルなどが発生した時に、全体最適の視点を持てるかどうかということです。つまり、問題やトラブルが発生した際に、自部署のみならず組織全体の視点から最善かつ最適な道を探れるかどうか、ということだと考えています。

先のA氏の例では、A氏は問題やトラブルが発生した際に、解決すべく前向きには取り組むものの、少々慌ててしまい部下を右往左往させることが多いとのことです。何より問題なのは目先の問題に拘泥することで部分最適の対応のみに走ってしまうことが多々あり、業務全体の中でその問題を捉えて、最終的にどうしていくことが一番良いのかを考えて行動することができないのだそうです。

そのように考えると、現時点でのA氏は規模の大きい組織のトップとしては少々危ないと感じざるをえないところがあり、部長の器にはまだ物足りないということなのではないでしょうか。

ちなみに、組織における部長職の比率はどれくらいのものなのでしょうか?もちろん組織規模によるわけですが、私が仕事でお付き合いをいただいている企業などでは全社員数の数パーセント程度といったところが多いようです。そのように考えると、部長になるということは簡単なものではではありませんし、その「器」を持っている人はほんの一握りということです。

そのような中で、A氏のように部長職に就いて活躍をしたいと望むのであれば、前述の様々なスキルを磨いていくのは当然必要なことです。それに加えて絶えず全体最適の視点を持つことを心がけ、日々の業務の中で「トータルで考えるとなにが一番良いのか」と考えるようにしていくことが第一歩になるのではないでしょうか。

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第1,178話 「失敗を許すのか? 許さないのか?」

2023年08月09日 | 仕事

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「責任をとって辞めます」

これは、日本の組織において仕事などで大きな失敗をしてしまった人が、自ら職を辞することで責任を取ろうとする際によく使われる言葉です。テレビドラマの女性外科医のように「私、失敗しないので」と皆が言えればいいのですが、現実には必ず失敗は起こるものです。

ところで、企業をはじめとする日本の組織は己が招いた失敗については何らかの「形」にして責任をとらざるを得ない、つまりは「失敗を許さない」という企業風土が強くあるように思えます。実際、経済協力開発機構(OECD)が各国の15歳を対象にした2018年の調査でも、日本は「失敗への恐れを感じる生徒の割合が77%と、加盟国中で最高とのことです。(日本経済新聞2023年8月7日)

このような「失敗を許さない・認めない」、「個人が責任をとる・職を辞する」といった、ある種の文化のようなものになっていると思えるものは、組織にとどまらず国民性とさえ言えるのかもしれませんが、一体いつ頃から形作られてきたものなのでしょうか。これは定かではないものの、相当昔からのもののような気もします。たとえば、江戸時代に武士が切腹したというのも同じような責任の取り方だったのではないでしょうか。藩内で起こった不祥事に対して、ときには主君を守るために、自らが責任を取って切腹するという道を選んだわけです。

翻って、現在の組織は失敗をした人に対してもちろん切腹こそさせないものの、限られた人に責任を負わせる形で事を締めくくることが往々にしてあるように思います。つまりは、今も脈々とこうした文化が受け継がれているのかもしれません。しかし、このような責任の取り方は結果として失敗を次に活かすことをせずに、闇に葬っているだけです。

一方で、数は少ないのかもしれませんが、組織を揺るがすほどの大きな失敗をした人を許したことによって、その後それらの人が大活躍をしているという組織もあります。

そのような企業を取り上げている番組が、最近NHKで放送されている「神田伯山のこれがわが社の黒歴史」です。番組では、大失敗した商品や巨大プロジェクトなどを「黒歴史」として取り上げ、講談師の神田伯山が当時のエピソードを講談調でおもしろおかしく紹介しています。

これまで放送された中で私が特に印象に残っているのが、生活日用品メーカー「エステー」の家電開発秘話を取り上げた回です。社運をかけて開発した商品が結局は全く売れず、社の「黒歴史」となったのですが、しかしそのときの開発技術者は現在部長に、そのときに営業力を発揮できなかった営業パーソンは今年6月に、何と社長に就任しているのです。

当時、会社には大きな損失・損害を与えたわけですが、失敗の責任を追及してそこで辞職させていたら、現在のこのような姿はなかったわけです。本人の努力はもちろんのこと、今後その失敗以上の成果を得ることに期待して、リカバリーのチャンスを与えた会社(経営者)の「器」の大きさが見えるような気がしています。

失敗はしない方がいいのというのはもちろんですが、失敗することによってはじめて見えてくる世界や、新たな知恵が生まれるということもあると思います。失敗を許し、教訓を次に活かすことができる組織になれるかどうかが、組織としての「器」というものなのかもしれません。

競争がますます厳しくなる今、失敗しないための取り組みはもちろんですが、成長という観点で「大きな器の組織」にするためにはどうすればよいのかということを考えていく必要もあるのではないでしょうか。

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第1,174話 「ホワイトすぎる」対応も不安にさせる

2023年07月12日 | 仕事

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「仕事が何となく物足りないのです。社会人とはもっとバリバリ働くものだと思っていたので」

これは最近、弊社が若手社員を対象とした研修を担当させていただいた際に、研修終了後に相談されることが多い内容です。

詳しく聞いてみると、職場に配属後、上司をはじめ先輩達は忙しそうに働いているのにもかかわらず、自身はまだ担当する仕事があまりなく、また残業になることもほとんどないことから、そのことが物足りなく感じてしまうのだそうです。また、学生時代の友人の中には、既に複数の顧客を担当したりプロジェクトのメンバーに入ったりするなどしていて、どんどん成長している。一方の自分は、今は少々ぬるま湯の中にいるような感じすらして、このままの状態が続けば友人たちとの差は広がる一方のように感じ、自身の将来に不安を感じてしまうとのことです。

少々贅沢な話のようにも思えますが、これはここ最近話題に上ることが増えている、いわゆる「ホワイト企業」のことを言っているように思われます。かつて長時間労働の企業を「ブラック企業」と評したことがありましたが、ホワイト企業はその反対を指す意味で近年使われるようになりました。具体的には、仕事量をはじめとして若手に配慮をした結果、若手社員にとっては仕事の難易度が低すぎると感じられたり、仕事の絶対量が少ないために不安にさせたり、やる気を削いだりしてしまう企業や上司の対応のことを指しています。冒頭の受講者の悩みは、まさにこのホワイトすぎる対応によるものだと思います。

このような話を聞いた際には、上司や先輩に仕事量を増やしてほしいと具体的に話をしてみると良いのではとアドバイスをしているのですが、入社後半年から数年程度の彼らが自らそのような話をすることは少々ためらわれるようです。実際にそのような行動に移せる人はあまり多くはないように感じます。

しかしながら、こうした状態が長期間続いてしまうと、成長の実感が得られないことに不安を覚え徐々にモチベーションが下がってしまい、その結果離職につながってしまうというケースも実際にあるそうなのです。

それでは、こうした問題にどのように対応すればよいのでしょうか?「べた」な方法かもしれませんが、私は上司と若手社員が定期的、継続的に意見交換をする場を設けることが最初のステップだと考えます。そのような場を通じて、若手社員の考えや希望を聞きながら仕事量が適切であるかどうかを見極めて必要な対応を行い、それを繰り返すことで若手社員の成長の度合いを確認することもできるのです。もちろん、組織としてオフィシャルな面談の機会を用意しているところも多いと思いますが、若手社員の不安や物足りない気持ちに向き合うためには、もう少しカジュアルな雰囲気の面談を月に1回程度設け、フリーな意見交換をできる場があるとさらに良いのではないでしょうか。「昔は一緒に飲みに行けば、話を聞いていろいろアドバイスができたのに・・・」と思われる上司も多いのではないかと思いますが、今は昔ではありません。飲み会や飲ミュニケーションに頼るのではなく、双方が率直に話すことができる場を上司の方から積極的に設けていくことが「ホワイトすぎない」ためにも必要なのではないでしょうか。

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第1,173話 仕組みを根付かせるための、(株)キーエンスの根幹にあるものとは

2023年07月05日 | 仕事

「仕組みを作っても根付かない。時間の経過とともに、いつの間にか機能しなくなっている」

仕組みを作ってもそれがなかなか継続しないというのは、多くの組織に共通する悩みではないかと思います。職場で問題が生じた際に、解決策の一つとして挙げられることが多いのが「仕組みにする」であり、仕組みを万能薬のようにとらえている人も少なくないように感じます。

では、そもそも「仕組み」とは何なのでしょうか?辞書によると、「物事の組み立て、事をうまく運ぶために工夫された計画」とあります。つまり、組織において「仕組みにする」とは、たとえば異動や退職によって人が変わることがあっても、きちんと回るシステムを構築するといったことなのではないでしょうか。しかしこの「仕組み」、作ること自体も簡単ではありませんが、さらに大変なのは継続的に回し続け、きちんと組織に根付かせることです。

これに関して実際に仕組みを作り、それを徹底することにより驚異的な数字を出している会社があります。それは株式会社キーエンス(以下(株)キーエンス)で、時価総額14兆4,482億、平均年収 2183万円、売上高営業利益率55.4%、自己資本比率93.5%とのことです。(西岡杏(2022)「キーエンス解剖 最強企業のメカニズム」日経BP)

(株)キーエンスの仕組みは様々あるようですが、私が最も驚いたのは営業の仕組みです。その一部を紹介すると、毎夕先輩と後輩でペアを組み、顧客役と営業役に分かれて1000本ノックのようなロールプレイングを繰り返したり、5件以上のアポがないと外出が許されなかったり、さらに顧客との商談後には5分以内に外報と呼ばれる報告書を記入したりするのです。本書によると、こういった仕組みは営業のみならず、例えば代理店を通さない「直接販売にする」、「当日出荷にする」体制など、「付加価値を最大化する」という目標に向けた同社の仕組みはあらゆるところにあるそうです。

本書では、多くの企業では仕組みを構築したとしても維持継続が難しく、時間の経過とともに仕組みが壊れてしまうのに、(株)キーエンスがこれだけの仕組みを維持継続できるのはなぜなのかについても紹介されています。それによると、これらの仕組みをやりきる人材を育てる取組みや、そのベースにある風土、さらにはその源流をなす創業者の基本的な経営観や仕事観にも焦点が当てられています。ポイントは仕組みを表面的に真似するのではなく、そこに込められた「哲学」も真似するということだとされています。

しかし、入社してすぐにその哲学が浸透するわけではないことから、(株)キーエンスでは個人ではなくチームとしてより良い結果を残すことを目指して、部下の育成にも余念がないようです。こうした育成を通して社員に哲学がしっかり浸透し、それが組織の風土になっているのだと思います。このように(株)キーエンスでは個々の社員が自らやる気になるような内発的動機付けをしっかりと行い、同時に営業利益の一定割合を賞与として社員に還元するなど、外発的動機付けも徹底して行っているのだそうです。

どの組織もが(株)キーエンスのようになるのは簡単なことではないでしょうが、50年という社歴としてはそれほど長くはない時間の中で「哲学」をしっかり根付かせた(株)キーエンス。書籍を通して一部しか垣間見れていませんが、今後もますます目が離せない存在ではないかと感じています。

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第1,171話 採用活動はwin-winの関係

2023年06月21日 | 仕事

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「面接官の感じがとてもよかったので、それが入社の決め手となりました」

これは、新入社員が入社を決めた際の理由として紹介されることが多い言葉です。複数の組織から内定を得た人が、最終的に一つを選ぶ判断をする際の決め手となるのは、組織の規模や給料などより、面接官などの直接接触を持った人との相性や雰囲気といったものなのかもしれません。

これに関して、最近は採用業務を外部に委託する企業が増えているとのことです。矢野総合経済研究所の調査によると、2021年度に採用業務を外部に任せた「採用アウトソーシング」市場は、前年の2020年度と比べ15%増えており、今後ますます拡大する傾向にあるとのことです。外部委託をするのは、新卒採用だけでなく通年化した中途採用等の業務の増加にともなって、自社では対応が難しくなっていることが理由の一つにあるようです。

最近では、売り手市場になっていることや、国が人材の流動化を積極的に進めようとしていることなどもあり、採用業務にかかる時間は増えているようです。特に、採用に加えそれ以外の業務も兼務している担当者にとっては、大きな負担になっているであろうことは容易に想像できますので、外注化が増えてきているのも当然なのかもしれません。

実際に退職者の減少につながっているという例をはじめ、採用の外注化には様々なメリットがあるようです。それでは採用業務の中で外部委託をしているのは、具体的にどの部分なのでしょうか。

これも採用業務の全体、あるいはその中の一部分など様々な形があるようなのですが、そうした中でも私は面接だけは必ず自社の担当者が行うことが大切だと考えています。なぜなら、応募者側からすると面接官が「組織の代表」そのものになるからです。応募者は面接官とのやり取りを通じ、その組織の風土や雰囲気を想像することになるのであり、それが「この組織に入りたい」、「この組織は自分には合わない」という判断をする際の大きな要素になっているのではないでしょうか。

面接は、組織側からすると大勢の応募者の中から自組織で活躍してくれそうな人を選ぶ場の一つですが、同時に応募者側にとっても、内定を得られている複数の組織の中からどこに入りたいかを判断する場になるわけです。そのように考えると、採用業務における面接は双方が互いを選ぶ判断をする際の大切な機会であり、双方にとって多くのことを得ることができる場となることが望まれるのです。しかし、採用業務において面接を外部に委託してしまうと、少なくとも応募者側は判断の材料を得る場にはなりにくくなってしまうと思います。

今後、人(労働力)の流動化がますます盛んになると、採用活動はますます長期化することともいます。そのような中で、業務効率化の一環として外部委託することも一つの手段だとは思いますが、応募者を選ぶ側という視点だけではなく、応募者から選ばれる組織になるという視点、まさに採用活動はwin-winの関係であることを忘れないでいただきたいと思うのです。

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第1,170話 部下に遠慮してしまう上司が与えてしまう影響

2023年06月14日 | 仕事

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「圧をかけていると思われませんか?」

これは、先日弊社が監督職研修を担当させていただいた際に、受講者から質問された言葉です。研修では、監督職の役割をはじめ様々な内容について確認や練習をしていただきましたが、その一つとしてコミュニケーションにおける「質問の仕方」の演習をしていただきました。そのときに冒頭の質問を受けたのですが、その受講者が言うには「部下に指示した仕事の進捗状況を尋ねることは、部下へ圧力をかけることになってしまうと思います。ですから、質問したくてもしない方がよいのではないでしょうか。」とのことでした。

この研修では、他の受講者からも「部下を叱ったり注意をしたりするなんてとんでもない、そもそも叱ったり注意をしたりすることは、親が子どもに行うことであって、部下に行うことはよくない」、「部下に伝えたいことがあるのであれば、あくまで助言にとどめるべきだ」と考えているとの話もありました。

さらには、「喫煙のために離席する部下がいて、その都度記録をしたところ、離席時間は1日に2時間にも及ぶことがある。その間、問い合わせの電話が入っても、本人がその場にいないために、電話をかけてきた人を待たせてしまっている。そのことを指摘したいけれど、嫌われたくないのでついニコニコしてしまう。このままではいけないと思うけれど、どうすればよいのでしょうか」などの質問もありました。

この話を聞いて、皆さんはどのように考えますか?

部下を育成することは昔も今も簡単なことではありませんが、これらの話を聞いていて私がまず感じたことは、そもそも部下育成以前の話であり、上司があまりにも部下に対して腰が引けてしまっているのではないかということです。そして、そのために自分にはできない理由をつけているようにさえ感じられてしまいました。

それではなぜここまで腰が引けてしまうのでしょうか?

理由は様々ありそうですが、まず部下をはじめ周囲の人に嫌われたくない、自分に対して自信が持てないということがあるのではないでしょうか。

当人にとっては、4月に監督職に昇格し新たに部下育成が任務として加わったものの、経験がなかったり周囲にモデルとなる人がいなかったりなどで、監督職としてのイメージが全くつかめておらず、何をどうしてよいかわからずに不安で一杯ということなのかもしれません。

だからこそ、新任時の監督職研修で監督職の役割を学ぶことには大きな意味があるのですが、同時にいくら研修で講義を聞いたり、ロールプレイングなどの演習に取組んだり練習を重ねても、それは実践されなければ何の意味もないことになってしまうのです。実際に職場で部下に対し具体的に質問や指摘をし、改善を求めるといったことをしなければ、こちらの考えは伝わらず、行動を変えることはできないのです。

それでも苦手と思う方は、まずはあまり大上段に構えずトライしてみる。そして旨く行ったところ、いかなかったところを確認しながら、経験を積み重ねていっていただきたいと思うのです。

部下の指導や育成は上司の大事な役割です。嫌われたくないという理由で部下に指摘すべきことを放置してしまうようなことは、くれぐれもしてはいけないということです。それは見て見ぬふりをすることと同じ行為であり、その状態を続けると前向きに仕事をしている人のモチベーションまで下がることにもつながります。その結果、やがて職場全体の雰囲気が悪くなり仕事の生産性までも下がることになってしまいかねません。

上司の皆さん、嫌われることを恐れずに、勇気をもって部下に声をかけてみてください。

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第1,169話 部下を評価することは難しい

2023年06月07日 | 仕事

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「部下を評価することが苦手です」

これは、弊社が評価者研修を担当させていただく際に、管理・監督職の皆さんから聞くことが多い言葉です。実際に、上司が部下を評価することは昔も今も簡単なことではありませんが、一方で部下の側からすると「上司から的確に評価されない」結果、部下のモチベーションが下がってしまうことによる、離職の増加という問題が顕在化している組織も実際にあるのです。

人が他者を評価するということはそもそも大変なものですが、組織においてそれをさらに難しくしている原因は一体何なのでしょうか。様々な原因があるかと思いますが、その一つに管理職の中に「評価とは、最終的な数値の判断をすること」だと誤解をしている人が少なからずいることがあるように感じます。

評価には、その前段の段取りがあり、また評価をした後のフィードバックも必要です。つまり、前段、本番、後段の3つのステップを総じての「評価」なのだと私は考えています。しかし、前段と後段を省略して本番でいきなり数値評価だけをしようとしても、評価に関する材料がまったくないことから、感覚的な評価にならざるを得ないわけです。

では、評価の前段では何をすればよいのでしょうか。前段では、管理職は部下を観察したり、部下とコミュニケーションをとったりすることによって、部下が求められている役割を担えているのか。部下の強みや弱みは何か。部下自身は今後どのようになりたいと考えているのか。それは組織が求める役割に合致しているのか。管理職の自分としては部下にどのように成長してほしいと考えているのか。そのためには、マイルストーンをどのように設定するのかなど、様々な観点で見極める必要があるのです。

そのようなプロセスを経ることによって、はじめて評価の際の具体的な指標を設定しやすくなるのです。このプロセスを経ずにいきなり評価指標を設定しようとすると、精神論的なあいまいなものになってしまいがちです。

さらには、前段のステップで上記の観点に加えて何を、いつまでに、どのように行うのかといった定量化もしておけば、次のステップの評価をずっとスムーズに進めることができると思います。

そして後段のステップでは、どのようなに事柄に基づいて、どのような考え方で評価をしたのか、評価の根拠を明確に示すとともに、さらなる成長を目指すためにはどうすればよいかを、上司としての期待とともに共に考えていく姿勢を見せるというフィードバックが大変重要になってくるのです。

そうすることにより、部下が「しっかりと見守ってもらっている」「期待されている」ことを感じることができ、その結果「組織に貢献したい」と強く感じてエンゲージメントが高まり、離職率の低下を期待することができるのです。

冒頭のように、部下評価に対して苦手意識を持っている管理・監督職の皆さん。確かに評価には時間も手間もかかりますし、何より責任を伴うものではあります。しかし、きちんとステップを踏んだうえで部下とともに自身も成長する機会なのだと捉えていただき、前向きに取り組んでいただくようにお願いしたいと思います。

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