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漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「酋シュウ」<よく醸した酒つぼ> 「猶ユウ」 と 「奠テン」

2022年05月07日 | 漢字の音符
  シュウ・おさ  酉部        

解字 篆文・旧字とも、酒つぼの上に酒気の発している形。酉ユウは酒つぼ、その上の八は酒気。よく醸した酒が入ったつぼを意味する。酒は祭事にもちいることが多く、政府は官の酒を造るのに酒造りの官に命じて造らせた。その長を「大酋タイシュウ」と言ったので、酋だけで「おさ・かしら」の意味になった。新字体で使われるとき、酋⇒「ソ+酉」の形となる。
意味 (1)よく熟した酒。ふる酒。(2)酒の醸造をつかさどる官。「大酋タイシュウ」(酒づくりの職人の長)(3)おさ(酋)。かしら。「酋長シュウチョウ」(①異民族のかしら。②盗賊などのかしら。)「酋渠シュウキョ」(おさ。かしら。首領)

イメージ 
 「かもされた酒つぼ」(酋・遒・猷・楢) 
 「形声字」(猶・鰌) 
音の変化 シュウ:酋・遒・鰌  ユウ:猷・楢・猶

かもされた酒つぼ
 シュウ・ジュ・せまる・つよい  辶部
解字 「辶(ゆく)+酋(おさ・かしら。酋長)」の会意形声。酋は、かもされた酒樽の形だが、転じて、おさ(酋)・酋長の意味がある。遒シュウは酋長がゆく意で、せまる意、また、つよい意となる。
意味 (1)せまる(遒る)。ちかづく。(2)つよい(遒い)。力強い。「遒勁シュウケイ」(遒も勁も、つよい意。書画・文章などの筆が力強い)「遒麗シュウレイ」(文章が力強く美しい)「遒逸シュウイツ」(文章が力強くすぐれる)
 ユウ・はかる   犬部 
解字 「犬(いぬ)+酋(かもされた酒樽)」の会意形声。犠牲の犬とともに、かもされた酒樽を神に供え、神に問う(諮はかる)こと[字統]。
意味 (1)はかる(猷る)・はかりごと(猷)「猷詢ユウジュン」(たずねはかる)「嘉猷カユウ」(よいはかりごと)「猷念ユウネン」(心にはかり思う)「猷慮ユウリョ」(はかりごと)(2)(神が示した)みち。「猷訓ユウクン」(正しいみちをおしえる)「修猷シュウユウ」(みちをおさめる)「修猷館シュウユウカン」(福岡藩の藩校(東学問稽古所)に起源を持つ県立高校)
 ユウ・なら  木部
解字 「木(き)+酋(かもされた酒たる)」の会意形声。ここでの酋は酒樽(たる)の意。陶製の酒つぼのほかに木製の酒樽もある。楢は酒樽の材料となる木。日本酒の樽は杉材だが、中国ではクヌギ、ヨーロッパではオーク(ヨーロッパナラ)などを使う。これらの木は広い意味で楢(なら)の木になる。
意味 (1)なら(楢)。ブナ科コナラ亜属のうち、落葉性の広葉樹の総称。クヌギ・ミズナラ・コナラなどの総称。これらの木は水を含むと膨張し水を漏らさないので酒樽の材料に向いている。また、家具の材料となるほか、薪や炭の材料ともなる。「楢櫟ユウレキ」(ならと、くぬぎ)(2)地名。「楢原ならはら」「楢山ならやま

形声字
 ユウ・なお  犭部  
解字 旧字は「犭(けもの)+酋(ユウ)」の形声。ユウは悠ユウ(ゆったりした)に通じ、ゆったりした動きをする猿の意。意味の(3)以下は仮借カシャ(当て字)。新字体は猶に変化。
意味 (1)猿の一種。(2)ためらう。ぐずぐずする。「猶予ユウヨ」(猶も予も、ためらう意。ためらうこと。延ばすこと)(3)なお(猶)。やはり。なお~ごとし。ちょうど~のようである。似ている。「過ぎたるは猶(なお)及ば不(ざ)るがごとし」「猶子ユウシ」(子のごとしの意で、兄弟の子である甥・姪、また養子をいう)
 シュウ・シュ・どじょう  魚部
解字 「魚+酋(シュウ)」の形声。シュウという名の魚。どじょうをいう。同じシュウの発音をもつ鰍シュウも中国でドジョウの意であり(日本ではカジカの意)、シュウという音にドジョウの特徴を表すイメージが含まれていると思われる。
意味 どじょう(鰌)。ドジョウ科の淡水魚。「泥鰌どじょう」とも書く。


   テン・まつる
 テン・デン・まつる・さだめる  大部              

解字 篆文は「酋(かもされた酒つぼ)+丌(台)」の会意。かもされた酒つぼを台の上に供えて祭る形。現代字は篆文の丌⇒大に変化した。
意味 (1)まつる(奠る)。神仏に酒食などを供える。「奠茶テンチャ」(茶を供える)「乞巧奠キコウデン」(七夕に供え物をして二星を祭り手芸がうまくなるよう祈る行事)(2)そなえる。「香奠コウデン」(線香をそなえる。線香に代える金銭=香典)(3)さだめる(奠める)。位置をきめる。「奠都テント」(都をさだめる)

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 「かもされた酒つぼ」(奠)
 「形声字」(鄭・擲・躑)
音の変化  テン:奠  テイ:鄭  テキ:擲・躑 
 
形声字
 テイ  阝部
解字 「阝(まち)+奠(テン⇒テイ)」 の形声。テイという名のまち・くに、および姓。また、鄭テイに含まれている奠テン(神仏に酒食をそなえる)に通じ、礼儀ただしい・ていねいの意がある。
意味 (1)地名。「鄭州テイシュウ」(中国河南省の省都)(2)姓。「鄭成功テイセイコウ」(明末の遺臣。清軍と戦い台湾に拠って奮戦した)(3)礼儀ただしい。ていねい。ねんごろ。「鄭重テイチョウ」(=丁重)
 テキ・チャク・なげうつ・なげる  扌部
解字 「扌(て)+鄭(テイ⇒テキ)」の形声。テキは擿テキ(なげうつ・なげる)に通じ、なげうつこと。擲はもと、擿テキの俗字として使われた字。擿テキは、「扌(て)+適(テキ)」で敵テキに通じ、敵に手で物を投げつけること。鄭の発音は、テイ⇒テキ・チャク(慣用)に変化。
意味 (1)なげうつ(擲つ)。なげる(擲る)。なげとばす。「投擲トウテキ」(①投も擲も、なげる意。②投擲競技の略。陸上競技の砲丸投げ・円盤投げ・ハンマー投げ・やり投げの総称)(2)サイコロをなげる。ばくちをする。「乾坤一擲ケンコンイッテキ」(サイコロを投げて大きな勝負をする)(3)うちたたく。「打擲チョウチャク」(打ちたたく)
 テキ・ジャク・たちもとおる  足部
解字 躑テキの発音のテキは蹢テキ(たたずむ)に通じ、たたずむ意。たちもとおる意となる。
意味 (1)たちもとおる。たちどまる。たたずむ。「躑躅テキチョク」(たちもとおる。=蹢躅テキチョク」「躑跼テキキョク」(行きなやむ) 
 躑躅(ウィキペディアより)
(2)つつじ(躑躅)。ツツジ科の常緑または落葉低木の通称、春から夏にかけ色とりどりの花が咲く。躑躅テキチョクは、たちどまる・たたずむ意味があり、花の「ツツジ」の意味に使われたのは、ツツジの花が「見る人が足を止めるほど美しい」ことが由来しているとされる。中国では杜鵑花トケンカ(さつきつつじ)の別名となっている。「躑躅ヶ崎館やかた」(山梨県甲府市古府中にあった甲斐国守護武田氏の居館。戦国大名武田氏の領国経営における中心地。
<紫色は常用漢字>

関連音符
ソン・とうとい」。篆文は「酋(酒つぼから酒気の発している形)+寸(手)」。酒つぼに入った良酒を神にささげるので、とうとい意となる。
「尊ソン」


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